【タイトル】
ランボー/怒りの脱出(原題:Rambo: First Blood Part II)
【概要】
1985年のアメリカ映画
上映時間は94分
【あらすじ】
服役中のランボーのところへ上官だったトウラウトマン大佐が現れ、特赦と引き換えに、ベトナムにまだ残る捕虜救出作戦を依頼する。
【スタッフ】
監督はジョルジ・パン・コスマトス
脚本はシルヴェスター・スタローン/ジェームズ・キャメロン
音楽はジェリー・ゴールドスミス
撮影はジャック・カーディフ
【キャスト】
シルヴェスター・スタローン(ジョン・ランボー)
リチャード・クレンナ(サミュエル・トラウトマン大佐)
チャールズ・ネイピア(マードック司令官)
【感想】
「ランボー(1982)」の続編にあたる本作は、全世界で3億ドル以上を稼ぎ出し、その年では「バック・トゥ・ザ・フューチャー(1985)」に次ぐ2番目の売り上げを記録した。ただ、ラジー賞では最低作品賞を含む計4部門を受賞してしまった。ちなみに、本作の脚本は後に「ターミネーター(1984)」を監督するジェームズ・キャメロンが執筆し、その後シルヴェスター・スタローンが脚色している。また、本作撮影当時でもベトナムには2,500人以上のアメリカ兵がいまだ行方不明のままであったらしい。
本作、ならびに続編の「ランボー/怒りのアフガン(1988)」は1作目とは志向の全く異なる作品で、はっきり言って大味なアクション映画である。一応、設定やセリフから本作には大きなメッセージがあることは汲み取れる。前作にも警察からの逃亡、森の中でのゲリラ戦、街に戻ってからトラウトマン大佐へ思いを吐露するシーンなどすべてに意味があった。本作のランボーは、大佐の要請で再び戦場に向かうこととなるのだが、その作戦が国民を納得させるためだけの陽動作戦であることが後に判明する。司令官の命令を無視して捕虜を連れて帰ろうとすると、ランボーは戦場に置き去りにされてしまう。そこで明確にランボー対マードック司令官(アメリカ合衆国)という構造になっていく。
この悪役であるマードック司令官を演じたのはチャールズ・ネイピアで、どことなく前作の悪役を演じたブライアン・デネヒーを思わせる風貌である。マードックは国民を納得させるためだけに陽動作戦を指揮しており、ベトナムに取り残されたアメリカ人捕虜を本気で取り戻すつもりはない。アメリカ合衆国を代表するが如く、マードックの登場シーンでは部屋の中にコカ・コーラの自販機が置いてあり、それを飲むシーンまである(ランボーとトラウトマン大佐は飲まない)。
そしてこの作戦に巻き込むことになるのがトラウトマン大佐である。ランボーを殺人マシンに仕立て上げたは良いが、ランボーがアメリカに帰還してからのことは割とどうでも良いと思っているような軍人である。そして刑務所にいるランボーに、戦場で活躍するように嗾ける。途中でランボーの消息が途絶えてもトラウトマン大佐はランボーの生存を信じ、最終的に捕虜を連れて帰ることに成功したランボーに「うちへ戻って来い」とまで言っている。所詮は自分の作り上げた殺人マシンの活躍で自分も評価されたいだけの人間に見える。
そのランボーは、トラウトマン大佐からの「お誘い」にちょっと考えただけで作戦への参加を決める。飛行機に乗る前のトラウトマン大佐との会話でもランボーがトラウトマン大佐に全幅の信頼を置いているのがよくわかると同時に、自分が利用されていると気付いていないことも伝わって来る。
前作から後の作品まで見て行くと、やはりランボーにとって戦場が故郷なのだろう。戦場に行ってからのランボーは明らかに生き生きとしている。ただ、そのランボーの暴れっぷりが前作で描かれた帰還兵の悲哀を表現しているようにはとても思えず、ただ単にランボーを使ったアクション映画をやりたいだけという風に見えてしまう。そして基地へ帰って来たランボーは、マードック司令官へ「復讐」することになる。どう考えてもマードック司令官が酷い奴なので、それなりにスカッとはするが、あくまでそれなりではある。
また、中盤からは現地の連絡員としてジュリア・ニクソンが演じるコー・バオが登場する。彼女がランボーの話し相手になることでランボーの心情を表現する重要なキャラクターになっているが、ランボーとコー・バオとのロマンスは全く持って必要ないだろう。ランボーも1人の人間であることを示しているとは思うが、あまりにも安易であると感じる。そして、そのキスの後出発する際にコー・バオは撃たれて死んでしまう。まるでキスして浮かれて気を抜いた隙にやられてしまったようにも見えてしまう。また、同時に彼女の死でランボーが大暴れするという展開が用意されているとしたらそのために彼女を殺す必要もないだろう。
そして気にかかるのは、ランボーが飛行機から降下する場面。紐が出口のフックに引っ掛かり、ランボーが空中で引っかかったままの状態になるのだが、これはどう考えてもランボーのミス。トラブルに見舞われるというプロットがあったとしても、これじゃランボーがただ間抜けな奴に見えるだけである。ランボーにとってこの作戦に参加することになるのはある意味不可抗力なので、この場面も味方に邪魔されるなどの描写で良かったんじゃないかと思う。
以降はアクションシーンをメインに展開していくが、基本的に80年代っぽい大味なアクションシーンばかりである。特に終盤は爆破の連続になっていき非常に単調でもある。また、特に位置関係を明確にしたアクションではなく、「もぐらたたき」の如く、出てきた敵をとにかくナイフで刺したり、銃で撃ったりしてやっつけていくだけである。
大ヒットこそ記録したが、所詮は前作で作り上げたキャラクターを戦場に放り出して大量の火薬を使って暴れさせただけ。映画内での主張も前作の二次利用でしかないし、大味なアクションも手伝ってカタルシスもない駄作。
ちなみに本作には「エクスペンダブル」というセリフが登場する。「エクスペンダブル(expendable)」には「消耗品」の意味があるが、本作では「I'm expendable=俺は捨て駒だ」と言っている。そして、80年代から90年代のアクション俳優を集めた「エクスペンダブルズ(The Expendables)」シリーズを2010年から始めている。
【音声解説】
参加者
├ジョルジ・パン・コスマトス(監督)
本作の監督ジョルジ・パン・コスマトスによる単独の音声解説。撮影時の苦労、工夫、アクシデントなどをメインに話してくれる。時折黙っている場面もあるし、やや自画自賛のような話しぶりも気にかかる。
【関連作品】
「ランボー(1982)」…シリーズ1作目
「ランボー/怒りの脱出(1985)」…シリーズ2作目
「ランボー3/怒りのアフガン(1988)」…シリーズ3作目
「ランボー/最後の戦場(2008)」…シリーズ4作目
「ランボー/ラスト・ブラッド(2019)」…シリーズ5作目
取り上げた作品の一覧はこちら
【配信関連】
<Amazon Prime Video>
言語
├オリジナル(英語/ベトナム語/ロシア語)
├日本語吹き替え
【ソフト関連】
<DVD(2枚組/スペシャル・エディション)>
言語
├オリジナル(英語/ベトナム語/ロシア語)
├日本語吹き替え(テレビ朝日版)
音声特典
├ジョルジ・パン・コスマトス(監督)による音声解説
映像特典(Disc1)
├オリジナル予告篇
映像特典(Disc2)
├今度は勝つ
├ガッツ&グローリー
├ランボーの収益
├ランボーのサバイバル道具
<BD>
言語
├オリジナル(英語/ベトナム語/ロシア語)
├日本語吹き替え
├日本テレビ版(シルヴェスター・スタローンの吹き替え:玄田哲章)
├TBS版(シルヴェスター・スタローンの吹き替え:羽佐間道夫)
├フジテレビ版(シルヴェスター・スタローンの吹き替え:銀河万丈)
├テレビ朝日版(シルヴェスター・スタローンの吹き替え:佐々木功)
映像特典
├ジャングルでのアクション
├最後のアメリカ人捕虜
├少年の夢
├スタローンのインタビュー
├リチャード・クレンナのインタビュー
├ビハインド・ザ・シーン
├ランボーの肉体になるために2―スタローンのボディ・ビルディング・コーチ直伝のトレーニング方法
├今度は勝つ
├予告編
├TVスポット7種
<4K Ultra HD+BD>
収録内容
├上記BDと同様