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海と山、時々きもの

ダイビング記録+きもの試行錯誤の覚書。…だったはずなのに最近は山歩きの記録簿と化しつつある。
23年秋から山のない国に滞在中のため山歩き頻度は低下中。

今週末はこの夏の大本命、「マルゲリータ小屋でマルゲリータピザを食べる」を叶えた。







夢叶って大満足。

モンブランの記録を終えてからになるけどまたおいおい記録を書いていきたい。

今回のモンブラン登山では一日目の線路沿いでの道間違い(という思い込み)をはじめ色々やらかしたというかおかしかったんだけど、一日目の夜も幾つかやらかした。
 
まず、夕食を終えて部屋に帰ったらザックの中がびしょ濡れになっているのを発見した。
ペットボトルの水を購入して高山病の薬を飲むのに使いそのままザックに適当に放り込んで夕食に出かけたんだけど、どうやらキャップがきちんとしまっていなかったらしく、ペットボトルはほぼ空になりその分の水がザック内に浸水してる、という最悪の事態。
 
一番最悪だったのは、ザックの一番下においてたオーバーグローブ2セットとウールのインナーグローブ1セットが水に浸かり、そのうちオーバーグローブ1セット(ワークマンのインナー付きの奴)とインナーグローブがびしょ濡れになった。
もう1つのオーバーグローブはインナー付きではないのですぐに乾くだろうと思われたし、今日来るまでに使った薄手のインナーグローブでグーテ小屋までは行けるだろうけどこれはかなり焦ったし萎えた。
 
で、かなりしおしおとなりながらザックの中のものを全部取り出し水分をふき取って一息ついてから明日用に食堂にお湯をもらいに行こうかな、と山専ボトルを取り出して蓋を開けたらなんかおかしいことに気づいた。
 
中蓋がきちんと閉まらない。
 
中蓋をしげしげと眺めながら自分の記憶をたどっていたら、3月の山行から帰ってきた後ボトルの蓋を分解して洗った後に恐らくゴムの部品をつけ忘れているのだろう、という結論に達した。
 
山に行く際は家を出る前に持ち物を細部まで確認しましょう
 
という教訓を得た。
 
そしてこれも結構焦った。
全然寒くないので明日のグーテ小屋まではペットボトルだけでも十分行けるけど、グーテ小屋から頂上を目指す時はさすがに温かい飲み物がないとかなり不安。
まぁ、最悪グーテ小屋でお湯入れてもらってボトルは絶対横にしないようにしながら登ればなんとか行けるか、と思いながら準備して就寝。
 
例によって全然寝られず、そのうち夜中に頂上を目指すのであろうと思われる人達が準備し始め、その後少しだけうとうとできた。
6時前に起きたとき、なんか部屋に人の気配がないな、と思って起き上がってしばらくしてから思い切って部屋の電気をつけてみたら前日ほぼ満員だった部屋には私以外誰もいなかった。
やっぱりテートルース小屋に泊まって頂上を目指す人が殆どなんだろう。
 
もそもそと朝食を食べる。お腹減っているはずなのに全然食べられない。
パンは2切れを食べるのがやっと。サラミもチーズもあんまり喉を通らない。
主食コメで育った昭和生まれにヨーロッパ式朝食は結構きつい。私だけかもしれないけど。
気休めとして前日シャモニーで購入したジェル飲料を摂取する。
 
8時過ぎだったと思うけどゆっくり出発。
受付の女神に「出発します。ほんとにありがとうございました」と言ったら、「良い一日を。気を付けてね」と返ってきた。
マジ女神。
 
テートルース小屋を出てグランク―ロワール方面に向かう。
本日の目的地は右上に見えている宇宙船みたいなグーテ小屋。
 
 
 
この辺りで既に落石の痕跡がある。
 
こんな石が降ってきたら一溜まりもないので、ヘルメット装着。アイゼンはもうちょっと後でつけた。
 
高速道路みたいな道がついているのでそれを辿っていけばいいだけ。
ピッケルは一応背中とザックの間に挟んだけど特に使うようなところもない。
 
いよいよグランク―ロワールが近づいてきて、ちょっとわくわくというかどきどきした。
 
あれがグランク―ロワールか。。。
グランク―ロワールの取りつきまで雪面が途切れてちょっとだけ岩場を登るっぽい。
 
 
 
グランク―ロワール取りつき。
動画でよく見る雪のない時の本来の横断ルートはこの写真の下、ロープが張ってある所なんだけど、トレースは緩やかな上り坂でついているのでそれを辿ることにする。
 
 
 
落石が起こりませんように、と願いながら、ちらちら上を見つつ横断。
予想していた通り、ヘタレの自分は一気に通り抜けられずグランク―ロワールのど真ん中で立ち止まってしまった。
遠くからはわからなかったけど真ん中は雪面の上に細かな石ころによる川のような流れの跡が出来ていて、如何に落石が多いのかがわかる。
なんとか通過しほっとする。
 
グランク―ロワールを抜けたらもう安心…とこの時までは思っていた。
 
 
 
この地点まで来たときに、上の方から割と小さな石ころが降ってくるのが見えて、(あれ、この軌道って…)と思う間もなく「石ころ」が「岩」になりどんどん自分に迫ってきた。迫ってきたというか吹っ飛んできた。
鈍くさいので全く動けず体を左の岩面に寄せるのが精いっぱいだったんだけど、幸い、目の前のこのペンキがついている岩にぶつかって軌道が右に逸れてくれた。
 
両手を合わせたくらいのサイズの岩で、まともに食らってたら吹っ飛んでいただろうと思われる勢いだった。
 
こわ。。。
 
落石ってこうやって降ってくるんだ。。。
そしてグランク―ロワールを超えても落石ってあるんだ。。。まぁ考えてみれば当たり前か。
 
いつも登りはへばって俯きながら登ってるんだけどこの後は上をガン見しながら登った。
そしてやっぱりここを真っ暗闇で通過する旅程を組まなくて良かった、と改めて思った。
 

 
ダイナミックな岩登りをするところもあるんだけど全体的にガレガレザレザレしているので、私のような岩登りスキル1/10みたいな人間には結構つらい。後、落石を引き起こしてしまわないか不安なので足運びにはめっちゃ慎重になる。
(私の後から登ってきている人はいなかったけど、下っていく人達とは結構すれ違う)。
 
こういう所は楽しいんだけどな。
 
ここは直登しようとしてちょっと怖かったのでうろうろ別の道を探した結果右側から巻いた所(帰りも巻いた)。
 
ペンキの目印はついているんだけど、自分の技術ではちょっと怖いな、と思ったり、踏み跡も色々あったりするので迷う。
 
フィックスロープが見え始めたのでチェストハーネスを作る。
 
別に確保しながら進む程の所でもないように思うんだけど、ちょっと怖い。
なんかやっぱり、去年メンヒで落ちたことと3月のひどい山行が自分の中で負の記憶として大きくなっていて好きだったはずの岩場に恐怖心というか苦手意識が出来ている気がする。
 
この岩尾根は登りも下りもアイゼンをつけていない人が結構いた。
雪のない所が殆どだったので技術ある人はアイゼンなしでも全然いけると思うんだけど、私はやっぱり怖かったのでグランク―ロワール手前からグーテ小屋までずっとアイゼンつけたまま登った。
だって滑ったら落石まき散らしながら結構な距離を落ちると思う。
 
こういう所も以前ならセルフビレイとかしなかったと思うんだけど、この日も帰りの日も全部いちいちセルフビレイしながら登った。
 
岩尾根は思っていたよりも長く急で、速攻バテバテになり、休憩しまくり行動食のジェルを啜りまくりながら登った。
 
前日はあれがモンブランかな、などとアホなこと思っていたけど、ここまで登ってきて違うことに気づいた。
グーテ小屋と同じ高さのはずがない。
 
 
 
懸垂下降のための支点だと思うけど、もっと雪がある時はこの尾根でも懸垂が必要なことがあるのかもしれない。
 
フィックスロープが出てきてからずっと岩場を登る訳ではなくて、途中で何度かこういう普通の登山道みたいな道になったりする。
 
これがたぶん最後の岩場の登り。
 
ここで下ってくるパーティを休憩しつつ待ってたら、最初におりてきた若者に1人?と聞かれた。
 
「1人だよ」
「どこから来たの?」
「今住んでるのは●●だけど出身は日本だよ。あなたは?」
「ポーランドだよ」
 
ポーランド!
遠く(でもないけど)から来るんだなぁ、と思ってたけど、グーテ小屋でも結構ポーランドからのグループを見かけた(サッカーのユニフォームみたいなのにPolandと書いていた)ので山好きの人が多いのかもしれない。
 
「どこまで行くの?」
「今日はグーテ小屋まで。明日頂上を試してみようと思ってる。頂上まで行けた?」
「昨日頂上まで行ったよ」
 
と満面の笑顔の若者。羨ましい。
 
「すごい風だったからヴァロ小屋で3時間くらい停滞したよ。昨日頂上を目指した人達は皆そこにいた。3時間くらいいて、だれかが『そろそろ行ける』って小屋を出て皆それに続いた。風はすごかったけどちょっとましになってて、何とかたどり着けたよ」
 
皆勇気あるなぁ。。。
私はヘタレなので、風すごかったら引き返してしまうかもしれない、と思いながら若者の話を聞く(そして結局その予想は正しかった)。
 
最後に名前を聞かれたので「●●」と答えたら「僕はバルテック。気を付けてね。頂上行けるといいね」とさわやかに挨拶して若者は下って行った。
 
名前、かっこよ。
 
私がこれまでに聞いたかっこいい名前ランキング1位かもしれない、などとどうでもよいことを考えながら登山再開。
 
心配していた旧グーテ小屋直下の急斜面は結構まだ雪が残っていたけど予想していたほどは怖くなかった。
 
へろへろになりながら登り切ってなんとか旧グーテ小屋の上まで上がったら景色が素晴らしすぎて声が出た。
 
最高of最高。
 
 
 
ここまで登ってきて良かった、と心底思った。
今回の旅でこの時が一番景色への感動が大きかった気がする。
 
嬉しさでいっぱいになりながらてくてくと高速道路を歩いてグーテ小屋着。
 
受付でチェックインしている時にふと、横の棚を見上げたら保温ボトルがあるのを発見して即購入した。
助かった。。。
保温力は山専ボトルに劣りそうだけど何もないよりまし。
 
部屋に荷物を置いた後、食欲はなかったけどとりあえず何かエネルギー的なものをお腹に入れようと思ってクッキーとお茶を頼む。
 
ここまで結構登ってきた気がするけど、地図で見るとまだ半分くらいしか来ていないようでちょっと悲しい。
 
靴と昨日テートルース小屋で濡れた手袋を干しに外に出てモンブラン方面を眺める。
ここまでこんなにバテバテで明日果たして山頂まで行けるんだろうか。
通常は5時間らしいけど、私は絶対に5時間ではいけない。
通常3時間のテートルース小屋ーグーテ小屋を4時間かかってるんだから、頂上まではたぶん7時間はかかる気がする。

 
食堂に掲示してあった明日の天気予報を眺める。
 
「vent a 4000m(4000m地点での風)」は「北西60km/hのち40km/h」、「vent au sommet du Mont-Blanc(モンブラン頂上での風」は「北西60㎞/hのち50㎞/h」と、早い時間帯は結構強い風の予報。
 
夕食後に見た天気予報サイトも大体同じ(グーテ小屋は外に出れば電波通じる)。
天気は快晴だけど午前中は風が強い。ただ風は午後になるとちょっとましになる。
 
 
 
明日は頂上への往復だけだしあまり早く出発する必要はない。
ちょっとでも暖かいように日が出てから出発したいし、風が強いのは嫌だし、7時間かかるとして6時出発でいいかな、と決めた。
 
小屋に貼ってあったポスター。「睡眠薬飲んで登山するのはよくないですよ」らしい。
 
山小屋でいつも睡眠不足に悩まされるので睡眠導入剤とか使おうかな、と考えることもあったんだけど、やっぱよくないのか。。。
しかしそうするとこの「山小屋で寝られない問題」はどうやって対処したらいいんだろう。
 
と考えながら就寝。
モンブラン山旅一日目。
前日は殆ど眠れなかった。
テートルース小屋が予約できたことでこの日の旅程はそんなに厳しいものではなくなったけど、翌日以降への不安があったのかもしれない。
 
始発のバスでベルビューのケーブルカー乗り場に向かう。
平日だと始発のゴンドラには間に合わなそうなんだけど休日は6時台のバスがあって、7時過ぎにはケーブルカー乗り場に着いた。
チケット売り場は開いていないので開くまで待つ。
待っている人は結構いるけどヨーロッパなので列を作って待ったりはしない。日本人としてはやきもきする。
 
ここからテートルース小屋までは標高差2172m。
 
列はなかったもののチケット売り場がオープンしたらなんか自然な流れで列みたいなのが出来、チケットを購入し幸い最初のケーブルカーに乗ることができた。
ー ただ適当な列なので、私の後から来た人でもたまたま立っている場所が扉に近く先にチケット買ったりしていた。
 
ケーブルカーはそこまで大きくないのでもっと繁忙期だと場合によっては始発に乗れなくなる気がする。
このヨーロッパの「並んで待つ」という習慣がない所、未だに自分にとってはストレスたまる。
(列のためにあらかじめ場所が区切ってあったりするところはさすがにこっちの人もちゃんと並ぶ)
 
数分で頂上駅到着。
なんかこの先に、山小屋の予約を確認しているのかな?と思われた男女2人がいた気がしたんだけど、私が準備している間にいなくなっていたので気のせいかもしれない。
 
この左の坂を上がる。
 
ここからテートルース小屋までは標高差1373m。私にとっては結構な距離。
グーテ小屋までは標高差2023mとのことなので、ほんと初日テートルース小屋の予約が取れて良かったなと思う。
 
この辺りで、テートルース小屋まで2時間35分、の標識を見たんだけど、当初は線路沿いを上がるつもりだった。
線路の脇に小道がある。
 
当初この線路沿いを上がっていたんだけど、15分程経ったところで、なんでそんなことを思ったのかわからないんだけど、突然、
 
ほんとにこの線路はニーデーグルまで行くんだろうか
 
と不安になった。
私の前後に誰一人歩いていなかったからかもしれない(今思えば私がのろのろ準備し過ぎておんなじケーブルカーの人はみなはるか先を歩いていたんだと思う)。
 
そしてここから、今思い返してもどう考えても自分の頭がいかれていたんだけど、謎の行動&思考回路になった。
 
まず、不安になったところでYamapの地図を取り出した。
で、自分の今いる位置から線路のマークをすいすいスワイプしていったら、
 
Mont Lachat
 
という駅に続いていることを発見した。
 
もしこの時そのまま線路をスワイプし続ければ、線路はMont Lachatを経てやがてニーデーグルに達する、ということがわかったはずなのに、私はMont Lachatの文字を見た瞬間何故か、
 
やばい、まちがえた
 
とプチパニックになった。
 
私の事前知識では、ベルビューからニーデーグルまでは一駅のはず。
↓
モンラシャという駅名はなんかで見た気がするけど、ベルビューの次がモンラシャなのはおかしい(*注*おかしくないです)。
↓
ということはちゃんと調べ切れてなかったけど、きっとベルビューからは線路は二路線あって私はニーデーグルに行く路線ではなく間違えてモンラシャに行く路線を歩いてきてしまったんだ(*注*線路は1本です)
↓
引き返さなきゃ!
 
という正常な人が宇宙猫になりそうな謎思考により、慌てて引き返し始めた。
 
別に地図上の線路をそのままスワイプし続ければ「ニーデーグル駅」の文字が見えて間違っていないことがわかったはずなのに、何故こんな思考になり結局引き返してしまったのか今もって謎。
 
前日もそうだけど、ここ数日初日グーテ小屋まで行けるかとかテートルース小屋の空きがあるかとか色々不安過ぎて寝不足だったからかもしれない。
 
とりあえず確実に言えることは、この時私の思考回路はショート寸前、というかショートしてた。
 
そして思考回路がぷっつんしたまま、それまで20分程登ったのを無駄に引き返して、正規のトレイルを辿ることにした。
 
ちょっと時間を無駄にしたものの、結果的にこのトレイルを歩いて良かったなと思う。
このトレイルは最初ちょっと高度を下げた後はほぼ水平距離を歩き最後に一気に高度を上げる、というルート。
 
当初は木陰を歩くことができるし景色は素晴らしい。
 
途中何か所か鎖場が出てくるけど危険ルートは全くない。
 
これは何の侵入を防ぐ目的なのか、扉みたいなのが何か所か設置してあった。
 
装備からしてモンブランではなさそうだな、という人達もいたんだけど、恐らくこのルートはツールドモンブラン(TMB)の一部になっている気がする。
 
この野原みたいなところでTMB(?)とニーデーグル行きのルートが分岐する。
 
ここを過ぎると急激に登りになり、しかも結構朝日が当たって、あっという間にヘロヘロになり始めた。
 
小さな雪渓がまだ残っているところもあるけど何にもつけなくても大丈夫な程度だった。
 
雪渓を渡った後は日陰だけどすんごい急な崖についた道で一気に高度を上げていく。ばてる。
 
日陰の崖道を登り切った後はじりじりとお日様に焼かれながら更に高度をあげていく。
あそこに線路っぽいものが見えるということはもうすぐニーデーグルだと思いたい。
 
ニーデーグル小屋がようやく見えてきたけどここからがまだまだ遠くて絶望。
 
よれよれになりながらニーデーグル小屋到着。
 
よれよれのバテバテだけど、一応最初の30分くらいのロスを除けば3時間弱くらいで来られた。
コースタイム(2時間35分)よりはかかっているけど、これなら「17時までにテートルース小屋にチェックインする」という目的は達成できそうで安心する。
 
干からびていたのでここで飲み物を2本買い足す。
 
 
 
食欲はあんまりなかったんだけど、とりあえず何かお腹に入れようと思ってスープを頼んだ。
 
小屋に着いた時は全然人がいなかったんだけど、のろのろスープを啜っている間にどんどん人がやってきた。
結構軽装、というかトレランスタイルの人達が多くて、この人達はどこまで行くんだろう、と不思議になる。
 
犬も来ていた。
 
スープをちびちびしながらルートを確認していたら、想定していたルートの下にちょっと短そうな別のルートがあるのを発見した。
 
この下の地図で上のルートを行っている記録が多い気がするんだけど、下にもルートがある。
 
短そうでできればこっちを行きたいな、という誘惑に駆られたんだけど、このルートがどんなところなのか全然下調べしていないのと、最後テートルース小屋に微妙にたどり着かず道が途切れているのが気になる。
 
ここはもう恥を忍んで小屋番さんに聞こう、と思って小屋の中に入って聞いてみたところ、「この下のルートもテートルース小屋に行くよ。ただ、雪が多い時によく使われるルートだから今の時期は上のルートを行ったほうがいいよ」とのこと。
 
なるほど。なら素直に当初予定通り上のルート(ニーデーグル駅から上がるルート)を行こう、と思って1時間くらいの休憩の後小屋出発。
 
ただ、最初はルートが明確だったんだけど、ちょっと行った辺りでルートを見失ってしまった。
 
この辺りでルートを探してうろうろする。
 
一応、ニーデーグル駅からのルートは隣の尾根上に見えているんだけど、微妙にガレた急斜面を下らなきゃ合流できそうになかったりしてあまり行きたくない。
 
悩みながら(でもここであってるはずなんだよな)とYamapの地図を眺めながらきょろきょろしていたら、上の方から下ってくる人が見えてここでも恥を忍んで「テートルース小屋から下ってきました?」と訊いてみた。
 
そしたらちょっと間があった後に、「そうだけど、道が悪いのであまりお薦めしない。一番良いのはニーデーグル駅まで引き返して駅からのルートを上がることだよ」と言われてしまった。
 
うーんそれは嫌だ。。。
 
たぶんこの人が言っているのはニーデーグル小屋の小屋番さんが「もっと雪がついている時のルート」と言っていたルートの事な気がする。
私はそっちに行きたいんじゃなくてニーデーグル駅からのルートに合流したいんだよな。地図上では道があるから。
でもこの人はどうやら英語があまり得意でないようで、私の方もこれをフランス語で説明する能力はない。
 
なので結局Yamapと周りを交互に見つつそのまま進むことにした(アドバイスを無にしてすみません。)
 
しばらくしたら横切れそうな雪渓が出てきたので雪渓を横切りニーデーグル駅からの道に合流。
 
このログの下の方のルートがこの日ニーデーグル小屋から上がったルートなんだけどルートを大幅に外れているのがたぶん迷った辺り。
小屋からのルートはニーデーグル駅からのルートに比べてちょっとわかりにくい所がある。
 
何とか正規ルートに合流できてほっとする。
この辺りは結構アイベックスが多い。
 
ひょっこりアイベックス。
 
暑くてばてばてだけど振り返れば景色は最高。
 
でも前を見ると道のりはまだまだ遠くて絶望する。
遠くの方にグーテ小屋は見えるけどここからはテートルース小屋は見えない。
 
この辺りで雪渓をえっちらおっちら登っていたら、上の方からニーデーグル小屋で見たトレランナーの集団がヒャッハーしながら降りてきて吃驚した。
 
このトレラン集団はどこまで行ったんだろう?
トレランシューズだし超軽装でヘルメットもないしまさかグーテ小屋までは行ってないと思うけど。
(でも翌日グーテ小屋に向けて岩場を登ってたらトレランシューズみたいなので降りてきてた人もいた)。
 
でもテートルース小屋までだとしても私がスープ啜ってる間にここからまだはるか先に思えるテートルース小屋に到達して降りてきたってことなんだからすごい俊足だ。。。
 
登山道の真ん中で堂々と寝転がってるアイベックス。
行きも帰りも何頭かいたのでこの辺りが縄張りなんだろうか。
 
アイベックスを邪魔しないように回り込んで登ってたら、後ろから別のアイベックスが登ってきた。
 
君らすごいよね。そんな雪の急斜面でもアイゼンとか必要ないもんね。
 
 
 
そしてテートルース小屋、遠い。。。
 
最後の岩尾根をひいひい言いながら登る。
雪は多少ついているところもあったけど、アイゼンなしでも行けた。
 
ようやくテートルース小屋が見える。
ちなみに私が半分魂抜けながらのろのろ登ってる間、この横の雪斜面をヒャッハーしながら降りていく集団(雪山装備ではあった)がいた。
結構急だったけどすごいな。。。
 
岩尾根を登り切った所に山小屋の予約を確認されるという噂の検問所(?)があったけどこの日は閉まっていた。
 
ここでノルウェーから来たというおじさまと少し話をして、「じゃあ山小屋でまたね」と私が先に出発したんだけど、この何でもない雪の平原をへろへろで5歩歩いては休み、5歩歩いては休み、と歩いてたら後ろから軽快に歩いてきたノルウェーおじさまに「手貸そうか?」と笑われた。
 
ヘタレに生まれてすみません。
 
到着は16時半。ニーデーグル小屋を出て4時間半。
ニーデーグル小屋の小屋番さんは「テートルース小屋まで僕は2時間もかからないよ」と言っていたし殆どの人の記録では3時間くらいで行けているので、如何に私が駄目かということがわかると思う。
 
ノルウェーおじとか、失礼ながら私より20歳くらいは上に見えたんだけどな。。。
岩尾根で干からびた私がへろへろと登っている後ろからしっかりした足取りで登ってきてすいすい抜かしていき、検問所で休憩した後の数十mの道も結局抜かされてしまった。
問題は年齢じゃないんだ。私がヘタレなだけなんだ。。。
 
とちょっぴり悲しくなりながらチェックイン。
「〇〇と言います」とフランス語で受付のお姉さんに伝えたら、
 
「あら、あなたね。キャンセル待ちの。あの時電話取ったの私よ」
 
と英語でにっこり言われて、
 
我が女神よ、ここにいらっしゃったのですね
 
となった。
 
「あの、本当に有難う。ほんとのほんとに有難う。あなたのおかげで助かりました。一日でベルビューからグーテ小屋まではとても行けなかったから」
 
と伝えたけど、もっと感謝の気持ちをうまく伝えられない自分の乏しい英語力が恨めしかった。
 
ここまでの所要時間とバテ具合を考えると、初日に17時までにグーテ小屋到着は絶対無理だったと思うので、ほんとこのお姉さんのおかげで助かった。
 
チェックインした後、外で景色を眺めてごろごろする。
テートルース小屋もグーテ小屋もインナーシーツ必須なのでテートルース小屋で購入した。
 
上の方に旧グーテ小屋とその右にグーテ小屋が見える。
旧グーテ小屋の下がルートである尾根のはずだけど、この尾根を登るの、私は一体何時間かかるんだろうか。。。
 
で、たぶんあれが悪名高いグランク―ロワールなんだろうな。
この写真だと右下のあたりにトラバース跡が見える。
雪は思ったより結構溶けてる。
そしてトレースがちょっと上り坂気味についているのを見て憂鬱な気分になる。
早く通り抜けなきゃいけない所なのに私のヘタレ体力では登りを素早くなんてことは絶対無理だ。
 
グランク―ロワールは上り坂が憂鬱ではあるもののまぁ運みたいなものだからそんなに不安はないんだけど、その後の尾根が自分の予想より結構ハードそうに見えて明日の不安でぎゅっと胃が重くなった。
まぁ、明日はグーテ小屋に登るだけだから道を迷ってもいいからゆっくり確実に行こう。
 
もう17時を過ぎてたけど上から下って来て更にそのまま下っていこうとしている人達がいて、この人達は今日どこまで行くんだろう、と不思議になった。
10時頃までは明るいとはいえ、今から降りたらニーデーグルつくのは8時にはなるだろうし。。。
皆タフだな。。。
 
 
 
グーテ小屋の食事の前菜のスープ。
なんか味に覚えがあるな、と思ったら昼にニーデーグルで食べたのと同じだった。
 
メイン(スープとメインの間にサラダもあった気もするけど忘れてしまった。気のせいかもしれない)。
おいしかったけど例によってお腹空いてるはずなのに全然食べられず肉2切れを飲み込むのが精いっぱいでクスクスも半分以上は残してしまった(普段嫌いな野菜はなぜか全部食べられた)。
 
テーブルは小屋から指定される(名前を書いたプレートがおいてある)。
ノルウェーのおじさまと同じテーブルになったのでまたちょっと話をした。
モンブランにはもう何回も来ていて、明日は頂上を目指しそのまま麓の駐車場まで降りるという。
 
「そのまま麓の駐車場まで!!??」と目が飛び出そうになった。
私が真似しようとしたら確実に疲労で途中で滑落してると思う。
このノルウェーおじさまだけではなく、翌日や翌々日もいろんな経験豊富な人や体力化け物みたいな人達と出会った。
 
食堂に松本清張の本があった。
"Inspector Imanishi Investigates"ってそんな本あったっけな、と思って帰国後に調べてみたら「砂の器」だった。
アルプスの山小屋においてる日本の本が「孤高の人」とか「神々の山嶺」ではなく「砂の器」なのちょっとおもしろい。
 
今回のモンブラン登山の不安の一つに高山病になったらどうしよう、というのがあった。
 
もともと不安だったところ、本来はシャモニー到着翌日にエギーユミディでコスミック小屋まで散歩して高度順応しようかなと思っていたのに直前のテートルース小屋一泊追加でそれもできなくなったのでさらに不安になった。
 
到着翌日に即山行スタート、というスケジュール。
そういう意味では今回の山旅で、高度順応的なものは全くしていない。
 
ただ、結果として、高山病らしき症状はほぼ全くでなかった。
(寝る前にちょっと頭痛いかな、となったくらい)。
 
去年ブライトホルンとアラリンホルンで気持ち悪くなったので、今回はラッキーだった。
グーテ小屋では、高山病でヘリで運ばれた人もいたので。
 
今回大丈夫だった理由を自分なりに2つ考えると、1つは
 
①日程がかなりのゆっくり登山であったこと
 
テートルース小屋泊を追加したことによってエギーユミディでの高度順応はできなくなったけど、同時にというか逆にかなりのゆっくり登山になった。
1日目にベルビューからテートルース小屋、2日目にテートルース小屋からグーテ小屋、3日目にグーテ小屋から山頂を目指す、と徐々に高度を上げていく旅程になったので、これが逆に良かったのかもな、と思う。
 
②処方箋無しでも高山病の薬が買えたこと
 
高山病の薬、ダイアモックスは医師の処方箋がないと買えない、ということを直前に知って(\(^o^)/オワタ)と思っていたけど、シャモニー到着後、ダメ元で薬局に行ってみた。
 
「高山病の薬ってありませんか?」と聞くと、カウンターのマダム曰く、
 
「2種類あるわよ。強いのと弱いの。強いのはお医者さんの処方箋がないと買えないけど」
 
処方箋なくても買える薬あるの神やん
 
というわけで処方箋無しでも買える「弱い方の高山病の薬」がこちら。

 
mal des transportsというのは乗り物酔いなので、「え、乗り物酔いと高山病の薬っておんなじなの?原因違うんじゃないの?」と思ったけど、確かにmal des montagnesとも書いているし、半信半疑ながらこれしかすがるものがないので買ってみた。
 
薬局のマダム曰く、摂取は1日5錠が上限、食後よりは食前が良いとのこと。
 
私はこれを買った日(つまり山旅開始前日)の夜から、朝、昼、夜、の1日3回飲んだ。
 
この2つのおかげか、今回頭痛や気持ち悪さみたいなのは寝る前を除いてなかった。
7月もちょっと高山に行く予定なので、この薬を握りしめて行こうかなと思っている。

 
 
 

以前書いたようにモンブランにもし登るなら三山縦走ルートの方から登ってみたいなと思った。

ただ、色々考えた結果、結局今回、コスミックルート/三山縦走ルートは断念し通常ルート/グーテ小屋ルートに決めた。

以下は理由、旅程、実際の所要時間、ルート全体の感想。

 

①ルートを決めた理由

 

コスミックルート/三山縦走ルートで一番個人的に怖かったのが、雪崩リスク。

夏のコスミックルートでは、調べた限りで過去に2回、大規模な雪崩が起きて人が亡くなっている。

(春も含めるともっと雪崩は起きている)。

 

一つ目は2008年8月、モンブランドゥタキュールで夜中の3時頃セラックが崩壊した発生した雪崩で8人が亡くなっている。

二つ目は2012年7月、モンモディの急斜面で朝5時頃、同じくセラックの崩壊による雪崩で9人が亡くなっている。

 

どちらの事故も別に悪天候や雪崩が発生しやすい状況だったわけではなく、参照した報道によれば予想外の発生だったとのこと。

 

そしてこの2つ目の雪崩に関する動画を見ていたら、ご遺体の捜索・回収の様子が結構鮮明に映っていて、なんかもう、見ているこっちが息苦しいというか心臓が掴まれるような気持ちになってしまった。

 

個人的に山の事故で一番怖いのが雪崩。

ダイビングでも洞窟で迷ってエア切れ起こしたら、という想像をたまにして一人で震えあがったりしてたので、私はたぶん、暗く狭い所に閉じ込められて息が出来なくなることがめちゃめちゃ怖いんだと思う。

 

雪崩で怖いのは、自分がそれを引き起こすこともあり得るということ。

自分が死ぬのはまだしも、自分のせいで何人も死んだりしたら、もうどうしたらいいかわからない。

 

というわけで三山縦走ルートに行きたい気持ちがどんどん萎んでいく中で、体力的にどう考えても私にはかなり厳しいし、かといってビバークしたら罰金取られる可能性もある、ということも判明しどんどん気持ちは萎え、おとなしく通常ルートから行くことに決めた。

 

結果的に、通常ルート、しかもテートルース小屋発ではなくグーテ小屋発からでも頂上にたどり着けないカス体力だったので、この判断は正しかったなと思っている。

 

②旅程

通常ルートから行く場合の旅程は、いろんな人の記録をみると

 

1日目:ニーデーグルからテートルース小屋

2日目:テートルース小屋からモンブラン頂上を目指しグーテ小屋帰還・グーテ小屋泊

3日目:グーテ小屋から下山

 

という旅程が多いように思う。

 

ただ自分の場合は、

 

①真っ暗な中でいつ落石が降ってくるかわからないグランクーロワールを抜けるのが嫌(せめて目視して避けたい)

②一人なので、初めての岩場を真っ暗な中で登れるか不安

③単純に自分のゴミ体力ではテートルース小屋ー頂上ーグーテ小屋はたぶん無理

 

という理由でこの旅程はなしになった。

 

初日一気にニーデーグルからグーテ小屋に上がり、グーテ小屋ー頂上ーグーテ小屋(あるいはテートルース小屋)にしようと思った。

 

幸いグーテ小屋が2連泊で取れたので当初は

 

1日目:ニーデーグルからグーテ小屋

2日目:グーテ小屋ー頂上ーグーテ小屋

3日目:グーテ小屋ーニーデーグル

 

を計画していたけど、以前書いたように出発直前、自分が行く日はまだニーデーグル駅までトラムが開通していないことが発覚したので、最終的な旅程は、

 

1日目:ベルビューーテートルース小屋

2日目:テートルース小屋ーグーテ小屋

3日目:グーテ小屋ー頂上ーグーテ小屋

4日目:グーテ小屋ーベルビュー

 

となった。

 

③所要時間

 

実際にかかった時間は休憩時間込でYamapのログによると以下の通り。

なお、3日目は頂上までたどり着けておらずヴァロ避難小屋までの往復。

 

1日目:ベルビューーテートルース小屋  約8時間30分

2日目:テートルース小屋ーグーテ小屋  約5時間

3日目:グーテ小屋ーヴァロ避難小屋ーグーテ小屋 約6時間

4日目:グーテ小屋ーベルビュー 約8時間

 

1日目はベルビューからニーデーグル小屋までで線路沿いではなくトレイルを辿って3時間、その後ニーデーグル小屋で3~40分昼食がてら休憩してニーデーグル小屋からテートルース小屋まで4時間半くらいかかっている。ニーデーグルからテートルースは本来3時間程度で行ける(ニーデーグル小屋の小屋番さんは1.5時間で上がれるらしい)ルートなので私はかなり遅い。
 
2日目も本来テートルースとグーテ小屋は3時間程度で行く人が多いところ私はルート迷いつつとはいえ5時間かかっているのでほんとに体力と岩登りスキルがゴミ。
(下のYamapのログは休憩2時間と出ているけどこれは私の進むスピードがあまりに遅かった&ルート取りを迷いまくったせいであって実際に休憩した時間は30分もない)。
 
3日目、グーテ小屋とヴァロ避難小屋は3時間程度で行く人が多いようだけど私は3時間半かかった。
ヴァロ避難小屋から頂上までは2時間程度らしいので、もし続けていたら3時間はかかっていたんじゃないかと思う。
疲れすぎて、ヴァロ避難小屋からの帰りも行きと同じくらい時間かかっている。
 
4日目の下りは疲れて結構休憩したりニーデーグル小屋で大休憩したけどそれでも8時間くらいでベルビューまで下れた。
なお、ニーデーグルからはトレイルではなく線路沿いを下った。

 

④ルートの感想

 

今回、自分の事前の想定以上に怖いなと思ったのはテートルース小屋ーグーテ小屋間。

悪名高いグランク―ロワールの落石はそこまで怖くはなく、岩場が普通に私の想定を超える怖さだった。

フィックスロープが張ってあるところは別に怖くないんだけど、張っていないところで結構自分にとっては怖いor難しい所が多かった。

 

一応岩上には目印があるんだけど、目印が複数あるように見えたり、見失ったり、目印通りに行くと「ほんとにここいくんですか??」みたいなところに出たり、行きはいいけど帰りは嫌だな、と思うようなところもあったりして、行きは結構迷った。

登りで、「ここ嫌だな」と思う箇所が2か所あり、帰りは全部尾根の左側(下りの場合)を巻いた。

ただ、巻き道もザレザレで気を付けないと落石を引き起こしそうで怖く、このテートルースーグーテ間の岩尾根が一番心理的に負担が重かった。

グーテ小屋に着いた後、翌日のモンブランへの行程ではなく翌々日にこの岩尾根を下ることを考えて憂鬱になるくらいには嫌だった。

 

ただこれは、私がクライミングド下手人間&去年メンヒで落ちた&3月の最悪の山行のせいでちょっと岩場に苦手意識が出来ているからの可能性がある。

このテートルースーグーテ小屋の岩尾根に苦労したと書いている人の記録を見た記憶がないので、大抵の人にとっては大丈夫なのかもしれない。

 

とはいっても、私が行く数日前にグランク―ロワールの近くでソロの登山者の遺体が発見されたりしているので、どんなルートにも言えるけど事故のリスクはあるのだと思う。

Un alpiniste de 46 ans retrouvé mort en bas du couloir du Goûter, dans le massif du Mont-Blanc