ワイヤレス給電を操るためのパワエレ技術講座|コイルの位置ずれ対策 -3ページ目

ワイヤレス給電を操るためのパワエレ技術講座|コイルの位置ずれ対策

ワイヤレス給電の開発課題
・コイルの位置ずれ対策
・電力伝送距離の延長
・安定した充放電制御
がパワエレ技術でどのように解決できるのか。
ワイヤレス給電とパワエレの両面から、双方向ワイヤレス電源の開発実績に基づいたノウハウを解説します。

PMSM(永久磁石同期モータ)の速度制御や電流制御では、

比例-積分(P-I)補償器を使ったフィードバックループによって

制御するのが一般的です。

 

この場合、

 

「積分ゲインを大きく(積分時定数を小さく)して制御応答を高めようとすると、

システムの動作が不安定になりやすい」

 

ということを、経験的に知っているパワエレ技術者は多いでしょう。

 

もちろん、比例ゲインを大きくし過ぎても不安定にはなりますが、積分よりは安定です。

 

 

では、積分を使わずに比例補償器だけでPMSMを制御することはできないのでしょうか?

 

 

その答えは ↓こちら↓ です。

 

PSIM cafe

比例補償器だけでPMSMを制御する方法

https://www.myway.co.jp/psimcafe/?p=1551

 

 

 

【シミュレーション回路がダウンロードできます】

 

 

 

このように理論的には、

外乱補償(フィードフォワードや非干渉化)を適切に組み込めば、

比例補償器だけでも定常状態において指令値と制御結果は一致します。

 

なお、実際の装置は理想理論通りには動かないため積分器は必要ですが、

適切な外乱補償があれば、積分ゲインをあまり高くしなくても良いため、

比例ゲインの調整で安定に応答を高速化することができます。

 

ぜひ、PSIMによるシミュレーション回路をダウンロードしてご確認ください。

 

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前回の記事 「T型等価回路とは、回路の何が等価なのか?」 では、
2つのコイル(トランス)の相互誘導の等価回路と回路方程式について説明しました。

 

ワイヤレス給電には、このようなコイルの相互誘導を応用した電磁誘導方式(磁界結合方式)のほかに、電極間に起こる静電誘導を応用した静電誘導方式(電界結合方式)があります。

(※方式分類の説明記事はこちら

 

この2つの方式には、双対性があるため回路方程式の形は同じになります。

 

静電誘導方式のワイヤレス給電の解説記事や論文で、この双対性を考慮している資料が見つからないため、今回のブログでは双対性から見た静電誘導方式の理論と等価回路について解説します。

 


●双対性とは

まず双対性とは何かについて簡単に説明しておきます。

 

 と の双対性

自己インダクタンス 静電容量

 

 

このように、自己インダクタンス と静電容量 に関する電圧 と電流 i の関係式において、電圧 と電流 i とを入れ替えることで同じ形なることを、と に双対性がある」といいます。

 

 

●相互電磁誘導と相互静電誘導

ワイヤレス給電の電磁誘導(磁界結合)方式の原理である相互誘導は、次式で表されます。

 

  

 

この電磁誘導方式の相互誘導を相互電磁誘導と言うならば、静電誘導(電界結合)方式の原理は相互静電誘導と呼べばわかりやすいでしょう。

 

そして、相互静電誘導を表す式は、相互電磁誘導との双対性に基づいて考えればは次式になります。

 

  

 

 

●等価回路

この相互静電誘導の式を満たすのが次のようなπ型等価回路です。

 

π型等価回路

 

このπ型等価回路の回路方程式は相互静電誘導の式と一致します。

 

 

●結合係数

相互静電誘導における結合係数 も相互電磁誘導との双対性から

 

 

と定義できます。

 

 

以上のように、双対性に基づいて考えれば、電磁誘導(磁界結合)方式と静電誘導(電界結合)方式は同じように扱えるので、静電誘導方式の原理や回路特性の説明には、以下のような電磁誘導に相当する用語を定義するとよいのではないでしょうか。

 

 

電磁誘導(磁界結合)  右矢印  静電誘導(電界結合)
相互電磁誘導  右矢印  相互静電誘導
自己インダクタンス  右矢印  自己静電容量
相互インダクタンス  右矢印  相互静電容量
漏れ磁束  右矢印  漏れ電束

 

 

ちなみに、相互静電誘導による結合のイメージを図にするとこんな感じです。

 

この図からも相互電磁誘導と双対性があるように見えませんか?

 

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ワイヤレス給電の回路特性を解析している論文などでは、送受電コイルをトランスと同じT型等価回路に置き換えて解析する場合がほとんどのようです。

 

送受電コイルまたはトランスの回路図

 

下矢印

T型等価回路

 

 

送受電コイルやトランスは、どちらも2つの巻線の相互誘導なので、同じ等価回路で解析することができます。

 

ところで、等価回路とは何と何とが等価なのでしょうか?

 

この等価回路の定義を明確にしておかなければ、等価回路を使った解析の意味がわからなくなってしまいます。


そこで、今回は等価回路の定義について、

「何を満たせば等価回路といえるのか」

という視点で解説します。

 

 

●なぜ等価回路を使うのか

 

送受電コイルを等価回路で表すのはなぜでしょうか?

 

本来、コイルやトランスの電磁誘導(相互誘導)現象は磁界や磁束を使った磁気系で表現されますが、電気系に組み込まれたトランスを電気回路として解析するために等価回路が用いられます。

つまり、磁気系と電気系が共存すると、複雑でわかりにくくなるために、磁気系を電気回路に置き換えて解析しているということです。

 

このような、置き換えが可能であることが等価という意味になります。

 

 

●磁気系と電気系が共存した回路

 

では、電気系に置き換える前の、磁気系と電気系が共存した回路とはどのような回路でしょう。


まず、基本的な考え方として、コイル単体の自己インダクタンスから説明します。

 

コイル(自己インダクタンス)の電磁回路


 

  電圧:       電流:

  磁束:      起磁力:

  巻数:      パーミアンス:

 

これがコイル(自己インダクタンス)の電気系と磁気系が共存した回路モデルです。

 

パーミアンスは、磁路(磁束経路)における磁気抵抗の逆数であり次式のように定義されます。

 

  (透磁率×磁路断面積)/磁路長  (単位はインダクタンスと同じ

 

 

このコイルの回路モデルの回路方程式は、次の3つの基本法則から求められます。

 

① 電磁誘導の法則

   (電圧は巻数と磁束の時間微分に比例)

  

 

② アンペールの法則

   (起磁力は巻数と電流に比例)

  

 

③ ホプキンソンの法則

   (磁束はパーミアンスと起磁力に比例)

  

 

 

この3つの式を連立方程式として、電気系の電圧と電流との関係を表すように解けば、

 

  

 

となります。

 

ここで、 とおけば

 

  

 

という、自己インダクタンスが  であるコイルの電圧と電流との関係式が得られます。

 

このように、3つの基本法則を使うことで、電気系と磁気系が共存した回路モデルから、電気系だけの回路モデルへ置き換えることができます。

 

 

以上で、電気と磁気とを統合する基本的な考え方がわかりました。

 

 

 

次に、同様の考え方で、2つのコイルの相互誘導を説明します。

 

この記事の最初に示したトランスおよびT型等価回路において

  1次側コイルの自己インダクタンス:

  2次側コイルの自己インダクタンス:

  2つのコイル間の相互インダクタンス:

です。

 

この相互インダクタンスを介して、2次側電流が1次側電圧に影響し、1次側コイルの電流が2次側コイルの電圧に影響することを相互誘導と言います。

 

この相互誘導は、数式で表現すると次のような関係式で表され、T型等価回路の回路方程式です。

 

  

 

 

磁気系と電気系を含む相互誘導の回路モデルとしては、下図になります。

 

 

相互誘導(トランス)の電磁回路

 

電気系には巻数の1次側コイルと2次側コイルがあります。

磁気系はその2つのコイル間に、1次側の漏れ磁束経路のパーミアンス、2次側コイルの漏れ磁束経路のパーミアンス、両方のコイルを貫通する磁束経路(ギャップ)のパーミアンスの、3つのパーミアンスがある回路モデルです。

 

そして、この回路の回路方程式は次式となります。

 

  

  

  

  

  

  

  

 

連立数は多くて難しそうに見えますが、

それぞれの式は先に説明した3つの基本法則の式と、磁気系におけるキルヒホッフの法則に相当する簡単な式です。

 

この連立方程式を電圧と電流の関係式として整理すると

 

 

 

 またについても同様に

 

 

が得られます。

 

この2つの式を、自己インダクタンスと相互インダクタンス

 

  

  

  

 

に置き換えれば

 

  

 

となり、T型等価回路で表される相互誘導の式と一致することがわかります。

 

●等価回路とは

 

このように、回路方程式が一致するということが等価回路であるという意味です。

 

磁気系と電気系が共存した相互誘導(トランス)回路は、電気系だけで表したT型等価回路と等価であり、置き換えが可能であるということになります。

 

なお、方程式が一致する等価回路は無数に考えられるため、等価回路に唯一の正解というものはありません。

 

自分で設計や解析で使いやすい等価回路を選択すればよいと思います。

 

 

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ワイヤレス給電の理論を理解するためには、方式の分類を理解することが重要です。

 

電磁理論に基づいた方式の分類

  ● 誘導結合方式

  ● 電磁波放射方式

の2つです。

 

この説明を聞くと、共振(共鳴)結合は?

という人がいますが、

共振(共鳴)を使った結合という現象を電磁理論で説明することはできません。

共振(共鳴)現象を使ったとしても、結合は電磁誘導か静電誘導で実現します。

 

 

 誘導結合方式は、電磁波を使わずに誘導で空間を結合することでエネルギーを伝送し、電磁波放射方式は、送信アンテナから電磁波を放出することでエネルギーを伝送するというように、基本原理によって明確に分類できます。

 

 この原理的な違いは、誘導結合方式では負荷を接続しなければ損失以外のエネルギーは消費されないのに対し、電磁波放射方式は負荷の有無に関係なく一定のエネルギーが放出されるというところに顕著に現れます。

 

この2方式を比較すると下の表のようになります。

 

 誘導結合方式電磁波放射方式
基本原理電磁誘導や静電誘導で空間を結合してエネルギーを伝送する。送信器(アンテナ)から放射した電磁波を受信器(アンテナ)で受け取ることでエネルギーを伝送する。
エネルギー消費負荷を接続しなければエネルギー消費は無い。負荷の有無に関係なく送信器はエネルギーを空間へ放出する。
相当する
高周波加熱
IHクッキングヒータ
  周波数:20kHz~100kHz
電子レンジ
  周波数:2.45GHz
詳細分類電磁誘導(磁界結合)方式と静電誘導(電界結合)方式に分類される。マイクロ波方式、レーザー方式など電磁波の波長(周波数)で分類される。

 

 

身近な高周波加熱調理器で考えると、鍋やフライパンを置かないと電力を消費しないIHクッキングヒータが誘導結合方式に相当し、加熱対象の有無に関係なくマイクロ波を放出する電子レンジが電磁波放射方式に相当します。

電子レンジが発生するマイクロ波は扉の金網で遮蔽されていますが、もし扉を開放しても電子レンジが停止しなければマイクロ波が外部へ放射されます。

 

この2つのワイヤレス給電の方式をさらに細かく分類すると、

誘導結合方式は電磁誘導を利用した電磁誘導方式(磁界結合方式)と静電誘導を利用した静電誘導方式(電界結合方式)に分類され、

電磁波放射方式は電磁波の波長(周波数)によってマイクロ波方式やレーザー方式などに細分化されます。


ワイヤレス給電の方式分類を以上のように考えると、すでに実用化されている製品や研究開発中のシステムなど全てを整理しやすくなるでしょう。

 

 

このような基本的な原理と理論に基づいた方式分類を理解することは、ワイヤレス給電の基礎理論を理解することにもなります。

 

 

なお、電磁波放射方式は波動方程式(伝送線路理論)や無線通信技術というパワエレとは違う技術分野であるため、このブログでは、パワエレ技術で扱える誘導結合方式を中心に解説しています。
 

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ワイヤレス充電のコイル位置がずれても
充電時間が変わらない制御システム



新方式の非接触充電



無効電力補償という古典的なパワエレ技術で、電圧と電流を制御する方式を応用した
ワイヤレス充電のシミュレーション事例です。

http://www.myway.co.jp/products/psim/in-use/case/case-011.html


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