アナリーゼの本を書いている中で色々な楽譜を参照したりするのですが、モーツァルトのピアノソナタ第3番を見ていて「??」と思うことがあったのでどなたかのお役に立つかと思い書いてみたいと思います。

 

 

ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトなど楽譜は非常に汚かったり、出版されることを想定せずに半ば自分や自分たちの仲間内のために書かれた楽譜は一時資料となると同時に、手書きゆえの汚さで後世に様々な誤解を与える原因となっているのはよく知られるところです。

 

参考:シューベルトのアクセント問題

参考:ドビュッシーのシランクスのディミヌエンド

 

 

あるいは最初の出版が行われた際のミスが、それを流用した別の出版社においても広まってしまうということも珍しくありません。伝言ゲームで最初が間違っていると、それ以降も全部間違ったものが伝わるのと同じです。

 

 

ピアノソナタ3番の第1楽章冒頭を見てみますが、いくつかのエディションがあり、まずIMSLPで見ることの出来る「Sonaten für Klavier zu zwei Händen (pp.28-44) Leipzig: C.F. Peters, n.d.(ca.1938). Plate 10817-10818.」を参照してみます。

 

Edition Petersは日本の楽器屋でもよく見る出版社で、製本されたものは有料で販売されていたりします。

 

Edition Petersでは①、②の箇所がスタッカート

 

問題となるのは①、②の箇所ですがスタッカートになっています。

 

 

次に「Neue Mozart-Ausgabe, Serie IX, Werkgruppe 25, Klaviersonaten, Band 1 [NMA IX/251] (pp.26-39) Kassel: Bärenreiter-Verlag, 1986. Plate BA 4600.」と書かれているベーレンライター版も見てみます。こちらも有名な出版社です。

 

国際モーツァルテウム財団というモーツァルトに関する様々な研究、収集、発表などを行う信頼出来る機関があるのですが、ここから出ている楽譜もこのベーレンライター版と同じということです。いわゆる新モーツァルト全集です。

 

 

Bärenreiter-Verlag(新モーツァルト全集)ではスタカッティシモ


今度はスタカッティシモで書かれています。

 

スタッカートとスタカッティシモの違いは一般的な楽典の範疇なのでそちらに説明を譲りたいと思いますが、現代の解釈ではなくモーツァルトの時代ではどうだったか?がここではポイントになります。

 

音符の上に縦線、あるいは点という記号がどのような意味をモーツァルトの時代において持っていたのかはこの方のサイトが参考になります。

 

モーツァルトの父レオポルド・モーツァルトは縦線(現在でいうスタカッティシモ)はアクセントを付けるという述べていますので、こうなると「・」と「|」は意味が多少違ってきます。

 

 

肝心の直筆譜はどうかというと①だけ縦線が付いていますが、②は付いていません。

 

 

直筆譜

 

①の所はかすれたインクのような薄さで縦線があり、②は何もありません。以前の記事でショパンのピアノソナタ2番のリピート記号云々について述べましたが、それと似た類いの問題のような気がします。

 

 

1回目に付いていたから、同じ主題である2回目以降では楽譜には何も書かれていないけれど統一しないとおかしいから、あるいは書き忘れた?から編集者が校訂して書いたという風に私には見えます。

 

 

中盤にも同じ疑義が生じる箇所があるので見てみます。

 

Edition Petersでは③、④の箇所がスタッカート

 

 

Edition Petersでは曲冒頭の1回目の①の箇所で付いていたので以後この主題の部分では同じようにスタッカートになっていて、③と④の箇所でもやはりスタッカートになっています。

 

 

 

Bärenreiter-Verlag(新モーツァルト全集)ではスタカッティシモ

 

 

スタッカートとスタカッティシモの違いはありますが、ベーレンライター版もEdition Petersと全く同じ態度を取っていて、曲冒頭の1回目の①の箇所で付いていた記号と同じものを③と④で付けています。

 

 

 

直筆譜(69は小節数です)
 

そして肝心の直筆譜ですが、③と④の箇所には何も書いてありません。

こうなってくるとEdition Petersやベーレンライター版は直筆譜よりも主題展開を重視するという古典の原理を優先して、直筆譜を信用していないことになります。

 

 

 

スタカッティシモ記号はインクが薄く見えます。

 

微妙な話ですがスタカッティシモ記号はインクが薄く、これが1回目のみに付いているから2回目以降は楽譜に書かれていないけれど、1回目に合わせるという解釈は個人的には疑問です。

 

 

スタカッティシモでもスタッカートでもフレーズごとに付け直すのが基本であり、直筆譜に書いてないものを出版譜に書くのも難しい問題です。

 

 

私としては楽譜がどうかが問題なので、実際のピアニストさんがどう弾くかは解釈次第で色々な考えがあって良いと思っていますが、次の動画だとスタッカートで弾いているとはとても言えない感じです。

 

 

 

 

誰がどんな風に弾いてもOKだと思いますし、出版社も浄書する時にきっと迷った筈です。ベーレンライター版は「1回目だけスタカッティシモで2回目以降は書いてないが、これは書き忘れか?オレが足しといてやるよ」と、という判断でしょうし、Edition Petersは「直筆譜はスタカッティシモだが、これはおかしい、あるいは現代ではスタッカートだからスタッカートにしておこう」という判断なのだと思います。

 

 

出版譜と直筆譜のどちらを資料として信頼出来るかと考えれば普通は直筆譜なのですが、単純に汚くて何が書いてあるかわからなかったり、インクが乾く前に紙を重ねてしまい色移りしてしまった部分が後世に誤解を与えたり、単なるミスだったり(出版時に修正される)する場合もあり、なんとも言えない場合もあります。

 

 

それでもやはり1次資料として直筆譜を無視するということは絶対になく、見ておいた方が良いケースがたくさんあり、特にバロックや古典ではその傾向が強いです。

 

実はこういう問題は結構たくさんあって、楽譜を見ていて明らかにここにこんなアクセント記号がくるのはおかしいだろうと思うような箇所を見つけることは古典の楽譜では珍しくありません。

結果としてこうやって直筆譜を参照することも多く、著名なピアニストや指揮者が直筆譜を見て勉強するというのも頷けます。

 

私の場合は作曲的な見地から勉強として見るだけですが、演奏家さんは自分がどう弾くか?に大きく関わってくるので楽譜が信頼出来るか?という問題やベーレンライター版やEdition Petersのような有名度どころでも検討が必要になるのでしょう。

 

 

いわゆるUrtext Edition(原典版)はよくわからない出版社よりはずっと信頼出来ますが、結局はこういう問題から逃れることは出来ず、直筆譜や当時の演奏習慣も含めて検討しなければならない難しい問題だと思います。

 

 

後期ロマン以降になって作曲家が自作の出版を意識し、また出版業界も成熟してくるとこういう疑義が生じることは減ってきますがゼロにはなりません。出版社のミスというのは今でもあって問題になることがあります。

 

 

 


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どなたかの参考になるかもしれないのでi-lokが間違いなく刺さっているのになぜか音楽ソフトを立ち上げるときにエラーが出て認識しないというケースへの対処法を書いてみたいと思います。

 

 

最近PC 周りを少しいじった際にUSB ポートを抜き差ししたのですが、それ以来i-lok認証のプラグインなどのソフトが立ち上がらなくなってしまい困っていたところ下記の方法で解決しました。



i-lokは正常に認識し、さらにライセンスも正常に入っているのを確認します

 


i-lok license manegerを最新版にして、さらに間違いなくi-lokを認識しており、またソフトもi-lok内に確実に入っているのに、なぜかにソフトを立ち上げると認識しないという場合はi-lok license maneger内のViewからSynchronizeをクリックしてPCに挿してあるi-lokとネット上のi-lokアカウントを動機させる必要があります。

 

 

なにかPCの設定を変えた際にPCに挿してあるi-lokとネット上のi-lokアカウントの設定が異なるために認識しなくなるようです。

 

 

ViewからSynchronizeをクリック

 

 

ちなみに宮地楽器さんのサイトでもこの問題の解決方法に触れています。

起動出来ないパターンはいくつかありますが、参考にしてみて下さい。

 

DTMはこういうしょうもないトラブルとの戦いで、「あれ~認識しないぞ?」とか「立ち上がらないぞ?」みたいなのはよくあり、特に初心者の方ほど苦戦します。

時にはメーカーのバグでアップデートプログラムを作って貰わないと解決しない問題であることすらあります。

 

同じ症状でお困りのどなたかの参考になれば幸いです。

 


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楽曲分析(アナリーゼ)のやり方(下巻1)

 

販売ページはこちらです。

 

Amazon Kindleにて 楽曲分析(アナリーゼ)のやり方(下巻1)が出ました。

下巻ではフレーズ(メロディー)のアナリーゼの手法や主題とその展開、そしてベートーヴェンやモーツァルトのソナタ形式を実際にアナリーゼすることでソナタやソナタ形式のアナリーゼ手法について述べています。

 

巻末のURLからPDF版もダウンロード出来るようになっていますので検索や紙への印刷も可能です。

 

下巻はページの増大の都合で1と2に別れたので次巻の下巻2(現在執筆中)で完結の予定です。それが終わったら個別の作曲家の人気曲に焦点を当てて以前のラヴェルの水の戯れのアナリーゼ本のような形でベートーヴェン、モーツァルト、シューマン、ショパン、ブラームスなどの作品を取り扱ってみたいと思っています。

 

 

 

amazon様で体験版が読めますが、ここでも目次だけ掲載させて頂きます。

 

 

目次一覧

 

 

 

 

 

 

 

 

なぜか消されてしまったので再投稿します。

 

 

ReasonはVEProでは使えないものの、DAWではVSTiもしくはVSTとして音源やエフェクトプラグインとして使えるようになりました。

 

シンセ単体で考えるなら、昨今は素晴らしいVSTのシンセがたくさんありSERUMやAVENGERやSPIREを始め枚挙に暇がありません。

 

ハードシンセという選択肢もありますし、昔に比べてReasonの立ち位置は変わってきたと思いますが、今でもReasonで便利だと感じるのはエフェクトプラグインをやシンセレイヤーを活用した音作りです。

 

今回はリズムマシン(TR-808)のキックを元にしてスーパーハードな気持ち悪い系のキックを作ってみます。


元のキックの音はこちらです。 

 

 

全体で使っているもの一覧

 

 

これだけだとわかりにくいので1つ1つ解説していきます。

 

 

 

■キック①

 

表側

 

裏側

 

 

 Kong Drum DesignerからTR808のキックを選び、予めディケイやピッチを調整したものをScream4(歪みエフェクト)に送り、それをさらにイコライザーで低音用に調整して、ミキサーに送ります。

ルーティングは下から上に向ってインサートエフェクトを使っているイメージです。

 【元音】→【ディストーション】→【EQ】→【ラインミキサー】→【メインミキサー】というルーティングになります。

 

 

■キック②

表側

 

 

 

裏側

 

サイケな音にするためにキック①のTR808だけだとちょっと寂しいので、もう1つ高い成分が多めのキックの音をレイヤーで重ねていますが、こちらにも同じような処理を行っています。

 

キック①がメインでこちらのキック②は装飾的なニュアンスを求めているので、 【元音】→【ディストーション】→【EQ】→【ラインミキサー】→【メインミキサー】というルーティングなのはキック①と同じなのですが、ディストーションに対してLFOを掛けて歪みが揺らぐようにしてあります。

 

 

SubtractorというシンセサイザーLFO部分だけを使ってCV信号(今でいうMIDI信号みたいなものです)をディストーションを送っています。このシンセ自体からは音は出ていません。LFOの動きだけを外部に出力するという、実機で考えたらちょっと贅沢な使い方をしています。

 

 

このキック①とキック②の音がメインの音になりますが、これをそのままDAW側に出力せずにReason内部のラインミキサーでまとめて、バランス調整&センドエフェクトを用いています。

 

 

 

■ラインミキサーからのセンドエフェクト

表側

 

裏側

 

ミキサーからセンドエフェクトでSweeper(フェイザーとして使用)というモジュレーション系エフェクトを使っています。

 

 

 

ラインミキサーからメインアウトへ

表側

 

裏側

 

 

キック①とキック②とセンドのフェイザーをラインミキサーでバランスを整えたら、再びディストーションを掛けて、ステレオイメージャーでハイとローを個別にパンニングの広がりを調整して出力しています。

 

ディストーションに関してはここでもSubtractorというシンセサイザーLFO部分だけを使ってCV信号を歪み量を変動させるのに使っています。

ディストーションがスタティックだと音に動きがなくてつまらないので、ウネウネ動くことでサイケ感を演出するのが目的です。

 

ステレオイメージャーはフェイザーでパンニングが広がってしまったため、キックらしく低音は締め、広音はサイケ的な音の広がりを調整するのに使っています。

 

ここまで加工するともはや普通の意味での「キック」ではありませんが、一応元々はキックの音であり、用途としてもそれっぽく使うので調整を入れています。

 

 

ここから先はミキシングの領分で、ほかのトラック同様にコンプやEQを用いますが、音源から出てくる音として完成した音はこちらです。

元のキックの音であるこちらと比べてみて下さい。

 

 

グチョグチョのサイケな音になっていて、もはや元の音がキックかどうかすら怪しいくらいになっていますが、このような複雑なルーティングをDAWでやれないこともないのですが、Reasonを使った方が圧倒的に楽ちんです。

 

 

一品モノのシンセやリズムマシンやエフェクトのクオリティーはReason初期の時代と比べれば比較にならないほど向上していますが、それはあくまで単体での話であって、シンセやリズムマシン単体での音の良さよりも、このように様々なシンセやエフェクトをルーティングして作る言わばチームワーク的な音作りをするならやはりReasonは便利です。

 

 

CV信号をDAW側でオートメーションを書けば出来なくはないのですが、さすがにここまで面倒なことをDAWのリズムマシンの出力に対してやることは個人的にはありません。Reason内部で色々やれるから出てくるアイデアでたった1トラックのキックにもの凄い数のシンセやエフェクトを使っています。

 

 

今回は変態系キックなのでちょっと例外的ではありますが、VSTで使えるようになったことで一時はReasonから離れていましたが、また使ってみようという気持ちになってきました。

 

 


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シンセの音作りを色々と学ぶために、既存の音色を真似て作ってみるというのは誰もが行っている勉強&練習方法だと思いますが、私なりこうしたら似せるときのヒントになるかもしれないという方法をいくつかご紹介します。

 

 

0-1.シンセの方式を知る(予備)。

 

ある程度の知識がある方には常識かもしれませんが、全くの初学者の方のために一応シンセサイザーの音源方式にはいくつかの種類があることを述べておきます。(詳しい方は飛ばして下さい)

 

大きく分けても減算シンセ、加算シンセ、FMシンセ、PCMシンセなどの分類があり、ほかにもウェーブテーブルシンセやグラニュラーシンセなどの様々な名称があり、根本的に音を作り出す仕組みが全く異なる場合は似せて作ることが難しいです。

 

FMシンセのキラキラした音を減算で作れるのか?という問題は基本的に音源方式が異なるので近づけにくく、真似る際も同じ音源方式のシンセを用いるのが良い結果を出せるはずです

 

しかし似たような音(あくまでなんとなく似てるだけ)を作ること自体は例えシンセの音源方式が違っても全くの不可能とは言えず(不可能な場合もあります)、事実「ちょっと違うけどニュアンスは似てるかな?」みたいな音を作ることはよくあります。

 

 

また例えばウェーブテーブルシンセでも方式が同じだからと言って常に似たような音色が作れるわけではなく、オシレーターが出せる波形とフィルターの種類や数、エンヴェロープやLFOにどれくらいの自由度があるのか、搭載されているエフェクトやそのシンセ固有の機能などによってかなり作れる音は違うので、どれだけ頑張ってもある程度までしか似せられないということはよくあります。

 

完全に同じは無理でも、相当近しい音が欲しいなら真似たい音色が何のシンセを使っているのか?を知る必要があります。同じシンセを使えば土台となる条件は同じになりますので似せていくのがかなり容易になります。

 

 

0-2.シンセの方式の基本構造を知る(予備)。

 

こちらも予備知識ですが、シンセの方式をよくわかっていないまま、ヒット曲などのシンセ音を真似ようとする方がたまにいます。

当たり前のこと過ぎますが、減算シンセであればVCO、VCF、VCA、LFO、EGやそのルーティング、ポルタメント(グライド)などの諸機能などを使って何が何処まで出来るのか?という基本的な使い方を知っている必要があります。

 

例えばフィルターをエンヴェロープやLFOで動かすというテクニックを知っていれば、同じテクニックを使っている音を真似るときに想像出来ますのでかなり楽になります。

 

結局は知識と経験に基づいてしまいますが、少なくとも自分の愛用しているシンセに関しては説明書を良く読んですべての機能について理解しておくことが望ましいです。

 

 

 

1.周波数の分布をアナライザーで見る。

真似たい音を耳で聞いただけで真似出来るなら苦労はしませんが、実際なかなか似てこない場合はスペクトラムアナライザーを使うのがお勧めです。

 

真似たいシンセの音

 

自分の作っている音(高域が足りていないのがわかります)

 

上の画像のようにアナライザーをお手本と自分のシンセの両方に使い、リアルタイムでスペクトラムの分布を見ながら近づけていきます。

 

近づける方法は色々ありますが、イコライザープラグインを使うのではなくあくまでシンセ内部のオシレーターやフィルターなどの機能で行います。

 

特にオシレーターから出ている音が一番元になるわけですから重要で料理で言うと素材になります。肉料理を目標としつつ魚を調理しても上手くいきません。最も基本的な正弦波、矩形波、鋸波、三角波などの知識はもとより、自分のシンセで出せるオシレーターの音を1つ1つ調べてどんな音が出せるのかを知っていると役に立つことが多々あります。

 

 

MASSIVEのオシレーター一覧

 

 

MASSIVEにはこんなにたくさんのオシレーターから出せる音の種類があります。もちろん数が多ければ良いということはなく、Sylenth1のように出せるオシレーターの音の種類は少なくても人気の高いシンセもあります。種類と質は全くの別問題なので一応述べておきます。

 

 

Sylenth1のオシレーター一覧

 

例えばSylenth1には基本的な波形しか出力する機能がありません。単に似せていくことだけが目的の場合はMASSIVEのオシレーターから複雑な波形(デジタル系やFX系)が元となっている場合は似せるのが困難になっていきます。

 

フィルター等の各種機能の問題もありますが、それらが大体再現出来ていて違いがオシレーターにありそうな場合は1つずつ切り替えてスペクトラムの分布が似ているものを探します。

 

スペクトラムの分布が似ているからといって、音色が同じになるわけではありませんが「低音が痩せて聞える」「高域が篭もって聞える」などの印象はアナライザーを使うことでかなり似せていくことが出来ます。

 

 

しかし強力且つ多機能なオシレーターを持つシンセの音を単純な波形しか出力出来ず、加工も大して出来ないシンセで真似るのはどうしても難しくなってきます。

 

 

2.倍音の分布をアナライザーで見る。

 

倍音構成は音色を決定付ける重要なファクターです。正弦波は倍音がありませんし、矩形波は奇数系の倍音が主体で出ています。基礎的なことですが、ご存じでない方のために簡単にオシレーターの基本波形の倍音について述べてみます。

 

 

正弦波(倍音なし)

 

 

三角波(正弦波に多少倍音が加わった音)

 

 

矩形波(奇数倍音主体)

 

 


 

鋸波(奇数・偶数両方の倍音)

 

上の画像を見ると鋸波が一番倍音が多いということになります。慣れてくると音を聞けば「これは矩形波っぽいな」とか「鋸波っぽい」のようにわかるようになります。

 

しかし上の一覧画像は最も単純な基礎知識であって、実際のオシレーターから出てくる音はもっと複雑であることが多く、単純な矩形波だとか鋸波だとかそこまで単純ではないケースがほとんどです。

 

 

 

MASSIVEのオシレーターにあるWt-positionとIntensity

 

MASSIVEにはWt-positionとIntensityというパラーメーターがありますが、Wt-positionはパラメーターの位置によって矩形波と鋸波などの2つの波形のどちらに近付いていくのかという中間的な波形を作りだすことが出来ます。

 

 

またIntensityは倍音の量で右に回すほど高次倍音が加わっていきます。このような固有の機能はそれぞれのシンセサイザーにあり、Aというシンセで出来ることがBというシンセでは出来ない場合に似せていくのが困難になる理由の1つにもなります。

 

倍音分布図の参考例

 

しかしお手本の倍音分布を実際に見て、自分も似たような倍音分布になるように調整すれば実際音は似てきます。このように見ていくことはかなりのヒントになるはずです。

 

 

 

3.フィルターの動きアナライザーで見る。

 

 

LPFが開いていく

 

 

LPFが閉じていく

 

上のGIFはLPFが開いたり、閉じたりしているところを視覚化したものです。エンヴェロープやLFOなどをカットオフに割り当ててフィルターの開閉を行うのはシンセの常套テクニックですが、このように目でみることで何をやっているのかを知ることが出来ます。

 

またどの辺りの周波数からカットが始まって、終点は何処なのか?なども視覚的に見られるので自分で真似るときにもかなり参考になります。

 

ただこれはある程度ゆっくりとした場合のみに有効で、音が鳴った瞬間(0.1秒とか)に一瞬でフィルターが動くような場合はアナライザーで追い切れないので耳での判断が頼りになります。しかしそれでもフィルターの種類や動き始める開始点や終着点はわかるのでかなりのヒントを得ることが出来ます。

 

 

4.波形に書き出してみる。

 

アンプに割り当てるエンヴェロープのADSRは音の立ち上がりや余韻などの重要なファクターで、似せていくのは割と簡単ではありますが、実際にやっていて「微妙に何か違う…」というときは一旦録音や書き出しをして波形を視覚的に確認するとヒントになります。

 

 

お手本の波形

 

自分の波形

 

上の2つ波形を見比べてみると明らかに形が違います。お手本の音には不要なアタックやディケイによる減衰はないのですが、自分の波形の方はアタックによる立ち上がりやディケイやリリースによる減衰があり、耳で聞いてわからないことも(耳だけで出来るようになるのが目標ですが)このように目で見るとかなりヒントになります。

 

 

MASSIVEのエンヴェロープ

 

目で見たままのエンヴェロープの設定にすれば音はかなり似てきます。但しエンヴェロープのディケイやリリースで音を切っているのではなく、フィルターを閉じることで音を切っていることもあるので、その辺りはアナライザーのフィルターの動きを目で見たり、耳での判断が重要になります。少なくとも波形を見ただけではわかりません。

 

 

4.目では確認しにくい要素。

 

ある程度までは音情報を視覚化出来ますが、何でもかんでもというわけにはいきません。例えばSuper Sawのようなたくさんの鋸波を微妙にピッチをずらして重ねるぶっとい音はピッチ修正ソフトなどに読み込めばある程度の情報が得られるのかもしれませんが、耳で聞いてデチューンされているとか、レイヤーされていることがわかる必要があります。

 

またポルタメント(グライド)などはピッチ修正ソフトを読み込むまでもないと思いますが、コーラスやリバーブの感じ、あるいは変則的・個性的なエフェクトが使われている場合は視覚化出来ない場合も出て来ます。

 

 

メロダインやオートチューンなどのピッチ修正ソフトを使えば、1~3で紹介した方法以外の情報を得ることが出来ますし、さらに異なるアプローチもあると思われますが、どうしても音である以上は視覚化しにくい要素がたくさんあって耳での経験値が必要になる場合があります。

 

こればかりは何とか自分の持っているアナライザーなどでなんとかならないかと試行錯誤しつつ、音作りの勉強も平行して行っていくしかありません。誰かに教えてもらうのもありです。

 

 

5.まとめ。

 

耳で聞いただけで色々なシンセの音を作れるシンセマスターは普段からシンセに慣れ親しみ、機能もちゃんと理解して、さらにたくさんの音作りの経験を持っているので、新しいことに取り組んだ時にもサクっとポイントを抑えることが出来ます。

 

今は勉強する道具もたくさんありますし、ネット上では意見交換や上級者に教えを乞うことも出来ます。私もレッスンで生徒さんにこういうことを教えることがよくあります。

 

 

また今はソフトシンセを買えば山ほどプリセットは付いてきますし、追加で購入出来るプリセットやユーザー同士が無料で交換し合うようなコミュニティーもあり、昔のように必ずしも絶対に自分で音色を作らなければいけない時代ではなくなりました。

 

 

例えば自分の曲をyoutubeなどにアップして「これってNEXUSのプリセットだよな?」とか「この人MASSIVEのプリセットそのまま使ってるのかー」と言われても構わないのであればプリセットを選ぶだけでも十分音楽製作を行うことが出来ます。

 

 

実際にスピード求められる作家さんはそれでOKでしょうし、EDM系以外ではシンセサイザーの音色のオリジナリティーはそれほど重視されません。また現にヒットソングやBGMなどでも私自身がそれに気付くこともあります。

 

 

この辺りの感覚は人それぞれ、ジャンルそれぞれで、何処までシンセが好きか?楽しいと思えるのか?シンセの音作りが自分にとって音楽製作の範疇に入るのか?音色のオリジナリティーを重視するか?など価値観によって変わってきますが、トータルで見ればシンセを使う曲を作るならこのような能力はある程度まで獲得しておいた方が有利に働くことは言うまでもありません。

 

 

自分で音作り出来るようなレベルに到達している人はプリセットの改変は容易いでしょうし、特に特徴的でカッコ良い音色を何かの曲で聞いた時に自分で多少カスタマイズして再現出来れば、新しい音色を自分の曲に取り込むことが出来ます。

 

 

それでなくてもシンセに詳しければ得することがたくさんあります。

 

 

真似て作るというのは基本的なシンセの仕組みを理解した後の次のステップですが、実際役に立つのはこの段階で得た知識なので、私も「これどうやってるんだろ?」と思ったらちょいちょいやってみたりもします。

 

 

耳だけで聞いてわかるようになるのが、作曲でもミックスでもシンセの音作りでも最終目標なのですが、このように視覚情報を加えることでかなり似せていくのが楽になるのも事実です。この記事がどなたかのお役にたてば幸いです。

 

 


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音楽史を学ぶ上で絶対的に重要とは言えないのですが、歴史上に名前が残っている大作曲家たちには多かれ少なかれ必ず学ぶべきものがあり、現代に生きる私たちが作曲をする上で示唆に富んだ作品がたくさんあります。

 

もう少し砕けた言い方をするとポップスでもロックでもジャズでもダンス音楽でもジャンルを問わずヒット曲や人気曲には学ぶべきものがたくさんあるので、その秘密を解き明かし自分の曲で応用出来るようになれば実力アップ間違いなしという感じでしょうか。

 

 

マーラーはバッハ、ヘンデル、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、ショパン、ブラームス、ブルックナー、リスト、フォーレ、ドビュッシー、ラヴェルなどのように絶対に外せないわけではありませんが、それでも人気のある作曲家であり、また特に旋律作法において目を見張る特徴があります。

 

 

マーラーのような典型的なロマンチックさを好むかどうかは人によりますが、彼のロマンチックな作風は現代の映画音楽やテレビドラマなどの劇伴にもマッチし、実際に使われている例がたくさんあります(『ベニスに死す』が特に有名でしょうか)。

 

 

今回はマーラーのロマンチックさを現代の私たちが利用できないかという視点から記事を書いてみます。

 

 

マーラーには重要な作品がたくさんありますが、一番人気はなんと言っても交響曲5番4楽章のアダージェットではないかと思います。アダージェットは本来「アダージョよりやや速く」という意味の速度記号で、アレグレットとかラルゲットなどのような特に曲の楽想を示す言葉ではないのですが、アダージェットで検索するとマーラーの交響曲5番4楽章がヒットしますし、この曲を連想する人も多いのではないかと思います。

 

 

 

楽譜は冒頭から

 

imslpへのリンクはこちら

 

 

譜例1(冒頭から)

 

旋律作法について見てみるためにオケスコアを参照してみます。如何にも「ロマン~!」という感じですが、こうして見ると和声的にはそんなに複雑ではありません。

 

オーケストレーションや和声法についても述べることは出来るのですが、今回は不協和の効果的な作り方に焦点を当てます。

 

上の譜例の「長2度」と書いてあるところは第1ヴィオラとチェロが長2度で2小節目4拍目でぶつかっています。この不協和は3小節目の頭で解消されるのですが、この弱拍且つリタルダンドで勿体付けた箇所で一瞬の不協和を作り出すことで、次での解決が対比効果によって非常に美しく響きます。

 

 

協和と不協和は表裏一体で、12音技法のような特殊な音楽を除けば協和だけでは音楽は成り立たず、また不協和だけでも成り立ちません。寒い冬の日を知っているから暖かい春の日を有り難いと思うように、貧乏を知っているからお金の大切さがわかるように、病気や怪我を知っているから健康の有り難さがわかるように、両者は表裏一体です。

 

 

人生に浮き沈みがあるのは誰によらずそうですが、一本調子のドラマには面白さがありません。起承転結や山場・谷場があり、困難を乗り越えて教訓を学び、幸福に至る部分に人生の妙味があります。

男女の恋愛をテーマにした作品でもひらすら男女がイチャイチャしているだけの2時間のドラマはドラマとして成立しないでしょう。

 

 

ここで言いたいことは相反するものがあるから、逆がより際立つということで、料理で例えると隠し味のような要素が音楽にも大切であるということです。

カレーは本来辛い料理ですが、林檎やハチミツを隠し味として入れることで本来の辛みがより引き立つわけです。お汁粉の塩も同じで似たようなことは様々な分野に言えます。

 

 

 

不協和があるからこそ協和が引き立つというわけですが、冒頭の弱拍での不協和は非常に上手く機能りしており、3小節目のミ→ファというメロディー(第1Vn)のミやバスのファに対して長7度の不協和ですが、ここで一旦解決したあとでさらに2拍目に向って倚音のようにファに解決します。

 

 

FM7というコードではファとミは和声音なのですが、長7度そのものは楽典的な意味では不協和音程であり、実際ピアノでファとミだけを取り出して鳴らせば厳しい不協和に聞えます。

 

 

作曲家が自分にとって基本とする響きを基礎和音とある理論書では呼んでいましたが、少なくともこの箇所だけを取り出してみるならマーラーの基礎和音は3和音でしょう。

2小節目の弱拍から長2度の不協和→長7度→解決という動きが効果的に用いられています。しかしここだけでは「これくらいならほかの曲でもあるじゃん」と言われてしまいそうなので、もう少し先を見てみます。

 

 

 

 

譜例2(譜例1の続き)

 

マーラーで特に面白いのが旋律作法なのですが、この部分はその特徴を端的に表しています。6小節目の短9度と書いてある部分をよく見て下さい。ヴィオラはレ→ド#→ドと半音階で下行していますが、6小節目の4拍目でわざわざ第1ヴァイオリンのレとヴィオラのド#を短9度でぶつけて鋭い不協和を作り出しています。

これは一般的には忌避されるであろう手法の範疇に入るはずです。

 

 

ここでも弱拍で作り出された不協和が7小節目の頭で倚音(♭13th)→解決という風に解決の延引がなされていますが(最初の例と同じ)、わざわざ短9度でぶつけている箇所が面白いというかマーラー的なロマンチズムを感じます。

 

 

ジャズ音楽やクラシックの後期ロマン派の音楽の半音階化はこういう要素が多かれ少なかれありますが、ポイントはどんな不協和をどんな風に作り出し、どんな風に解決させるか(協和との対比)です。

ジャズにおける音のぶつけやオルタードなどはやり方や効果は違えども、不協和にとって特定の効果を求めるという意味では同じで、マーラーもマーラーなりのやり方で彼の個性を出しています(これはその一部に過ぎませんが…)。

 

 

同じことがバッハにもベートーヴェンにもドビュッシーにもラヴェルにも、誰によらずあります。作曲をなさっている方であれば不協和に対する緻密な考えを持っていらっしゃる方も多いのではないかと思います。

 

 

先ほどのカレーの例えならどんな隠し味をどれだけの量で、どういう調理工程で効かせるかということです。ここに作曲家の妙技があり、個性が多いに表れるのですが、マーラーの旋律作法の特徴の一つがここにあり、興味があれば是非ともほかの部分でもこういう特徴的な不協和を探して出してみて下さい。

 

 

また動画を見て綺麗だなと思ったら是非ピアノなどで自分でも弾いてみて下さい。この不協和の部分に対して人によって意見が分れるでしょうが、少なくともこの曲はよく知られた有名曲なので、このような不協和の用法を許容し、また好む人が多いのは事実です。

 

 

マーラーは旋律における不協和→協和のやり方が非常に興味深く、この点においては独自性を獲得しているのではないかと思います。「これいいの?」と思うような旋律作法もありますが、個人的には多いに学ぶべき部分があり、私はそこまでマーラー好きというわけではないのですが、技術としてはこういう如何にも映画音楽的なサウンドを出すためのテクニックは持っておいて損はないと思っています。

 

 

音楽をなんでも技術や知識として知的な側面で捉えるのもどうかと思いますが、感情論だけでは作曲は駄目なのでやっぱり感性と知性の両方が音楽には必要なはずです。どのみち誰かの曲を聞いて「こういうのカッコ良いな~、こういう作ってみたいな~」と思っても、技術や理論的な意味で何をやっているのかが自分で理解出来なければ結局作れないので、私としては知性と感性の両方で常に音楽に接していくのが大切であると思っています。

 

 

ほかの作曲家の不協和に対する特徴的な用法も機会があればまた記事にしてみたいと思います。

 

 

 


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前回の和声課題集に引き続き今回はメシアンのVingt Leçons d'Harmonie(和声の20レッスン)をご紹介します。

 

シャランとかフォーシェなどの有名どころが飽きて?きたら、ほかにも色々と手を出してみたくなるのですが、和声の課題集というか実施集というのは前回の記事に書いたとおりとてもたくさんあり、その中から面白いと思ったものをペロっと舐めてみると新しい発見があったりします。

 

 

Vingt Leçons d'Harmonie(和声の20レッスン)

 

直訳するとVingt=20、 Leçons=レッスン、 d'Harmonie=和声のなので、和声の20レッスンと訳していますが、このメシアンの和声実施集は日本ではあまり有名ではありません。

 

この和声集もスタイル和声になっていて、冒頭にメシアンの解説が載っていますが、モンテヴェルディー、ラモー、バッハ、グルック、モーツァルト、シューマン、アルベニス、フォーレ、ラロ、マスネ、シャブリエ、フランク、ドビュッシー、ラヴェルなどの和声をテーマに作られています。

 

 

一人一人を深く掘り下げているわけではありませんが、なんと言ってもメシアンの和声実施ですから参考にならないわけがありません。古典和声的なものもありますが、古典和声を大きく超えて近代的な和声で書かれているものもあり、実際かなり面白いです。

 

 

15番目のソプラノ課題(フランク&ドビュッシースタイル)

 

例えば15番の冒頭を見てみましょう。これは古典和声の課題集では絶対に見られないような移調の限られた旋法、ポピュラーでいうところのコンビネーションオブディミニッシュスケールで書かれています。

 

1小節目のⅠ度なのにリディアンや2小節目の偶成和音はコンビネーションオブディミニッシュスケールだからこそあり得る響きですが、音を全部なぞってみると下の音階であることがわかります。

移調の限られた旋法の実際の使い方は私の作曲本でも紹介しています。

 

 

 

 

この和声実施は調号はF#メジャーキーですが、F#から始まるコンビネーションオブディミニッシュスケールで出来ていて、ほかにもホールトーンが出て来たり、複雑なテンションコードが出て来たり、単なる和声実地例というよりはもっと実践的な、ある意味で芸術作品のようなニュアンスがあります。

 

 

全体の半分くらいは古典和声的なものですが、この辺りもさすがのメシアンで非常に美しいものばかりであり、いかにも現代音楽的な変な曲もありますが、普通の和声力も凄まじいです。

 

 

ヘンテコな曲が美しく聞えるのは土台がしっかりしているからであり、絵で例えるならピカソはヘンテコな絵が多いですが、普通に書いたら写真みたいに描けるのと良く似ています。

 

 

 

「泣く女」 ピカソ56歳の作品

 

ピカソは「私は子供の頃に既に大人と同じように描くことが出来た。しかし子供のように描けるようになるには一生掛かった」と述べていますが、泣く女やゲルニカのような如何にも現代絵画みたいなある意味で誰でも描けそうな絵(実際には無理ですが)を描いていても、やはり基礎能力が高いのでヘンテコな絵を描いてもやはりちゃんと・・・・しています。

 

 

ピカソ 8歳(小学校2年生)の時のデッサン

 

 

14歳(中学2年生)の時の油絵

 

 

ピカソの少年時代の作品はとても少年とは思えない技術的に完成された絵ですが、ヘンテコな絵を描く反面で基礎的な技術は極めて高度なものを持っています。メシアンに限らず現代音楽の作曲家も似たような部分があり、基本的なことを蔑ろにして前衛的な変なことばっかりやっても個人的には良くないですし、そういった芸術に永続性はないと私は考えています。

 

 

 

「泉」 マルセル・デュシャン

 

 

そういう意味においてデュシャンの泉のようなコンセプト重視の技術に立脚しない作品は「そもそも芸術か?」と思ってしまいますし、誰でも出来るので底が浅いということもあり、やはり高度な技術はないよりは絶対にあったほうが良いと思っています。思っているというよりは必須と言った方が良いかもしれません。

 

 

普通に考えれば基礎的な知識・技術はないよりあった方が良いはずですし、事実高いレベルに到達している人はどの分野でもそうであると言えます。上に行くほど付け焼き刃が通用しなくなり、付け焼き刃でもないよりはマシかもしれませんが、やはり時間が掛かっても地金を磨くべきです。

 

 

むしろそうして身に付けた高度な技術や知識は簡単に人には真似されず、また盗まれることもない本当の意味での自分の財産と感じています。

 

 

ともあれこの課題集に限らず、和訳されていない本は楽譜だけが頼りになってしまって本文に何が書いてあるのかよくわからないのが個人的に難しいところです。

英語なら翻訳サイトや辞書を使いつつ、なんとなく意味はわかるのですが、フランス語やスペイン語になると言葉の壁が分厚く何を言わんとしているのかがよくわからないことが多々あります。
 

 

課題1の序文

 

Vingt Leçons d'Harmonieはフランス語で書かれているのですが、冒頭にメシアンの各課題への序文があり、フランスがさっぱりな私には??となってばかりです。

テキトーに訳してみます。

 

CHANT DONNNÉ(dans le style Monteverdi) 

ソプラノ課題(モンテヴェルディーのスタイルで)


Trés expresiff.Ne pas craindre les appogiatures.

Entrées serrées à chaque repos du chant 

とても表情豊かに。倚音を怖がってはいけません。

すべての声部の休符の入りをしっかり休みます(合ってる??)。

 

Realisarion de l'auteur
著者の実施集

 

aux mesures 20 à 26 ,
20から26小節        

           

les deux 5 tes _ 

??

 

soprano et contralto (la 1ere étant diminuee、la 2e juste)
ソプラノとアルトの間(1回目のディミヌエンド?丁度2回目)

 

sont permises dan ce style.
このスタイルでは許されます。

 

この20から26小節のソプラノとアルトの間の何が許されるのかが文章だけではよくわからず、また楽譜を見てもやっぱりわかりません。

 

 

武満徹がリディクロの英語版を半年くらい書けて辞書を引きながらなんとか読んだという話を何かの本で読みましたが、知り合いにフランス語やスペイン語がペラペラな人もいませんし、辞書を引いても翻訳サイトを使っても音楽的に意味がわかるレベルで訳せないことがあります。スペイン語も同じで、なんとなく半分くらいはわかるけれど(半分もわからないこともあります)、肝心なところが上手く訳せないということが多いです。

 

 

これが勉強するときに結構困っています。昔ならともかくこの情報化ネット社会ならなんとかならないのかと思うのですが、楽譜+本文の意味が半分くらいわかればいいか…という感じです。和声実施集なら楽譜だけでも十分なのですが、教則本の類いだとどうしても文が多くなるので面倒です。

 

 

この種の和声実施集はほかにもありますのでまた別の記事で紹介したいと思います。

 

 


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考古学の勉強をするために奈良に来ていますが、奈良県葛城市に笛吹神社(葛城坐火雷神社)という珍しい音楽の神様の神社がありますので参拝してきました。

 

音楽家の崇敬厚く、特にフルートなどの笛の奉納演奏が行われたりするそうで、私も音楽の仕事をしているので非常に興味がありました。

 

 

 

葛城市は奈良県の中心地である奈良市から見ると南東方向にあり、西に山を越えれば大阪です。

上古の時代から続く非常に歴史ある場所であり、考古学的に極めて価値の高い場所で、古事記や日本書紀にも度々登場します。

 

 

葛城は御所と共に特に重要で葛城山金剛山の東側の麓には大小数多の古墳あり、寺口忍海古墳群のような大小150くらいの古墳群から飯豊天皇埴口古墳室宮山古墳のような全国レベルの巨大古墳があります。

 

 

あるいは創建年代不詳で上古時代からあると言われている高鴨神社鴨都波神社葛木御歳神社高天彦神社葛木神社葛城一言主神社鴨山口神社長尾神社調田坐一事尼古神社葛木倭文座天羽雷命神社棚機神社葛木二上神社博西神社などの神社があり、かつて綏靖天皇の皇居であった葛城高岡宮、孝安天皇の室秋津島宮、孝昭天皇の葛城掖上宮、時代が下って飯豊天皇(天皇に即位したかは議論あり)の 忍海角刺宮(現角刺神社)などがあります。

 

 

相撲の起源として有名な野見宿禰当麻蹴速の両名のうち当麻蹴速(現在の葛城市當麻)の出身地も葛城です。

 

 

野見宿禰と当麻蹴速

 

 

言い出したらきりがないでこれくらいにして本題である笛吹神社は葛城市内から葛城山に向って少し登ったところにあります。

 

音楽の神社は珍しく、奈良県の南の方によく芸能人や音楽家が参拝に来るという天河大弁財天神社がありますが、全国にある弁財天以外で音楽の神社はかなりレアです。

 

 

 

笛吹神社と火雷神社は元々は別の神社だったそうなのですが、1874年(明治7年)に笛吹神社の末社だった火雷神社を合祀して新たに葛木坐火雷神社という名前になったそうです。現地では歴史的に笛吹連の人たちが住んでいた場所らしく葛城坐火雷神社よりも笛吹神社という名称の方が好まれているようです。

似たような例はたくさんあってすぐ南の駒形大重神社も駒形神社と大重神社が合祀された神社です。

 

 

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「笛」という名字の方の面白い記事がありますのでご紹介しておきます。

古代の笛吹連・笛連及び笛吹部・笛部という笛や音楽を職業にしていた楽人の末裔に関する内容で、現在の笛吹神社の宮司の方も代々この地に住んでいた笛吹連の子孫で、社伝では建多乎利の子の「櫂子」が崇神天皇の代に建埴安彦の乱で活躍して、天磐笛を下賜され、笛吹連の祖となったと伝えられています。

 

櫂子から数えて現宮司は85代目と言いますので宮司は大体1代で30年くらいと考えると、30年×85代=2550年前という単純計算になります(こういう神社は全国にたくさんあります)。

 

もちろん事故や病気もあり、およそ30歳~60歳までの30年間務めない場合もあったと思いますので、ここまで単純な話ではないと思いますが、こう考えると日本史の年代に関して色々と推測が出来ます。

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葛城坐火雷神社は延喜式(905年)にも葛城坐火雷神社二座並名神大月次相嘗新嘗と記されていて、日本屈指の古社であり、延喜式には3132座(2861社)もの祭神と神社が掲載されてものの、このうち71座のみが朝廷から直接の幣帛を受けるのですが、葛木坐火雷神社(火雷神と天香山命)はこの71座の中に含まれているので、当時は相当大きな神社であったようです。

 

 

時代と共に衰微して火雷神社は明治年間に笛吹神社に合祀されるのですが、こういったケースは珍しくなく当時としては非常に有名だった二十二社ですら、丹生川上神社上社のように現在では比定社や論社はあっても、本当にそこであるのか正確なことが分からなくなっている神社も存在します。

 

 

 

江戸時代の本居宣長の本を読んでいても、昔有名だった神社が今では何処にあるのかすらわからないみたいなことが書いてあるくらいで、実際全国にも千年以上前の記録に残っている神社の場所がわからなかったり、廃れてしまっている神社もたくさんあって、実際に行って「ここが延喜式では大社だった神社?」と驚いたこともあります。

 

 

 

日本三代実録(852年)にも葛木坐火雷神社に正三位の神階を授けるという記述があるのですが、笛吹神社の祭神である天香山命は古事記には登場せず、日本書紀には其天火明命兒天香山是尾張連等遠祖也天火明命の子供で尾張氏の祖先であると書かれています。

 

 

特別な事績がないので、八咫鏡を作った伊斯許理度売命や神武東征に登場する高倉下命の同一視されることもありますが、本当のところはよくわかりません。個人的には両方とも違うのではないかと思っています(伊斯許理度売命説は葛木坐火雷神社の神職の方も否定的でした)。

 

駐車場も広く整備もされていて神職の方が常駐しているのでお守りなどの授与品も頂けます。

公式サイトはこちらです。

 

 

直接音楽と関係あるわけではないのですが、考古学趣味の記録のために記事に残しておきます。

 

 

 

 

ちょっと上級者向けになり、またいわゆるスタイル和声という範疇になりますが、個人的に非常に面白く、またお勧めな和声課題集があります。

 

一般的に和声課題集というと芸大和声と最低限として、日本人なら尾高惇忠、矢代秋雄、野田暉行、フランス和声(フランス人が行ったもの)ならシャラン、フォーシェ、あるいはメシアンの実施集なんてものもあります。

 

和声の実施集の多くは絶版になっており、音大などの教育機関の図書館で探すか、中古品をネットなどで探すしかありません。

 

この方のサイトが非常に詳しいのでご紹介します。

 

しかしいずれにしてもこういった課題集は特定のスタイルに特化しているというよりは汎用的な和声の実施集とも言うべきもので、それぞれの個性はありますが、特定の大作曲家のスタイルを学ぶものではありません。

 

 

絶版になっているものも完全に手に入らないわけではありませんが、わざわざかつて出版されたものを全部やるというほどのことはないと個人的には思っており、それよりは基本的な事柄が終わったらスタイル和声に手を出すほうが実際の作曲に役立つのではないかと思っています。

 

 

 

Challan, Melodies instrumentales a harmoniser シリーズ

 

探される方のために東京藝術大学附属図書館OPACへのリンクを貼っておきます。

amazonでも一応扱っているようですが品揃えは極端に悪くアカデミアから買うのがちょっと割だがですが確実です(amazonはもっと割高ですが)。

 

輸入楽譜になりますが、ディアレッツォなどの直輸入品としても購入することが出来ます。

 

 

この Melodies instrumentales a harmoniserシリーズはBach, Mozart, Schumann, Fauré, Debussy, Ravelの6名の作曲家に焦点を当てて、それぞれの作曲家のスタイルをシャランが模倣した実施(レアリザシオン)集になっています。

 

「ソロ楽器+ピアノ伴奏」と「弦楽四重奏」なのでいわゆる4声部の和声実施集ではありませんが(弦楽四重奏は4種の楽器ですが声ではないので)、それぞれの作曲家の和声スタイルを学ぶのにとてもヒントになります。

 

 

もちろんこんなもの使わなくてもドビュッシーならドビュッシーの楽譜を見ればそれで良いじゃないか、と言われそうですが、たしかにそうではあるものの、シャランなりに学習者に対して整理された感じになっていて、それぞれにテーマみたいなものがあり、勉強用の教材としてはエッセンスが詰まった素晴らしい実施集と言えるでしょう。

 

 

実作品は管弦楽だったり、長大なものがありますが、この実施集は大体20~30ページの楽譜で1曲あたり2ページくらいの短いものですので勉強するには丁度良い短さです。小品とも呼ぶべき佳曲がたくさんあります(1冊につきおよそ10曲程度)。

 

 

こちらも既に絶版になっているものが幾つかあり、なんとか手に入らないかとアカデミアやフランスの出版社に問い合わせたものの解答はノーだったので、購入出来ないものに関しては図書館で借りるのが一番現実的です。

 

 

ちなみにお値段も20~30ページの薄い本(作りも簡易的)なのですが、大体4000円くらいするので、一般的な本に対する価格としては相当高額の部類に入ります。4000円出せば相当がっちりした本が買えますが、この本はラミネートされているわけでもない画用紙みたいな表紙で本というよりは300円とか500円くらいの小冊子という感じです。一般的な本と比べれば「高い過ぎる」となりますが、中身には値段に見合った価値があります。

 

個人的には多少高いとは思いますが、内容的にはこういう本は極めて珍しいですし、相当ニッチな分野なのでこの価格帯も致し方なしという感じです。

 

 

このシャランのスタイル和声はレッスンでもよく取り上げていて、主にメリットとしては2つあり、1つは和声への理解度を測るという意味です。

芸術作品と無味乾燥な和声実施集の中間みたいな要素があるので、これまでの勉強の復習にもなります。

 

 

フォーレ、ドビュッシー、ラヴェルあたりはそれなりに難しいので、ちゃんと和声学が理解出来ているかはこのシリーズで大体分かりますし、これらの課題集が難なくこなせるなら、12音技法などの無調曲を除けば、近代までのあらゆる作曲家の譜例を見てわからないことはなくなっているはずです。

 

 

もう1つは言うまでもなくスタイル和声で「ドビュッシーやラヴェルっぽい曲ってどうやって作るの?」のような疑問に対する一つの解答でもあります。

 

 

勉強した和声を実際の作品作りにどう活かすか?はなかなか独学ではわかりにくいかもしれませんが、それを実施している和声課題集として、あるいはスタイル和声の実施集としては最高レベルのものだと思いますのでとてもお勧めです。

 

 

 


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ハーモニーは音楽製作を行う上で知的な領分に属し、複雑さ・お洒落さ・格好良さ、言い方何でも良いですが、ある程度の知性が必要になる分野です。

 

クラシック音楽における後期ロマン派以降の音楽、ビバップ以降のジャズ音楽、ネオソウルやフュージョンのようにジャズの流れを汲む音楽、あるいは近年ではアニソンもかなり難しいハーモニー(コード進行)が多く、これらはすべて理論的にちゃんと説明可能で根拠があって作られているのですが、実際問題高度になればなるほど初学者には難しく感じてしまう分野と言えます。

 

 

反面リズム的な側面はハーモニーほど知的な領分ではなく、どちらかというと感覚的なものであり、理論化されにくい分野です。

 

実際に音楽の理論書と言えば詰まるところハーモニー(コード進行理論や和声)について述べているものがほとんどで、純粋にリズムだけに特化した理論書はかなり稀少と言えます。

 

 

しかしリズム・メロディー・ハーモニーを音楽の3要素と呼ぶようにリズムは極めて重要な要素であり、ジャンルを特徴付けたり、良い演奏の可否を決めたりするなど、曲の格好良さはリズムによる部分は極めて重要なのですが、初学者が掴みにくい部分なのでここではメロディーを作る練習を通して様々なリズムを考える方法をここでは提案してみます。

 

 

 

旋律の動きはミドラシドです。

 

 

これが元の旋律で、ⅡーⅤーⅠという最もスタンダードな進行の上に2分音符の簡単なメロディーが乗っています。これを自分が持っている様々なリズムの語彙を駆使してメロディアスにしていくのがここで提案している練習方法です。

 

このメロディーはメロディーというよりはガイドラインと呼ぶべきかもしれませんが、この単純な動きを様々な形でリズミックに変化させメメロディアスにしたものが次の①~⑦です。

 

 

 

旋律の動きはすべてミドラシドです。リズムに色々工夫しています。

 

 

ここではリズムの語彙を増やすのが目的ですので特にテーマは決めず作っています。自分で練習する時も特にルールは決めず(決めても良いですが)とにかく自分の語彙の限りを尽くして単純音符を色々なカッコ良いメロディーにしてみましょう。これは作曲でも即興演奏でも同じです。

 

 

パズルではありませんので実際に自分で聞いてカッコ良いと思えるかどうかが大切になりますが、こういう単純な動きをメロディックにする、つまり躍動感や流麗さやを持つ音の動きに変える基礎練習は語彙を増やすだけでく、自分の手癖を洗い出すのにも役に立ちます。

 

 

何曲も作っているといつも同じような感じになってしまう…というケースには色々な原因が考えられますが、単純にリズムの語彙が少ないため似たようなリズミックフィギュアばかりを使っているしまっていることが原因になっている場合もあります。

 

自分で似たようなことをやって20~30種類くらい作ってみると良い練習になるはずです。

 

 

ほかにもリズムはジャンルを特徴付けたり、主題要素になっていたりするなど様々な要素・効果を持っていますが、初学者の段階でメロディーが上手く作れない、あるいはいつも似たような感じになってしまい悩んで入る方はこのような練習をしてみてると多少は打開策が見えてくるかもしれません。

 

 

リズムとは単にメロディーに関するものだけではなく、実際には多岐に渡る要素を孕んでいますが、メロディーだけでもリズムの語彙が増えればそれだけ曲もレベルの高いものを作れるようになるはずです。

 

 

実際にはこの単純なⅡーⅤーⅠにハーモニーの要素を加えることも可能ですのでオルタード化、裏コード、sus4、モーダルインターチェンジ、変化和音、etc…などを用いれば響きには相当のバリエーションが考えられます。

 


目指すところはたくさんの種類の選択肢を持つこと、そしてその中からより良いものやその時の雰囲気や用途に合ったものを短時間で(製作スピードの速さや即興演奏の意味で)取捨選択出来ることであり、そのまま作曲の基礎トレーニングになってきます。

 

 

こういうアイデア・練習方法はたくさんありますが、機械があればまた書いてみたいと思います。

 

 


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