西森大学文芸部 -13ページ目
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はなうんこ 2

次の日、登校してみると携帯ゲームをやっている人がやけに多い。大学で一人そんな事してると中田みたいなやつに後ろ指さされるんじゃないか?
・・・・・って、中田だ!あいつ一人でゲームしてる。あいつもようやく人にかまってばっかな自分が嫌になったか。
「おい」
「おーたかゆき。次授業か?」
「ああ。って中田、なにやってんの。お前みたいに今を満喫してる大学生がゲームなんてしたらダメだろ」
「ノーズクラッパー2008だよ」
「・・・・・。」
俺の渾身の皮肉も想定外の展開で打ち消されてしまった。もうやだこのアホ。
「そうかあ、お前はあまり人とかかわらないからな。知らないか?このゲーム流行ってんだよ。コンパでも中だるみしてきたらこれで解決!」
「は?」
・・・流行ってる?これが?
「話題の超大作だっていうから買ったんだよ。バージョン2種買っちまったぜ。でも俺のサークルのダチは5種全部買ってたな。」
何か俺全人類を支配できる気がしてきた。
「ああお前はあまり友達いないから分からないか。でもお前もこれ買えよ。俺がお前とやってやるから。」
こいつが上から目線で喋れば喋るほど自分の顔に泥を塗ってる気がするが面白いから放っておこう。
「・・・ん?」
こいつのDSと何か汚い物体が変なコードでつながってるが、何だこれは。
「何だこれ?」
「さわるなああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
「はっ、はい!・・・で、中田さんは何をしておいでなので?てかこの汚れた物体はなんですか?」
「iPhoneだ。」
「は?」
「これはDS初のiPhoneとリンクできるソフトでだな!iPhoneに直接ノーズクラップを読み込ませてDS上でデータ化できるんだよ!ちょっと今覚醒させてる最中だから黙ってろ!」
・・・こいつは何を言ってるんだ。
「ああ、そう・・・。俺はもういくよ」
返事はない。まあいい、はやくここから逃げないとこの気違いと同じ人種だと思われる。とりあえず教室に急ごう。
その判断は致命的なミスであった。教室はすでに鼻くその海とパネルタッチ音の波で満たされていた。

はなうんこ 1

大学に入学して2か月、俺もいい加減に学園生活というものに慣れてきた。
バイトもせず、サークルも入らない、友達も数えるのに片手で足りるほどしかいない俺だが、大学生活はなかなか自由な時間があって楽しい。
時に俺をなまけ者扱いする輩がいるが、俺はちゃんと今を楽しんでいる。
大学生になって浮かれてクラブでキメちゃうような馬鹿がいる中、暇でうんざりしてるよな連中よりは褒められるべきじゃないだろうか。少なくとも責められるものではないと思う。
まあいい、ようやく授業が終わったんだ。他人のことなんて考えてないで家に帰ってパワプロでもするか。
「ようたかゆき!お前は相変わらずたるんだ顔してるな。人生投げるなよ!」
そうだ。こういう奴が一番気に食わん。
「ああ中田、何か顔が疲れてるぞ。また飲み会か。」
「まあそれもあるんだがiPhone買うのに4時間ほど待たされてな」
「いちいち流行りものに手出してたらキリがないぞ、しかしよくそこまでして買ったもんだな。それに高いだろ」
「ずっと前から海外で話題になってたんだぜ。お前アップル知らないのか?」
「じゃなくてお前AUだったろ。一体iPhoneのどんな機能にそこまで目をひかれたんだよ。保証もろくにないらしいじゃないか」
「ま、人生投げてるお前には分からないか。じゃーな、おれバイトが忙しいから」
・・・今のは嫌みか?
さっきのやつは中田といってバイトもサークルもがんばる「いわゆる普通」の大学生だ。
で、どういう訳か俺のことを哀れに思ってくれているらしい。理由は知らんが人から気をかけてくれるのはありがたいな、本当に。



帰宅。ワイドショーを見てみるとiPhoneの事で持ち切りになっていた。別の県ではいちいちそれを買うために徹夜組も発生したらしい。
が、はなから興味ないし俺の知ったこっちゃないので、他のチャンネルに変えてみると今日発売のDS新作ゲームの宣伝をしていた。
「なんじゃこりゃ」
「ノーズクラッパー2008」といって、道行く人の鼻くそを取ってそれを集めて新世界への道を開くアクションゲームらしい。しかも二回連続で流れた。
タイトルだけでも殺人的な破壊力だが、わずか15秒でこれほど消費者の購買意欲を削ぐ広告を作り上げたのには感心する。
その後5回に1回はこのCMが流れた。普通ゲームというのはやってみるまで分からないが、これに関しては俺の全存在を賭けて言おう。絶対クソゲーだ。
あまりに心に響いてきたのでちょうど放映されたのも晩御飯の時間帯だったし裁判でも起こしてやろうかと思ったが、広告の偽装が問題になる中このゲームを製作者が「新感覚ゲーム」と銘打ったのは法的には問題ないであろうから悔しいがあきらめる。
しかしそれを大プッシュするゲーム会社経営陣はこの一ヶ月後にはやり玉にあげられることに違いないので、まあいいか。俺の出る幕じゃない。
しかし待て、2008ってことはこのクソゲーをいるか分からないファンのために毎年マイナーチェンジするのが決定事項なのか・・・。
それとも・・・。

注意

このブログでは私がこれから自己満足に自分の空想をもとにした小説のようなものを書きます。

それらにはエロもグロもありませんが、すべての方々に見せるには少々自信がありません。

一部の方を不愉快にさせる可能性のある描写が含まれています。

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