2016年 イタリア
監督: ジョゼッペ・トルナトーレ 音楽: エンニオ・モリコーネ
主演がジェレミー・アイアンズと、「007/慰めの報酬」のボンドガール
オルガ・キュリレンコってことと劇場ポスターのチラ見以外ほとんど
予備知識なく鑑賞。後から、監督x音楽が「ニュー・シネマ・
パラダイス」のゴールデンコンビだと気が付き納得しました。
静かで落ち着いたストーリーテリングと心の交流、美しい
ロケーションと、何よりも美しい音楽。どうりでねー。
”恋人の行く先々に残した手紙”とか”壮大な物語へと続く謎”
とか”極上のミステリー”とかのアオリがあるから、ラブ・サスペンス風
の映画なんだろうかと思ってしまい、上映中も”彼女にも秘密が・・・”
とかっていうのを見てたし、映画のスタントのバイトをしてたり
するから、実は昔スパイだったとか何かしらの組織にいて、
教授は死を偽装されているけれど本当は何かの陰謀か作戦に
巻き込まれたとか?なんていう筋違いな想像をしてしまいました。
後から思うと苦笑。普通?にラブストーリーでした。謎とかミステリー
とか必要以上に煽るのってどうかなぁー^^;。確かに、<謎>は
ありましたけれどもね。どうしたら、一度拒絶してしまったものを
取り戻せるんだろう、っていうのと、彼女が彼に打ち明けられなかった
過去のトラウマの詳細は何だろう?という2つ。謎とかミステリー
とかいうよりは、”ナゾナゾ”に近いレベルでした。
天文学の世界で相当地位と名声を持っているらしい、ジェレミー
演じる大学教授エドと、大学院生で元教え子の恋人、オルガ演じる
エイミー。エドの立場と家族を慮って二人の交際は公にしないまま
交際6年。ということは、大学に入学したばかりのエイミー、順当に
いけばまだ10代の女の子と、すでに中年だったはずの大学教授が
教室で出会って”ビビビ”。エドにはエイミーと同い年の娘と、彼女と
恐らく10歳以上年の離れた息子がいます。もしかして不倫?とも
思ったのですが、実在する”妻”の姿も形も見えないので、何の説明
もないけれども、死別しているかまたは離婚して子供はエドがひき
とったということなのかな、と推測します。
とにかくラブラブな二人。でもエドは世界中の大学から特別講演に
呼ばれる超多忙な研究者で、エイミーも大学院の卒業試験を
控えて忙しく、あまり会う時間がない代わりに、毎日Skypeやメール
や自宅に届く贈り物と手紙で愛を語り合う日々。観劇中だろうが
授業中だろうが試験直前だろうがライン的なショートテキストが
飛び交う、飛び交う。エドが長期不在のための代理講師による
授業中にもエドからのショートメールがガンガン届いていたその
時に、代理講師からエドの死亡を告げられて茫然自失します。
実はエドは脳に腫瘍を抱えていたことをずっとエイミーに隠して
いて、最後の三か月間、大量の手紙やメール、ビデオメッセージ、
贈り物を仕込んで自分の死後、折々のタイミングで彼女(と、
恐らく息子にも)に届くよう、それらを色々な人に様々な手段で
託していました。でも、さすが紳士。エイミーを縛らないように、
もしエイミーが自分の死を乗り越えて新しい出会いを得たら邪魔
しないように、つきまとわれるのが鬱陶しくなったら自分のメアド宛
にあるキーワードを送ってくれれば、配信を止めるとも告げます。
愛する人の死をなんとか受入れようと努力する中、届けれられる
手紙やビデオが心の支えになっていたある日、ビデオメッセージ
の中でエドが、エイミーが打ち明けずにいたトラウマとなっている
過去の辛い体験について触れたことで激しく動揺し、その勢いで
受信拒否のメッセージを送信してしまい、その後続いたはずのエド
からの通信を全てシャットダウンしてしまい、すぐに後悔します。
生前から、まるでエイミーの発言や行動を予見しているかのような
エドの采配ぶりに、二人の間で”Wizard(魔法使い)”というあだ名
を使っていたエドなので、当然そんな話をしたらエイミーがカっと
なって遮断してしまうことも、その後で後悔することも想定済みだろう
な、と観てる側もエイミーも気が付きますが、どうすればその
”仲直り”ができるのかがわからず、悪戦苦闘します。正直、エイミー
相当察しが悪いのですが、まぁ当事者っていうのはそういうもので
すね。なんとか方法を探し出そうとしながら色々もがく過程で、
過去のトラウマを乗り越え、母親とのわだかまりも取り去り、試験に
も合格し、エドの娘たちとも和解できて、エド以外は後ろ向きだった
人生が前向きに再構築されてゆき、無事にエドとも仲直りできて、
穏やかに、愛情と感謝の気持ちいっぱいに、ようやくエドとの最後の
お別れの時を迎えます。
それにしても、最近見た映画でいうと大好きなジェシカ・アルバ主演
の『おとなのワケあり恋愛講座』もそうでしたが、とかく欧米では
「中年の大学教授と親子ほどの年の差の女子学生」との恋愛ネタ
が鉄板というほど好きですよね。なんでここまで?とほのかな疑問。
冷静にうがってしまうと、まだ10代の女子学生に手を出しちゃうとか、
老年一歩手前の社会的地位ある中年男性の暴走恋愛とか、
独りよがりで身勝手で自己満足な行動だとか、家族そっちのけかよ
とか、もし実際に同じことやったら絶対ひくなーとか思わないでも
ないのですが、絵になる二人による非現実的なファンタジー、しかも
極上の音楽付きとなると、あくまでも切なくも美しいロマンチックな
ラブストーリーに。
そもそも、二人の専攻が天文学って設定からしてロマンチック感
上乗せだし。エドに導かれてたどり着いた、エイミーの卒業論文
のテーマが新星や超新星などの”客星”で、宇宙に突如現れる
まばゆく光り輝く超新星は、実はその星の死=爆発によって発生
した光が、その後何千年もかかって届く輝きであり、超新星を
研究するということは、その星の死後に届く光と向かい合うことで
あるといった論説を、エドの死後届く愛のメッセージの数々と自分
になぞらえるあたりも「くうぅー」となるロマンス路線まっしぐらです。
割と空いていた劇場で、同じ列の一つ空けて隣に座った女性の方
は、最後の1/3くらい、号泣しっぱなしでした。他人に泣かれると
こちらはかえって泣けなくなるものですが、非日常のロマンスに
うっとり浸らせていただけました^^。