ワイヤレス給電の理論を理解するためには、方式の分類を理解することが重要です。
電磁理論に基づいた方式の分類は
● 誘導結合方式
● 電磁波放射方式
の2つです。
この説明を聞くと、共振(共鳴)結合は?
という人がいますが、
共振(共鳴)を使った結合という現象を電磁理論で説明することはできません。
共振(共鳴)現象を使ったとしても、結合は電磁誘導か静電誘導で実現します。
誘導結合方式は、電磁波を使わずに誘導で空間を結合することでエネルギーを伝送し、電磁波放射方式は、送信アンテナから電磁波を放出することでエネルギーを伝送するというように、基本原理によって明確に分類できます。
この原理的な違いは、誘導結合方式では負荷を接続しなければ損失以外のエネルギーは消費されないのに対し、電磁波放射方式は負荷の有無に関係なく一定のエネルギーが放出されるというところに顕著に現れます。
この2方式を比較すると下の表のようになります。
誘導結合方式 | 電磁波放射方式 | |
---|---|---|
基本原理 | 電磁誘導や静電誘導で空間を結合してエネルギーを伝送する。 | 送信器(アンテナ)から放射した電磁波を受信器(アンテナ)で受け取ることでエネルギーを伝送する。 |
エネルギー消費 | 負荷を接続しなければエネルギー消費は無い。 | 負荷の有無に関係なく送信器はエネルギーを空間へ放出する。 |
相当する 高周波加熱 | IHクッキングヒータ 周波数:20kHz~100kHz | 電子レンジ 周波数:2.45GHz |
詳細分類 | 電磁誘導(磁界結合)方式と静電誘導(電界結合)方式に分類される。 | マイクロ波方式、レーザー方式など電磁波の波長(周波数)で分類される。 |
身近な高周波加熱調理器で考えると、鍋やフライパンを置かないと電力を消費しないIHクッキングヒータが誘導結合方式に相当し、加熱対象の有無に関係なくマイクロ波を放出する電子レンジが電磁波放射方式に相当します。
電子レンジが発生するマイクロ波は扉の金網で遮蔽されていますが、もし扉を開放しても電子レンジが停止しなければマイクロ波が外部へ放射されます。
この2つのワイヤレス給電の方式をさらに細かく分類すると、
誘導結合方式は電磁誘導を利用した電磁誘導方式(磁界結合方式)と静電誘導を利用した静電誘導方式(電界結合方式)に分類され、
電磁波放射方式は電磁波の波長(周波数)によってマイクロ波方式やレーザー方式などに細分化されます。
ワイヤレス給電の方式分類を以上のように考えると、すでに実用化されている製品や研究開発中のシステムなど全てを整理しやすくなるでしょう。
このような基本的な原理と理論に基づいた方式分類を理解することは、ワイヤレス給電の基礎理論を理解することにもなります。
なお、電磁波放射方式は波動方程式(伝送線路理論)や無線通信技術というパワエレとは違う技術分野であるため、このブログでは、パワエレ技術で扱える誘導結合方式を中心に解説しています。
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