西森大学文芸部 -10ページ目

パラレルの政治力学 2

何だよ今度は。もうカルトとかごめんだぞ。
「な、何ですか?」
俺の声は喧騒ですぐにかき消される。そして、今度はあくどい顔をした中年男性が自己紹介をする。別にそんなの聞いてないんだけどな。それよりもこの意味不明な状況の解説が欲しい。
「私はこの世界の政治団体、自己満党の党首をしている永井幸紀というものだ。君の名前は?」
「ほ、細川たかゆきです。」
なんなんだよその馬鹿みたいな党名は。それよりなんなんだよこの状況は。
「よしおじさんたち、どういうことか説明してくれるかな!」
まず小山内が口を開く。
「君はゲートバスにのって違う世界に来たのだよ。で、君は37番世界にやってきたんだ。久しぶりに24番世界から人がやってくるっていうから、この世界では大ニュースになってるよ。ほら、あそこにカメラ持った記者がたくさんいるだろう。読売に毎日に産経、そして一番騒がしいあの集団が朝日だ。
「だから、何なんだよ第24世界とか!」
「あーそうだったな!まずその説明をしないといけませんな!いいですか、君の世界にはパラレルワールド理論というものがあるらしいが、聞いたことがあるかな?」
「はあ」
「あの理論はいい線まで行っているが少し違う。同じ次元で同じような時間の流れの世界がたくさんあるところまでは合っている。しかしそれらは微妙に違っているんだ。パラレルワールドでは『それぞれの世界はすべて同じ条件』だが、実際はそれぞれの世界は1つだけ他とは違う『特殊条件』を持ってるんだ。
それは結果としてはごくわずかなことだったり、重大なことだったりするのだが、基本的には『一つの現象の相違』というだけですべて平等なんだ。例えば第21世界ではサルが進化しなかったとか、第12世界では北京オリンピックの野球監督が星野じゃなかったとか。」
・・・いい年して何言ってるんだこいつ。
「何でそう魂の抜けた顔をしてるんだい?ははあ、この第37世界ではどの条件が他と違うのか疑問なんだね?」
わー、すごーい、それ知りたかったんだー(棒)
「それが分からないのだよ。いくら研究したって、我々は完ぺきなのだから。そのあたりも、君の意見を参考にしたいものだね!」
俺の世界ではあなたみたいな馬鹿は病院というところに隔離されていますよ。それにうちは表裏党とか自己満党みたいな政党が2大政党張れるような馬鹿な世界ではないな。うーんカルトのやることはよく分からん。
「す、すみません、ここ西森大ですよね?バスには西森大行きって書いてあったんですけど。」
「そうだよ。第37世界の西森大だね。」
「何なんだよそれは!」
「だから君はゲートバスに乗ったんだよ。普通うかつに人が乗らないように行き先は鏡文字にしてあるんだけど。」
「じゃあなんで俺はここにいるんだよ!」
「西森大ってのはどんな漢字だったかな?」
「・・・・あー、クソ」
こいつの「残念」と言わんばかりのニヤニヤ顔ぶん殴ってやりたいわ。
「で、唐突だが君は何歳だね?」
「じ、18ですけど」
と答えた瞬間喧騒がさらに大きくなった。なに?俺若さのエキスとか吸い取られちゃうの?
今度は永井が口を開く
「それは良かった!では君には選挙権があるな!」
「え?僕は未成年ですけど」

パラレルの政治力学 1

『・・・総選挙は間近で、各党とも慌ただしくなってきました。では次、あの人が結婚しました』
もうそんな時期か・・・おお、そろそろ大学に行かないと。
いつものように部屋を出て、アパートの階段を下りてバス停で待つ。しかし待てども待てでも大学行きのいつもの青いバスが来ない。
40分たってようやくバスが来たのだが、黒い。しかし行き先を見ると「西森大」と書いてある。行き先が一緒なら色など関係ないだろう。
余裕をもって家を出たつもりだが、いい加減遅刻すれすれなのでこれに乗るしかない。家に帰ったら40回抗議の電話をしてやろう。
この時間帯はラッシュなので毎回寿司詰め状態のはずなのだが、よく見ると自分以外に誰もいない。
どう考えても怪しいのだが、確かに「西森大学行き」と書いてあったし、なにより今まで辛い通学を強いられてきた身からすれば、その光景は魅力的すぎた。
僕はそのバスに乗ってしまった。

座り心地は文句なし。このまま寝てしまいそうだな・・・。まあ終点に着いたらおこしても・・・ら・・・。
正直言ってどう考えても怪しい状況なのだが、あまりにも座り心地が良すぎて寝てしまった。もう1時間くらい寝ただろうか。1時間?どんなに遅くても30分あれば大学には着くぞ?あれ?
「ヤバいぃぃぃ!」
跳ね起きた拍子に窓に思い切り頭をぶつけてしまった。痛いし恥ずかしいです。誰も乗ってなくて良かった・・・。
しかしやっぱり違う路線だったのか?頭をさすりながら窓をのぞいてみるが、見慣れた風景だ。だが、時計を見るとやはり1時間経っている。違うバス会社だったのかな?
『次は、西森大学前、西森大学前です』
あー、分かった。違うバス会社だったんだ。まあこれ乗らなくてもどのみち遅刻だったしもういいか。
バスが止まり、ドアが開く。乗客は僕だけだったのでさっさとバスを降りて教室へ向かう・・・。やはり風景は何もかも昨日までと一緒だ。ただバス会社が違っただけなんだよな、うん。
「よーーーこそ第37世界へ!」
中年男性のハリのある声が聞こえた。そして、ぞろぞろと人が集まってきた。
「君があの第24世界からやってきた人か。話は聞いてるよ。私は小山内博隆というものだ。この世界の日本最大の政治団体、裏表党の党首をしている。」

ごめんなさい

オチが思いつかないので「型月のなく頃に」は一時中断させてください

その間「パラレルの政治力学」をお送りします

見てる人がいるか分かりませんが一応謝っときます