昔々、CQ誌には JA2HJ 鈴木幸重氏の筆になる連載漫画がありました。
鈴木氏はもっと以前、それこそ1950年代とかにはCQ誌そのものの表紙デザインも残しています。また、超長期連載が続いたJA1AN原氏主宰の "About VHF" コーナー。そこに最後まで見出し絵として残っていた「タコ型火星人」は多分ですが、鈴木氏の手によるものだと思います。一時期、CQ出版社のイラスト需要を一手に任される立場だったようです。
その作風ですが、経験や教養の深さを感じさせるところはあるのですが、いかに余技の作とはいえ漫画としては面白いものではありません。絵柄のタッチも毎月ほとんど落書きと評されても仕方ないほど雑なものでした。
元々CQ誌編集部というところは実体配線図などで鍛えられた他社に比べるとイラストの活用が明らかに下手でしたが、この漫画の惰性的な掲載もその一つと感じていましたし、頼まれる方より頼む方の新規開拓を怠る姿勢に問題があったと思います。CQ出版社には毎度厳しい事を言いますが、CQ誌もトランジスタ技術誌も何十年も購読を続け、単行本も沢山買ったのですからそのくらいは言っても構わないでしょう。文句も言われず買っても貰えず、とどちらを選ぶ?という話です。
鈴木氏の無線界への貢献は組織的な働きと製作実験などの記事の寄稿にあったようで、そちらで評価すべきでしょう。しかし特筆しておきたい事がひとつあります。
ある回ですが、「ハム・コンサルタ」という架空の機器をテーマとした漫画がありました。なんと、そこに描かれた内容が今で言うならAI, 例えば、ChatGPT 全くそのもので、受け答えのレトリックまでそっくりなのです。
結語は、「・・テナことに、そのうちなるかもね、ha ha ha」、だったと思いますが、50年余を経てその通りになってしまいました。家庭には電卓の一つも無かった時代のこと、これには脱帽です。