青い手紙 17
畠山純一が、故人となった畠山義男氏の実子ではなくて、実子が別に存在している。その事実を知って、私には気になることがあった。それは、畠山純一の豪邸だった。あの豪邸は、誰のものなのか。
法務局で、所定の用紙に閲覧する土地と建物の住所を書き、登記印紙を貼り付けて、前日に何か不幸な出来事があったような顔をした女性職員に用紙を渡した。
公園のプラスチックでできたベンチよりも硬い長椅子に腰かけて、数分間待った。
彼女は分厚い登記簿をカウンターの上に置いて、「あちらのテーブルで閲覧してください」と、電気仕掛けのような声で言った。私は営業用の笑みを下唇の端に作って、「ありがとう」と、駅のプラットホームのアナウンスのようなトーンの声で言った。
目的のページを探すのに四十秒ほどかかった。
畠山純一が住んでいる家の番地であることを確認してから、登記上の所有者の名前を見てみた。私が気になっていたことの答えがあった。
建物も土地も、畠山義男氏の名義になっていた。
実子ではない畠山純一には相続権があるのだろうか。畠山義男氏が死亡してしまえば、一族の者は、実子ではない畠山純一を一族から追い出すということもありはしないのか。
自分の死後に起こることを畠山義男氏が考えていなかったとは思えないのだが。それとも、すでに、そういう思考能力さえ彼にはなかったのか。経済的には裕福な彼が、『象アパート』の一室で暮らしていたのにはどんな理由があったのか。考えれば考えるほど分からなくなった。