ワイヤレス給電を操るためのパワエレ技術講座|コイルの位置ずれ対策 -4ページ目

ワイヤレス給電を操るためのパワエレ技術講座|コイルの位置ずれ対策

ワイヤレス給電の開発課題
・コイルの位置ずれ対策
・電力伝送距離の延長
・安定した充放電制御
がパワエレ技術でどのように解決できるのか。
ワイヤレス給電とパワエレの両面から、双方向ワイヤレス電源の開発実績に基づいたノウハウを解説します。

パワエレの勉強を始めると、基礎として昇圧チョッパと降圧チョッパの動作を理解しましょうということになります。

このチョッパの動作を理解することって重要な基礎でしょうか?

チョッパを使って電流を制御することを考える場合には、チョッパ回路の動作原理なんて知らなくても大丈夫です。
スイッチのオン/オフ時間(デューティー比)と昇圧比・降圧比との関係も覚えておく必要はありません。

デューティー比と昇圧比・降圧比との関係は、定常状態に限定されたものであり、パワエレは過渡応答を制御する技術なので定常状態を理解することは重要ではありません。

実際に、パワエレ分野の制御系エンジニアが、制御システムや制御ソフトウェアを設計するときにデューティー比と昇圧比・降圧比との関係式は使いません。

パワエレの基礎である電流制御を実現するために、絶対に知っておかなければならない基礎は、

チョッパやインバータが増幅器(定電圧アンプ・ボルテージフォロワ)として作用することです。

ただし、変調によって高周波が重畳されてしまう増幅器です。 

チョッパやインバータが増幅器であることを理解せずに、パワエレの制御を理解することはできません。

  
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電気自動車の急速充電は、満充電の80%程度までしか充電できません。

「20~30分間の充電で80%まで充電されるような大きな充電電流を、80%を超えた電池に流してはならない」

と電池メーカーが言っているわけです。

このような電池メーカーの要求に従って、我々パワエレエンジニアは充電器を制御します。

なぜ80%までしか充電できないのかについて、私のイメージを例え話として紹介します。


さて、スポンジ(例えば50cm程度の大きめの物が良いでしょう)を思い浮かべてください。
このスポンジに水道から放水して水をしみ込ませることを考えます。

スポンジが電池で、水が充電電流ということです。

最初は勢い良く放水しても放水した水は全てスポンジにしみ込んでいきますが、しみ込んだ水の総量が増えると放水した水の全てまではしみ込まなくなります。
この状態から、蛇口を絞って放水量を減らせば、放水した全ての水はじわじわとスポンジが水で満タンになるまでしみ込んでいきます。

これは、スポンジの内部に水がしみ込む余裕があっても、表面には大量の水を吸い取る余裕がないという状態になるためです。

電池を大電流で急速充電する場合には、80%までしか充電できないというのは、このスポンジと水のイメージに近いと思います。

いかがでしょうか?

  
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ワイヤレス給電や非接触充電が、新しい技術のように言われることがありますね。

しかし、ワイヤレス給電に使う2つのコイルは空芯トランスなので、インバータとトランスを使った単純なパワエレ装置です。

いくら回路にコイルやコンデンサを追加してもパワエレ回路に変わりありません。

つまり、磁界共鳴など新しい技術のように言われますが、実際には古典的なパワエレ技術であると理解しておいた方が、ワイヤレス給電の設計開発はうまくいきます。

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電気と磁気の両側面からコイルを見ることで空芯コイルと鉄芯コイルとの基本的な差異を理解しましょう。

まずは電気系と磁気系をつなぎます。

●電圧と磁束の時間微分(磁束変化率)は比例関係にあります。
  
●電流と起磁力(磁界の強さ)は比例関係にあります。

  

電気系と磁気系の関係はこれが全てです。
つまり、これだけで電気系と磁気系がつながります。


次に、磁気回路における基礎式を考えます。

  起磁力=磁気抵抗×磁束

という電気回路のオームの法則に相当する式があります。
実はこの式が原因でコイルの理解を混乱させている可能性があります。

どういうことかと言うと、電気回路の電気抵抗はエネルギーを消費しますが磁気回路の磁気抵抗はエネルギーを消費しないということです。

両者とも抵抗と呼ばれていますが、エネルギーに対する作用が違うことを認識しておかなければなりません。
英語では、magnetic resistance よりも magnetic reluctance と言う場合が多いようです。

私は、磁気回路を考えるときに、磁気抵抗ではなくパーミアンス(permeance)という物理量を使うことにしています。

パーミアンスとは、磁気抵抗の逆数であり、ヘンリー[H]というインダクタンスと同じ単位を持っています。
そして、「電気回路におけるコイルのインダンクタンス」と「磁気回路におけるパーミアンス」とが比例関係にあります。

ここで、電気回路と磁気回路で相互に対応する基礎式を考え直します。

●電気回路
  電圧=インダクタンス×電流の時間微分
  

●磁気回路
  磁束の時間微分=パーミアンス×起磁力の時間微分
  
この両辺を時間積分すれば
  磁束=パーミアンス×起磁力
  

このように、電気系の【電圧・電流】と磁気系の【起磁力(磁界)・磁束】をつなぐためには、時間微分または時間積分を絶対に無視できないということを理解しておきましょう。

最後になりましたが、空芯と鉄芯の違いは、空気と鉄のパーミアンスの違いであり、パーミアンスは透磁率に比例します。
鉄の透磁率は空気の透磁率の数千倍ありますので、空芯コイルに鉄芯を入れるだけで、インダクタンスが非常に大きくなるわけです。
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前回のブログで「分布定数回路」と「集中定数回路」を簡単に説明しました。

前回のブログはこちら:「分布定数回路」と「集中定数回路」

パワエレで扱う回路モデルは、基本的に集中定数回路で考えてよいということでした。


では、ワイヤレス給電はどうでしょうか?

厳密に電磁波という波動現象を扱うということは、空間座標を考慮して分布定数回路モデルで考える必要があります。
これは無線通信のように電波(電磁波)が波動方程式に従って伝搬するという考え方をした場合です。

一方で、1次コイルに電流を流すことで磁界を作り、相互誘導現象によって2次コイルに誘導起電力が発生すると考えた場合は集中定数回路モデルで扱うことができます。
要するにトランス(変圧器)ですね。


前回のブログに書いたように、厳密には分布定数回路で考えた方がよいのですが、集中定数回路で近似しても問題ない場合は集中定数回路で扱った方が簡単です。


ワイヤレス給電の理論を考える場合は
 電磁波:分布定数回路
 誘導:集中定数回路


このどちらの回路モデルで考えているのかを明確にしておく必要があるということです。(ハイブリッドもあるかもしれませんが)

そして、ワイヤレス給電の方式分も、空間のエネルギー伝送の原理が「電磁波」の伝搬なのか「誘導」で結合するのかで分けると良いです。

なお、このブログでは集中定数回路における誘導で説明できる方式を中心に書いていきます。

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