アマチュア無線技士の電気通信術といえばモールスの電信しか存在したことはないので、当ブログではその前提で書いてきましたが、プロの通信士の試験には電話による送話の試験もあります。
欧文は国際的な「フォネティック・コード」、和文では「和文通話表」により問題文を一文字ずつ口頭で送話するものですが、和文の試験の方は2001年に廃止されています。また、昔は欧文和文ともに受話もあったのですが、モールス電信の試験のケースと同様に送受信のうち簡単な方が簡略化で廃止された形です。
「電気通信術」の一種といえば大げさですが、その実態はハムが交信中にコールサインや名前の確認でやり取りしているまさに「あれ」です。もっとも、趣味の世界だけで適当に見よう見まねで覚えていると、ついつい標準にないコードが身についてしまう可能性があり、J = Japan とか T = Tokyo は特別ありがちな例で要注意、かつ癖になってしまうとなかなか直せません。
和文通話表の方では、使われている用語が全般に古いことが問題になるかも知れません。防災の日の訓練の折に耳にしたのですが、消防署員?の人が「み」を伝えようとして一瞬言葉に詰まり、しかる後に「ミカンのミ」と言っていました。「三笠」という言葉はもう一般には通じないので、それだけに覚えにくいのでしょう。
アメリカの事務所で働いていた時のこと、電話で綴りの面倒な単語や略語を伝える際にフォネティック・コードを使ってみました。"foxtrot" は "fox" 、"zulu" は "zero"にするなどアドリブで少し変えたものの、通信とは関係ない一般人相手でも違和感なく通るものです。しかしある時 "yankee" を言った途端に電話の向こうの女性が笑い出したことがありました。そんな単語が来るとは思わなかった、という感じでしたので、欧文フォネティック・コードで受ける印象も色々のようです。