嫁と別居のぽるなれふのブログ

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09Jul
- 長七郎江戸蕎麦日記棘　其の弍拾
  柳橋が目を見張る。不用意に入って来た様に見えた平蔵があっさりと賊の一人を打ち倒したからだ。「ちっ！」と首藤の声がする。腕を押さえて後ろに下がる首藤。浅くではあるが斬られた様だ。追撃しようとした賊の一人であるが平蔵に背中を斬られる。どうやら平蔵は暫く賊の動きを観察してその癖や戦い方を分析し次にどう動くか予測して動いている様だ。『なるほど、鬼と畏れられるだけはある。抜け目というか隙が無い』感心する首藤である。柳橋は一人の賊の変幻自在の乱れ打ちに苦戦していたがようやっとこれを捩じ伏せる。峰打ちを食らわせると背中に馬乗りになって腕を捻り上げた。倒された賊と柳橋に取り押さえられた賊の顔を隠す布を剥ぎ取る平蔵。「どいつが狩舞利一だ。答えろ」と、唯一の生き残り、柳橋に抑えられている男が笑い出す。「何を笑うか貴様！」柳橋が賊の顔を地面に押し付ける。「お前らの間抜けさにだ。鬼平、お前の家は今頃血の海だろうよ」「何だと！」「お前達の動きは筒抜けだ。何でだと思う」「まさか···」柳橋が想像する。いや、そうである筈がない。予想が外れてくれ、と祈りにも似た気持ちで賊の次の言葉を待つ。「お前ら火盗改の中にも俺達の仲間がいるのさ···そいつは今、平蔵。お前の家に居る。しかも二人もだ。利一と合流して三人で大和屋と娘をぶち殺した頃だろうよ」「何だとぉっ！」「ふははははっ！無能なり長谷川平蔵！ふはははは！」賊の高笑いが屋敷に響いた。つづく
08Jul
- 長七郎江戸蕎麦日記　棘　其の拾玖
  柳橋も含めた火盗改隠密会議により、上方仕事人一味を迎え討つ体制が決定した。日が暮れ次第大和屋夫婦と娘のおはるを深川の平蔵宅に移動させる。店の者には家族での食事で一刻もすれば帰宅すると伝える。伝言が終わった時点で手引きと思われる良三を引っ捕らえ確保し大和屋から遠ざける。平蔵以下火盗改の面々は大和屋で一味を待つ。首藤も長七郎もそれに加わる。利一の腕を良く知る長七郎が欠かせぬとの判断からだ。念を入れ平蔵の役宅には火盗改の中でも有能な杉田、藤本が張り付いて警護に当たる事になった。誰にも知られない筈だが平蔵と長七郎の思惑が一致し大事を取ったのである。やがて日が暮れ町が闇に包まれた頃大和屋一家が三台の籠に分かれ深川に向かう。行ってらっしゃいませ、という奉公人達の声が聞こえる。その奉公人の列の中から一人の男が外れて籠の後を尾行始めるのが見えた。良三である。平蔵の部下の佐嶋が後を追い闇に消える。それから一刻程経過し、平蔵、柳橋達火盗改の面々、長七郎、首藤が大和屋邸内に入り配置に付く。否が応でも緊張感が高まる中、良三を尾行ていた佐嶋が戻って来た。「佐嶋、どうであった」平蔵がどっかりと腰を下ろしたまま問う。「やはり睨んだ通り利一の仲間でした。大和屋夫婦が長官（おかしら）の役宅に入ったのを確認してから引き返す途中で捕らえ吐かせました」「この短時間で良く吐かせたな。どういう手を使った」「拷問しても吐くほど甘くは無いと見て特殊な手を」「何だそれは」「ええ、身体のあらゆる所を···くすぐりましてございます」「あぁ、気の毒にな。佐嶋のくすぐりは天下一品。誰でも悶絶し呼吸困難になる」「ありがとうございます。奴も呼吸が出来ずあと少しで命を落とすところでございました」「くわばらくわばら···」おどける様に肩をすぼめる平蔵である。改めて各自が持ち場の確認。佐嶋が木戸の裏に控えて一味を引き込む役目だ。後は締め切った雨戸の裏に控える。暗闇の中時間が過ぎて行く。誰もが身動き一つせず全身の感覚を研ぎ澄ませている。時折聞こえていた町を彷徨く酔っ払いの声も聞こえなくなって久しい。「柳橋殿。ちょいとええか。気になる事があってのぅ」長七郎が柳橋の袂を掴んで話しかける。「何じゃ一体···」柳橋が長七郎の方に向き直った。一体どれくらいの時間が過ぎたのだろう。不意に木戸を叩く乾いた音が響いた。暗闇の中で全員の緊張が高まるのが分かる。佐嶋が無言で閂（かんぬき）を外した。「すっかり寝ている様だな」小さな声が聞こえた。ざざざっと賊が展開する音が響く。「むっ、お前良三じゃあないな！」突然鋭い声がする。「よし行け」平蔵の合図。一斉に雨戸が開け放たれる。「火付盗賊改、長谷川平蔵である！」雷の様な平蔵の大声が轟く。わあっと鬨の声が上がり壮絶な捕物が始まった。しかし賊の剣が次々に火頭改の面々を襲う。致命傷にはならないものの、数名が斬られた。「容赦せんぞ！」首藤の声が響き長髪が踊る。「首藤！気を付けろ！こいつら中々に強い！」柳橋が斬り合いの最中に叫ぶ。確かにあの柳橋でさえ打ち倒せずにいる。仕事人と名乗るだけはあるな、と平蔵が動き出す。賊は三名。対等にやり合っているのは柳橋、首藤くらいのものだ。後は軽くあしらわれている。斬り合いの輪の中に平蔵がずいっと割って入った。つづく
07Jul
- 朝食税金レトルトwindows。そして女優とのデート。
  仕事のフェーズが変わり朝食拠点が変更された。またもや路麺の無い地方なのでチェーン系牛丼店だ。🚙ホンマ何処にでもあるぞ、なすき家。店舗数は1,941店と他社を圧倒している。十和田にもあったもんなぁ。因みに２位は吉野家で1,197店。３位は我等が松屋で1,003店。店舗の扉を開けるとトイレの芳香剤の匂いと下水の匂いが同時に漂うのがすき家の特徴。恐らく利益追求の為に排水設備のメンテをしていないのではないだろうか。排水管清掃やグリストラップメンテなど。24時間営業だから出来ないのかも知れないが。朝から鰻もええやん。香ばしくふっくらと言ってもレンチン。レトルトが香ばしい筈も無いので炭の匂いのする香料等が入っているのだろう。などと思いつつまぜのっけ鮭朝食¥490。まぜのっけをご飯に乗せて鰹節を蒔いて鮭と共に口に放り込む。強制的に盆に乗せられている醤油は使わない。変な味だから。ごちそうさまでした。味噌汁は味が濃いので残した。次の日。タッチパネルを見てカレーもええや〜んと思ってしまう。🍛頼んでしまった。¥490。ワンコインでカレー。昔に比べると本格的カレーになっている。昔のは人参だのじゃがいもが入っていたが今は入ってない。因みにお皿の向きはこれがいい。ルーをすくいつつ米に絡める流れ。スパイスが程よく効いて良き。福神漬も良き。ごちそうさまの朝カレー。牛丼チェーンのカレーの美味しさは1位　　松屋2位　　すき家3位　　吉野家である。（ぽるなれふ調べ）次の日。やはり朝は焼き魚がええな、とタッチパネルに踊らされる。すき家に行くならすきパスがお得らしい。深夜料金があるようだ。消費税を合わせると17%だ。すき家自体にはこの7%も売上として税金がかけられてしまうのだろうか。そしてタッチパネルの基幹ソフトはwindowsなのだろか等とどうでもいい事を考える。またまぜのっけ鮭朝食にした。鮭が背中を見せている。こういうのが気になるぽるなれふだ。ちゃんと置いてくれんかのぅ。と言いつつ完食した。味噌汁以外。ごちそうさまでした銀行ATMの貼り紙。ちょっと字が汚い（笑）銀行という場所柄もうちょっと綺麗な字で書いて欲しかったぞ。等と思っていたら新札が出て来て戸惑った。肖像画を見てもお前誰やねんの世界だ。札にピカチュウ、マリオ、ドラゴンボールをあしらえば外国人のマニアが円を買いまくって円高にならないだろうか（笑）星の王子さま好きなぽるなれふはフランスに赴いた際にサン=テグジュペリがあしらわれたお札を持って帰って来た。パリの小さなホテルに泊まった時に山口智子とデートした（夢の中で）想い出深い旅行だった。Σ(ﾟДﾟ)
- 長七郎江戸蕎麦日記　棘　其の拾漆
  『間違いない。再び俺と三國屋の娘の目の前で今の親である大和屋夫婦を殺害し心に止めを刺す気だろう。利一のやりそうな事だ』大股で歩きながら長七郎は考えた。大和屋に内通者を送り込む為にどれほどの労力を使ったのだろうか。そもそもそんなに簡単に調べが付くものなのだろうか。取り敢えず鬼平殿に知らせなければ、と本所菊川に向け歩を進める長七郎である。大和屋から出て小伝馬町に向かおうとしたところであの娘、おはるがやはり物陰からこちらを見ている事に気付いた。長七郎が一旦向きを変え、おはるの方に向かう。「おい長七郎」という首藤を制し、一人でおはると対面する。「あー、そのー、何じゃ、この前は驚かせて済まなかったのぅ」頭をかく長七郎。それを見て身を引くおはる。目に怯えがある様に見える。「お前がどう思っとるか分からんが・・・わしの事が分かっとるよな？嫌な事を思い出させてしまったとしたら申し訳ない。だが今度こそお前を守ってやる」怪訝そうな顔のおはる。その表情からは何も読み取れない長七郎である。「信用ないか。ま、しょうがない。兎に角自分を大事にな」それだけ言うと長七郎は大和屋を後にしたのである。「何だ長七郎。あの娘を知っておったのか。容赦せんぞ」首藤が歩きながら話しかけて来る。「うん・・・江戸に出て来て数年経った頃にな。俺の若さ故のしくじりというか実力不足というか」「何だそれは。容赦せんぞ」「まぁ俺の心から抜かなければならない棘だ」「ちょっと何言ってるか分からない」「分からなくていいよ」「ならもう聞かん」そう言うと更に歩みが早くなる首藤と長七郎。小伝馬町の牢屋敷を左に眺めながら進み、宿が立ち並ぶ通りを抜けると浅草御門に辿り着く。ここを右に折れ両国西広小路に到達すると長さ九十六間の両国橋を渡り大川を越える。そのまままっすぐ狭い路地に入ると回向院が見え、これをまた右に折れて竪川に架かる橋を渡り右手に水戸殿の石揚場や御船蔵を眺めながら左にある五本目の路地に入る。そうすると六間堀川の北乃橋、五間堀川の伊予橋を渡り左手に見える越後新発田藩屋敷を過ぎ、辻を一つ越えるとそこが長谷川平蔵の役宅である。「よし、でかした」長七郎と首藤の報告を受け、平蔵は膝を叩いた。「おっつけ柳橋もこちらにやって来るだろう。どの様に迎え討つか早急に決めなければいかんな」「利一は頭も切れ、剣の方もかなりの腕前。心して掛からねば犠牲者が出ますぞ」長七郎の言葉に平蔵が頷く。「先ずは大和屋に潜り込んでいると思われる、恐らく手引き役の良三を捕らえなければならん。しかもぎりぎりまで待ってだ。その後速やかに一家を匿う。誰にも見られぬ様にだ」「鬼平殿。もう一点、気になる事が」「何だ。申してみよ」「実は···」長七郎がおはるの事を伝える。「確かに偶然にしては出来すぎた話だし態々探したというのも俄には信じられんな」話を聞いた平蔵が腕を組んでふーむ、と唸った。「よし分かった。急いで調べさせよう。何やらきな臭いわ」平蔵が立ち上がり同心の佐嶋を呼んだ。つづく
06Jul
- 長七郎江戸蕎麦日記　棘　其の拾捌
  利一率いる上方仕事人一味により両親を目の前で惨殺され天涯孤独となってしまった三國屋夫婦の娘おはる。おはるもまた殺害される所であったが長七郎が身を挺しておはるを守りそれを阻止する事が出来たのだが、それがおはるにとって幸運だったのか不運であったのか。十年前、この一件を受け持った火頭改長官の土屋守直は勘定奉行であった太田正房と長七郎の後見人的存在となっていた田沼意次の命により、おはるの受け入れ先を探す事とあいなったのだが日を置かずして三國屋の友人であった大和屋の夫婦が手を挙げ、おはるを引き取る事に決まったのである。大和屋の主人蓮太郎と妻の実千代の間には子がなかった。いや、一度命を授かったのだが死産という悲しい結果に終わっていたのである。それ以降子を授かる事が無かった夫婦は喜んでおはるを受け入れ、実の子の様に愛情を注いで育てた。勿論言葉を発しないところも全く気にせず大事に大事に育てたのである。実千代は早くから文字の書き方、華道、琴、裁縫から算盤まであらゆる事を丁寧に教え、外に連れ出して空の青さ、風の匂い、花や星空の美しさを感じさせた。そのおかげなのかおはるは同じ年頃の娘に比べると随分と大人びた表情や振る舞いを見せる様になっていた。そして周囲の空気や人の感情の変化を敏感に感じ取る感覚も合わせ持っていた。何年くらい前からだろうか。おはるは常に誰かの視線を感じる様になっていた。一度母親に文のやり取りで相談したのだが「気のせいよ」と言われてしまった。実千代は実千代で大勢の奉公人や出入りの商人達の素性を注意深く調べてみたりした上での返事だったのだが。確かに大和屋は人の出入りが多い。少々喧騒が過ぎるのかも知れない、とも思ったが慣れてもらうしかないかしら、と実千代は自分の心の内で済ませてしまうのだった。そんな何処となく落ち着かない日々を過ごす中で、その誰かの視線はますます強くなっている様にも感じられていたある日、母親と一緒にお得意先に伺う事になり浅草へと足を運んだ。浅草はさすが江戸一の歓楽街だけあって多くの人々が行き交いおはるは目眩を覚えた。日陰で足を止めたところ、実千代と付き人は気付かず雑踏に姿が消えて行く。おはるが慌てて後を追おうとした所、いつもより数段強い視線を突如として感じた。思わず辺りを見渡してしまう程であった。小走りでその場を後にするおはる。視線は付いて来る。逃れる様に小径に入り、辻に差し掛かった時、大柄な男とぶつかりそうになった。男は咄嗟に身を捩らせながら地面に転がりおはるとの接触を避けた。済まんすまんと言いながら立ち上がるその男の顔を見た時におはるの記憶が突如として蘇った。両親が殺された時に自分を抱えて闘っていた男。あっと思った瞬間、今自分に視線を送る人物の正体にも気づいた。自分の両親を殺害し暗闇の中佇み炎に照らされぎらぎらと光を放っていたあの目、あの視線。間違いない、狩舞利一という名の殺人者…つづく
05Jul
- 長七郎江戸蕎麦日記　棘　其の拾陸
  翌日から長七郎は首藤と組み、江戸市中の大店を一軒一軒廻り始めた。柳橋、長谷川との話し合いにより全ての大店を巡り使用人の様子を探る事にしたのである。人手が多ければ多いほどいい、と長七郎も調査をかって出た。素浪人の様な形（なり）の長七郎では相手にされないのでは、と心配した長谷川と柳橋が一筆、書面をしたためて『この男、火盗改の手の者に付き協力を願う』旨がすぐ相手に伝わる様に計らってくれた。一日目、二日目と巡り巡って怪しい者には行き着かず三日目。火盗改の面々に焦りの色が浮かび始めた曇りの日。長七郎と首藤は日本橋に居た。この辺りは大店が集中しており、三組の火盗改の面々が調査に走り回っていた。長七郎と首藤が伊勢堀と竜閑川に挟まれた町の中の特に大きな大和屋を訪れた時であった。長七郎は久々に髪を調え、無精髭を落とし、いつもよりは綺麗な形（なり）で店の主人に聴き取りを行っていた。「ええ、最近ねぇ。最近最近···」主人が視線を斜め下に移し、暫し考える様な素振り。「旦那様。良三は入って一年ちょっとでございますよ」算盤をぱちりぱちりと弾いていた番頭が声を上げた。「おお、そうだな。確か奴は京都の出だったか」「左様でございます。まだあちらの訛が出るので奥で整理などする事が多いですが」首藤が割って入る。「その者は真面目に働いているのか。容赦せんぞ」「容赦せんぞって···あぁ、至って真面目な男ですよ。算盤も出来れば力もある。筋もようございますよ」「何か気になる事はないか。例えば誰か訪ねて来る事が多いとか外出が多いとか」「うーん。ついこの間上方の友人、とか言う方が見えて少々ですが外に出た、その位ですかね。それ以外は他の使用人と何も変わりませんが」「長七郎」首藤がこちらに視線を寄越した。軽く頷くと「邪魔したな主人。時間を取らせてしまって済まん」と言いながら踵を返そうとした長七郎がある事に気付いた。「・・・」屋敷内の柱の陰からこちらをじっと見ている者があるのだ。そちらへ顔を向けるとその者はさっと顔を引っ込める。『あれは···浅草の小辻でぶつかりそうになった···』「ああ、今のは娘のおはるですよ」長七郎の視線の先を見た主人が察した様に言った。「まぁ人見知りの激しい子でして。何しろ生まれてから一度も口を開いた事が無いのですから」「唖（おし）なのか」「いえ、お医者様が言うには耳も聞こえている様だし喋れるだろうと。ただ心の中の何かがそれを邪魔しているのでは無いかと」「ふーん」続けて大和屋の主人が思いも寄らぬ事を口にした。「こんな事を言うのも何ですが、あの子は小さい時分に目の前で両親を殺されておるんです。ええ、私らの本当の子ではありません。友人の子なんです。その時の下手人をあなた方のお仲間の火頭改の皆さんは捕らえる事ができなかった。逃がしてしまったのですよ。もし捕まえていれば今頃あの子もちゃんと話が出来て嫁にも行っていたかも、と思うと不憫でねぇ」少々火頭改への不満とも取れる口調だったが事実を聞かされて長七郎は思い当たった。「主人、済まぬがその殺された両親というのはもしや三國屋の・・・」「ええっ！よ、良くご存知で」大和屋の主人が余程驚いたのか目を大きく見開いて長七郎の顔を凝視した。つづく
04Jul
- 特製松屋朝食牛丼変化とマスコミが報じない都知事選
  今日も今日とて松屋の朝食だ。何時もの¥290朝食をご飯大盛り、半熟玉子、ミニ牛皿で。そう、玉子かけごはん朝食は米大盛りにしても¥290なのだッ!お得!実にお得ッ!現代では当然になってしまった店内禁煙。昭和なら愛煙家が暴動を起こしただろう。松屋一揆とかいって。松屋の味噌汁の蘊蓄が掲げられている。確かに味噌汁というのはあればホッとする。具が多ければそれだけで主食になり得る。松屋の味噌汁は個人的にはもうちょい味が薄い方が好みだ。それでもすき家の味噌汁よりは薄味だが。番号が呼ばれて受け取る。大盛りご飯だと茶碗が違う様だ。同じ茶碗で良さそうな物だが間違い防止の為だろう。半熟玉子は裸で出て来るのだな。フムフム。ツヤツヤしとって綺麗だな。早速ミニ牛皿と半熟玉子をごはんの上に。更に紅生姜！もりもりと食べる。前日カップ麺一つで過ごしたので空腹だったのだ。ﾀﾞｲｴｯﾄごちそうさまでした。満足じゃ。ﾀﾞｲｴｯﾄｲﾐﾅｼところでところで都知事選の立候補者がエラい事になっている。話題作りの為の阿呆が雨後の筍の如く涌いている。これは都民がバカにされているという証左だ。実際バカだから小池みたいな者が当選しているのだよ。経済界は巨大な利権にあやかろうと小池推しだろう。蓮舫だとそれが出来なくなる上に今までの悪事（都有地九割引き販売等）も晒される可能性が高いので全力で阻止したい小池と自民公明。石丸は今は無所属だが数年経てば自民党に担ぎ出されて国会議員になるだろう。思想的には維新と近いが。今回の出馬も当選する気など全く無く（演説を聞き、公約を読めば分かるが勉強不足にも程がある）蓮舫に流れそうな無党派票を自分の票に誘導して小池を当選させる事にある。石丸氏の選挙参謀が自民党議員であり、任期途中の安芸高田市を放りだしていきなり立候補をした経緯がそれを物語っている。名前を売るだけ売って数年後には都知事選での功績を認められ自民党から国政選挙に打って出るだろう。常に他人を見下し論破が全てと思っている人間が首長に相応しい筈もない。市長が失政したならばそれは選んだ市民の責任、とヒトラーと同じ事を言ってしまう民主主義の根幹も知らない政治音痴。それが石丸である。面白いのが田母神氏だ。元自衛隊の航空幕僚長にして人の良いオッサン、いやお爺さんだ。ネトウヨの熱狂的支持を得ている田母神氏だが『神聖なる明治神宮の開発は許さない。即座に中止だ』とパヨクみたいな公約をぶち上げたのでネトウヨが「え、え、え？田母神さん？」とオロオロしている。ある意味本筋の保守なのが田母神氏かも知れない。日本において保守と言えば自民党か日本保守党なのだろうが、海外メディアに言わせれば保守では無く極右だという。日本のマスコミはフランスのルペン、イタリアのメローニ等を極右だと報道するが実は自分の国の政党が外国メディアにそれ以上に危険視されている事を報じない。何故かと言うと官房機密費で接待されてしまっているからだ。TVに出て来る政治ジャーナリスト等、田原総一朗以外全員自民党から金を貰っているので正しい情報は出て来ない。ジャーナリスト以外に著名人等も政府寄りの発言をSNSでするといいね、の数に応じて金を貰っている。ホリエモン等がそうだ。お金で世論を動かしているのだからこれ程不健全な事は無い。そういう訳で来る都知事選には何のしがらみも無いドクター中松に一票を投じようと思うΣ(ﾟДﾟ)後はレイシスト、ミソジニー、ド低能ばかりの都知事選だ。
- 長七郎江戸蕎麦日記棘　其の拾伍
  「大丈夫か」うずくまっている女に長七郎が近付く。「危ないところを助けて頂きましてありがとうございます」女が裾を払いながら立ち上がり長七郎に頭を下げた。「別にいいんじゃ。当たり前の事をしたまで」そう言って虎徹を納める長七郎。その時だった。背中を見せた長七郎に向かって素早く懐刀を抜いた女が猛然と切りかかったのだ。『殺った！』女はそう思った。が、次の瞬間刀を握りしめた自分の手が長七郎の脇に押さえ込まれている事に気付いた。『なんて男！確かに隙を見せていたはずなのに・・・！』「女、その物騒な物を仕舞わんか」長七郎が女の手首を握る手にぐっと力を込めるとからん、と懐刀が石畳に落ちた。「くそ、離せ！離せよ！」長七郎が不意に手を離すと女が勢い良く後ろ向きに倒れ込んだ。「痛っ！急に離すなお前！」手首や肘を摩る女。「いや、離せと言うから離したんじゃが・・・」言いつつ鳥居の方に向き直る長七郎。闇に向かい声を上げた。「そこで見てるのは分かっている。いい加減姿を見せたらどうじゃ」すると鳥居の更に向こうの薮より黒い影が静かに現れた。「大したものだ・・・昔よりも更に腕を上げているな。折角雇った刺客をあっさりと・・・」ゆっくりと歩を進める男。「利一か」「その通り。良く分かったな・・・」石灯籠のぼんやりした光に利一の横顔がゆっくり浮かび上がった。以前より皺が深く刻まれてはいるが間違いない、忘れもしない狩舞利一の顔だ。「俺の背中に傷を残し逃げ遂せた男の顔を忘れる訳はない」「それはこちらも同じ・・・俺の剣から逃れ、俺が江戸から離れざるを得なくなった原因。次に顔を合わせた時には殺すと決めていた」「俺もだ・・・俺の心に刺さる一本の棘、それがお前だ狩舞利一。それを取り除いてやる」長七郎が一歩前に出る。「まぁ待て。ただ切り合ったのでは面白く無いのだよ俺は」「何？」「いいか長七郎。俺達はこの江戸で一仕事して再び上方へ向かう」「何で上方なんだ。罪人は北へ逃げると相場が決まっているだろう」「馬鹿かお前は。人が多い町の方が紛れ込む事が出来るだろう。上方の方が飯も美味いしな」「北だろうが西だろうが逃がさん」「お前には火頭改の知り合いが居たな。それとあの髪の長い色男。あれも道場の師範代らしいな」「それがどうした」「お前らと火頭改で俺たちを止めてみろ」「何？」「三日以内に俺達が狙っている大店を突き止めてみろ。そして俺達の仕事を止めてみろ」「そんな話が飲めるか。この場でお前を切り裂いて終わりだ」虎徹の束に手を掛ける長七郎。利一が不敵に笑う。「お前は俺達に従うしかない」「何だと」「既に目的の大店には俺の仲間が入り込んでいる。俺が仲間の元へ帰らなければすぐ様その一家は皆殺しだ」「お前果てしなく卑怯な奴だな」「俺はお前らがその一家を守れず地団駄踏んで悔しがるのが見たいのさ。それでこそ積年の恨みが引くという物だ。乾いた砂が水を吸う様にすうぅーっとだ」「この野郎・・・うまい事喩えやがって」「主導権はこちらにある。柳橋、そして鬼平に伝えるがいい。上方仕事人が待っているとな」利一が退く素振りを見せた。「利一の旦那、こいつ一発殴っていいかい？」女が利一にしなだれかかる様にして聞く。「元くノ一の自尊心が傷ついたか。あっさり押さえ込まれて手も足も出せずになぁ」利一が薄ら笑いを浮かべる。「次は上手くやるさ」「なら今は抑えておけ。こいつらの情けない顔に一発入れた方が気分がいいだろう」「旦那がそう言うならそうするさ。覚えときなよ長一郎」「七じゃ。一じゃあないぞ」「どっちだっていいさ。頑張って突き止めるんだね。あたしらの仕事先を」「突き止めてやるわ。首を洗って待ってろ」「出来る物ならね。あっはっはっは」「ちっ」利一と女が暗闇に消えて行く。『くそ、後を尾行たいがすぐばれるな。まだ見張られている気配がする・・・』長七郎が辺りを見やる。「兎に角、だ。柳橋殿の所へ行くか。一刻も早く動かんとな」つづく
03Jul
- 長七郎江戸蕎麦日記　棘　其の拾肆
  『間違いない、利一だ』鶴屋からの帰り道、長七郎は考えを巡らせていた。ただ柳橋には利一の存在を明かしていない。何しろ奉行所が歴史から葬った人物だ。柳橋に話した事で無用な混乱が起きるのでは、と思慮したのだ。『一旦田沼様に相談してみるか・・・こう言った事はわしの一存では決めてはいかんじゃろ』鶴屋を出る頃にはとっぷりと日も暮れ、道場に戻る途中で更に小料理屋に寄って少しばかり酒を飲んだ。懇意にしている女中と話している内に時が経ち、店を出た後はいつもより遠回りをして道場に帰る事にした。大川の風に吹かれたいとも思った。とある小径で風呂敷だか手拭いだか・・・暗くて良く分からないが顔を隠した女がそそと歩いて行くのが目に入った。夜鷹では無さそうだ。『女が一人でこんな夜に・・・危ないのぅ』そう思った直後、数人の男達がその女の後を追う様に歩いて行くのに気付いた。五人だ。怪しい足取りである。音を立てない様にしている様に見える。『まさかのぅ・・・まーた悪い事をしようとしてるのか？そうだとしたら全く男というのはどうしようも無い生き物じゃ』長七郎はその男達の後を付けて行く事にした。何か行動を起こしたら止めようと思ったのだ。やがて女はとある神社に辿り着くと履物を脱ぎ捨て両手を胸の前で組み、本殿に向かって歩き始めた。『こりゃ何処かで見た光景じゃ。人の御百度参りを何回も見るなんてそんな事あるんかいな』長七郎がおでこの辺りを人差し指でかりかりと掻いた。『あの時は暫く見とったら乱暴者が現れたんじゃったな。今回はどうなるか。奴らは身を隠しているが・・・』長七郎は五人の男達の場所を把握済みだ。身を隠しているつもりでも長七郎には良く見えている。自分は気配を消して誰にも気付かれぬ様にしている長七郎である。と、長七郎の背中がぞくっとした。『誰かがこちらに鋭い殺気を・・・！』長七郎の鋭敏な感覚が何か、いや誰かの気を捉えたのだ。『何処だ？下手に首を動かす訳にもいかん。さて、どうしたものか・・・』「助けて！」突然女の声が響いた。男達が一斉に女に襲いかかったのだ。「ちっ」長七郎が薮から躍り出る。ざざざっと詰め寄ると一人の襟元をぐい、と引っ張り地面に転がすと鳩尾に蹴りを入れる。男は一瞬で気絶。「なんだてめぇ！」と振り返った男の首筋に手刀。ぐげっ、と奇妙な声を上げて男が転がる。残りの三人が一斉に刀を抜いた。『む、長刀か。何処に隠し持っていた？見えなかったが・・・それにこの構えよ。それなりに出来る連中だぞ』長七郎も虎徹を抜き放つ。えい、と先頭で切り込んで来た男を刀を合わせる事なく退ける。峰打ちで腕の骨を砕いたのだ。二人目の振るう刀をひら、ひらと避けると顔面に肘打ち。鼻血を出してひっくり返る男。最後の男が上段からの袈裟斬りを見舞う。相手の切先が届くよりも早く長七郎の虎徹が男の腹を裂いた。「むぐぅぅぅぅっ」男が腹を押さえ膝から崩れ落ちる。「全員命までは取らぬ。早く医者に診て貰え。そうじゃ、新堀川沿い善照寺前の徳富医院など名医だぞ。路加先生っちゅうんじゃ。路加先生、路加先生を宜しく」長七郎が言うと五人の男達はくそ、などと悪態を付きながら仲間同士肩を貸しながら引き上げて行った。つづく
02Jul
- 長七郎江戸蕎麦日記　棘　其の拾参
  「仕事人っちゅうのを知っとるか？長七郎」柳橋二郎が突然そんな事を尋ねて来たので長七郎は持っていた猪口を落としそうになり酒が少々こぼれた。「あ、ああ知っとる知っとる。簪職人の秀とか八丁堀の旦那、中村主水とか」「なーにを焦っとるんじゃ。それは戯画やら芝居の見過ぎだぞ」柳橋が呆れた様に猪口に酒を注ぎ直してくれた。ここは西浅草誓願寺門前の蕎麦屋、鶴屋。柳橋に呼ばれ、首藤と共にいつもの様に天ぷらなどつまみながら一献傾けているところだ。「ああいうのの本物がいるっちゅう事か。お、済まないのぅ」昔の事を思い出しながら生返事をする長七郎である。『そうか、あの時柳橋殿はまだ火頭改どころか江戸にもおらんかったから騒動を知らんのか』長七郎は思ったが実際は事件自体が秘密裏に処理されたのだ。軽舞利一はじめ田中、河上も幕府に関わる人物だった為だ。「まぁそういう事だ。どうやら上方の仕事人と江戸の仕事人とあるらしいが最近動きが目立つのが上方の仕事人じゃ」「上方？」「そう。こいつらは仕事人とは名ばかりで押し込みと殺しを得意としておる」「それは非道いな。容赦せんぞ」首藤礼三が不快そうな顔をした。『押し込みに殺し・・・まさかな』長七郎の脳裏に利一の顔が浮かんだ。『あの時も始まりはこの鶴屋じゃった。田沼様を助けた事で利一がわしを訪ねて来たんじゃったな』思い出して漬物を摘む手が止まる長七郎。「どうしたんだ、惚けてるのか」首藤が呑気に尋ねる。「ま、まぁな。この所暖かいんでな。いくら寝ても寝足りぬな」「明らかに心此処に在らず、だったな。何かいやらしい事でも考えておったろう」「今は考えておらんよ」「今は、って」「おほん、で、二人に集まって貰ったのはだな」柳橋が脱線しつつある二人の話に割って入った。「何じゃ」「容赦せんぞ」「この江戸市中において見慣れぬ上方訛りの連中を見掛けたら知らせて欲しいのだ。路加先生にも頼んでおいたのだが未だに連中の形（なり）が判然とせんのだ。少しでも情報が欲しい」「何か特徴は？」長七郎が尋ねる。「そういうのも全く分からん」「ふーん」十年前の一件、結局利一は捕まる事なく何処かへ逃げおおせたのだ。『もしかしたら利一が再び仕事を・・・だとしたら近い内に俺の所に現れるかもしれん』「まぁそういう訳だ。少しでもおかしな事があったら迷わず知らせてくれ」そう言うと運ばれて来た大だぬきを勢いよく啜る柳橋。「心得た」同じくもりそばを啜る長七郎。「心得たり」首藤は花巻そばの香りを楽しみながら返事をした。「そう言えばね、柳橋さん」鶴屋の若旦那がひと段落したのか声をかけて来た。「ちょいと前なんですけどね、油揚げを乗せたうどんをくれ、というお客さんがありましてね」「ほう。油揚げを」「そうなんですよ。油揚げをね、甘辛く煮て乗っけてくれなんて仰いましてね。何でもきつねうどんと言う物らしくて」「あぁ、何となく油揚げの色味がきつねっぽいな」「ええ、これで気を付けなきゃいけないのが油揚げの乗ってるうどんがきつね、油揚げの乗ってる蕎麦がたぬき、とこう言うんですよ」「何じゃ、うどんと蕎麦の違いできつねとたぬきに別れるのか」「そうらしいですよ。上方では」柳橋の目が鋭く光った。「上方だと？」「そうなんです。その方は上方から江戸に出て来た、なんて仰ってましたよ。言葉はそんなに訛ってなかったですけれど」「何と！その話、もっと詳しく聞かせてくれ」「え、ええ、江戸は十年ぶり、とも言ってたような」「むむむっ。元はこちらの者なのか・・・」柳橋の眼光が益々鋭くなった。つづく
01Jul
- 長七郎江戸蕎麦日記　棘　其の拾弍
  転がった二つの骸を一瞥すると利一の後を追い屋敷内に入る長七郎。『何処だ何処だ！』広い邸内を走り抜け障子、襖を次々に開け放つ。と、障子が開け放たれたままの部屋が目に入った。用心深く覗き込むと行燈に照らされる利一の横顔が見えた。そして足元にはぴくりとも動かない人体が横たわっている。恐らく三國屋の夫婦だろう。「間に合わなかったか・・・！」声に反応するかの様に利一がゆっくりとこちらを向いた。「長七郎・・・。お前が来るとは意外・・・。あの二人を倒すとはな」遠くで呼子の音が響くのが聞こえる。「やけに手が早い。まさかお前が？」利一の顔が歪む。「そう。私が田沼様に遣いを出した。ここ数年の強盗を色々調べて頂いたのも田沼様だ」「ただの世間知らずの青二才だと思っていたが・・・意外に勘が働く様だな」「田舎者だと思ってましたか」「僅かに京訛りがあるからな。江戸に出て来て名を上げようという時代遅れの剣術使いかと思っていたがそうでもなさそうだ・・・そもそも田沼と繋がりがあるとはな。お前という人間に興味が湧いたが時間がない。一気に行かせてもらうぞ」「そうはさせん。この場で捕まってもらう」「俺にそんな口を聞いたのはお前が初めてだ」そう言うと利一が斬ってかかる。『むっ！』行燈がばさっと倒れ長七郎の着物の袂が切れた。『速い！ちょいと暗いとは言え刀の軌道が見切れなかった！』身体が自然に反応して何とか刀を避けただけだ。行燈の炎が静かに障子に移り二人の顔を照らす。「ほう・・・俺の一の太刀を避けるか・・・。そんな奴も初めてだ・・・」利一がじりっと間合いを詰める。長七郎が虎徹に手をかける。「得意の居合か？どれだけ速いのか興味があるぞ。見せてみろ」利一が無造作に長七郎の間合いに足を踏み入れた。「むん！」炎さえ切り裂く様な高速の抜刀。が、利一がこれを受け止める。両者の刀がぎりぎりとせめぎ合う。「！」「なるほど、確かに速い。並の使い手ならば一撃だな」お互いに一旦飛び退く。『この利一という男、只者ではない！下手するとやられるぞ』長七郎が神経を昂らせ、警戒心を引き上げる。その時、利一と長七郎が同時にある事に気付いた。夫婦の部屋を仕切ってある襖が開いて小さな子供がこちらを見ているのだ。『これが・・・妻が言っていた口のきけない子供・・・！』長七郎と利一、同時に子供に向かう。利一は斬るため、長七郎は守るため。長七郎の方が速い。一瞬早く子供に手が届き、自分の胸元に引き寄せる。更に足に力を込め、利一の剣撃から逃れようとする。が、背中に鋭い痛みを感じる。『斬られた！くそ！』ごろごろっと転がりながら利一の位置を確認。子供を背に虎徹を抜く。目の前に振り下ろされた刀が見えた。それに反応して打ち返す。その速さに利一が驚愕する。『何という反応速度！恐るべし長七郎！』一方の長七郎は身体の違和感に戸惑う。『背中が上手く動かん！が、構っていられるか！』剣撃の応酬に飛び散る鮮血。長七郎の背中からの出血だ。「ぬあっ」利一が刀を落とし手首を押さえた。長七郎の虎徹が浅くだが利一を捉えたのだ。身を翻す利一。『奴は放っておいても死ぬ！子供も俺の顔など忘れてしまうだろう。今はここから逃げる事が専決！』迫り来る御用御用の声に即断即決の利一。「逃がすか！」長七郎の追撃。だが虎徹は僅かに利一の背中を掠めただけで長七郎はその場に倒れ込んだ。炎の向こうに消える利一。「くそ、この童だけは逃がさんと・・・」やがて三國屋に辿り着いた火頭改の面々の前に子供を抱いた血だらけの長七郎が炎の中から現れ倒れこむ。町火消しも到着し騒然とする現場の中で意識を失う長七郎。『軽舞利一・・・その顔、決して忘れんぞ・・・』長七郎の剣術人生において、まともに打ち合って逃したのは唯一、この軽舞利一だけなのだ。つづく
30Jun
- 長七郎江戸蕎麦日記　棘　其の拾壱
  その晩、木戸番の夜警も終わった丑三つ時。長七郎、利一、その他に二人の男が三國屋の裏手に集まった。一人は田中、もう一人は河上と名乗った。田中は薩摩藩出身、示現流を極めているという。河上は肥後細川藩の出身、伯耆（ほうき）流居合を習得していると自己紹介した。『居合か。私と同じ居合の使い手・・・』長七郎は自分の流派は明かさず居合が得意だ、とだけ言った。「ふん、謙遜するな。田沼を襲った忍びの者を二人も斬り捨てたのだろう。中々出来ない事だぞ。俺達以外にそんな事が出来る奴がいるとは少々驚いていたのだ」田中が不敵に笑いながら言った。「無駄話はもういいだろう」利一はそう言うと長七郎の胸程の高さの木戸を軽く叩く。すると木戸が音も無く開いた。「音が出ない様修繕しときましたぜ」「うむ」頷くと利一が先陣を切り、邸内に侵入した。どうやら仲間が使用人として潜り込んでいた様だ。長七郎が列の最後につき邸内に入ると手引きをした男が木戸を閉めかんぬきを掛ける。利一が振り返る。「よし、やるぞ。今までと何も変わりはない。蟻を踏むようになんてことのない仕事だ。顔を合わせた奴は躊躇わず斬れ。いいな」「おう」「任せておけ」田中と河上が刀に手をかける。「やはりな」長七郎が距離を置いて言う。「何だ、長七郎」利一が首を傾げ顔だけこちらに向ける様に長七郎をじろりと睨む。「この数年、大店の主人、妻、使用人が惨殺され金品が奪われる事件が相次いでいると聞く」長七郎が低い声で語り出す。「それで？」「利一殿。お主達がその下手人であろう。仕事人に名を借りた盗賊集団。それがお主達の正体であろう」「・・・何処で調べたか分からんが・・・その通り、と言ったらどうする」「・・・お主達を斬る」言い終わらない内に河上の身体がふっと沈む。一瞬で抜刀。高速の居合だ。これに反応して長七郎の抜刀。二本の刀の一瞬の交錯。きぃん、と音がして河上の刀が宙に舞った。「何だとっ！」手ぶらになった河上に追撃する長七郎。が、田中が割って入り長七郎の剣を止めた。「田中！河上！そいつを止めておけ！俺は目的をやってくる」利一が急ぎ足で屋敷内に向かう。「おう！」「そうはさせるか！」利一を追う為に体を去なそうとした長七郎だがそれを許さぬ田中。動きが俊敏だ。「身のこなし、親指のたこ、お主も忍びの出か・・・！」「答える必要はなかろう！」そこへ刀を取り戻した河上も加わる。「行くぞ！この青二才を斬る！油断するなよ！」「応！」『また二人相手か・・・！厄介厄介くそ厄介！』長七郎が後ろに跳ぶ。迫る二本の剣。一本は示現流の豪剣、一本は華麗なり伯耆流。「知恵捨（ちぇすと）！」田中が示現流独特の掛け声と共に必殺の一の太刀を送り出す。その気迫に押されるかの様に長七郎がよろける。その瞬間を逃さず河上の体が沈む。『来る！』長七郎が後ろに倒れながら河上の動作を視界に入れる。「磯波（いそのなみ）！」伯耆流の極め技。片膝立ちの体勢から身を起こしつつ相手に下からの一太刀、上からの二の太刀を浴びせる。と、長七郎。崩れゆく体勢のまま左手一本で虎徹を下から払うと河上の股から胸にかけて血が迸った。『こいつ・・・！わざと隙を作って誘い込んだな・・・！』田中が長七郎の罠に気付いた時には河上は既に絶命していた。長七郎が田中に斬りかかる。『相手が示現流ならば一の太刀を出す暇を与えん！』右から、左から、長七郎の高速剣撃。やがてこの無酸素運動に田中が耐え切れなくなる。「ぶはあぁっっ」真っ赤な顔で息をついてしまう田中。その瞬間を逃さず長七郎の剣が襲う。田中のこの世で最後の呼吸だった。つづく
29Jun
- 松屋で朝食。290円で牛丼を食べる。
  飽きもせず松屋を訪れた朝。朝食を頂くぞ。Wi-Fiオン。テーブルにチャートが貼られているのでやってみる。券売機を利用したのでYES。公式アプリは入れてないのでNOだ。アプリを入れろと言われてしまった。朝5時から11時までの朝食メニューの中から今日は生玉子かけごはん、選べる小鉢はミニ牛皿にした。🐄レギュラーの座をとろろから奪ったミニ牛皿。どことなく不敵な面構えである。とろろを追い落とした自信の現れだろうか。味噌汁もチェック。何時もよりおあげが多い気がする。で、早速ミニ牛皿をライスにオン！あっという間に牛丼の出来上がりだ。つゆはかけなかったのでいい塩梅である。そして卵！卵乗せ牛丼が290円で食べられるなんて。しかも味噌汁付き。紅生姜もふんだんに使った。ごちそうさまでした。しばらくの間これでいってみようかな。因みに卵は半熟玉子も選べる。ごはんもミニや大盛りが選べて値段変わらずだ。朝だけの牛丼、いいじゃあないか。牛丼好きなあなた、朝食は松屋で290円牛丼を楽しもうではないか。
- 長七郎江戸蕎麦日記　棘　其の拾
  三國屋の女将、おりょうの告白は続く。「ええ、何一つ不自由のない暮らしと言って良いでしょう。でも一つだけ、一つだけ気がかりな事があるのです」「それが自らを犠牲にしてまで叶えたい事だと？」「そうです。わたくしどもには五歳になる娘がありますが・・・今まで一度も口を開いた事がありません。いえ、聞こえてはいる様ですが言葉が出ないのです。おしのように黙ったまま。他の同じ位の子供達はうるさい位におしゃべりをしていると言うのに。三歳位まではそんな事もあるだろうと思っていましたが流石に五歳ともなると・・・。お医者様にも診て頂きましたが悪い所は何一つ見つからないのです」「ふむ」「もう神様仏様しか頼る事が出来ません。娘が他の子供達と同じ様に暮らせる様になるまでわたくしはこのお参りを止めるわけにはいきません」そう言うとおりょうは再び本殿に向かって歩き始めた。それを見て少し離れたところに移動して見守る長七郎。御百度参りは各地方で様々なやり方がある。御百度を踏むとも言うが神社によっては百度石という石が設置されていたりもする。人に見られない方がいい、裸足の方がいいという説もあるがお参りする人が回数を決めていいなど結局はお参りする人の心が大事なのだと考えられている。『果たして・・・この様な心を持った者が阿漕な稼ぎ方をする者だろうか？わからんものだが・・・』その日の早朝、利一が長七郎の道場に姿を現した。「お前、見られたそうだな」「不成者が襲いかかったのでやむなく」「おまけに言葉も交わしたな？」じろりと長七郎の目を見る利一。それにしても何処で見ていたのか。誰が見ていたのか。全く気付かなかった自分に恥入る長七郎。「お前、それで斬れるのか。あの夫婦を」「斬れる。彼らが悪人ならば」「悪人だ。まごう事なく悪人だ」「ならば心配無用です」長七郎も利一の目を真っ直ぐ見る。暫く視線を交錯させると利一が一歩下がって背を向けた。「決行は三日後だ。その日に丁稚が初登りに出る。その晩を狙う。女が御百度から戻ったらだ。いいな」「分かりました」そう言いながら違和感を拭えない長七郎。利一が引き上げてから意を決してとある場所へ向かったのである…さて、その次の日の事であった。利一が再び姿を現した。少し落ち着きのない様子である。「変更だ。今夜やる。いいな」「随分急ですね。使用人や丁稚は？」「奴らが一日早く出立する事になったのだ。この機会を逃さずやる」「それでは私はいつもの様に御百度参りを見届けてから合流という形でいいですか」「それでいい。初仕事頼んだぞ」つづく
28Jun
- ライスリハビリ。続けて丼丼からとろろ回帰
  今日も朝食タイムがやって来た。最近はず〜っと松屋🐄食券を買って着席。松屋のタッチパネル券売機は慣れるまでが大変である。お店の公式アプリとかは余り利用しない。だが松屋店内はWi-Fiが無料なのでありがたい。まぁニュースなど見る間もなく提供されるのだが。エコにも積極的に取り組むのが松屋である。そう言えば松屋本社ビルの工事にも携わったんだった。今思い出したぞ。確か三鷹だったなぁ。ところで「松屋のアクセント」９月９日の「情報ライブミヤネ屋」で「銀座三越」のリニューアルの話題を取り上げました。その際に同じ銀座のライバル百貨店である、「松屋」も出てきたのですが、この読み方のアクセントを、女性ナレーターが、「マ／ツ＼ヤ」（中高アクセント）と読んだところ、関東の視聴者の方々から日本テレビに、「『マ／ツ＼ヤ』では牛丼屋です。デパートのアクセントは『マ／ツヤ』です！」という電話がたくさん入ったのだそうです。そういう訳なのでくれぐれも気を付けようではないか。下手すると斬られるからのぅ。ライスリハビリと苦手克服の両方を目指して牛丼¥400をチョイス。早く出て来るし。こいつに紅生姜。あっという間に完食。妙に甘ったるく無くていい塩梅だ。次の日も牛丼にしてみた。🐂麻婆丼にしようか迷ったが未だに喉奥に違和感があるので牛にした。4枚目の画像と違う箇所を探してみたりする。因みにサイゼリヤのキッズメニューの間違い探しが好きだ。あれは中々難しい。並べてみた。丼の角度がほぼ同じなのが地味に凄いなと思った。またしても紅生姜。ごちそうさまです。次の日。またまた松屋。尾上松也。Σ(ﾟДﾟ)ｸﾀﾞﾗﾈｪ玉子かけごはんに戻した。選べる小鉢はとろろ。味噌汁卵。いちいち紹介せずとも分かるだろうに。写真保存のメモリを無駄に使っとるぞ。今こんな感じだ。何時もの様に卵をぽとり。油揚げリフトなどしてみた。とろろも紅生姜も乗せていただきますごちそうさまでした。やはりこの位のあっさりがいいな。牛丼だとちょっと重い。🈵自販機で緑茶を購入。460mlになっていた。これも物価高の影響かな？この時期、ボーナスのニュースが流れたりして平均給与だのが発表されるが「え、そんなに貰ってねぇし」と思う人が殆どやと思う。あれは一部の高額所得者の給与が平均値をかなり引き上げるからだ。簡単に考えると社員10人中9人の給与が50万で1人が一億円だったとすると彼等の平均給与は1千45万円となる。豊田章男氏の賞与など3億2400万円だぞ。そんなのを平均値計算に入れるなっちゅうの。これでは現実と乖離している為、最近では中央値を用いる事が多い。先の例で考えると人数の多い方で平均値を出す。そうすると実際の値に近くなる。それで計算すると30年前のサラリーマンの給与中央値は450万円、現在は320万円程だ。そりゃお茶の量も減るか（笑）これから色々な物の量がどんどん減るか値段がばんばん上がるだろう。いわゆる庶民の味方的飲食店がそうでは無くなっていくだろう。やれやれな世の中だ。
- 長七郎江戸蕎麦日記　棘　其の玖
  三國屋の妻、後で名前はおりょうだと分かるのだが彼女の御百度参りは毎日続いた。大雨が降り雷が鳴った晩も欠かさずだ。朝見ると足元は白い足袋に隠されているが夜に石灯籠の灯りに照らされるその足は傷だらけなのだ。それを毎晩見届ける長七郎だがお陰で寝不足だ。『やれやれ、一体何をそんなに熱心に願っているのか。まぁじきに願う事も出来なくなるだろうが・・・』見張りも既に十日目。今夜も神社の入口と本殿を往復するおりょうが見える薮の中で息を殺す長七郎である。と、今夜はいつもと違う雰囲気を感じた。何者だろうか。複数人の気配がするのだ。『はて、一体何者だ・・・三國屋の悪巧み仲間でも現れたか』そんな事を思って様子を伺っていると三人の男が参道に現れたのである。男達の様子はいかにも下品で酒でも飲んでいるのか足元はふらついておりにやついた表情を見せている。一瞬はっとして歩みを止めたおりょう。だが再び本殿に向かって歩き始める。そこへ男達が奇声を上げて襲い掛かった。おりょうの悲鳴が響く。『なんて事を！馬鹿どもめ！』長七郎が思わず参道に躍り出た。おりょうを抑え込んで跨っている男を片手で引き剥がすと平手打ちで這いつくばらせる。「痛ぇなこの野郎！」「何だてめぇ！」男達が次々に長七郎に立ち向かって来た。一人目の拳を躱すと鳩尾に正拳突き。二人目は匕首を手に斬りかかって来る。これは手首に手刀を喰らわせ匕首が石畳に落ちると膝を蹴飛ばす。嫌な音がして男の膝が砕けた。這いつくばっていた男が「覚えてやがれ！」と仲間に肩を貸し逃げ出す。「もう忘れた！」と男達の背中に声をかける長七郎。体を捻るとおりょうに声をかける。「大丈夫ですか？」胸元を隠し、はだけた裾を直しながら立ち上がろうとするおりょう。「だい、大丈夫です。危ない所をありがとうございました・・・」まだ動揺している様子が見て取れる。「家まで送りましょう。先程の連中が懲りずにやって来るかも知れません」するとおりょうが首を振った。「いえ、大丈夫です。私にはやらなければならない事があるので」「下手をしたら命も失う所でしたよ」落ちたままの匕首をちらりと見やる長七郎。「命に換えても叶えてもらいたいのです」「見た所御百度参りをなさっている様ですがそこまでして願わなければならない事とは何ですか」長七郎の口調が強くなる。「・・・わたくしはある大店の女将です。おかげさまで商いは順調で夫とも仲良く・・・自分で言うのも何ですがうまくやれていると思います」急に色々な事が起こって混乱しているのだろうか、それを落ち着ける様に語り出すおりょうである。つづく
27Jun
- 長七郎江戸蕎麦日記　棘　其の捌
  「あれが今回の狙い、三國屋の主人とその妻だ」大きな商店が見渡せる物陰で狩舞利一が長七郎に囁く。材木問屋の主人と妻。笑顔で道行く人々に挨拶をしている。何故彼等を始末しなければならないのか。当然の疑問を長七郎は利一にぶつける。「人が良さそうに見えて人足に碌な賃金は払わねぇ、陰で高利貸しをやってたんまり儲けて何人も泣かせて死に追いやっているんだ。取引先も何軒も潰して乗っ取っている。その度にお払い箱になった連中が露頭に迷う有様だ」「良く調べてますね」「色々と耳に入ってくる様になっているのよ。そういう組織を作っているのさ」何処か自慢げな利一である。主人とその妻の顔をじっと見つめ、頭に刻む長七郎。結局長七郎は仕事人とやらの組織に加わる事にしたのだ。江戸の町が少しでも平和になればいい、そんな純粋な気持ちからだ。「で、いつ？」長七郎が尋ねる。「今月中に使用人に暇を出す筈だ。奉公人の初登りに合わせてな。その日、屋敷が夫婦だけになった所を狙う」「なるほど、他には危害が及ばぬ様にか・・・」「そういう事だ。お前は朝と夕には夫婦に張り付いて居場所だけ確認しておけ」「分かりました」今一度夫婦の顔を見つめる。とても人の良さそうな柔和な笑顔だ。『そんなに悪どい人間には見えないが・・・まぁ人というのは裏の顔を持つものだ。取り敢えず言われた事を確実にやっておくか・・・』そう思う長七郎。その日の夕刻、長七郎は三國屋を再び訪れ遠巻きに様子を伺っていた。早速の居場所確認だ。辺りがすっかり闇に包まれ『そろそろ帰るか』と長七郎が思い始めた頃だった。亥の刻から子の刻に差し掛かろうという時であろうか。妻の方が姿を現し、何処かに向かって歩き始めたのである。使用人も付けず一人で、だ。『これは何かあるな』と長七郎が後を追う。相手に気取られぬ様に距離を置き気配を消す。忍者相手にも気配を悟らせず尾行の出来る長七郎だが素人相手でも手を抜かないのだ。やがて妻はとある神社にたどり着いた。辺りを二度、三度と見渡すと履物を脱ぎ捨て手を合わせ本殿に向かって歩き始める。『御百度参りか。さて、何を願っているのか・・・』長七郎が音も立てず薮の中に座り込んだ。つづく
26Jun
- 長七郎江戸蕎麦日記　　棘　其の漆
  そんな事があってから十日程が過ぎた。田沼の紹介なのか、数名の入門希望者が長七郎の道場の門を叩いた。が、最初の体験で半分が逃げ出してしまった。何しろ五貫目の鉄棒の素振り百回という長七郎にとってはなんという事の無い鍛錬の一つが誰も出来なかったのだ。因みに一貫が一文銭千枚分の重さ。一文銭(寛永通寳)が3.75g。現代の五円玉が3.75gなのは江戸時代の名残りである。未だ残って修行に励む門下生が帰った後、庭の落葉を集め農夫に貰った芋を中に仕込んで火を点ける。『今夜は焼き芋じゃ』とちょいと心を踊らせているとその男は不意にやって来た。「すまん。少々尋ねたいのだが此処は池之端長七郎殿の道場で間違いないか」声がした方を見ると垣根の向こうに一人の男が立っている。男の姿を見た瞬間長七郎の全身が緊張した。柔和な表情をしているが目の奥は笑っていない。耳も柔道をやっている者独特の形状になっている。『この者、只者では無い···』そう思いながら「はい。此処が私の道場で間違いないです」と返事をした。「ああ、あなたが長七郎殿か。突然失礼した。拙者狩舞利一（かりまいりいち）と申す者。南町の町方の一員だ。以降お見知り置きを」言いながら男が門をくぐり長七郎の前に全身を顕した。良く鍛えられているのが着物の上からでもわかる。所作に無駄も無ければ発する気に隙が無い。「えーと、狩舞殿」「皆私の事を利一と呼んでいる。呼びやすいからだろう。利一利一と何かする度に呼ばれる。そう呼んでくれていい」「それでは利一殿」「何か」「その南町の町方が何用ですか」「その質問に答える前に···」狩舞の身体がふっと沈みいきなり刀を抜いた。長七郎が素早く反応し抜刀。狩舞の一の太刀を止めた。交錯する剣とお互いの視線。狩舞がにやりと笑い刀を引いた。「噂通り出来るなお主。それ程の力、何処で身に付けた」狩舞が刀を納めた。「言う必要がありますか？」長七郎も刀を引く。「突然で怒らせてしまったのなら済まん。お主の力を見ておきたかったのだ」「何の為に」一呼吸置いて狩舞が口を開いた。「···お主は仕事人の噂を聞いた事があるか」「あぁ···恨みを晴らす為に金で殺しを請負うとかいう···中村主水とか簪職人の秀とか」「それは戯画の見過ぎだ。あれが実在するとしたら、という話だ」利一の目が鋭い光を放った。「···あなたがそうだと?」長七郎がずばりと尋ねる。「ふふっ。正面から来たな」男が長七郎に一歩近付く。急に小声になる。「そうだ。俺と数名、世直しの為に立ち上がった。今の時代、庶民は苦しい暮らしを強いられている。一部の役人や悪徳商人が悪どく儲けた金を貯め込む。騙されたと泣き付く者、借金で自死に追い込まれた夫の恨みを晴らしてくれと言う未亡人、依頼は絶えない。人間余裕が無くなると心が荒び簡単に悪事に走る。そういった者達を救う事も出来るのだ」「···」つづく
25Jun
- 長七郎江戸蕎麦日記　棘　其の陸
  「生かして倒すとはでかした、長七郎」田沼が近付く。「貴様、田沼の隠し玉か···」両手を失った男がよろりと立ち上がる。「そういう者ではありません。今日初めてお目にかかりました」「それでいながら田沼を守るか。何故だ」「我が師の御友人なので」「そんな理由で···」男がふらふらしながら木にもたれ、長七郎をじろりと見やると口を開く。「その力···実に惜しい···今···この瞬間、この国の改革が十年は遅れた···」「？」「その内分かるだろう···」そう言うと男が突然苦しみ出した。『毒を···！口の奥に仕込んでいたな···』長七郎の読み通り男は態々抜いた奥歯の位置に毒の入った小さな容器を仕込んでいたのだ。「長七郎！どうしたのだ」田沼が長七郎の隣りに立ち、動かなくなった男を見詰める。「毒を含んで命を絶ちました。忍びの者には良くある事です」「むぅ。正体を探りたかったが···」田沼の表情に無念さが浮かんだ。其処へ数人の町方がばたばたと現れた。「お前達、何をしておる！」言いながら長七郎と田沼を取り囲む。すると田沼がずいっと前に出た。「田沼意次じゃ。この男はわしの付き人。今しがた賊よりわしを守り斬り捨てた。それだけの事」田沼が陣笠を取り顔を顕にした。「こ、これは田沼様、大変な失礼を···！」町方達が地面に這いつくばる様に土下座の姿勢を取る。「あぁ、良い良い。こちらも私用、秘密の外出故騒ぎを大きくしたくない。早く骸を引き上げ賊の正体を探って欲しい」田沼が面を上げる様促す。「田沼様、一応賊の顔を」長七郎が服毒し果てた男の顔を覆う黒い布を剥ぎ取る。毒の影響なのか紫に変色し、酷く腫れている男の顔が白日の元に曝された。しゃがみ込みじっと男の顔を見詰める田沼。暫くして立ち上がり、「知らん顔だな。良く分からんが···」とだけ言った。つづく
24Jun
- 長七郎患い日記。健康はありがたい。
  とある金曜日。日勤が終わり夜勤に備えている最中、右耳に違和感。痛い。耳掻きし過ぎか？等と考える。徐々に痛みが増す。土曜日。出勤。右耳は確実に痛い。喉の右側も痛くなる。顎の下側に沿って腫れてる様な気もする。押さえると痛みあり。固形物、液体が摂取し辛くなる。舌の根元が痛い。ほっときゃ治るさとまだまだ楽観視。日曜日。余り眠れずに起床。仰向けになると何かが上顎に張り付き鼻の穴を塞ぎ鼻呼吸が出来ない。右肩左肩を交互に下にして横になりウトウトするしかない。水さえも喉を通すのが苦痛。食欲も全く無い。呼吸、食事、会話。生活における様々な場面に於いて、こんなにも舌を動かしているのかと認識。それら全てが舌の根元の激痛の為に困難。喋っても言語不明瞭なり。ラジオを流しっぱなしで寝てる1日。月曜日。3ヶ月に一度の通院日。雨の中、バスに乗り込むが気分が優れず空いた優先席に座る。しかし冷や汗がダラダラと出て途中で下車。歩いて二子玉に向かい田園都市線へ。それ程混雑しておらず気分悪くなる事なく病院最寄駅へ。下車して歩く。セブンイレブンでアイスコーヒーを買い、喉の腫れを冷やす。気持ちいい。飲むのはやはり苦痛。国立病院機構東京医療センター着。問診で上手く喋れず。一応担当医の先生が軽く診てくれた。この大きな病院で診て貰うのもいいが通うとなったら大変だな、と地元での受診を決意。診てもらう科の変更となると初診料¥9900かかってしまうし。地元へ〜♪帰ろう〜♪と帰宅。駅前の耳鼻咽咽喉科へ。口を開けて、と言われて開けてみたが「え、これしか開かないの？」と言われてしまう。舌圧子で舌を押さえられ苦痛の余り泣く（笑）「これはッ!扁桃周囲膿瘍だよ!」と言われる。一応耳のかき過ぎの事を伝えたら診てくれて「うん、掻き過ぎ。ヒドイ」と言われる。だけど扁桃周囲膿瘍には関係ナシ。「喉の奥診るよ。腫れてたら入院ね」そう言って鼻腔にスプレー。キシロカインか？鼻にスコープを通され「お、大丈夫。じゃこちらで対処しますね〜」と医師、徐ろに注射器を取り出し右の口蓋扁桃にぶっ刺して膿を吸引。5cc程採取出来た。その後薬を7種類処方されて帰宅。薬局でせたがやPayが使えて5%ポイント還元だった。早速服用しようかと思ったが痛くて飲めんこういうのって言えばあま～いシロップとかにしてくれるのだろうか。大きな錠剤など苦痛以外の何物でもない。飲み込むという動作が出来ない。いや、出来るけれど大変な苦痛を伴う。またしても泣きながら飲む。泣きなさい笑いなさい♪だ。水だけ飲んで寝る。眠れへんけど。火曜日欠勤。直ぐ様クリニックへ。またしても注射器による膿吸引。泣く。シクシク泣く（笑）注射器半分位吸引。何処かうれしそうに見える医師である。漁師で言うと大漁大漁という感じなのだろうか。また薬を処方され帰宅。しまった、シロップに出来るか聞くの忘れた。ウィダーinゼリーを一箱買う。けれど摂取せず。水曜日。欠勤。クリニック休み。口の中に溢れる膿との戦い。膿はレバーペーストの味だ。何か旨味成分に富んだ液体が湧いて出てるなぁと思ったら膿だった。薬を何とか飲む。キツイ。ネットで扁桃周囲膿瘍について調べる。『キスでは感染しない』と書いてあった。その辺の人妻でいいから清拭に来てくれないだろうか？と妄想族タイムを楽しむ。木曜日。欠勤。すぐクリニックへ。三度の膿吸引。また注射器半分以上吸引出来た。「そろそろ劇的に良くなるから」言われるが全くそんな気がしない。兎に角痛いのだ。夕方には膿が口中に溢れ何もする気がしない。いてぇいてぇと言いながら既に全話のUPを終えている原稿のチェックをする。集中出来ずやめてふて寝。食事は無し。もう食い物などどうでも良くなっている。金曜日。欠勤。クリニックへ。何時もの様に膿吸引。また大漁。「う～ん。後1回は抜かないと駄目かな」と困り顔の医師である。薬を処方され次は月曜日に来て、と言われる。ゴロ寝。食事ナシ。膿が友達。土曜日。膿の流出が治まって来た。さらば友達。痛みは残っている。頑張って薬を飲み、ウィダーinゼリーを摂取。やはり喉が辛い。寝るのも仰向けはまだ無理。鼻呼吸出来ない。それでも快方へ向かっているのを実感。おちんchinをさわさわしながら寝る。日曜日。どうやら膿は大丈夫。ただ喉の痛みは引かない。まぁ前よりマシだが。当たり前の様に5時間置きに痛み止めを飲む。何かを食べようという気さえ起こらない。よし、このままダイエット作戦だ。月曜日。出勤。日常が戻る。食事は摂らない。仕事が遅くまでかかりクリニックに行けなかった。火曜日雨により仕事が中止に。昨日行けなかったクリニックへ。また鼻にスコープを通され何処も異常なし、となった。まだ少し痛むのだが気のせいだろうか。兎に角クリニックでの治療は終了した。食事も少しずつ摂り始める。が、固形物は厳しい。段々慣れて行くしかない。◯月☓日平穏が戻った。食事はまだおとなしい。なんだか酒が不味くなった。いい事かも知れない。いずれ美味しく感じる様になったら何処かに飲みに行こう。そうだ、路加先生の蕎麦の実ウィスキーハイボールでも飲みに。おしまい

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