ひとり山旅inスイスアルプス⑨:遠のくデュフールシュピッツェ | 海と山、時々きもの

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ダイビング記録+きもの試行錯誤の覚書。…だったはずなのに最近は山歩きの記録簿と化しつつある。
23年秋から山のない国に滞在中のため山歩き頻度は低下中。

ツェルマット(&サースフェー)山旅5日目。
 
モンテローザ小屋にチェックインして荷物を下ろし、玄関口のテラスで荷物整理をしてたら、デュフールシュピッツェかノルデンドから帰ってきた2人パーティが目の前に到着した。
ハイタッチして喜んでいるので登頂できたんだろう。
ガイドさんっぽくも見えたおじさまの方は小屋の中に入っていったけど若者の方は外で荷物整理を始めた。
 
しばらくして若者に「その靴の中敷き、良いね」と話しかけられた。
 
私がちょうど干していたスポルティバの冬靴の中敷きのことを言っているらしい。
それスポルティバの付属の?
いや、これは別で買った。付属のやつより温かいしクッション性が高い気がする。とてもいいよ
スポルティバの靴もいいよね。最近靴替えようかどうか迷ってて
 
英語圏の人ではないけど英語は流暢だった。
訛り的にフランス人でもイタリア人でもないのと顔立ち的にドイツ人かオーストリア人かなぁと推測。
 
デュフールシュピッツェに行ってきたの?
いや、ノルデンドだよ。去年同じようにこの小屋に泊まってデュフールシュピッツェに行ったんだ。今年はノルデンドに行きたいと思って
 
ちょうど良いので聞きたかったことを聞いてみる。
デュフールに行ったとき、どのルート使った?往復?それともノルデンドとの間のコルから懸垂下降した?
往復だよ
 
やっぱり往復ルートの方が多いのだろうか。
明日(というか12時間後)どうしよう。
 
悩んでいたら、「一人で行くの?」と聞かれた。
そうだよ、と言ったら驚いた顔をされた。
 
すごいね。氷河を歩くの怖くない?クレヴァスが怖いよ
そうだね。ここに来る時に歩いたけど正直、予想してたより結構怖かった
だよね。氷河を歩くのもだけど僕はとても一人で登山は出来ない
若者曰く、先日友人とラギンホルンに行く約束をしてて友人が急遽来られなくなったため初めてソロ登山をしたけどめちゃめちゃ怖かった、とのこと。
ちょうどその日ソロの登山者の滑落死亡事故があってやっぱり怖いなと思ったよ
 
個人的に、単独だから危険でパーティであれば安全、とは一概には言えないと思っているけど、こと氷河歩きに関しては単独は確かに怖いというかリスクは高い、というのは先ほどの氷河歩きで思った。
 
さっきの氷河はポールがあったからよかった。
明日行く氷河にポールはあるんだろうか。
若者に聞いてみようかと思ったけどもやめた。
あったとして、真っ暗な中でそのポールが見えるのかは持ってるヘッデン次第だと思うしクレヴァスだらけの中でルートどりは自己責任だし。
一応この真夜中の氷河歩きのためにペツルのヘッデンを新調はしたけど。
 
若者は戻ってきたガイドさん(?)と一緒にオールドルートからローテンボーデンに向けて下っていった。
夜中2時過ぎに出てノルデンドに登頂し13時過ぎには小屋に戻ってきてそこから更に4時間かけてローテンボーデンに戻る体力がある。すごいなあと思う。
 
ローテンボーデンからここまでパノラマルートなら本来4時間で来なきゃいけないのに私はたぶん6時間近くかかった気がする。
ということはモンテローザ小屋からデュフールシュピッツェまではSACのコースタイム(7~8時間)よりも確実にもっとかかる。
明日は午後から天気が悪化する予報だけどそれまでに戻ってこられるのか?
そもそも雪山で8時間も登ったことないのに体力的に行けるのか?
 
私のような奴が明日一人でデュフールを目指すのは無謀なのではないだろうか。
 
という気持ちがどんどん膨らんできた。
 
不安を抱えながらしばらく休憩して、夕方、翌日のルートの下見に行くことにした。
 
明日行けるかどうかはわからない。
でもせめて氷河の見える辺りまでは下見しておきたい。
 
下の写真真ん中あたりにぴょこっと飛び出ている山頂がデュフールシュピッツェの山頂のはず。
 
上の写真でみると近そうに見えるかもしれないけど、実際は↓これくらいの標高差と距離がある。
出所:Swiss Alpine Club(SAC Route Portal | Swiss Alpine Club SAC
 
ルートはこんな感じ。せめて氷河(Monte Rosa Gletscher)の手前までは行って氷河がどんな感じなのかみたい。
 
小屋からは登山道の目印(青のペンキ、または青と白のペンキ)はないものの、こうやってルート上にポールが立ててある。

 
あと、ケルンも積んである。

 
しばらくはこんな平ための岩場をポールやケルンを探しながら歩く。

 
せめて氷河が見える所まで、と思ったけど疲れすぎているせいかちっとも進めない。
すぐ息が切れる。
 
へろへろになりながら小屋方面を振り返った所。向こうにマッターホルン。

 
岩の回廊みたいなところに出た。

 
デュフールシュピッツェ(右下の4634mのマーク)、遠いなぁ。。。

 
岩の回廊の入り口。ポールが続いているのでこの中を進むんだろう。

 

氷河の入り口というか雪すら見えなかったけどこれ以上進むと疲れすぎて夜の出発に差し障る気がしたので引き返すことにした。たぶん1時間も登っていない。我ながらヘタレ過ぎる。

 

 
自分のGPSの標高を紙地図に当てはめると「大体今ここら辺にいるのかな?」みたいな検討はぼんやりつくけど細かいルートがわかる能力はない。この地図読み能力(∞ゼロ)で明日クレヴァスだらけの初見の氷河ルートを真っ暗な中歩こうとしているのは自殺行為のようにも感じる。

 
この日の行動時間は7時間30分。
 
そしてせっかく下見のためにyamapを記録したのにここで何を間違えたか「終了」を押してしまい下見が意味なくなる、という。。。
前は自分のログを参照して登ったりできてた気がするんだけど、私が今プレミアじゃないからできないんだろうか。。。それとも私が勘違いしてるだけ?
 
小屋に帰って翌日の天気予報をいろんなウェブサイトでをチェックしまくる。
チェックしまくった結果、やっぱり、翌日午後から天気が崩れる可能性が高そうだ、と思われた。
 
これは太陽マークついてるけど午後2時頃から降水(降雪?)確率が20~40%程。
 
これも同じく午後から降水か降雪の可能性高まっている。
 
この天気予報は午後5時からsnow showerの予報。
 
'snow shower'、メンヒで見たなこの予報。。。
 
そして私は予報を軽視して結局雷の中下山することになった。
 
ヨーロッパではあんまり当てにならないと個人的に思っているWindy(気温がおかしい)も、14時頃から天気悪化、20時には雷マークがついている。
 
'雷マーク'、メンヒで見たなこの予報。。。
 
そして私は(以下略)。
 
別の天気予報サイトも見てみたけど、こちらも18時頃から雷マーク。
 
確実なのは、明日午後遅めの時間帯から天気は悪化するということだ。
そしてメンヒの苦い経験で学んだのはその「遅め」は早まる可能性がある。
 
この天気予報なら午後2時には小屋に帰ってきていたい。
「午後2時」というのも楽観的過ぎでは?昼過ぎには帰ってきていたほうがいいか?
でもその時間までにデュフォールシュピッツェまで行って帰ってこられるのか?
せっかくここまで来たんだから頂上を目指してみたい。
せめて頂上の岩稜の手前まで。
でもそこまで行って昼までに小屋に帰ってこられるのか?
 
夕食を食べながら悶々と色々考えたけど、結局、
 
だめだ、頂上を目指すのはやめよう、
 
という結論になった。
 
今日、コースタイム4時間の道のりを6時間かかった私が今日以上の標高差と時間がかかる明日の道のりをコースタイム通りに行ける訳がない。
どんなに頑張っても私のようなヘタレ野郎が頂上にたどり着けたとして昼頃になると思うしそこから降り始めて岩稜や氷河の途中で天候悪化したら詰む。
特に頂上からの岩稜はメンヒと違って落ちたらほぼ確実に死ぬ。
 
やめよう。12時過ぎには小屋に帰ってこよう。
そう考えると夜中の3時に出発して、5時間経った所で引き返そう。
 
決めるとちょっと気が楽になったような気がしたけど、でも気を抜くと(ここまで来たのにもったいなくない?)(そんなチキンなことで良いのか?ちょっとは頑張れよ)という脳内会議が始まった。
 
悶々としながら夜8時半頃、昼のチェックイン時に言われた通りに受付に精算にいった。
チェックインの時は若い女の子だったけど、この時は小屋主っぽい壮年の男性だった。
 
明日の朝食の時間は…あれ、2時?
と私の食事時間欄を見て急に厳しい顔になる男性。
 
明日の予定は?
と聞かれた。受付の時には朝食2時、と言っても別に何にも言われなかったけど、やっぱりプロは許してくれないのか。
 
ほんとはデュフールシュピッツェに行きたかったんです。でも今日ここまでくるのにかかった時間を考えると自分には登頂は無理だと思うから、明日は5時間で行けるところまで行こうと思っています
 
と言ったらちょっと表情が柔らかくなった。
 
気を付けてね
 
と精算して終了。
 
5時間で行ける所まで行く、と決めてちょっとだけ楽になったものの、本当にそれで良いのか、もっと頑張らなくて良いのか、という気もしたし、真っ暗な中ルートを探して岩場と氷河を抜けなければならない、という難問はそのままだし、全く気が休まらないままこの日は22時半に消灯&就寝。
…というものの緊張と周りのうるささのせいで朝食時間の2時までの間、ほぼ寝られなかった。