高慢と偏見とゾンビ | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

 

2016年 アメリカ

バー・スティアーズ 監督

原題: Pride + Prejudice + Zombies

 

 

ジェイン・オースティン祭り。既にご紹介済みのBBC版「高慢と偏見」「Emma/エマ」と「いつか晴れた日に」の3作品がずっと大事にしているMy Collection DVDです。考えてみたら、この3つしか持ってなかった(笑)。でも私にとってはザ・ベストかつ必要十分。アホになるほど3点ローテーションして生きてきました(笑)。なので、気持ち的には久しぶりにローテできて十分満足、これにて終了~でもOKなくらいですが、いやいやせっかくだからこの機会にレンタルしてでも(笑)気になってたもの見てみようよ、自分!というわけで、この1年ずっと気になりっぱなしだったコレ!とうとう観れました!(≧▽≦)

 

去年、多分「ある天文学者の恋文」あたりだったような気がするのですが予告編を観て気になったものの、あっとう間に上映終了しちゃいました(;_;)。なぜ、ジェイン・オースティンの名作で、ゾンビ!?( ゚Д゚) 大好きな「高慢と偏見」だから、なんだかヘタにチープで下品なパロディに茶化されてたら嫌だなぁ、でもなんか予告編は惹かれる・・・気になる・・・|д゚) と思っていたら、チラホラと好評レビューを目にして、やっぱり、もしかして当たり?面白いの??(*‘ω‘ *) とウズウズ。ジェイン・オースティン祭りをやろう!と思った瞬間すでに候補入りしていました。結果、期待以上に(ていうか半信半疑気味だったので^^;)面白かったー!笑った!楽しんだ!観てよかったです~。わーいわい。

 

 

何にもない平原に見えるけれど実は墓標のないゾンビの墓場。地中から腕がニョキニョキ・・・。ゴシック風な色調の映像は綺麗だし、ゾンビのメイクもきちんと凝っていますが、純粋にゾンビだけを目当てで見ると、少し物足りないかもしれません。ゾンブも有り〼。な感じでホラー・アクション・エンタメと思えば、非常にバランスもよく、笑いどころツッコミどころも純愛も満載で楽しめます( *´艸`)。地表にゾンビが溢れまくって「ついにこの世の終わりがきた?!」と思った地獄の四騎士まで登場(笑)。ゾンビ黙示録って!(笑) ちなみに黙示録と地獄の四騎士については「X-MEN:アポカリプス」にも登場していましたね(まぁ、あちらはタイトルがそのまんま、黙示録ですから)。

 

こうして見る限りはごく普通の18-19世紀イギリスの舞踏会ですが・・・。

 

18世紀のイギリス。大航海時代はイギリスに多くの植民地と、世界各地からの豊かな資源とスパイスと美食をもたらしましたが、水面下で未知のウィルスも持ち込まれていました。感染した人間はゾンビ化し、人間の脳を求めて次々と人々を襲いそりゃもう阿鼻叫喚、世界の終末期。地獄の四騎士だって慌てて駆けつけるほどの惨状に。しかし人間は頑張りました。高くそびえる壁を建築してロンドンを包囲し、川に掛かる橋の殆どを破壊し、裕福な人たちは郊外の屋敷へ移り住み、万全のゾンビ防犯をしつつ暮らしていました。人々の関心は国防ではなくゾンビ対策。海外で武術を習うのが流行。お金持ちはニッポンへ、賢きものは中国へ。でたよ、ニッポン・ディス(苦笑)。

 

 

ベネット家の5人の娘達も、中国でカンフーと少林寺拳法の修行をしました。年頃の娘らしく綺麗なドレスを着こなしているものの、ガーターベルトには剣を仕込み、お出かけの際にも銃は忘レズニ~。途中でゾンビに遭遇したら、即戦闘!お休み前のひとときは読書や刺繍やピアノやカード遊び・・・ではなく、トレーニング。強い、強いよアマゾネス・ベネット達(*'ω'*)。

 

荒唐無稽な設定ですが、意外とちゃんと「高慢と偏見」もしています。混ざりあうはずのないテイストがしっかりリミックスされて、喧嘩せず不思議な化学反応。キャラクターも途中途中の抑えどころもきちんと「高慢と偏見」をなぞりつつ、別物に。別物なんだけれども忠実。という不思議な感覚。ツボの抑えどころが大変お上手なんだと思います。色々よく出来た話だなぁと感心していたのですが、これ、原作があるんですね。セス・グレアム=スミスという人気作家の同名小説が元々はヒットしたらしいです。もっとも、映画独自のアレンジも色々あるようで、例えばゾンビ黙示録の地獄の四騎士などは、映画オリジナルのようです。

 

この作家さん、古典作品や歴史上の人物と怪奇ものの組み合わせが得意な方のようで、「リンカーン/秘密の書」も、セス・グレアム=スミスの小説が原作だそうです。こういうハイブリッド作品のジャンルを、マッシュアップ小説と呼ぶと今回初めて知りました(*‘ω‘ *)。ただ見て終わるだけじゃなく、感想を書き残そうとするとこういった新知識も得られて一本の映画で二度楽しめますね。ついでにもひとつ、この映画のプロデュースにナタリー・ポートマンが関っているそうですが、元々はナタリー主演の方向でも検討されていたらしいです。ナタリーもいけたでしょうが、結果的にはキャスティングこれで正解だったと思います。

 

ゾンビ・ハントに執念を燃やすミスター・ダーシー(サム・ライリー)と友人のミスター・ピングリー(ダグラス・ブース)

 

舞踏会でのベネット姉妹との出会いや、ピングリーとジェーン、エリザベスとダーシーのエピソードや周囲の人間関係などもほぼ「高慢と偏見」通り。BBC版のキャストをこよなく愛する私ですがこの映画でのキャスティングも、全員、良かったです。サム・ライリー、最初意外な気がしていたのですが観ていくほどにこの映画のダーシーにドハマリ!て思うようになりました。思い出せないけれど「フランス組曲」や「マレフィセント」にも出ていたんですねー。また観る機会があったら探さなきゃ^^。

 

 

ダーシーも強い(ちなみに彼はやっぱりね、の日本で武術修行)ですが、レディースも強い!むしろ、ヘアメイクやドレスのハンディがある分彼女たちの方が強いのでは・・・( *´艸`)。ミーハーでキャピキャピばっかのリディアだっていざゾンビ襲来となれば見事な戦いっぷりです。5姉妹のアクション・シーン、もっとあってもよかったかも~^^。

 

 

おしとやかな長女ジェーンですら、道端でばったりゾンビに遭遇したらざっとこんな感じ↑です(笑)。「高慢と偏見」では、ピングリー家にお呼ばれしたジェーンがベネット夫人の入れ知恵で馬車を使わせてもらえなかった為に途中で雨に降られて肺炎を起こして寝込んでしまいますが、「+ ゾンビ」では途中でゾンビに遭遇して戦闘になり、倒れるという設定に。

 

 

最近売り出し中のイギリスの可愛い子ちゃん、リリー・ジェームズ。可愛いだけじゃなくてアクションも頑張っております。闘うエリザベス、凛々しくて美しくて格好いいです♡ 日本では映画「シンデレラ」が一番有名かと思われますが、イギリスのドラマも「ダウントン・アビー」や「戦争と平和」などの人気作品に次々出演して着実にキャリアを伸ばしています。ので、なんだか最近すっかりお馴染の顔に。頑張れ、リリー。ちなみにジェーン役のベラ・ヒースコートは「Re:Life ~リライフ~」でヒューと交際する学生役で出演してましたよ(´ω`*)。可愛いなぁって気になっていたので嬉しい再会でした^^。

 

 

最初エリザベスに近づき、リディアと駆け落ちして騒動を巻き起こす食わせ物のウィカムはこの人↑、ジャック・ヒューストン。なんと今年公開予定の「ベン・ハー」のリメイク作品の主演らしいですΣ(・ω・ノ)ノ!さらにさらに、母方の血筋はイギリス貴族、父方の祖父は往年のアメリカの俳優で偉大な脚本家のジョン・ヒューストン(「マルタの鷹」「アフリカの女王」「007 カジノロワイヤル」など)ですってー。ひゃあ。ルパート・エヴェレットと並ぶ(ショービジネス的には凌駕する?)超絶サラブレッドでした。つい「おいおい、ウィカム・・・(-。-)y-゜゜゜」と甞めた目線で観てしまってすみません(苦笑)。別に彼の経歴がすごいから、ではないでしょうが(笑)、「高慢と偏見」よりも根性の入った悪役にブラッシュアップされていました、ウィカムさん(´ω`*)。

 

 

もひとつオマケに、泣く子も黙るレディ・キャサリン・ド・バーグ、ダーシーの叔母で権力者ですが、「+ ゾンビ」の世界ではこうなります↑(笑)。アイパッチの女傑、イギリスで最も強いとほぼ伝説化されている超有名な戦士。まだ観たことはないのですが、アメリカのテレビドラマ「ターミネーター サラ・コナー・クロニクルズ」で主役のサラ・コナーを演じた人らしいです。

 

 

忘れるところだった(笑)。ベネット家の財産相続人、姉妹たちの従兄のコリンズ牧師(マット・スミス)も勿論登場します。へっぴり腰のいくじなし、ダメっぷりがブラッシュアップされていて笑えます( *´艸`)。でもまぁ、悪気のない害のない人ではある。シャーロットの言うように、理屈で選ぶ結婚相手としてはある意味正解なのかもしれませんよね~。

 

そういえば、リディアのしゃべり方とか、エリザベスの幼馴染で親友のシャーロットの雰囲気が、BBC版「高慢と偏見」とよく似ている・・・と感じました。この原作者も、映画制作スタッフも、根っからジェイン・オースティンの「高慢と偏見」を愛していて、悪ふざけではなく真面目に誠実にパロっているのをひしひしと感じるのですが、特にBBC版「高慢と偏見」をリスペクトしているような気がしてなりません。リディアやシャーロットだけでなく、全体的にキャストのイメージがBBC版に寄せている感じが・・・そして何より、決定的なワンカットが。

 

 

このシーン↑は、、、そう、「高慢と偏見」の原作にはない、BBC版「高慢と偏見」でのオリジナルで、全英女性をザワザワさせたあの”ダーシー、湖にザップーン”のシーンの再現が!唐突にほんの数秒、前後の繋がりなく挿入される感じなので(編集の都合かもしれませんが)恐らくBBC版を知らない人には「今のは何だったの?」と意味不明じゃないかとも思われるのですが・・・(笑)。こういう、特にBBC版を意識していると勘ぐりたくなるようなトラップが沢山仕掛けられています。

 

「高慢と偏見」とゾンビ。上手く融合して上質なパロディに仕上がっていますが、よく出来ているな、と思いつつもツッコミどころは満載( *´艸`)。それは「がっかり」「おしいなー」の気持ちのツッコミではなく、ツッコミを入れること自体が何だか楽しい感じ。もしかしたら間違い探しゲームみたいに、制作側が悪戯心を込めて「ここ、気が付くかなー?」「ねぇねぇ、つっこんでね♪」と敢えて意図して仕込んでいるのでは?という気すらしてきます(笑)。衣装やセットも豪華だから、スクリーンで観たらまた楽しかったろうなぁと、今更ながらに惜しまれます。