型月のなく頃に 3(改訂版
「・・・革マルとか何かですか?」
「身内の理想論でつぶしあうアホと一緒にするな。もういい頃合いだろう、具体的に説明しておこう。これは一種のゲームなんだ。マスターと呼ばれるものたちがバトルロイヤル形式で戦い、勝ったものだけが願望を実現できる、いわば殺し合いのゲームだ。そして我々はマスターに仕えるサーヴァントだ。」
いきなり真剣な口調になったな・・・ふぇ?何だって?
「早晩自由な文筆活動が制限されるような風潮が出始めたころそれは突然現れた----聖杯だ。ゲームマスターによると85年に一度この国ではこの聖杯をめぐっての戦争が行われるらしい。
そこでこの街にいる2名の魔導師がマスターに選ばれた。そして我々はそのうちの1名に従うサーヴァントだ。聖杯を手にしたものにはあらゆる望みをかなえられる力が与えられる。」
「はあ?ゲームマスター?」
「われらのマスターは表現の自由の死守を望んでいる。サーヴァントにもその権利が与えられるが、幸いにも我らにとってマスターの創作活動が生命維持のための栄養源となっていたので、ともに都合がよい、まさしく相互依存の関係である。そして契約以降マスターに命を賭して従うことを誓ったのだ。見ろ、サーヴァントの印だ。」
うわ手に何かついてる・・・。でもそんなの俺にないしやっぱり関係ないな。何なら全員にペン消しシンナー配ってやってもいいぜ。
「残念ながら俺にはそんなのない。手伝いたいのはやまやまだが俺関係ないし帰るわ」
「聖杯戦争を知った一般人は生を許されないぞ。」
「お前が勝手に喋ったんだろ!」
「すまんすまん、もういいから手伝え。ほら、油性マジックだ。勘違いするなよ俺らのは本物だがな。」
やっぱり俺はまた変なのに巻き込まれたのか?しょうもない責任感のせいで。逃げられそうにないしとりあえず話にのっとくか。
「悪いが信用できんね。それではとりあえず聞いておくが85年前の戦争の勝利者は何を望んだんだ。」
「完全なる言論統制だ。当時のマスターはマスコミと国会議員を召喚し、それらを狡猾に操った。新聞に領土拡張を叫ばせ、議員には失政と汚職を連発させた。それまでは自由民権運動を推進し、大正デモクラシーの原動力となったマスコミだが、1920年代中盤から完全に方向を転換したのだ。なぜだかわかるな?」
あまり何言ってるか分からなかったがとりあえず日本史の話っぽいな。それならこっちも応戦できる。
「それは情勢の流れk・・・」
「その作戦は見事に成功し、世論は己らが図らずとも言論統制派につくことになった。そして統制派は戦いに勝利し、治安維持法を制定させることに成功させたのだ。」
くそっだめだ、すでに自分の世界に入っていてスキがない。
そろそろいい加減帰りたかったがいつの間にか雰囲気がまずいことになっている。テーブルにナイフが置いてあるのはおそらくわざとであろう。帰りたいなんて言うと本気で殺されかねないので今のところは話を合わせておかないと。触らぬ神に祟りなし・・・。もう触ったか、後がないな。
「・・・・で、今回の相手は誰なんですか。」
「それは伏せられているが、相手のサーヴァントには目星がついている。メディアと国会議員と創価学会だ。」
「また?」
「ちょっと待ってろ・・・。これを見ろ」
高橋はポケットを探り新聞の一部を何枚か取り出すと、俺に渡した。どれも大きな見出しがついた一面のようだ。
『家族惨殺事件 少女の部屋から小説』
5枚渡されたがどの新聞の見出しもこう書いてあった。
「・・・・・これが何か?」
「世論操作だ。やつらは我々を弱らせてから捕えるつもりだろう。」
「これお前らの仲間だろ知恵遅れ!大体議員はともかくマスコミが言論の自由反対派とか意味分からん。」
「ほう?では加害者の部屋からたかが漫画や小説一冊でも見つかったくらいでマスコミが鬼の首を取ったように騒ぐのはなぜだ?そんなのどこにでもあるだろう。
それにいつの間にか法案ができていたのはなぜだ?君もニュースを見ただろう。本来なら自分らの大敵になりかねないはずの法案に対する薄い扱いを。」
「それは・・・。」
確かに気になっていたが・・・。
「とにかく敵は存在する。その敵を特定するには前例とこの証拠で充分だろ。」
はあ・・・これ納得していいのか?
「しかしなぜマスコミが2度連続で言論統制派についてるんだ?」
「運命だからだ。」
結構しょうもない理由だな。
「そのうえあまり賢くもないのでコマとしては最高なんだ。70年前に一度ドイツでも聖杯戦争が行われたようだが、そのときもマスコミはコマとして大活躍している。」
型月のなく頃に 2
友達として、悪い方向に向かう友達には一度諭してやらないといけない。そうすれば後でこいつが何かやらかしても少なくとも俺の責任ではなくなるし。
「おい高橋。」
「うわあああああああああああああ!なんだお前!」
「それはこっちの台詞です。」
「だれだお前は!」
「何やってんだ高橋。」
「・・・・・ばれてしまっては仕方がない。お前も仲間に入れ。」
「だからお前は何やってるんだ。」
「表現の自由を守るための秘密結社だ。一般国民が無関心な場所から攻め込み素晴らしい創作物をっ、いいか!これは聖戦だ!」
「・・・ジハード?」
「聖杯戦争だバカたれ!」
はあ・・・。
「よし秘密を知ってしまったお前にもう選択肢はない。これをかぶれ。」
「でもこれどう見てもk・・・・うわなんだよ!」
で、新入団員歓迎会をやるらしいので、夕方の簿記の授業サボらされた。俺単位やべえって。
高橋に連れて行かれた現場は大学内の地下室だ。こんなとこあったのか?
「よくぞ来た新入団員よ!まず前に出て自己紹介をしたまえ!」
高橋テンション高すぎだろ。
しかし・・・・・こう言っちゃ悪いが・・・面白い。
「新入団員くん!何をにやにやしているんだ!早く壇上にあがりたまえ!」
「ふぁ、、はい。細川たかゆきと言います。まずはあなたたちに質問させていただきたい。」
「何なりとお!」
「クッ・・・ひ、表現の自由の侵害を阻止するというが、あなたたちは具体的にどういう活動をしていくのですか?」
「いーい質問だ、我々の主な目的は表現の自由の死守だが、そのためにこの腐った国に多少手荒な処置をする。」
「ほう。」
「だから来るあの日、この国の国家中枢部を占拠する!!!!!」
はああああああああああ?
「ちょ、ちょっとま」
「手筈はほぼ整っている。全国に潜伏していたわれらの同胞はすでに行動を始めているだろうからな。君はいつも人を食ったような態度をとっているが、今回は食われたようだなハハハ」
面白くねえよバカたれ。
「まるで我々のことを大学のキモい一サークルだと思っていたような顔をしているな。しかしうれしいことに我々と同じ志を持ったものは日本中にいるのだよ。ここはその本部だ。」