源氏物語は誰の訳で読むべきか
だいたい、読んでみようと決心はしてもなかなかそのようにはらなない。けれど、今年は、源氏物語の現代訳と平家物の現代訳を読んでみようと思っている。
それで、誰の訳で源氏物語を読めばいいのか、迷ってしまう。
全訳となると、かなり長い。長いということは、書籍代もそれなりの価格になる。
どうも、訳している人によって、長さが違うような気もする。
たとえば、与謝野晶子の訳の場合は、文庫本で、五冊だけど、他の訳者の場合は、文庫本でたいてい、十冊くらいになる。
なぜ、与謝野晶子の文庫本だけ五冊なのか分からない。
与謝野晶子の場合は、全訳ではなくて、要訳なのだろうか。
そのへんのところもよくは分からない。
古典の原文で読もうという心づもりはないので、現代訳でサクサクっと読みたい。
もっとも最近に現代訳にしているのが、大塚ひかりということで、この人の文庫本、全六冊を読もうとも思う。
もっとも新しい訳ということは、それだけ現代の感覚に近いし、賞味期限が切れる時間が長くなる。
気持ち的には、大塚ひかり訳で読もうとは思っている。
しかし、原文をそのまま読んでもみたい。
青い手紙 17
畠山純一が、故人となった畠山義男氏の実子ではなくて、実子が別に存在している。その事実を知って、私には気になることがあった。それは、畠山純一の豪邸だった。あの豪邸は、誰のものなのか。
法務局で、所定の用紙に閲覧する土地と建物の住所を書き、登記印紙を貼り付けて、前日に何か不幸な出来事があったような顔をした女性職員に用紙を渡した。
公園のプラスチックでできたベンチよりも硬い長椅子に腰かけて、数分間待った。
彼女は分厚い登記簿をカウンターの上に置いて、「あちらのテーブルで閲覧してください」と、電気仕掛けのような声で言った。私は営業用の笑みを下唇の端に作って、「ありがとう」と、駅のプラットホームのアナウンスのようなトーンの声で言った。
目的のページを探すのに四十秒ほどかかった。
畠山純一が住んでいる家の番地であることを確認してから、登記上の所有者の名前を見てみた。私が気になっていたことの答えがあった。
建物も土地も、畠山義男氏の名義になっていた。
実子ではない畠山純一には相続権があるのだろうか。畠山義男氏が死亡してしまえば、一族の者は、実子ではない畠山純一を一族から追い出すということもありはしないのか。
自分の死後に起こることを畠山義男氏が考えていなかったとは思えないのだが。それとも、すでに、そういう思考能力さえ彼にはなかったのか。経済的には裕福な彼が、『象アパート』の一室で暮らしていたのにはどんな理由があったのか。考えれば考えるほど分からなくなった。
『プードルスプリングス物語』 レイモンド・チャンドラー & ロバート・B・パーカー
『プードルスプリングス物語』を読みました。
この作品は、異色の作品です。
レイモンド・チャンドラーが四章まで書いたものをチャンドラーの死後、ロバート・B・パーカーが作品に仕上げたものです。
ですから、純粋には、レイモンド・チャンドラーの作品ではないのですが、とりあえず、チャンドラーの未完のままだった幻の作品がロバート・B・パーカーの手によって、チャンドラーの死後三十年後の1989年に世に出たわけです。
フィリップ・マーロウは、『長いお別れ』で登場した、大富豪のハーラン・ポターの娘のリンダ・ローリングと結婚したという設定になっています。
マーロウがお金持ちと結婚するというのは、どうもしっくりこないのですが、やはり、二人の結婚生活はうまくはいきません。
働く必要はないのに、マーロウはやはり探偵稼業を始めます。
現代に近い時代に出版されているので、なんとなく、作品全体に時代の新しさが感じられます。
ロバート・B・パーカーが書いた部分はさほど違和感というものは感じないですが、やはり、チャンドラーの時代の匂いというものは薄らいでいる感じです。
この作品を含めて、チャンドラーの長編小説は8作品すべて読んだのですが、もっとも、印象に残ったのは、『湖中の女』です。この作品は、ハードボイルドというよりは、ミステリーの要素が多いように思います。ハードボイルドファンだけではなくて、ミステリーファンもこの作品は楽しめるだろうと思います。
チャンドラーの短編小説は、すでに一冊読んでいます。現在、短編の2冊目を読んでいます。
青い手紙 16
調査員が何人もいる大きな事務所であれば、数人がそれぞれの得意とする分野を担当して調査をすればいいのだが、個人営業の調査員はすべて自分一人で調査をしなければならない。
そんなことは分かっている。分かっていながら、誰からも報酬はもらえない調査を続けているのだ。どうしても自分の手に負えなくなったら、同業者に助けを求めるということもできる。仕事柄、知り合いのジャーナリストもいる。手助けを頼めば、彼らのうちの誰かは協力はしてくれるだろうが、誰かに借りを作ることはしたくない。だから、自分でやってみる。
分からないことばかりだった。裕福な畠山義男氏がなぜ、経済的には恵まれない人々が暮らすような『象アパート』の一室で一人暮らしをしていたのか。死因は何なのか。実子ではない畠山純一がなぜ、『サニーアップコーポレーション』の取締役代表なのか。実子はどこにいるのか。実子は、『サニーアップコーポレーション』の役員ではないのか。
気になることは、自分の足で調べる。それが個人営業の私の流儀だった。私の足は、法務局に向かっていた。

