過去の投稿でプロの人がアマチュア無線を趣味に持つ話は何度か触れています。「プロの無線通信士」では工作もハムも経験のない人が案外多いが仕事も趣味も昔から無線、という人もいるにはいるという話を。また、「アマチュア・カラーテレビ局」や「2SC710と2SC460」ではプロの電子や電気の技術者が個人的な立場でハムの技術をリードした話を書きました。今回、それらを振り返るのは、無線以外のある人生話を思い出したからです。
かつて某ビルの一角に構え、私もよく利用したステーキ専門レストランのことです。そこが再開発による閉店が決まりオーナーは故郷に帰るというので、国元で開業するの?と尋ねると、もう引退を決意したがその理由には後悔がある、と言うのです。それは田舎でのレストラン経営はステーキだけの店では多分やって行けない。でも、自分はステーキ専門店でしか修行経験はなく、店を持ってからも肉を焼く以外は付け合わせ程度の料理しかやって来なかった。時間は何十年もあったのだから、早くから志していればステーキ焼きも今の通り出来ていた上に、イタリアンでも何でも習得できたはず、という事だったのです。
もちろんこれは一般論ではなく、人生○○一筋極めて悔いなし、の人も対極的に沢山いるはずですから無関係な者が軽々に考える事ではありません。それに実際は店主は割と軽口で笑いながら語りました。
私自身は何事も本業になってしまえば、もはや楽しむことは性格的にできません。つまり、中学一年生の終わり頃に将来の専門を電気以外に決めた、と「はじめに」で書きましたが、電気の道に進んでいたらアマチュア無線も電子工作も間違いなく止めていたと思います。
それだけに、仕事も趣味も電気だった人々が一般アマチュアにとっては高度な技術の供給源となり、その恩恵は多大だったこと。一方その裏ではそれらプロが他の趣味を持つ機会を失った上、その時間は取り返せない、という事実は深く認識すべきだと思うのです。
参照 「知之者不如好之者、好之者不如楽之者」(論語)