チキンのメンヒ登山記録④:雷、雪、視界不良の中下山→岩から落ちて転がる | 海と山、時々きもの

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ダイビング記録+きもの試行錯誤の覚書。…だったはずなのに最近は山歩きの記録簿と化しつつある。
23年秋から山のない国に滞在中のため山歩き頻度は低下中。

唯一後から登ってきたガイドパーティが頂上に向かうのを眺めながら少しだけ齧ったプロテインバーの残りをザックにしまい、セルフビレイを外して下山開始。


この時点でたぶん12時過ぎだったと思う。

雲が厚くなってきている、早く降りたいな、とは思っていた。


ただこの時点でそこまで危機感はなかった。

この雪の急登は皆普通に前向きで降りてたけどチキンな私は念のためと思って途中までバックステップで降りた。


これも今思えば反省点。
雪の状態は悪くなかったので気を付けて普通に前向きに降りればよかった。
その方が早く降りられた。

降りてる途中で嫌な雲だな、早く降りなきゃ、と思う。


…思ったはずなのに私はここで、ちょっと怖いしせっかくロープ持ってきたんだから懸垂下降試してみるか、などと思ってしまった。

いや、早く降りろよ、

 

と今なら思う。

迫る危機に気づかず呑気に人生初の懸垂下降にわくわくしながらセルフビレイを取り


ロープを準備し


捌いて

 

末端処理し、


降りた。

 

おお、降りられた、と感動。

懸垂下降、楽しい。
ロープの長さがあまりまくってるしせっかくだからこのまま次の岩も降りるか、とそのままロープを引っ張って懸垂下降。


いや、早く降りろよ。

とほんとに思う。


私がもたもた懸垂下降し終わってロープをしまっている間に上から下ってきたガイドパーティはさっさと下って行った。


このあたりで周りの雲の近づいてきかたをみて、初めてちょっと焦りが生まれた。


これはあかん、早く降りよう。


ロープをしまったら次また取り出すの面倒くさいかな、と思って捌いて束ねたロープを首にかけて腰ベルトで固定する、とどう考えても違いそうな自己流で固定し急ぎ足で下山再開。


で、この辺りからだったと思うんだけど、雷鳴が聞こえ始めた。


これは、あかん、となった。

視界不良も一人なことも怖くはない。

落ち着いて来た道を探して引き返せばいい。

 

でも雷は怖い。
避けようがない。

雷鳴と前後してガスが急速に濃くなっていって、そしていきなりものすごい勢いで雹が斜めから叩きつけるように降り始めた。

ここまで私は上半身はミレーのアミアミ+モンチュラの冬用マグリア+パタゴニアのR1フーディ、という装備で降りてたんだけど、これはあかん、となってザックを下ろし急いでマムートのハードシェルを取り出して羽織って再び下山再開。

最初前方に見えていたガイドパーティはガスって一瞬で見えなくなった。


視界が数mになってしまい心臓がばくばくしてきたけど、落ち着け、足元に注意して降りろ、と自分に言い聞かせる。
GPSを確認しつつ来た道を戻ればいいだけ。

ただ、(落ち着いて降りなきゃ)と思いつつ雷鳴がこわい。結構近くに聞こえる。
最初は音だけだったけど、一回、ぴかっと光ってその後すぐ「ごろごろ」と聞こえた時は心臓がきゅっとなるかと思った。

雹はいつの間にか雪に変わって天気予報通りsnow showerになっていた。

この辺りの記憶はちょっと曖昧で、焦りまくっていたことと、とにかく必死で白いガスの中、降りれそうな岩場のルートを探しまくっていた記憶しかない。

だからどのあたりでどれくらいの岩場かも忘れたんだけど、結構大き目の一枚岩(だったと思う)を降りようとして右足をかけて次に左足を下ろそうとしたら、右足が滑って体が傾き、あっと思った。

ここら辺も記憶が曖昧なんだけど、たぶん体が右に傾いて(やばい)と思った次の時には横倒しに地面にぶつかったと思われる大きな衝撃が来て、でも体がそこで止まらず米俵のように横向にごろごろと回転しながら転がり落ちた。

転がってる間は自分にはどうすることもできなかったけど、幸い回転はすぐに止まった。

落ちた瞬間最初にたぶん体の右側、特に右足に結構な衝撃と痛み、次に左顔面に結構な衝撃と痛みが来て、転がる米俵状態の時は全身が痛かった記憶だけはうっすらある。

回転が止まってすぐに体を起こそうと思って動けない、となり焦ったけどたぶん背負ったロープとザックのせいで体が変な風に固まっていただけだった。
ザックのベルトを外してそんなに急な斜面じゃないのを確認してザックから腕を抜いて、おそるおそる立ち上がった。

右足と右手がめっちゃ痛い。
一歩踏み出して右足に力を入れてみたけど痛いけど歩ける。
左足は無事。


歩ける、とわかってちょっとだけほっとした。

私が止まったのはそんなに急じゃないガレ場の斜面だった。

落下箇所に目を凝らそうとしてみたけどガスと降り続く雪で落ちた岩の上は見えない。
でもたぶんそんなに大きな岩じゃなかったので、せいぜい2mくらい落下して地面で体を打った後止まらなくてガレ場を数m米俵ローリングしただけだと思う。

2mくらい上にペツルのピッケルが突き刺さってるのが見えた。あっという間に雪で白くなっていく。

とりあえずあれを取り戻さないと、と思って、よろよろと這い上がり、ピッケルを掴む。掴んだらほっとした。

左手でピッケルは握れるけど右手でピッケルは握れない。小指がやばいし掌が痛いので力が入らない。

ザックの所まで戻る時も右足が痛い。
そして雷鳴はまだやまない。早く降りなければならない。

でも自分でも動揺しまくっているのがわかったので、とりあえず落ち着こう、と思った。
なんか昔読んだ山と渓谷で、怪我したときだったか遭難しかかった時は「いったん飲み物でも飲んで落ち着け」みたいなことが書いてあった気がする(気のせいだったらすみません)。

snow showerに打たれながらザックを開け、サーマスの山専ボトルでお湯を飲んだ。
温かいお湯が胃に入ると、ちょっとだけ確かに落ち着いた気がした。

ただたぶんやっぱり動揺しまくっていたせいか飲み終わった後中蓋をきちんと閉めなかったようで、取りつきまで戻った後山専ボトルを取り出したらお湯がこぼれ出てきた。

右足と右手がめっちゃ痛い。
でも降りなければならない。

ロープが邪魔過ぎたけど格納する暇も惜しく、再び首掛け→ザックの腰ベルトで固定、という急場しのぎスタイルで下山再開。

ピッケルを握りしめ、雷鳴の中を一人歩く。

右足にあんまり力が入れられないせいか、焦っているせいか、新雪の下のガレガレの石に右足を取られて何度も尻餅をついた。
何度目かの尻餅の後、右足のアイゼンを喪失していることに気づいた。
たぶん落ちて転がったときに外れたんだと思う。

でも申し訳ないけど雷の中もう探しに戻る気力・体力はない。
ここからは別にアイゼンなくても降りられるはず。

焦るな、落ち着け、と思って撮った写真。


もう大きな岩場はなかったような気がするけど、広いガレ場は視界不良の際は道がとてもわかりにくい。

yamapを確認すると、どうやらちょっと行きとずれていたので、軌道修正する。



ひたすら必死で降り続けていたら、いつの間にか雷鳴がやんでいるのに気づいた。
ほっとして撮った写真。たぶん気象計のあたりだと思う。


雪も視界不良も相変わらずだけど、雷がないだけで心の余裕が桁違いだった。

GPSを見ながら進む。

人の声が聞こえた、と思ったらさっきのガイドパーティのお客さんの一人が岩の下から一般道に向けて走っていくのが見えて、ああ、地面だ、と思ったら一気に力が抜けそうになった。

懸垂下降の準備をする。
雷がないしゴールはすぐそこに見えているので、心の余裕がある。


左足だけのアイゼンは逆に降りにくい気もしたけど、これとピッケルだけが命綱だと思って結局怖くて最後まで外せなかった。

一瞬で岩を降りたら金属梯子。
ここは右手でそのままロープを掴みながら梯子を下りた。
懸垂下降すると右足に衝撃が走って痛い。


無事地面に到着。


到着したらどっと疲れてロープを回収したら取りつきの岩にちょっとの間座り込んでしまった。

無事に地面に降りられた。
良かった。。。

ここで初めて怪我の状態を確認してみようと思った。
右手はとりあえず小指が痛くて親指の下あたりも痛い。
ここで見た時は(左手より若干腫れてるかな?)くらいだけど、宿に帰ってから確認したら左手の1.5倍くらいデブになっていた。


これは次の日の右手小指。左手の1.5倍サイズ。

 


右足は靴を脱がないとどうなってるかわからないけどとりあえず歩けるのであれば問題ない。

ヘルメットを外してみた。左後ろが凹んでいる。


前も左が凹んでいる気がする。


これは後日確認したけど、前は亀裂が入っていた。


シロッコ、ほんとに有難う。

私の頭を守ってくれて。
君がいなかったら私の頭はかち割れはしなくても亀裂は入っていただろう。

シロッコに感謝し、お湯を一口飲んで(中蓋を閉め忘れていたのでお湯がこぼれ出た)、アイゼンを外しピッケルをザックにつけてからロープもしまった。


ロープは50mロープでハシゴの上の岩にある支点から地面まで届く。
ただ個人的にはハシゴを使えばいいと思うしメンヒに50mロープはちょっと長すぎていらないかも、と思った(岩で落ちるような下手野郎の感想なのであてにはならないかもしれない)。



一般道に向けて歩き出す。視界も雪もさっきよりだいぶまし。


誰もいない。当たり前か。さっきまで雷鳴ってたし。

雷が収まっていなかったらここから5分というメンヒヒュッテにダッシュし扉を叩いて雨宿りならぬ雷宿りを願い出ようと思っていたけど、もう駅に帰ろう、帰りたい、と思った。

結果的にこの後駅に着くまで雷鳴を聞くことはなかったけど、結果的に幸運だっただけで正しい判断ではなかったかもしれない。
天気予報では雷マークは17時台もついていたから。

ただこの時の私はとりあえずもう早く帰りたい一心だった。

雷が鳴っていたときよりもガスは取れ雪も小降りだったけど、一般道にも全く人影は見えず、ユングフラウヨッホの出口ドアに帰着するまですれ違ったのはヒュッテに行くと思われる登山者1組だけだった。

 

出口ドアの手前まで来て道にロープが張ってあって「?」となる。
振り返ったところ。
朝は道にこんなものはなかった。

 


来た道を戻ってきたつもりだけどなんか変な横道に入ってしまっただろうか、と思った。
でもまた、朝はなかったはずのフェンスが出現した。


「あれ?」と思いつつそのまま進んでいたら、出口ドアだったはずのものが閉まっているのがみえて心臓が一瞬止まった。


もし鍵がかかっていたらどうしよう、叩けば誰か出てきてくれるのだろうか、と心臓ばくばくだったけど取っ手を回したら普通にドアは開いて心底ほっとした。

なんか朝はなかったゲートがある。

 

仕方ないので乗り越えさせて頂く。


 

無事に帰ってきたんだ。。。

とりあえず一刻も早く駅に行きたい、と思ったけど、順路みたいなものに逆らって朝来た道を戻っていいのかわからなかったので、とりあえず順路通りに進んだ。

 

なんか途中にあった展示をとりあえず撮ってみたけど疲れすぎてほっとし過ぎて全く心に入らなかった。



とりあえず無事に帰れた。。。

順路は残り55分、の表示を見て、(55分ももう歩けないかも)と絶望してたらice palace?みたいな展示物の前で駅に向かう横道の表示を見つけて無事駅に帰着。

帰りは16時17分発の電車を予約していた。
行く前は(時間余ったらどう潰そうかな)と思っていたけど、結果的にそんなに待たず電車に乗れた。

電車の中で切符確認に来た車掌さんにチョコレートを貰う。

「ご訪問有難うございます」チョコ。


私を無事に帰してくれて有難うございます。

 

ベルナーアルプスの神様に心から感謝。


生きてるって素晴らしい、と思いながら痛む体を引きずりグリンデルワルトに帰ることができた。

 

反省点はまた改めて書こうかなと思う。