【タイトル】
ランボー(原題:First Blood)
【Podcast】
Podcastでは、作品の概要、感想などについて話しています。
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【概要】
1982年のアメリカ映画
上映時間は93分
【あらすじ】
アメリカの田舎町を訪れたベトナム帰還兵のジョン・ランボーは、地元警察から些細なことで目を付けられて逮捕されてしまう。警察署で手荒い仕打ちを受けたランボーはベトナム戦争時代の苦しみを思い出して反撃し、警察署から逃亡する。
【スタッフ】
監督はテッド・コッチェフ
音楽はジェリー・ゴールドスミス
撮影はアンドリュー・ラズロ
【キャスト】
シルヴェスター・スタローン(ジョン・ランボー)
リチャード・クレンナ(サミュエル・トラウトマン大佐)
ブライアン・デネヒー(ティーズル保安官)
【感想】
ベトナム戦争真っ只中の1972年に発表されたデヴィッド・マメルによる「一人だけの軍隊」の映画化作品。ワーナー・ブラザースが映画化権を取得し、多くの監督や俳優に映画化企画が持ち込まれたが、内容の過激さも手伝って断られる日々が続いた。その後、当時新鋭のオライオン・ピクチャーズが映画化権を取得し、当時「ロッキー(1976)」に始まるシリーズ以外に当たりのなかったシルヴェスター・スタローンがギャラを値引きしてまで出演を希望したことで映画化にこぎつけた。ところが、完成した当初の編集版では3時間を超えるものになり、スタローンは映画人生をぶち壊す可能性を感じて自ら買い取ってお蔵入りにしようとするまで思い詰めたが、再編集と大幅なカットにより93分のバージョンが完成した経緯がある。アメリカ国内では4,700万ドル程度のヒットに留まったが、世界的なヒットとエンディングの変更により続編が作られていくことになる。
ベトナム戦争帰還兵のPTSDはその戦争終結後から徐々に社会問題となり、本作でジョン・ランボーは明らかにPTSDの状態である。国の勝利のために命を張って戦った若者が、帰国すれば散々な目に遭い、仕事ももらえず居場所がなくなる。訪ねたベトナム時代の友人は枯葉剤が原因で亡くなっており、その友人の母からもベトナム帰還兵というだけで疎まれてしまう。
友人を訪ねて立ち寄った街では、警察がランボーを見た目だけで逮捕する。ブライアン・デネヒーが演じたディーズル保安官は、原作では朝鮮戦争での英雄という設定であり、映画では彼のオフィスに戦争で得た勲章が飾られている描写がある。かつての戦争からもちろんPTSDはあったのだが、ランボーとは世代が違うし、ゲリラ戦を得意とし、グリーンベレーによって殺人マシーンに仕立て上げられたランボーなんかの足元にも及ばない。冒頭のわずか10分程度で観客を主人公へ同情を誘う導入を確立し、いつ爆発してもおかしくないランボーの心情も十分に表現されていた。
ランボーが山に逃げ込み、ヘリの狙撃手が転落死したことで事態は急変し、かつてランボーを育てたトラウトマン大佐が現場に現れる。事態の収拾を図ろうとしているようだが、まるで自分の作り上げた殺人マシンの出来を確認しに来たように見え、このトラウトマン大佐の中に秘めたある種の怖さをティーズル保安官もおぼろげながら感じ取っている。ランボーは大佐に父性的なものを望んでいたのに、トラウトマン大佐はそんなことには一切興味を示していない。帰還兵がいかに放ったらかしにされ続けたがよくわかる。
人里離れた山に逃げ込み、地下道を通って移動するランボーは、世間からのけ者扱いされるベトナム帰還兵そのものだ。山に入ってからのサバイバルアクションも見応えがある。そして街に戻ったランボーはその怒りを街の破壊で表現していく。
紆余曲折を経て作られた本作のラスト。劇中、寡黙だったランボーはトラウトマン大佐についに思いの丈を吐露するラストは涙なしに見られない。ダン・ヒルの「It's a Long Road」で映画は終わるが、1982年に始まったこのシリーズが2019年の「ランボー ラスト・ブラッド」まで続くように、一度負った傷は長く長く続いていく。観る人の心をえぐる名作。
【音声解説1】
参加者
├デヴィッド・マレル(原作)
原作者のデヴィッド・マメルによる単独の音声解説。DVDではスペシャル・エディションのみの収録で、Blu-ray以降のディスクには収録されている音声特典。原作と映画の違い、映画では語られない背景、映画化のために変更された点(エンディングなど)、ランボーの名前の由来、影響を受けた映画作品、キャスティング、役者の印象など非常に饒舌に語ってくれる。骨のがんに罹患していた自身の息子のためにスタローンに依頼して話をした話など脇道にそれる話もなかなか興味深い。
【音声解説2】
参加者
├シルヴェスター・スタローン(脚本/出演)
ジョン・ランボーを演じたシルヴェスター・スタローンによる単独の音声解説。2020年に発売された4Kレストア版のBlu-rayに新録されたものである。オープニングからエンドクレジットが終わるまで饒舌に語ってくれる。紆余曲折を経て巡ってきた曰く付きの企画で撮影前日までゴネた話、極寒とも言える環境下で不安定な足場の中アクシデントにも見舞われた撮影、アクション俳優としての目覚め、当初トラウトマン大佐を演じる予定だったカーク・ダグラスの持ってきた新たな脚本、「ランボー」と「フランケンシュタイン」の怪物の話、当初の編集版から現在のバージョンまでの仕上がりの過程など本作を知る上で、また「ロッキー」シリーズ以外にヒット作のなかったスタローンの映画人生を大きく変えたとも言える「ランボー」への出会いを知る上でも非常に興味深い音声解説。
【関連作品】
「ランボー(1982)」…シリーズ1作目
「ランボー/怒りの脱出(1985)」…シリーズ2作目
「ランボー3/怒りのアフガン(1988)」…シリーズ3作目
「ランボー/最後の戦場(2008)」…シリーズ4作目
「ランボー/ラスト・ブラッド(2019)」…シリーズ5作目
取り上げた作品の一覧はこちら
【配信関連】
<Amazon Prime Video>
言語
├オリジナル(英語)
<Amazon Prime Video>
言語
├日本語吹き替え
【ソフト関連】
<BD>
言語
├オリジナル(英語)
├日本語吹き替え【5種】
├日本テレビ版(1985年)
├TBS版
├フジテレビ版
├テレビ朝日版
├日本テレビ版(1999年)
音声特典
├デヴィッド・マレル(原作)による音声解説
├シルヴェスター・スタローン(脚本/出演)による音声解説
映像特典
├本当のベトナム
├未公開シーン
├もうひとつのエンディング
├ランボーの肉体になるために
├スタローンのボディ・ビルディング・コーチ直伝のトレーニング方法
├オリジナル予告2種
<4K Ultra HD+BD>
収録内容
├上記BDと同様
【音楽関連】
<CD(サウンドトラック)>
収録内容
├12曲/40分
【書籍関連】
<一人だけの軍隊>
形式
├紙
出版社
├ハヤカワ文庫
著者
├デヴィッド・マレル
翻訳
├沢川進
長さ
├349ページ