前回の続きです。

 

次にAMBIの音作りです。

 

 

「OH」+「ROOM&AMBI」の2系統のグループ別け

 

今回は「OH」を除いてすべてのマイクをまとめてAMBIとするスタイルで行きます(ROOMと呼んでも良いかも)。ROOMとAMBIは近い部屋鳴りか遠い部屋鳴りの違いで仕事がある程度までは被っており、BFD内のミックスである程度まとめるだけでも十分な効果が得られますし、記事で説明するにはその方が簡便なので今回はこのようにしました。

 

 

ルーティング

 

ROOMマイクやAMBIマイクなどすべてがAMBI MIXというトラックにBUSで送られます。モノやコンプなどのマイクは今回は話を複雑にしないためにあまり触れないことにします。

 

 

 

ROOMとAMBIのマイク設定

 

 

手法はOHの時と同じで各ドラムからどれくらいAMBIに音を送るか決める設定と、マイクの距離と広がりがポイントになります。

単純に考えると残響が目当てならROOMかAMBIかどちらか一方でも良さそうですが、残響はマルチで録音した方がリアルになりますので、これ以外にもモノラルマイクが3本、コンプマイクが2本あり、異なるマイキングのミックスでリアルな残響を作っていきます。

 

 

モノラルマイクやコンプマイクも位置的な問題やステレオイメージの問題であって、考え方はROOMやAMBIと基本的に同じです。コンプに関してはマルチアウトしてサードパーティー製のコンプを使ったりしますので、BFD内のコンプマイクは使わないこともあります。

 

 

ROOMマイクが5.4m、AMBIマイクが9.7mで両方とも少しステレオ感を広げています。BFDではマイクは最大で34mまで離すことが出来ますが、ちょっとした体育館くらいの広さです。

 

金物系の考え方はOHと同じですが、実際にAMBIの音を聴いてみましょう。

 

 

AMBIのMP3はこちらです。

比較のためのMP3はOHはこちらです。

 

どうでしょうか?AMBI(ROOMとAMBIのミックス)の方がマイクの位置が遠いので、OHと比べると明らかに遠くで鳴っているように聞えます。

 

これはリバーブと効果は非常に似通っています。実際リバーブでも残響の設定やステレオイメージャーを使えば似たようなことは出来ますが、人工的に作った残響ではなくBFDの場合は実際に収録しているはずですので、非常にリアルな空間を演出することが出来ます。

 

 

廉価なドラム音源ではAMBIの音をリバーブで作っているソフトもあるようです。BFDでもリバーブ用のフェーダーが内部ありますので使うこともあります。

 

 

 

OHやROOMやAMBIの存在は昔ながらのDTM音源のキックやスネアなどの単体キットのみを使うタイプとの大きな差になり、こういった空気感を感じさせる成分が増えてくると生っぽくなります。

 

逆に言えばあまり生っぽくしたくない、可愛い感じの曲では不要もしくは少ない方が良いということになります。

 

 

 

⦿被り(Bleed)の調整

 

Bleedは録音における被りという意味で、ドラムセットの各マイクは距離的に近い場所にあるため例えばスネアを叩いた音が周囲のキックやハイハットなどのマイクにも録音されてしまうように、それぞれの楽器のマイクは別の楽器の音をある程度までは拾って音被りしてしまいます。

 

 

音被りしてしまいます、というと否定的な物言いですが、実際にはこの被りこそがOHやROOM、AMBIなどと同様に、キックなどのみを単体で鳴らすドラム音源との差になる、リアルなドラムサウンドの非常に重要な要素となります。

 

 

被りの量はBleedを「on」で量を設定します。

 

スネアの被りありのMP3はこちらです。

スネアの被りなしのMP3はこちらです。

 

「被りなし」は純粋にスネアだけで、「被りあり」はうっすらとキックやハイハットやクラッシュの音が聞えます。こうした被り音が空気感のある響きを演出し、ドラムサウンドをリアルにしてくれるのですが、逆に量が多すぎるとコントロールしにくくなる場合もあり、キックなどにスネアの音があまりにも大量に被っている場合はミックス時にゲートで切ったりすることもあります。

 

 

BFDの場合は自分で被り量を決めることが出来るので、そういったことはやり過ぎない限り心配ありませんが、被りの目安に関しては基本的に全体的にうっすらとくらいで良いのではないかと思います。

 

 

OHの時と同じで被り量があまりにも多いと、例えばスネア本体のフェーダーを下げても、ほかの楽器に被っているスネアの音が残っているので音量をコントロールしにくくなるというケースがあります。

 

 

⦿タムレゾナンス

 

タムレゾナンス

 

キックのような大きな楽器をドスンと叩くと、タムもその衝撃で一緒になって揺れるわけですが、タムレゾナンスと言ってキックやスネアを叩いたときにタムが共振する現象をBFDでは再現することが出来ます。この音はタムから鳴っていますので当然ミキサーのタム部分から音が出ます。

 

res trimは低音に、spill trimは高音に反応しますが、分量があまりにも多いと例えばフロアタムが右に定位しているときに共振音も右から出たりします。

 

微妙な音作りに、隠し味としてちょっと足す程度で使うのが基本的な用法になります。

 

 

⦿ダンピング

 

 

不当廉売(そっちはdumpimg)ではなくて、減衰とか振動という意味のdampingです。これは太鼓の鳴りの余韻を調整するもので、最も多用するのはタム類です。

 

タムは思いのほか余韻が長く、ミックスでコンプを掛けると音程が出たり、過剰な余韻が邪魔になることもあります。

 

タムの余韻未調整のMP3はこちらです。

タムの余韻調整済みのMP3はこちらです。

 

 

特にフロアタムのように大きな太鼓は顕著ですが、ハイタム、ミドルタムでも余韻を必ず切ります。これは太鼓にテープを貼ったり、バスドラムの内部に毛布を入れたりするのと同じ目的です。調整済みの方が余韻がタイトになっているのがわかるでしょうか。

 

 

昔の音源にはこういう機能はなかったのでミックスでトランジェントやゲートのお世話になったり、波形にフェードを掛けることもありました。

 

 

キックやスネアに対しても同じように余韻をコントロールすることがありますが、個人的にはこの2つに対してはミックスで(ある程度まで)コンプ処理によるコントロールの余地を残しておくことが多く、逆にタムはこの時点で設定を詰めてしまうことが多いです。

 

 

⦿ここまでのまとめ

 

BFDの機能やテクニックに関してはかなりたくさんあるので紹介仕切れませんが、とりあえずこれだけやっておけば最低限なんとかなるという機能をご紹介しました。

 

もちろん様々な打ち込みテクニックや細かいセッティングの追い込みはまだ存在しますが、次にミックスの話に移ります。

 

今のようにCPUパワーが強くなる前はソフト音源とミックスにおける多数のプラグインを同時に使うことが難しかったため、いちいち書き出してWAVE化してからミックスすることが多かったのですが、現在は書き出さずにソフト音源にそのままプラグインを挿してミックスすることが多くなりました。

 

 

しかし今回は8小節の短いフレーズですが、BFDをお持ちでない方でミックスの勉強をなさっている方のために個別に波形で書き出しものをアップしておきますので、是非ともご活用下さい。

 

マルチアウトしたWAVEデータはこちらです。

 

次回はそれぞれの個別トラックに実際にプラグインを挿してマルチアウトされたトラックをミックス処理してみたいと思います。

 

 

次回へ続きます。

 

 


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