高慢と偏見 (イギリスBBC版) | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

 

お気に入りのテレビドラマを紹介するコーナー。今回は「【劇場版】嘆きの王冠~ホロウ・クラウン~」をきっかけに映画も読書もシェイクスピア祭り開催中につき、イギリスBBC繋がりで大、大、大、大好きな「高慢と偏見」を取り上げたいと思います(*'ω'*)。元々は1995年のBBC制作のドラマですが、私自身テレビでは観たことがなく、DVDでの鑑賞でした。テレビ放送6話分なので、ディスク2枚に別れて約6時間ですが、休日家に引きこもって夢中で観ました。その後も、事あるごとに、時間がないときはお気に入りのシーンまで飛ばし飛ばしで( *´艸`)、辛い時も疲れた時も癒されたい時も頼りになるビタミン・ディスクのひとつです♪

 

原作は18-19世紀のイギリス文学を代表する作家の一人、ジェイン・オースティンの『高慢と偏見(Pride and Prejudice)』です。昔から繰り返しドラマ化、映画化されてきた作品ですが、その中でもこのBBC版は特に評価が高く世界中に根強いファンが存在しています。ジェイン・オースティン好きの人に聞けば、かなりの確率で「BBC版のドラマが最高!」と答えると思います。かくいう私もそう思っています(笑)。最近では、キーラ・ナイトレイが主演した映画「プライドと偏見」が一般的には有名かと思いますが。

 

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こちらも中々評判が良かったようなのでレンタル解禁になってから私も観て、思いのほかキーラ・ナイトレイが良かった印象があります。それでもやはり、他のキャストも含め全体的な仕上がりが圧倒的にBBC版にはかなわない、と1人で悦に入っていました(苦笑)。

 

私がこのドラマDVDに出会った当時はHuluその他の動画配信サービスもなかったしレンタルでもあまり見かけなかったので、友人によくDVDを貸していて、また貸ししているうちに返ってこなくなったらまた新たに買い直す(割と希少だった上に1万円くらいの高額でしたが)程、大好き。紛失したと思って間違って2回買ってしまったのか、後から諦めてたDVDが戻ってきたのか忘れましたが、今うちには2組あります^^;。これでまたいつ友人にレンタルしても大丈夫(苦笑)。

 

どうでもいい雑談ばかりいつまでも続けてしまいそうなので(このBlog、推敲するということを知らない私ですみません^^;)本題・・・の前に、ところで皆さまジェイン・オースティンってご存知ですか?

 

ジェイン・オースティン(Jane Austen) 1775/12/16 - 1817/7/18 

イングランド南部ハンプシャー、スティーブントン生れ

 

イギリスの田舎の中流階級の女性を中心に、結婚や日常生活などのありふれた出来事を題材にして、6編の長編小説といくつかの短編を発表した女流作家です。ごく日常的なことを描きつつも、感受性に溢れた観察眼でウィットや皮肉にも富んだ文章とテンポ良い展開は、19世紀頃のイギリスにおける上質なトレンディ・ドラマと言える、と評する人もいます。私の中学高校時代に崇拝の対象だった日本人作家、夏目漱石先生も『文学論』の中で「Jane Austenは写実の泰斗なり。平凡にして活躍せる文字を草して技神に入る」とベタボメしています(*'ω'*)。

 

オースティンが生れた翌年の1776年にはアメリカ独立宣言、20代前半にはフランス革命といった世界が変わる大きな出来事を体験しているのですが、ジェイン・オースティンの文学にはそういった事柄は一切取り上げられず完全に切り離されているのも特徴としてよく挙げられます。何か特に意図するところがあったのかどうかは本人のみぞ知ることですが、そういうスタンスも、私は好きな点のひとつです。また歴史や時代の流れの影響を変に受けず普遍的に楽しめる理由のひとつかもしれません。

 

オースティン文学はイギリス文学を代表する古典のひとつとして高く評価されていて、今日に至るまで熱心なファンが生まれ続けています。アメリカやイギリスの映画では、文芸作品以外でもしょっちゅうジェイン・オースティンの名前は登場します。この1年Blogで紹介した中からPick Upすると、例えば「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」ではクリスチャンがアナに文学を好きになったきっかけはジャイン・オースティンかそれともトマス・ハーディ?と聞くシーンがあります。アナはトマス・ハーディだと答えるのですが、クリスチャンはアナのおっとりしたお嬢さん風の雰囲気から「ジェイン・オースティンかと思っ」ていたので、その意外性に最初に興味を持つポイントです。

 

一般に、ジェイン・オースティン好き=知性的な夢見る乙女系というイメージで、若干揶揄するようなニュアンスもあるようで、ヒュー・グラント主演の「Re:Life~リライフ~」でもチャラいキースに反感を持って敵対するお堅い女教授は、ジェイン・オースティンの研究家という設定でした。キースが、関係を良好化しようとして助教授にジェイン・オースティンのグッズをプレゼントするくだりとか、お堅い助教授が意外とそれをきゃっきゃと喜んでしまう可愛らしいところとか、微笑ましい演出が取り入れられていました^^。

 

 

さてようやく本題^^;です。イギリス田舎町ローンボーンの紳士ベネット氏にはジェーン、エリザベス、メアリー、キティ、リディアと娘ばかり5人の子供がありました。当時のイギリスでは女性の財産相続権がなかったため、ベネット氏の土地家屋その他の財産は親戚筋の牧師コリンズ氏にその相続権がありました。よってベネット夫人は、娘達の誰かをコリンズ氏と結婚させる形で夫の財産を相続させて、他の娘達はなんとかお金持ちの紳士に嫁がせようと躍起になっていますが、そんな妻の様子をどこ吹く風と、当のベネット氏は飄々と書斎で読書にふけっていてちっとも娘たちの縁組に熱心さを示さず、夫人はキィキィ。

 

 

姉妹の中で最も美しく気立ての優しいジェーン(スザンナ・ハーカー)と、器量は姉ほどには及ばずもそこそこの美人で、父親譲りの機智とはっきりした物言いの(当時の価値基準からいえば少々”勝ち気で女性らしくない”)次女エリザベス(ジェニファー・エール)はお互いをリスペクトしあって得に仲が良く、協力しあって妹たち-ガリ勉のメアリー、母親似で無分別のキティ、同じく母親似の浮ついた俗っぽいところがあるリディア-の世話をよく焼いていて、父親も上の2人のことはとても自慢にしており、特に自分と気質の似ているジェーンのことはお気に入り。

 

 

ある日、ローンボーンの町の近くの豪勢なマナーハウスに独身の富豪、しかもハンサムなピングリー氏(クリスピン・ボナム=カーター)が越してきたので、もう町を挙げての大騒動(笑)。未婚の娘を持つ親はこぞって、なんとか自分の娘をピングリー氏に売り込もうと躍起。もちろん、ベネット夫人はその筆頭です( *´艸`)。そして、ピングリー氏の高人気の一方で、ピングリーよりもさらに資産家と噂の友人ダーシー氏(コリン・ファース)は気難しく不愛想で田舎の人間を見下したような態度で大ブーイング。田舎町のゴシップ事情を騒がす2人組登場(笑)。

 

 

最初に結末をネタバレしてしまいますが、最終話ではミスター・ピングリー&エリザベスと、ミスター・ダーシー&ジェーンのカップルが成立して目出度く仲良く結婚式を執り行います。ネタバレしたのは、原作がすでに有名なイギリス文学で結末も周知の事実だということもありますが、このドラマの面白さは、二組のカップルが無事ゴールインできるのかどうか、という点以上にそこにたどり着くまでの紆余曲折にある、と思うからです。この結婚式のオチを知っていても楽しめること120%間違いないので、ぜひこのシーンまでのあれやこれやの顛末を想像しながら楽しんで観ていただきたいです(*'ω'*)。

 

盛り上がるラブ・ストーリーには勿論、様々な障害や運命の意地悪が欠かせません(笑)。舞踏会であっさりお互い一目惚れするミスター・ピングリーとエリザベスでも、お互いに品が良すぎて奥手なのと身分違いを良しとしないビングリー側の親族の妨害に遭います。ミスター・ピングリーは少々頼りないくらいにお人よしで良い人柄なのに、周りを取り囲む女性親族たちはまぁ、意地悪ばかりです^^;。

 

 

一方、ミスター・ダーシーとジェーンはといえば、お互い第一印象は最悪。先入観と誤解と思い込みから、お互い大っ嫌い状態がしばらく続きます。それでも何かと付き合いが重なるうちに、お互い相手の美点に気が付き、徐々に惹かれていくのですが、もうじれったいほどにすれ違いの連続で、お互い好き同士なのになかなかくっつかず、ヤキモキさせられます(´ω`*)。何度も何度も、あぁもう、んもう!とジリジリとさせられること請け合い(笑)。

 

 

実はこのドラマで、コリン・ファースは一気にイギリス芸能界のスターダムへ躍り出た大出世作なんです。イギリスでの放送当時、毎週このドラマの時間は街から人がいなくなる(皆家でテレビにかじりついているから)と言われた程のフィーバーぶりだったそうです(*'ω'*)。特に、原作にはない、ダーシーが湖で泳いで水も滴る色気漂わせるシーンに女子たち大熱狂♡だったとか。制作側は、ダーシーのお色気シーンのつもりではなく、いつもかしこまって気難し屋のダーシーが、珍しく湖で泳ぐなんて紳士らしからぬハメを外して濡れそぼってる時にバッタリ(この時はもう異性としてバリ意識している)ジェーンに出会ってドギマギする間の悪い格好悪いところを普段とのギャップで面白いシーンにするつもりで挿入したそうなんですけどね(*'ω'*)。

 

コリン・ファースは、元々割と好きな役者さんでしたが、とはいえ彼がミスター・ダーシー?色気??とまったくピンとこなかったのですが、実際に観てみたら超納得!(笑) もう、コリン・ファース以外のダーシーは考えられません(≧▽≦)という程(よって、キーラ・ナイトレイがいくら予想より好演だったとはいえ、映画の方は足元にも及ばないのでした^^;)。ダーシーがエリザベスにプロポーズしてファイナル・アンサーを乞うシーンなんて、何度巻き戻し再生したことか(笑)。

 

とにかくダーシーとエリザベスのカップルの魅力が牽引する部分はかなり大きいのですが、その他の登場人物もそれぞれにキャラがたっていて、何気に楽しい見どころ満載(主人公カップルの恋の行方以外にも)のよく出来たドラマです。

 

 

エリザベスにプロポーズしてあっさりフラれる、ベネット家の遺産相続人のコリンズ牧師(デイヴィッド・バンバー)のイタい勘違い男っぷりも中々に笑わせてくれます(´_ゝ`)。

 

 

ベネット夫人の浅はかさや騒々しさには夫でなくとも時々顔をしかめたくなるものはありますが、娘達への愛情に溢れた愛すべきご婦人。きっと若い頃は明るく無邪気なかわいらしさが魅力的な美人さんだったんでしょうねーと思わせます。寡黙で思慮深いベネット氏は、自分は理知的で心の広い夫と思い込んでいますが、事実立派な紳士ではあるけれども、でも煩わしいことから逃げている部分も否めず、ベネット夫人が癇癪を起す気も時々わからなくもなく。要するに、皆誰しも欠点と美点を具えているということなんですが、ジェーン・オースティンはそういう人間らしさを暖かい目でとらえるのが本当に上手な作家です。

 

 

ピングリーとダーシー以外には、町にしばらく駐屯する兵隊さん達も女性達のゴシップを賑わします。その中でも特に浮ついたウィッカム(エイドリアン・ルーキス)とベネット家一番のミーハー娘リディア(ジュリア・サワラ)はとんでもないことをしでかして、ベネット一家全員を破滅の危機に追いやります。この事件はエリザベスとダーシーの恋にとって打撃ともなり、一方で2人がお互いの愛情を知るきっかけにもなります。他にも、恋のライバルたちも登場し、中々成就しない2人の恋。それだけに、やっと想いが通じ合った暁にはもう、本人以上の喜びに酔いしれてしまいますよ~(笑)。

 

因みに、レニー・ゼルウィガー&コリン・ファースの「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズの第一作目が公開されるとき、原作はジェーン・オースティンの『高慢と偏見』の現代版として紹介されたので、『ブリジット・ジョーンズの日記』の原作者が『高慢と偏見』の大ファンだということは一般的にも多分有名なネタだと思います。(ブリジット・ジョーンズ自体はそれなりに好きですが、『高慢と偏見』の現代版というにはお下劣が過ぎるしブリジットに知性が無さすぎるんじゃ・・・と当時個人的には否定的でした^^;)

 

それに付け加えておくと、ブリジット・ジョーンズの原作者はこのBBC版ドラマも熱狂的ファンで、自作のベースに『高慢と偏見』を求めただけでなく、ブリジットの恋のお相手のマーク・ダーシーはもろ、このコリン・ファース演じるミスター・ダーシーをイメージして執筆したそうです。そうして、見事二人のダーシーをコリン・ファースで実現させたというわけなんです。嬉しかったろうなぁ(*'ω'*)。

 

 

 

最後に豆情報もう一つ。ドラマの中でミスター・ダーシーのお屋敷ペンバリーの外観として登場するこの邸宅は、マンチェスターから少し南のDisleyという町にあるライムパークという場所だそうです。お屋敷の中は、また別の場所で撮影されているらしいのですけれど。親戚の叔父叔母夫婦のお共旅行で偶然見学することになったジェーンが、思わず「この屋敷の女主人になれたら・・・」とらしからぬ想像をしてしまうほど素敵なリアルペンバリー邸、機会があれば一度訪れてみたいものです^^。

 

【キャスティング一覧】
ミスター・ダーシー: コリン・ファース
エリザベス・ベネット:  ジェニファー・エール

ミスター・ベネット: ベンジャミン・ホウィットロー
ミセス・ベネット: アリソン・ステッドマン
ジェーン・ベネット: スザンナ・ハーカー
メアリー・ベネット: ルーシー・ブライアーズ
キティ・ベネット: ポリー・メイバリー
リディア・ベネット: ジュリア・サワラ
ミスター・コリンズ: デイヴィッド・バンバー
シャーロット・ルーカス(のちのミセス・コリンズ): ルーシー・スコット

ミスター・ビングリー: クリスピン・ボナム=カーター

ジョージ・ウィッカム: エイドリアン・ルーキス

レディ・キャサリン・ド・バーグ: バーバラ・リー=ハント

 

今度の週末あたり、久しぶりに通しでDVD鑑賞したいなぁ(´ω`*)。そして、7月のシェイクスピア祭りが終わったら、ジェイン・オースティン特集も開催しようかしらんと考え中~♪

 

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