計算尺、と言われて分かる人はもう少なくなってしまいました。定規に似た形状をした、主に乗除算をするための道具で、それこそソロバンや「ガラガラ・チーン」と回すタイガー式計算機と並び電卓が普及していない時代の主力計算器具でした。私の中学生時代には文部省検定の数学教科書に載っていて授業もあり、そのため1,000円弱の学用品も販売されていました。我々は計算尺を使った最後の世代に当たります。
私が大学に入った頃には四則電卓は普及済でしたが、定期試験では計算尺は可でも電卓は不可でした。課題の実験でも「学生は数表と計算尺で計算するものだ」、とまるで自分の過去の腹いせのような主張で電卓を使わせない指導補助もいたのですが、私には後にもその経験は何の役にも立っていません。
さて、かつての無線従事者の国試では計算尺使用が許可されていました。昔は記述式ですから数値計算は数字そのものが回答ですが、計算尺の有効数字は3桁くらいです。つまり計算尺が可ということは答は有効数桁の概算値で構わない理屈なので、私も本当は割り切れて「x.125」となる少数位を計算尺で解いたまま「x.13」と書いた記憶があります。これが私が国試で計算尺を使った唯一の経験ですが、その「.125」というのは時間が余って筆算で検算した結果なので、それではわざわざ計算尺を使った意味がありません。つまり入学試験と違い、落とすためのものではない資格試験では時間は潤沢にあるので、実際には計算尺が有用というほどの差はなかったと思います。
実際の計算尺の持ち込みは1アマ、2アマでは多少は見かけました。2技では多くいました。なお、計算尺は専門ごとに多くの種類があるので、電気計算用ではないかを試験官が検査することもありました。
数ある資格試験の中では珍しく無線従事者試験では長らく許可されていましたが、それも2011年には禁止になったようです。既に何十年も過去のものなので、高等な使い方のノウハウも色々とあったはずですが、ウェブ上に記録されることもなく失われたものと思います。