★東洋工業(現マツダ) は1931年(昭和6年)4月に三輪トラックの生産を始め、戦後、昭和30年代半ばまではダイハツと並ぶ三輪トラックの主要メーカーだった。
マツダが四輪に進出したのは今回ご紹介する1958年4月デビューの小型トラック「ロンパー」で、マツダ初の乗用車生産は更に2年後の1960年5月のR360クーペから始まった。
★1950年代のマツダ三輪トラックの数々のキャブデザイン、ロンパー、R360クーペ、初代キャロル、軽三輪トラックのヒット作K360などは全てインダストリアル・デザイナー小杉二郎(1915年~1981年)の残した作品だった。小杉作品に共通する魅力は柔らかく暖か味のある姿態とまるで生き物のように見える愛らしく愛嬌のある顔つきだろう。1960年代半ばまでの幼少期に小杉作品のマツダ車の殆どを街で見ている私にとっては忘れられないクルマが多い。一番印象に残っているのはR360クーペなのだが、それはまたの機会にご紹介するとして今回は「ロンパー」。
幼少期の私はこのトラックを見かけると、ディズニーのアニメ映画に出てくる象「ダンボ」が走っているように見えて「ダンボトラック」と呼んでいた。
●1958年4月デビュー時の 「ロンパー」 カタログ3種類
表紙のイラストを見ると今でも思わず「ダンボ」と言ってしまう。
①1958年ロンパー1.75トン積/強制空冷1400cc/42HP/車重1530kg(型式DHA17)
A4判/フルカラー12頁カタログ
②1958年ロンパー1トン積/強制空冷1105cc/32.5HP/車重1290kg(型式DMA81)
A4判/フルカラー12頁カタログ
③1958年ロンパー ライトバン・ダブルキャブ・パネルバン・ステーキトラック専用
A4判/フルカラー12頁カタログ
●ロンパーは発売から僅か11ヶ月後の1959年3月にボディデザインはそのままで同時期のマツダ三輪トラックと共に強制空冷エンジンが水冷エンジンに換装され車名はD1100/D1500となった。
ロンパーとしての生産期間は1年未満と短かったが、その後のDシリーズの車名は厳密にはロンパーではないが親しみやすいロンパーの愛称で呼ばれる場合も多い。
●1959年マツダD1100 1トン積/水冷1139cc/46ps/車重1375kg(型式DTA81)
※ナンバープレートの数字はデビューした1959年を表している。
●1960年マツダD1500 2トン積/水冷1484cc/60ps/車重1530kg(型式DUA12)
●1960年マツダD1500ダンプカー専用カタログ(型式DUA12D)
●1960年マツダD1500バキュームカー専用カタログ(型式DUA12V)
●1960年マツダD1500道路兼用軌道モーターカー専用カタログ(型式DUA12S)
※実際にこのクルマが軌道兼用モーターカーとしてどの程度販売され使用されたのかは不明なのだが、カタログには以下の説明が記されている。
「マツダDUA12型トラックに軌道走行装置や転車装置を装備した特殊車です。レールの保線作業や巡回連絡業務の能率化に、貨物運搬作業のスピードアップに、また不時の災害やその復旧に道路や軌道を縦横に使って機動性を発揮する道路・軌道兼用の高性能なモーターカーです」
※路上走行から線路走行への切替えは踏切で行い油圧で鉄輪とタイヤを交替させ1分くらいで完了する旨が記載されている。
※裏面四面図+スペック
軌道走行装置を床下に付けたことで車重はノーマルの1530kgが2775kgにまで増えており、
パワーウェイトレシオは、46.25kg/psと絶望的なデータだが、カタログには以下の記載がある。
「荷台に2トン、牽引荷重7.5トンの計9.5トンで乗車3名の場合、(1)水平線路: 速度45km (2)勾配10/1000: 速度35km (3)勾配25/1000: 速度25km 」
いかに摩擦抵抗の少ない線路上でも、パワー不足のため軽快な走りは難しかったのではないだろうか。
●1962年にはマツダD2000(1985cc/81ps/型式DVA12)とD1500(型式DUB91)の2種となる。
●1965年6月にはデザインイメージを継承した「クラフト」にモデルチェンジ
※1970年クラフト(型式DUD9)カタログ
エンジンは10年前の1960年D1500の1484cc/60psのままだが、カタログの雰囲気は10年前とは全く変わり1960年代が如何に文化変革の10年だったかが分かる。表紙の小麦色の女の子の人形はカタログの中頁にも登場して吹き出し付きでクルマの解説をしている。
★オマケ(その1): 萬代屋(バンダイ) 1/20スケール 1958年マツダ・ロンパー
当時定価220円。ブリキ製。空冷のロンパーをモデル化したバンダイ赤函シリーズの傑作のひとつ。1年しか生産されなかったロンパー特有の縦線グリルを忠実に再現した当時ものスケールモデル。
★オマケ(その2): 萬代屋(バンダイ) 1/20スケール 1959年マツダD1100
当時定価220円。ブリキ製。オマケ1を実車通りにグリル等を変えたマイナーチェンジ版。水冷となったD1100の当時ものスケールモデル。