エイプリル・フールの時期に、真面目な定期刊行物さえも冗談で嘘記事を掲載することは昔からありました。おそらくはアメリカ発祥の習慣で、アマチュア無線の世界においてはARRLの発行するQST誌が元祖です。
日本のCQ誌も嘘記事掲載を実行したことがあります。私の駆け出し以前には水中スピーカーに関する記事が出た事があるとか聞きましたが、これは私自身は見ていません。直接知っているのはアンテナに関する何ページにも及ぶ記事で、変な役割を買って出た著者はアンテナ製作記事の第一人者であったJA1RST/JA6HW角居氏だったかと思います。その内容はスタック・アンテナを利用してビームを自由に曲げられる、というものです。しかし嘘記事らしく、末尾にはレファレンスとして Union Space Office 800号(略して嘘八百)と書かれるなど、怪しさはちゃんと仕込んでありました。
ところが後日のCQ誌に、あれはエイプリル・フールの冗談であった旨の説明がわざわざ掲載された上、「あの記事はおかしいのではないか」との指摘が実際にあった事も付記されていました。真面目な出版がそのような軽薄行動に出るのはけしからん、と憤るのならまだ理解できますが、内容がインチキとは気付く癖に、エイプリル・フールには考えが及ばないとは変わった思考形態の人がいるものです。
この種のイタズラは受け手にも教養だけでなくセンスが必要ということです。冒頭に述べたQST誌は一般誌ではなくARRLメンバー向け機関誌ですから、それなりに条件を整えていたのだと思いますが、日本のCQ誌ではそれが難しくなっていたのか、それ以後は同種の記事は扱われなくなったと思います。