西森大学文芸部 -12ページ目

型月のなく頃に

大学の空き時間は暇だな。2時間も何しろってんだ。
「あっ、たかゆき!」
あいつは高橋だ。彼は多少趣味に思い入れが強すぎるところがある。いくら暇とはいっても一方的に話し続けられるのはごめんだから話が長くなりそうだったら逃げよう。
「例の殺人事件のニュース見たか?」
「ああ、尊属殺人のやつか。最近多いよなあ。なんだいきなりそんな物騒な話持ち出して」
「ひぐらしがニュースに何回も取り上げられてうんざりなんだよ!ひぐらしは友情をもとに描かれた・・・」
またはじまった。
「へえ・・・、そうなんだ・・・。でも影響を与えてる可能性があるなら因果関係をはっきりさせないとな。」
「だあかあらあ!ひぐらしがグロテスクな側面を持っててもそれを超えたレベルで心を動かされた人たち・・・」
「ああ次授業だ!ごめん高橋!」
「そうか。とにかく話題を振り回すメディアに流されるなよ!俺はつまるところそれが言いたかった。」
でも正直その言い訳はあんま説得力ないよなあ・・・。
何か疲れた。もう帰る。
で、家に帰ってニュースを見ると政治家が新しい法案を作ったらしい。政治家がスピーチをしていた。
『・・・ですから、そういう類の創作物の重大犯罪への関連性が認められる限り、我々全員は多少の痛みを払わなければなりません』
は?
『あらゆる創作物において、あまりに攻撃的な描写または表現が認められた場合、それらの出版活動は一度政府を通すことを義務とします』
ちょっと待て、それはおかしいだろ。
『山森議員のスピーチでした。われわれの調査によると国民の5割はこの法案に賛成、あと4割は興味ないからどうでもいいそうです。』
本当かそれ?
『これで悲しい出来事が一つでも減るといいですね。では次のニュースです』
これはお前らマスコミにも大いに関係あるんだぞ?それでいいのか?
『次は琵琶湖に突然現れたくじらのシガちゃんです。』
テレビとかもうどうでもいいや。寝る。


次の日学校に行くと白いフード被ってる連中が密談をしていた、学校のベンチで。お化けのコスプレか?今日ハロウィンじゃないぞ?
あれは・・・高橋じゃないか?

はなうんこ 4

「お前らは・・・・」
しかしこのヤクザ顔・・・間違いない。
「やあ少年。私は山内というものだ。」
「お前らこれはどういうつもりだ!」
「私らはなにも暴力に訴えているわけでもないし、法に触れることをしているわけじゃないよ。ただ、少し他の人より賢くてね。」
「お前らのせいで世の中の人間鼻血まみれじゃねえか!何とかしろよ!」
「何をどうしろというのだい?」
「なんだと!やはりお前らは・・・。」
「ああ、とてもやりやすかったよ。君はヒトラーのわが闘争を読んだことがあるかい?」
「は?」
「群衆というものは君が思っているよりもよっぽど単純なものだ。あれこれ商品について説明するより資金を大量投下して・・・」
ん?後ろの窓から何か外からすごい勢いで飛んでくるのが見えるぞ?
「あー、山内さん。説明中悪いけど後ろから何か飛んできてるぞ。」
「おおそうか。俺の後ろから飛ぶなくたばれPSP!」
いやそうじゃなくてマジだって。・・・ヤバいこれここに墜落してくるぞ!
「伏せろ!」
 俺 の おかげで間一髪俺たちは物体との衝突を回避した。日本を鼻くそだらけにしたとはいえこいつらも人間であるので目の前で死んでもらっては俺も気分が悪いから助けた。
「何だ・・・・これは」
・・・人のようだが何か変なものを体に巻きつけている。あ、起きた。凄いスピードで飛んできたのに頑丈なやつだな。
「やあ正義の少年。私は脳科学を研究している森というものだ。世を乱す憎きゲーム業界め!お前らの好き勝手にはさせんぞ!」
誰だこいつは・・・。ちょっと待てその体に巻きついてる物体は・・・。
「お前らのような悪の団体は私が身をもって成敗してくれる!」
まさか・・・。
「少年、君と私の素晴らしい世界のために殉ずる気持ちは決して無駄にはならない。誇りを持ってくれたまえ!」
おいマジかよ。自爆テロだ!
「こいつ体に爆弾巻きつけてるぞ!みんな逃げろ!」
「クソッ、またこいつの邪魔が入ったか。」
「え?この人知ってるの?」
「仕方ない正義君、撤退だ。また会おう少年!フハハハハ!」
目の前で意味不明なやり取りが行われていたが、目の前の爆弾はもうすぐ爆発するらしい。逃げなければ!
「うわヤベッ」
俺はなぜか満足した表情で立ち尽くしている森先生を振り切って逃げた。
どうやらギリギリセーフだったらしい。教室を抜けたとたんにものすごい爆発音が起り、ついで棟の左半分、すなわち俺の目の前のコンクリートが完全に崩れた。
さっきは俺も一生懸命叫んだつもりだったが、他の人間はゲームに夢中で助からなかったようだ。残念でした。
しばらくすると警察が来て現場検証を始めた。ついでマスコミが来て大騒ぎしている。
「俺は・・・。何も見てないぞ。」
あんな気違い連中のことは何も知らないぞ。さっさと帰って寝よう。

翌日、なぜか学校は普通通りにあった。
と、ベンチで泣きながらPSPをしている中田を発見した。
「・・・今度はPSPか?」
「ぁぁ、たかゅ・・グシュ。このソフトのストーリーが泣けるんだよ・・・。」
「で、どんなゲームなんだ?今度はうんこか何かか?」
「ぁあ、よく分かったな・・・グスン。いかに下痢を気持ちよく出せるかってゲームで・・・」
「・・・それでなんで泣いてるんだ?」
「主人公の・・・グスン。スランプに陥った時の台詞が・・・」
もういい。もう分かった。みんな死にやがれ。

はなうんこ 3

「ひどいな・・・」
あまり人のいない後ろ側の席に陣取ったが、どうも落ち着かない。前のやつは鼻血の出すぎで貧血を起こして顔面蒼白になりながらゲームをしている。
そいつのiPhoneの汚れ具合がそのありえない状況に至った過程を明瞭に物語っていた。
俺はかなりの人見知りであるが状況が状況である。机が汚いのであまり寄りたくないが、隣の生徒に事情を尋ねた。
「この教室ってサークルとかじゃないよな」
「これみんなやってるんだぜぇ。」
「もう授業時間だろうが!なんなんだよこれは!」
「おおっと、時代遅れのダサダサくんにかける言葉はねえなぁ。」
「だから!」
と、そこに教授らしき人が白衣に鼻血をべっとり付けてやってきた。目の輝きはまるでない。これは・・・。
「教授!一体これはどういうことですか!」
「いいかい、たかゆき君、これが流行というものだよ。経営学の本質だ。一年生は口を慎みなさい。」
「でも!」
「はりゃあああああああああああああああああああああ!」
もうここにいては危険だ。即刻避難する。
扉は・・・あそこだ。早く逃げな
「どこに行くんだね?少年」
背筋が冷たい。ちくちくと痛みが走る。これはナイフか何かだろう。
「教授!いい加減に目をさま」
「教授?そんなものはいないよ」
「なら貴様は誰だ!」
後ろの人間はうすら笑いをしている。二人いるようだ。いつまでもこうしていられないので俺は恐る恐る振り返る。
「てめーら何様のつも・・・・お前らは・・・」
こいつらは・・・。
「正義くん。センサーに反応していたのはこいつか?」
「はい」
まさか・・・。ありえない。
「やあ、君が有名な流行に乗れないダサいおバカさんか。こんにちは。」