アマチュア無線の裏側で -8ページ目

アマチュア無線の裏側で

1970から1980年代の忘れがたい記憶から

「送信管」はすべて業務用の規格で作られています。しかしプロの機材にも必ず信号レベルの低い部分はあり、6AU6やら12AX7やらを使いますが、そこだけ家庭のラジオやステレオ用の安物ではいけません。プロ用で大事なのは突発的故障が少ない事なので、それら用途向けに型番は同じでも製造上の管理を厳しくしたのが「通測用」とか「通信用」です。性能で選別した結果ではないので、民生用機器には単に高価なだけですから使う理由がありません。だからこそトリオの終段管用に6146を元にコストダウン版のS2001が作られたのです。また、通測用とは類似かつ別のカテゴリで型番から違う「高信頼管」というのもあります。

 

東芝の場合、通測用の真空管は化粧箱の緑色の帯が目印だったように、トランジスタでもTO-3やTO-39などメタルキャンでは印字が緑色でした(民生や一般用は赤文字)。ブラスチック・モールド品では「丸にG」マークです。そのGはもちろんGreenの略でしょうから、hFE分類もGR(een)は2文字なのでしょう。私の手元には通測用の真空管は沢山、グリーン・トランジスタは探せば結構いくつも、丸Gはジャンクの2SC371/372が大量にあります。日立は「丸にH」だったか、とにかく各社に産業用規格はあります。

 

ロジックICではTI社由来の「54シリーズ」があります。例えばQuad 2-NANDは7400に対し、5400が温度や電圧の許容範囲が広いMIL spec.です。私は1970年代も前半からデジタル工作を手掛けたのでジャンクも含め随分とICの手持ちがありますが、54シリーズは3個くらいしかありません。極めて高価なHP社製の計測器でもDEC のコンピュータでも74ですし、54はそうは目にしないものですが、ある時JRCの業務用無線機の内部を見たらロジックICが全部54シリーズなのに気付きました。その調達価格は74とは10倍くらいも違ったかも知れません。考えてみれば精密な測定器もコンビューターも温度などの環境を整えて使うものですが、通信機は極限下でのSOSもあり得るからなのでしょう。

 

追記 東芝のhFE分類はR, O, Y, GR, BL, V で"BL"も2文字です。これは改良品にA, B, Cとかのサフィックスを付けることがあったためでしょう。なお実際にこの規則による"A"は多くありますが、"B"まで進んだ例は初期に僅かにあるだけです。

これも1970年代の話、当時は東京芝浦電気の名だった東芝は、アマチュア向けにデバイス広告を頻繁に出していました。

 

掲載先ですが、NHK出版の「電波科学」や誠文堂新光社の「ラジオの製作」誌によく出ており、それも時には裏表紙のカラー広告だったのです。一方、CQ出版社では広告はあまり出なかったものの、雑誌も単行本も東芝社員の執筆はよくありました。

その広告内容たるや完全にアマチュア無線家向けに絞られたものです。掲載の製品例も真空管なら2E26とか2B46/6146、トランジスタならば2SC1077など自作の定番が紹介されていましたし、適用アマチュアバンドまで書いてありました。対象人口は非常に限定的だったはずですが、写真も内容も変化がつけられ一通りではなかったのです。

蛇足ですがCQ誌の写真広告では、HFのバーチカルで有名なHIDAKAアンテナ(日高電機)が内容を変えずに続いた記録的ロング掲載だと思います。私もその製品は使っていました。

さて、「カンマツ・アキバフンケン」でも書いたように東芝の真空管は古くから定評がありました。また、日本の半導体事業は統廃合が強力に進められましたが、東芝ブランドはまだ頑張っています。無線機メーカーでは八重洲は東芝派ですが、トリオは松下製の真空管の採用が多かったのでハムの世界が東芝一辺倒でもないというのに、2SC372とか2SK19、ゲルマニウム時代なら2SB56などトランジスタを含めても電子工作で一番よく使ったブランドは?と聞かれれば、それはもう東芝だとなるでしょう。また、そういう人の中から後のプロが出ているのです。広告とはこういう効能を無視しては語れません。

 

古いハムなら表題だけでお分かりなはず。VHF以下のアマチュア機のアンテナ接栓は「M型」が一般的ですが、それがオスメス嚙み合わない場合があるという話です。

「M型」の原型は「UHF型」で、これはNやSMA、TNC型などと同様にネジはUNEFインチ (NやUHFは5/8 in)規格です。対して日本独自のM型はメートルねじ (16mm)ですが、見た目が一緒な上に全部「M型」と呼ばれたのが失敗の元で、「UHF型」の名は今でも知らない人が多いでしょう。世界標準のRFコネクタが全部UNEFなのに、なぜ非互換のM型を作ったのかは不明ですが、製造用の工作器具にも不足した時代の産物だったかも知れません。

 

困るのは、M型ジャックにUHF型プラグを合わせてもネジが途中までしか回せないこと(逆の方がやや寛容)。私は昔、アンテナ系をBNC化しようと中古の変換コネクタを買ってきて初めて気付きました。古いトリオの無線機とかオスカーブロックのSWR計が真正のM型ジャックなのに対し、工業用や米軍放出品は真正のUHF型だったからです。

もっとも、現在のアマチュア無線機は結構どちらのプラグでも篏合します。これには規格を無視して緩くネジを切るとか、ネジ山の数を減らすなどした非標準のコネクタが採用されています。

 

ハム向けの解説では「M型」はコピペのように「インピーダンス不整合」とどこでも書かれていましたが、その「不整合」という意味が初心者だった私には分かりません。50や75以外の値と言いたいのか、それとも条件次第で変わるという事なのか、そこの説明がなかったのです。もちろん本当は素材と構造で決まる固有の整合値はあって30から40オームと言われ、あの図太い中心導体とガッチリ固めた絶縁からするとそんなものでしょう。不整合とは「正確な整合が必要でない用途向け」という意味なのです。

 

絶縁材料については、ポリエチレンやポリスチレンは高周波特性に優れる一方、熱に弱いのでハンダ付けは要注意です。ベークライトやエポキシはその逆ですが、その誘電特性の不利もVHFまでの周波数ではまず問題になりません。テフロンなら両立ですが、そもそもM/UHFコネクタで済む用途には過剰品質なことがほとんどなので安ければお買い得、高ければ無理に買う必要はない、というものです。

あるとき、テレビで電監の監視業務の様子が流れたのを見たことがあります。どこの地方局かは分かりませんが、壁一杯の固定設備を想像していたら大違いの簡素さで、V, UHFの監視にはアマチュア向けの安価な広帯域受信機、アイコムIC-R7000をデスク上で使用していました。「電波利用料の導入」ではアマチュア無線の監視になんぞ予算が回るはずがない、と書きましたが、この番組で監視の現場事情を見ていたのも背景にあります。

なお、V, UHFが重点監視されていたのは、やはりその周波数帯に多く存在する重要通信への妨害事案が多いからなのでしょう。元々混信も雑音も多いのが当たり前、のHFの通信とは扱いが違っても不思議ではありません。

 

アメリカのFRSやGMRS規格のハンドヘルド機は小型軽量、安価で多チャネルの大出力と、日本の特定小電力機をそのままパワーアップしたような便利さがあります。このため、持ち込みや個人輸入、はては堂々と通販まで行われて今も日本国内での違法な使用が後を絶ちません。屋外イベントのレンタル用品にも使われることがあり、これらFRSとかGMRSは重点的に監視されているようなので、当ブログの読者に間違いはないと思いますが一応ご注意を。

 

ハム局の数も少ない頃は確かに電監が監視していたそうで、前回も書いた通りで大先輩達の話題にはよく出てきます。しかし後にはアマチュアの世界は自治に委ねる、という流れでJARLの監査指導委員とガイダンス局が行うようになりました。プロではありませんし、その指導には公権力ではないがゆえの限界と、逆に公権力を持ったと勘違いしたようなトラブルも時々は耳にしてきましたが、火元は小さくとも必ず指導される方にあるものです。

某元会長のお身内が監査指導ハガキで「コールサインを言いましょう」という指摘を受けたそうです。それを見た元会長氏、「これを出したのは誰だろうな。表彰状ものだな」と言ったそうです(ソースは本人)。

 

 

 

私の駆け出し時代、雑誌などのハムの入門記事、それにJARLから保証認定や入会の折に受け取る文書類の中で必ず注意事項として書かれていたのが「KA局との交信禁止」です。ほかには電波監理局からの免許などの送付物には「失効した免許は返納して下さい」などの一筆がしばしば同封されてきましたが、それの中でも見た事があります。

 

KA局とはアメリカのAuxiliary Military Radio System局で、米軍関連施設の中からKAのプリフィクスでアマチュアバンド内に出ていましたが、実態はほとんどハム局の運用と同様だったようです。しかし「軍用補助局」なので、日本の電波法ではアマチュア局の「通信の相手方」に該当しない事を理由に交信は禁止されています。私はフォーンパッチの強力な電波を聴いて「これの事かな?」と思ったことはありますが、明確に「KAブリフィクス」の記憶はないので、JARLの注意喚起なども当時でも内容的に少し古かったのかも知れません。

 

あるとき先輩のお宅でKA局のQSLカードを見たところ、それはハムの物と同じ体裁でしたし、交信も全く普通に行われたそうです。ただ、JARLビューロー経由のはずもなく、米軍公用の郵便で発信されていました。なおその先輩曰く、

「KA局の側は自分が禁止相手とは知らないので普通に呼んでくることがある。日本のハムも本当は駄目とは知っているので呼びはしないが、呼ばれたら応ずるのが礼儀と思う局はいた。もちろん、電監の監視に引っ掛かれば警告を受けた」

 

この話で案外と聞き洩らせないのは、当時は電波監理局自らが積極的にアマチュアバンド内の監視を実行していた、という点です。「自分のコールサインを知るまで」で、ハムの数の多さに対して電監に専門部署が無いのを子供ながら不思議に思った、というのは、これらの昔話を通じて、電波警察の実行部隊は? などと勝手な想像にあったのも一因です。

 

 

先般、常用しているPCの臓物をCPU以下、ほとんどを入れ替えました。工作系の無線家は「自作パソコンなど自作ではない、プラモと一緒だ」、とよく言いますが、定義の違う世界を比較する必要もないでしょう。しかし同じく電子分野ながら、ハムとPC界では理解の違う点も確かにあります。

 

まず電源ユニットで、PC界では3年くらいで交換しろ、5年は寿命に近い、とか言われます。確かにATX規格の寸法で1200Wとかは大変なものですし、電源が故障すれば他の高価なパーツが巻き添えになるという用心も分かります。しかし、少なくとも「日本製コンデンサ採用」が売りの電源ユニットがさすがに5年で寿命ということはないでしょう。私の例など15年目に入って現用中ですが、特に当たりを引いたとか幸運だったとかの稀なケースとは思いませんし、アマチュア無線機ならその程度は使って当たり前です。

ただし・・可動部品である冷却ファンが安物では故障率は高く、これだけは要注意です。寸法は規格化されているので交換するのも簡単ですし、山洋電気製とかのファンなら申し分ありません。

 

もう一つはCPUの伝熱グリスの使い方です。「できるだけ薄く」という発想よりも、定評の立った超高価なグリスをベッタリ(俗にウンコ盛り)が普通に行われているらしく、これまた我々の常識とは違うようです。

 

10年ほど前になりますか、マザーボードに面実装された外国製の電解コンが次々と破損する事件が続きました。封口が抜けて伸び上がったり(俗にタケノコ)、缶が膨れたり(俗に妊娠)したものです。妊娠とマザー(ボード)は言葉の相性が良いのでネットスラングとして頻出でした。さすがPCの事となればウェブ上に情報は豊富で、その電解コンのメーカーや型番の事、実際の画像などを知ることができます。電解コンデンサの信頼性は意外に高い、という話の例外である「四級塩」・「外国製」の話は大体こんなところでしょう。

2024年8月から始めた当ブログに関し、これまでのアクセス状況などを報告しておきます。

なお、私はこのブログについて身内にも知人にも語ったことはなく、またweb上で告知したこともありません。つまり、現時点までのアクセスは全て検索か偶然で発見されたか、私の知らない場所でのwebリンクか口コミによるものです。

 

まず、全投稿を漏らさず目を通しに来られる「固定客様」は恐らく約15名でしょう。もちろん検索などを通じた特定の投稿のみへの来訪者はその何倍もいるはずです。その年齢層ですが、60代が5割、50代が3割、30/40/70代は合計して約2割で、この年齢構成は「1970年代」を標榜している以上は相応で、一方、10/20代は道迷い?という程度しか見掛けないのは、その年齢層にハムが皆無に近い証しでしょう。

 

アクセス数は平均50件/日くらいでしょうか。固定層が15名程度なら妥当な数字でしょう。スポット的には「RF GAINをどう使うか」、だけが今も継続してアクセスが多く、どこかで紹介されたのかも知れません。

 

テーマについては何と言ってもリグ談義、付随して技術絡みへの関心が高く、昔の制度とか事件等の歴史話よりも遥かにアクセス頻度があります。商業出版の世界でもハムの歴史物は大して売れたためしがないのですが、それを裏付けるように感じました。

時折、一見(いちげん)さんの一気読みもありますが、一見(いっけん)して技術ネタ的な題名だけを大概選んで拾われて行きます。しかし私の投稿はどれも雑文なので、題名は単に「書くきっかけ」で、内容が随分と違うことはよくありますから、是非それらもご参照いただきたいところです。

 

以上が「アマチュア無線のブログ」、「宣伝せず成り行き任せ」の期待値というものです。私の目的には、いい加減な通説や俗説が定説化することを防ぎたい意図もありますが、主には「はじめに」で書いた通り記憶を記録に残すことです。これとは違う狙いで発信を考えておられる方々への参考にはなるでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

経年劣化・交換と言えば「四級塩電解コンデンサ」は外せません。「四級塩」とは電解液の組成物質で、従来より優れた電気的特性があるのを買われて一時期採用されました。しかし各社の投入した新製品がその発売直後からではなく、何年か経てから時限爆弾的に次々と漏液事故を起こして過去に大問題になった事があるのです。電解液の実態は電極、つまり導電性ですから漏液して基板を濡らすと周囲一面がショート状態になるわけです。

 

私はこの時期は在米とか地方赴任で工作からは遠ざかっていたため、その渦中では情報にあまり接していないのですが、個人的には1988年製の高級ラジオで受けた被害が最初の経験です。このときは修理完了品をサービスセンターで直接受け取ったところ、表面実装型の電解コン3個が交換された上、「基板洗浄」と明細にあった割には修理代金が安いのを不思議に思い、その場で説明を受けたのがこの「目下問題の部品」の話でした。後に1995年製のデジタルオシロスコープでも被害経験があり、この時は自分で洗浄しましたが多層基板に浸み込んだようで今でも時々トラブルを繰り返します。

 

上市されてしまった直接の原因は劣化加速試験の不足からでしょうが、原理的なことは良く分かりません。ちょっとWikipediaを見てみましたが、その解説を担うにはレベルの不足なアマチュアの執筆なのが明らかで、(今現在)掲載されている内容は全く信用がなりません。多分、学会誌とか会社の技報とか、そのクラスでしか正しく説明されていない感じがします。

 

流通に残った四級塩製品は一時期、秋葉原などで大量に廉価処分されたそうです。具体的にどのメーカーのどの型番が四級塩使用だったのかは(ちょっと今見失っていますが)まとめサイトがあったはずですから、手持ちが怪しいと思ったら探してみて下さい。

 

電解コンデンサと言えば、電子部品の中では一番寿命の短いもの、と考える人が大多数ですが、今回はそれに関する話です。なお、「ケミコン」と呼ばれる事が多いため「電解キャパシタ」と書くのは通称的でなく私も違和感あるので、ここはコンデンサと呼んでおきます。

 

実のところ、40年ぶりに輸出用CB機に通電した話で書いたように、(電圧印加で復活させる必要はありますが)1980年あたりにもなれぱ「四級塩でない国産の」電解コンは一般的に認識されているよりずっと信頼できます。加えて重要なのが容量抜けの可能性への対応で、まともな設計なら想定内の事として最初から余裕を持たせるとか、容量変動が余り問題にならないような使い方をするという点です。第一、当時の汎用電解コンの容量誤差はブラス側は100%も許容されていました(倍もあり得たということ)。

 

ただし特に小型の物に限っては交換推奨です。理由は容積が小さいほど封口部の面積比が大きいので電解液が消失し易く(ドライアップ)、ESRと容量の悪化に直結するからです。私の経験としては1970頃の製品でさえ相当に復活するもので、実際に当時のステレオや無線機で今も使用中の物も多いのですが、直径5Φとかの小型品はさすがに無理があります。

 

なお、一部のアナログテスターが装備する容量測定機能は当てになりません。それは可聴周波で交流抵抗を測る仕組ゆえに、劣化して洩れ電流が増えた分は容量を大きく見せてしまうからで、正しく知るには交流ブリッジのような誘電正接も評価できる測定器が必要です。

 

交換もダメージ無しで出来れば結構な事ですが、下手をすれば基板の銅箔が剥げますし、多層基板では壊してしまう危険もあります。だというのに、オーディオの素人修理の体験談では製造から10年や20年のものを問答無用で全交換、などが普通に語られていますが、「測定してみたら容量は正常でした」って、それはそういうものです。それどころか、お金を取る自称プロの修理屋でも「まずケミコンを全部交換しましたが、症状は変わりません」から入る例が決して珍しくなく、これは完全に技術レベルが疑われます。しかも手持ちでも何でも新品ならば構わないのでしょう。スイッチング電源など、専用品でなければ交換がむしろ寿命を縮めかねない事も理解していないかも知れませんよ。

 

 

真空管がトランジスタに置き換わる過程では「性能ではまだ真空管」という意見が多くありました。当時のカラーテレビでは「あえて真空管で作りました」という広告が打たれたことさえあります。アマチュア無線機ではもっぱら受信性能で話題とされますが、初期のソリッド・ステート受信機には飽和とか多信号特性に目立って不都合があったものです。

 

かつて存在した全管球式の受信機は、結構ノイズが出るものです。それは、真空管は高温で動作するから熱雑音が・・とか、雑音特性の悪いソリッド抵抗を多用したので・・という理由よりも恐らく大きなレベルの話です。ただ(それらの塵も積もるのかも知れませんが)、6BE6とか6BA7といった7極コンバータ管はノイズを出しやすいのは間違いありません。また当時はメーカーにも高度な測定器や解析技術がなかったでしょうし、レベル配分が最適化できずにノイズが問題になるステージに大きなゲインを持たせてしまう、なども理由にあったかも知れません。

 

ノイズの点ではハイブリッド機の末期にもなれば、普通に使う分には間違いなく全管球式より性能は向上していました。もっとも、それはPLL化されていない機器ならば、の話です。PLLはループ制御するキャリアの裾野を拡げる形で位相雑音が必ず出るので、ノイズの音質も量も違います。

ただし、改良の進んだソリッド・ステート受信機であっても非常に大きなアンテナを繋いだり、マルチオペレータのコンテストのように至近で送信されると「ガサガサボコボコ」とか、甚だしくは受信不能になりました。八重洲FT-101のアンテナ入力にはヒューズ代わりのランプが入っていますが、それが薄ぼんやり光るのを見た経験さえあって、そこまで極端な環境になると真空管は動作電圧が高い分、大入力への強さを発揮したのです。

参照記事 「RF GAINをどう使うか