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PENGUIN LESSON

音楽制作や映像編集のビデオ教材スクール「ペンギンレッスン」のブログです。この夏開講予定です。ただいま全力制作中です。音楽制作の様々な情報を発信していきます。Twitter(@othersidemoon)でつぶやいています。

新年早々、TEControlというメーカーのブレスコントローラーを買いました。

http://www.tecontrol.se/products/usb-midi-breath-controller

私は金管楽器奏者なので、打ち込みのときの強弱の表現付けに息を使うのは自然に感じます。随分前に友人のウィンドコントローラーを体験させてもらったことがありますが、トランペットの運指と同じ設定にしてもマウスピースの形状や構え方に違和感を覚え、馴染めませんでした。そこで、強弱のみを息でコントロールするブレスコントローラーを購入しましたが、私の使っているMIDIキーボードに専用の端子がなく、一度も使えないままどこかへやってしまいました。

TEControlのUSB MIDI Breath Controllerは、名前の通りUSB接続のためキーボードを選ばないのがまずありがたいです。YamahaのBC3aスタイルのヘッドセットも合わせて使用すれば、両手が完全にフリーになるのも快適です。

http://www.tecontrol.se/products/breath-controller-headset

専用のソフトウェアが分かりやすく、MIDI CCの切り替えがすぐにできます。ブレスコントロールであるCC2に対応した音源はSample Modelingなど限られていますので、音源ごとにCC1やCC11に変更しなければなりません。このソフトはプリセットの管理もしやすいので助かります。

また、楽器によっては息でCC1とCC11の両方を動かしたほうが自然なものもあり、しかし私の好みではCC1は0から127までの全範囲を動かしたいものの、CC11はもう少し狭い範囲に限定して動かしたほうが音楽的に聴こえました。こういうのはLogicのエンバイロメントのTransformerで簡単に設定してしまえるのでありがたいです。

普段使う音源はひと通り実験し、普段トランペットを吹くときの感覚で強弱づけできる、つまりトランペットのfの感覚で音源のfが出るような設定ができました。初期設定のままだとヘッドセットのマウスピースでは金管楽器を吹くときよりも息がたくさん必要だと感じました。(フルートなどと比べると、トランペットは息の量自体はそれほど多くありませんので。)

Sample Modelingの息による変化の素晴らしさは予想通りでしたが、SpitfireやOrchestral Tools、VSL、Cinesamplesも気持ちよく演奏できています。またEduardo TarilonteのForest KingdomやEraの反応もとても良いです。逆にこれまで良いと感じていたEmbertoneなどいくつかの音源はブレスコントローラーを使った時の反応が不自然でした。

当初、管楽器の表現のみに使おうと思っていましたが、弦楽器を演奏した時の気持ちよさと自然さに少し驚きました。もちろん、息継ぎの面で多少無理がある場面もありますが、それ以上に得られるものが多いと思いました。私は弦楽器のパートも管楽器のように息継ぎのための休符を多く書く傾向があります。ペダル音以外でずっと切れ目がないパートは元よりあまり書きません。だから全ての弦楽器には当てはまらないかもしれません。

キャリアの最初期の頃お世話になった作曲家がエクスプレッションペダルの達人で、目をつぶって「56」とか「104」など正確な位置でピタッと止めることができる人でした。彼の影響でしばらくペダルを練習しましたが、上達しませんでした。MIDIキーボードのモデュレーションウィールもあまりしっくりきませんでした。これまではスライダーで大まかに書いたものをピアノロールの編集画面でペンで書き直すことが多かったです。

ブレスコントローラーは、はじめて使った瞬間にしっくりきました。私のとって最高の買い物でした。
完全にタイミングを逃してしまいましたが、あけましておめでとうございます。

もう1月も後半戦に突入していますが、年明け早々体調を崩し、2週間強の間に4回の通院と1回のプチ入院を経て、ようやく新年のスタートが切れました。

昨年の7月にブログをはじめてから半年が経ちました。オーケストラ音源の紹介などターゲットが狭い内容のため、ほとんど誰も読んでくれないだろうなと思いながら始めましたが、予想外に多くの方からメールをいただいたり、わざわざ会いに来ていただいたりと、とても楽しく充実していました。

私の主な仕事であるオーケストレーションは音楽の仕事の中でも目立つことのない裏方の仕事です。家に引きこもって黙々と作業していることが多いです。締切の厳しさや実際に書く音符の量は作曲家以上ですが、全く注目されることはありません。

私が書いたと知らずに関わった音楽について話されているのを耳にしてニヤニヤしたり、書いた音符が一流の演奏家とエンジニアの手によって素晴らしい作品になって返ってくる度に一人涙したりとコミュ障とネクラ街道まっしぐらだった私ですが、半年前にブログをはじめ、相変わらず引きこもりながら、人を避け一人ニヤニヤしたり涙したりのネクラな部分はそのままながら、少しながらも自ら発信するようになったことは大きな変化でした。

今年は自分名義の作品づくりと合わせて、これまでの音楽人生の中で一番発信できる1年にしたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。

さて、オーケストラ音源にとっても2014年は大型リリースがすでにたくさん予定されており、大きな1年になりそうです。私の仕事仲間の多くも、「この1年でオーケストラ用のテンプレートが大きく変わるだろうな」と話しています。

昔は作曲家ごとにプライベート音源を所有しており、プロが使う音源と趣味で音楽をしている人が使う音源は別物でした。私が関わったいくつかの仕事でも、実際の録音セッションより前に音源用のセッションをしたり、本番のオーケストラ録音の時に少し長めのスケジュールを組んで、音源用の録音を行ったりしていました。

しかし、今の主流のオーケストラ音源は、プライベート音源の制作を行っていたSpitfireやCinesamplesなどが商業音源の制作に移行したこともあり、もうプロ用の音源という発想はほぼ絶滅したと感じています。ハリウッドの大物作曲家の多くも誰もが買うことのできる商業音源を作品の中で多く使っています。

プロもアマチュアも同じ道具・楽器を使って音楽作りができる、こんなにワクワクすることはありません。

多くの音源が「こんな楽器があったらいいな」と強く願う作曲家によって作曲家のために作られているのも今のオーケストラ音源の面白いところだと思います。ベートーヴェンの時代ではなく、この時代の作曲家で良かったなと感じています。他の人と一緒に作る音楽が楽しいのは言うまでもありませんが、自分一人でとことん納得がいくまで自分の世界観を追求できるのは、この時代の作家の特権です。

私が初めて音源を買った頃は選択肢も少なく値段も高額でした。今は好みに合わせて「自分のオーケストラ」が選べます。Spitfire Audioの音が私の好みには最も合っているようです。SpitfireのBMLシリーズは、2014年の上半期に8タイトルのリリースが発表されており、これでオーケストラの楽器はひと通り揃うことになります。とりあえず、この8タイトルが出揃うまでは、それ以外のオーケストラ音源は買わないと決めているのですが、いつもどおり誘惑に負けてしまうかもしれません。
様々な音楽ソフトが出ているので、どのような基準でソフトを選んでいるのでしょう? 値段や機能、音の良さ、サポートの良さなど大切な基準はたくさんありますが、案外「知り合いが使っていたからなんとなく」とか「たまたまお店で勧められたから」という人も多いかもしれません。

「憧れの作曲家が使っているから」というのも無視できない要素かもしれませんね。音楽をやっている人は私も含めてミーハーな人が多いような気がします。

以下は私が知っている範囲で……と注釈付きになりますが、DAWごとのハリウッド作曲家ユーザーリストです。もしかしたら、中には最近別のソフトに乗り換えた人もいるかもしれません。

まず映像音楽に特化した機能が多いDIGITAL PERFORMERは、ハリウッドでも最も使われているDAWの1つです。

〈Digital Performer〉

「リトルマーメイド」「アラジン」「美女と野獣」をはじめディズニー作品の多いAlan Menken。

ティム・バートン監督とのコンビで特に有名なDanny Elfman。

「アルゴ」「英国王のスピーチ」から「ハリー・ポッターと死の秘宝」まで作品の幅の広いAlexandre Desplat。

「ブレイブハート」「タイタニック」「アバター」「アメイジング・スパイダーマン」のJames Horner。

デヴィッド・クローネンバーグ作品や「ロード・オブ・ザ・リング」のHoward Shore。

「アメリカン・ビューティー」「ファインディング・ニモ」「007 スカイフォール」のThomas Newman。

「ダイ・ハード4.0」「ノウイング」「ワールド・ウォー Z」のMarco Beltrami。

「マトリックス3部作」「ジュラシック・パーク III」のDon Davis。

「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」「ファイナルファンタジー」「フリーダ」のElliot Goldenthal。

「レミーのおいしいレストラン」「カールじいさんの空飛ぶ家」「スター・トレック イントゥ・ダークネス」のMichael Giacchino。

「プライドと偏見 」「アンナ・カレーニナ」のDario Marianelli。

「プラダを着た悪魔 」「俺たちフィギュアスケーター」のTheodore Shapiro。

「アメリカン・パイ」「ハイスクール・ミュージカル」のDavid Lawrence。

Apple純正のLOGICも人気の高いDAWです。

〈Logic〉

「ボーン3部作」「ハッピー フィート」「ヒックとドラゴン」のJohn Powell。

「アイアンマン」「パシフィック・リム 」のRamin Djawadi。

「ムトゥ 踊るマハラジャ」「スラムドッグ$ミリオネア」のA.R. Rahman。

「エクスペンダブルズ」「アイアンマン3」のBrian Tyler。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「フォレスト・ガンプ/一期一会 」「アベンジャーズ」のAlan Silvestri。

「ジングル・オール・ザ・ウェイ」「ギャラクシー・クエスト」「アイス・エイジ」のDavid Newman。

「ハングオーバー3部作」「RED/レッド」「アナと雪の女王」のChristophe Beck。

「モンスターVSエイリアン」「リンカーン/秘密の書」「シュガー・ラッシュ」のHenry Jackman。

「インデペンデンス・デイ」「007/カジノ・ロワイヤル」「宇宙人ポール」のDavid Arnold。

「コンフェッション」「ハリウッド的殺人事件」のAlex Wurman。

「パイレーツ・オブ・カリビアン」「キャットウーマン」「ポセイドン」のKlaus Badelt。

DPやLogicと比べるとやや映画音楽の分野ではユーザーが少ないもののJNHとHZという影響力の大きい2人が愛用しているCUBASE。

〈Cubase〉

「ハリソン・フォード 逃亡者」「シックス・センス」「ダークナイト」のJames Newton Howard。

「レインマン」「ライオン・キング」「シャーロック・ホームズ」「インセプション」のHans Zimmer。

「シュレック4部作」「ナルニア国物語」「トータル・リコール(2012)」のHarry Gregson-Williams。

「アンダーワールド」「イントゥ・ザ・ブルー 」「三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」のPaul Haslinger。

好きな作曲家が使っているソフトだと知るだけで、愛着が増すかもしれませんね(笑)

前回のブログ、あまり体調の良くない時に書いたので、わかりにくかったらごめんなさい。

結局言いたかったことは、録音音楽である以上、すべての音符が聞き取れなければならない。だけど、それを音量フェーダーを動かしまくって達成するのではなく、音量フェーダーはバランスを取った後は動かさず、編曲や演奏によって達成するのが私の理想だということです。

実際のオーケストラを使って録音する時は、作曲する人、パート譜を作る人、指揮をする人、オーボエを吹く人、録音する人……などそれぞれに限られた役割がありますが、打ち込みで音楽を作る時は、作編曲も全ての楽器の演奏もミックスも自分でやるわけですから、全体像を見失いやすいものです。そこで参照トラックを用意し、時々聴き比べて客観的に判断してくなります。

これから紹介する作品は私が作曲やミックスの時の参照点として活用しているものです。楽曲自体が適切に書かれているものを、適切に録音ミックスされた作品です。

まずは何と言っても敬愛するJerry Goldsmithの作品です。どのようなスタイルの音楽も完璧にこなし、生涯にわたって実験精神を持ち続けた作曲家ですが、時代とともに書き方が大きく変わっていきました。特に90年代に入ってからはより短いモチーフを多用し(私は【フェルマータ効果】と呼んでいます)オーケストレーションも一見スカスカに思える書き方になりました。

具体的にはパッド的なコードを書かなくなり、楽器の音色を極力混ぜずに原色を強調しながら多数の副旋律的アイデアを前面に出すようになり、傾向としてはホモフォニックからよりポリフォニック側へとシフトした感じです。そのままの譜面をコンサートで演奏したら不安定だと思いますが、録音においては私にとって理想の書き方です。

80年代から亡くなるまで100作品以上のGoldsmith作品のエンジニアを務めたのがBruce Botnickです。BotnickはGoldsmithと仕事を始めるまではThe DoorsやLoveなどロックアルバムをプロデュースしていました。Goldsmithが「スタートレック」で初めてデジタル録音を試みた時、まだ周りにはデジタル録音の経験のあるエンジニアがおらず、コロンビア・レコードがBotnickをプロデューサーとして送り込んだのが両者の運命的な出会いでした。以降のGoldsmith作品をすべて録音・ミックスしつつ、John Williamsの「ET」やAlan Menkenの「アラジン」なども担当したハリウッドで最も尊敬されるエンジニアの一人になりました。

恐らくそれまでオーケストラ録音を専門としていなかったことがプラスだったのはないでしょうか。エンジニア・プロデューサーとして録音というものの特徴を知り尽くしていながら、オーケストラに対してはその時代の慣習から自由だったため、アプローチが柔軟でした。そして無駄な音を書かないストイックなGoldsmithとの相性が最高でした。

Botnickはオーケストラが1音目を出す前に録音する部屋の特徴に合わせて完璧にマイクを配置し、各マイクのバランスを取り、EQを施した後は、全体の95%は一切録音中にフェーダーに触らないことで知られています。また通常スタジオでの録音では、楽器にかなり近くマイクを設置することで、各楽器の分離を可能な限り得ようとするのですが、Botnickは他の楽器が漏れ入るブリーディングを好み、やや距離を取りました。ブリーディングのお陰で音が太くなるので、音を太くする目的でコンプを使う必要がなくなります。すべて演奏中に最終的なミックスを終えるライブミックスで、演奏が終わった後にバランスを取り直したりはしません。

つまり完成版の音が指揮をするGoldsmithや演奏者のヘッドホンからリアルタイムに聞こえているわけで、(ミックスエンジニアが音量フェーダーを細かく動かすのではなく)作曲者自身が指揮者としての指示によってバランスを整えていきました。

打ち込みでオーケストラ作品を作るとき、その作品の楽器編成を決めた段階で私はテンプレート作りにかなりの時間をかけてバランスやEQを設定しています。その後は、基本的に音量フェーダーには触らず、演奏の時の強弱でバランスを取るようにしています。

Goldsmith & Botnickコンビの作品は、特に90年代半ば以降の作品はすべて参照トラックとしてふさわしいと思っていますが、特に「トゥルーナイト」「ムーラン」「13ウォーリアーズ」「インビジブル」「ネメシス/S.T.X」「タイムライン」などがオススメです。

次回、Goldsmith & Botnick以外の作品で素晴らしいミックスだと感じているものを紹介します。
数年前に遊びで作った曲をたまたま発見して、当時の自分の未熟な部分に赤面しつつも今よりも勢いのある部分もあって面白く聴けました。その中で「あれ、あの音は何を使っていたんだっけ?」と思い出せない部分も結構あって、たった数年なのに制作環境が大きく変化していることに驚きました。2013年の終わりに、「今はこういう環境で作っているんだ」と記録しておくと、数年後に振り返って楽しめるかなと思い、今の自分オーケストラを記しておきます。

特に今日は2014年にSpitfireからBMLラインとして発売される8タイトルが発表され、今の小編成ストリングス、ホルン、低音ブラス、フルートに加えて、オーケストラの大半の管楽器と大編成ストリングスが1年以内に出揃うことが明らかになりました。現在の主流の音源メーカーの中ではSpitfireが一番私の理想の音に近いので、来年のクリスマス前にはまた制作環境が大きく変わっているように思います。

まずは弦楽器。

4-3-3-3-3という小編成のSableをメインにLASSを重ねています。短期間で仕上げるためのスケッチ用のテンプレートはCInematic Stringsです。今年はCineStringsとBerlin Stringsが発売されましたが、とりあえず見送って、来年2月発売のSpitfire Muralに期待しています。
ハープはOrchestral ToolsのSymphonic SphereかSpitfireを使っています。

次に木管楽器。

現在はすべてBerlin Woodwindsとその拡張音源を使っています。特にExpansion Bとして登場したソロオーボエが素晴らしく惚れ込んでいます。一方で同じExp. Bのソロフルートには若干がっかりしており、かなり露出するソロでは未だにViennaを使っています。来年はSpitfireのBMLからも木管楽器が揃う予定ですが、どちらが最終的に自分オーケストラに残るのか楽しみです。Spitfireの方はソロは1名ずつのようなので複数奏者を収録してあるBWWの魅力は増すばかりで、両方を組み合わせて使っているような気もします。特殊効果にはCinesamplesのHollywoodwindsを使っています。

続いて金管楽器。

現時点ではすべてSample Modelingのみです。金管は音を持続させながらの強弱の変化が重要であり、今のところ満足出来るサンプル音源がありません。SpitfireのBMLはまだトランペットとトロンボーンが未発売で、これが満足できる品質であれば総入れ替えするかもしれません。ただトランペットもトロンボーンもBMLのソロは1人ずつのようで、私は4人+4人で書くことが多いので微妙です。これまで実験した範囲ではSample ModelingとWetなサンプル音源は混ぜにくいので、木管と同じように複数奏者収録されているのならBerlin Brassに期待したくなります。ただ現時点ですでにSpitfireは全て録音済みで編集もかなり進んでいますが、Berlin Brassはコンセプト段階で録音もまだです。

最後に打楽器。

ほぼCinePercです。SpitfireのPercussionは奥行きのある音が魅力的ですが、パンチの効いたド派手なCinePercの方が私にとっては扱いやすいようです。マレット楽器を中心に打楽器はかなり多用するので、その他にも様々な音源を混ぜて使っています。あとはHans Zimmer Percussionをどのように組み込んでいくかですね。ピアノはオーケストラ用にはOrchestral ToolsのOrchestral Grandsを、それ以外だと今はArt Vista Virtual Grand Pianoを好んでいます。

それにEduardo TarilonteのアコーディオンやForest KingdomとEra、OmnisphereとZebraの各シンセ、soniccoutureのGlassworks, Xtended Piano, Geosonics、Ample Soundのギター、そしてベースがArt Vista Back Beat Bassです。今年ドラム音源のBFD3も購入しましたが、まだ本格的には使っていません。

オーケストラの空間作りは非常に興味のある部分で、作曲仲間やエンジニアの意見を参考に1年を通して実験を重ねてきました。現時点では、全体のリバーブはほぼ2caudioのB2を使い、様々なメーカーの音源をスムーズにミックスするために楽器によってEast WestのSpacesとnumerical soundのFORTIを下準備に使っています。特に友人が作ったB2用のSample Modeling Brassプリセットが優秀で、これだけでかなりミックスしやすくなりました。その他のプラグインはブレることなく90%がSonnox Oxford Pluginsです。

DAW環境はこの1年で大きく変わりました。まずずっとしつこくSnow Leopardを使っていたのに一気にMarvericksに上げ、Logic7以来ほとんど使っていなかったLogicにXで戻ってきました。今は打ち込みはDigital Performer 8が6割、Logic Xが4割です。また年末のセールで買ったStudion One 2を今後はミックス・マスタリング用に使っていこうと思っています。楽譜は今でもオーケストラスコアまで手書きで、清書が必要な時はSibeliusを使っています。ただ仕事の方は、ほとんど清書をしてくれるCopyistに手書きの楽譜を送っています。Finaleも持っていますが、Finaleで送られてきた楽譜もSIbeliusに変換してSibeliusで作業することがほとんどになりました。

また、これまでWindowsを毛嫌いし続けていましたが、多くの同僚の説得に折れ(笑)、ついに音源用にカスタムメイドのWindows PCを導入しました。もっと早く導入すべきだったと後悔するぐらい快適です。VEPの安定感は半端ないです。メインマシンは薄型にモデルチェンジする前のiMacです。

あとはずっと使ってきたM-AudioのMIDIキーボードが壊れたのでYamahaの電子ピアノに交換し、また不具合が続いていたApogeeのインターフェイスをFireface UCXに変えました。モニターは最近ずっと使っているADAM A7です。それに愛用しているKensingtonのトラックボールが2つ。

こうして書き出してみると1年間で大分制作環境変わっています。そりゃ貯金が増えないわけだ(^_^;) 

最後に今年の2大収穫。1つはメガネをブルーライトカットレンズに変えたこと(効果ないという人もいますが私は頭痛が大分軽減しました!)、もう1つはSibelius用のプレイバックシステムNotePerformerを導入したことです。今年を振り返ってベスト賞を決めるなら、迷わずNotePerformerを選びたいぐらい革命的なプログラムだと感じています。

「最近の映画音楽でミックスの参照曲になる作品を教えてください」という質問を、最近レッスンや授業やツイッターで立て続けにいただきました。それぞれ質問された方によって意図は少しずつ違うのでしょうけど、私はこの「最近の」を「生のオーケストラと打ち込みによる要素(ドラムループやシンセパートなど)の混合によるスタイル」と解釈しました。

私は同じ「オーケストラの演奏による音楽」であっても、クラシック音楽の録音と映画やテレビのために書かれた音楽の録音では、理想とされる音は全然違うものだと思っています。クラシック音楽はコンサートホールでライブで演奏するために書かれた音楽で、録音もどのような味付けをするにせよホールでの自然なバランスや響きからスタートすべきものです。一方、映画音楽は録音のためだけに用途を限定して書かれた音楽であり、ライブで演奏することを想定していません。当然コンサートと録音では理想的なオーケストレーションの形も異なるはずで、そのことを誰よりも的確に理解し、録音のためのオーケストラ音楽のひとつの完成型を示したのが次回紹介するJerry Goldsmithだと思っています。

映画音楽のミックスと言っても、作曲家やエンジニアによって全く音作りが異なります。中には敢えてクラシック音楽に近い音作りを目指す人もいて、何が正解と決まっているわけではもちろんありません。

私が理想とするミックスの条件は次の2つです。私は酷い曲や酷い演奏が素晴らしいミックスによって良い曲や良い演奏になるとは思っていません。だから良いミックスをするためには、まず楽曲自体が録音音楽の特徴をきちんと理解し、録音に適した書かれ方をしていなければなりません。「ミックスがどうもうまくいかないんだよね」と相談を受けるとき、編曲や演奏に問題があると感じることがよくあります。しかし素晴らしい楽曲と演奏も、酷いミックスによって台なしになることはよくありますから、ミックスが非常に大切なのは言うまでもありません。

1. オーケストレーションの間違いをミックスで正さない。

例えば分厚い伴奏の中で最低音域のフルートに不用意にソロを書いて、フルートの音が埋もれてしまって全く聞こえないので音量フェーダーをぐっと持ち上げるのは、個人的には気持ち悪いです。本来は編曲の時にしっかりバランスを取っておくべきことをミックスで補うべきではないと考えるのは編曲家の意地かもしれません。

もちろん、はじめからアンプを使うことを想定したパートなど、ずっと一定量の音量を上げっぱなしだったら不快に感じることはありません。一度マイクのセッティングの時に各楽器のバランスを決めた後は、音量フェーダーには極力触るべきではないと思っています。どこか問題のある箇所に遭遇した時には、演奏の側でもっと強く演奏するように指示したり、例えば1オクターブ上げたり他の楽器も一緒に演奏するなど編曲に手を入れたり、またはそれ以外の楽器を弱く演奏したりお休みにするべきだと思います。

Hans Zimmerの音楽が主流になった今、「金管」「弦」「木管」「打楽器」とセクションごとに録音することも多くなってきましたが、私はオーケストラ全体を一緒に録音する仕事を好みますし、そのように録音された音が好きです。ただセクションごとに分けて録音するやり方でも、John Powellのように私にとっての理想的なサウンドとバランスを作る作曲家もいますので、方法論ではなくチーム全体が同じビジョンを持っているかどうかなのでしょう。

私のことのような立場に強く反対する音楽仲間もいます。「録音のために書かれた音楽なのだから、ライブでホールではできないバランスや組み合わせを追求して何が悪い」と主張します。その意見ももっともだと思っています。ただ未だかつてミックスによってオーケストレーションのバランスを調整した作品で説得力のある表現を聴いたことがないのです。端的に言えば不自然なんです。

強弱と音量が別物であることは、複数のベロシティレイヤーが用意された音源を使っている方なら誰もが経験的に知っていることです。弱々しい音の音量を上げても力強い演奏にはならないのです。だから良いミックスの参照曲は良い作編曲家の作品にしか見つからないと信じています。

2. すべてのパートがきちんと聞き取れるようにする。

何百年もの間クラシックの作曲家にとって「作曲する」=「譜面を書く」でした。録音なんて発明されていない時代ですから、民謡のような旋律だけのものは年長者が若者へ口で伝えていくことができますが、様々な楽器が入り組んだ複雑な楽曲は譜面しか記録の方法がありませんでしたからね。

それらの音楽は「様々な演奏家によって繰り返し演奏され続けていくこと」を願って書かれています。つまり演奏されるごとに違う演奏になる音楽として作曲されています。

だから極端な言い方をすれば、クラシック音楽のオーケストレーションには聴きとれないパートがあってもいいんです。むしろあったほうがいいぐらいです。そのお陰で、指揮者によっては「通常埋もれてしまうこのパートを前面に出そう」などとその人なりの工夫ができるわけです。もう何度も聴き尽くしたと思っていた楽曲のコンサートで、初めて聴くパートを発見してドキッとすることもあります。

また譜面を見ながら「今の演奏ではほとんど聴こえなかったんだけど、実はここのチェロパートがものすごく細かく計算されて書かれているんだよね!」といったような楽譜だけを勉強して鑑賞することだってできます。

映画音楽は、通常演奏されるのは録音セッション1回きりです。その後は一生演奏されることのない音楽です。(映画音楽のコンサートもありますが、録音と同じ譜面を使うことはまずありません。この間もあるコンサートのために編曲しなおしました。)録音ですから、100回鑑賞したら、100回とも全く同じ演奏です。もちろん、楽譜が出版されることもまずありえません。

だから、その1回きりの録音で確認できないパートは、書かれていないのと同じなんです。どんだけ演奏家の方が一生懸命演奏してくれていても、聞き取れなかったらその演奏家はいなかったことになるのです。後から楽譜を見てじっくり研究しないと分からない工夫も何の意味も持ちません。(作家の自己満足としてそういう要素も入れますけどね。)

だから、「書いた音符は全て聴き取れなければいけない」、これが録音音楽のエッセンスです。全て聞き取れるように編曲し、演奏し、録音し、ミックスされなければいけません。「これ本当に聴こえるパートなのか、意味のある音なのか」常に自問しています。(目からも情報が入ってくるコンサート用なら聴こえなくても動きから伝わるのなら書いてしまいます。ここで弦楽器全員の弓の動きがバシッと揃う気持ちよさ、とかね。)

2番目の条件も、まずは作編曲がきちんと高い次元で出来ていなければミックスだけでは達成できません。でも編曲が素晴らしいのに見通しの悪いミックスがなされたものも有名作品の中にも結構ありますので、やはりミックスの問題でもあるのです。

長くなりましたのでここで区切って、次回は具体的なエンジニアの名前や作品名を上げて、私がデモ音源などをミックスするときにお手本にしている理想的な音を紹介します。
今年のブラックフライデー&サイバーマンデーも、出だしこそやや地味に感じられたものの例年以上に過激な内容だったと思います。今回はお金をなるべく使わないようにしようと心に決めていたはずなのに、結局いろいろと買ってしまったのでした。

来年のために、ツイッターでフォローしている聡明な方の名言を自分への言い聞かせだと思ってメモしておきます:

"セールの時期に心に留めておきたいこと、それは「買わないのが一番安い」ということ"

今回のセールで買ったのは、まずStudio One Professionalクロスグレード。現在のメインのDAWはDigital Performer 8とLogic Xで、過去にはVision, Pro Tools, Cubaseも使ってきました。Studio Oneは主にミックス&マスタリング用に考えています。

それ以外に、SoundToys EchoBoy、Soundiron Mercury Boys Choir、soniccouture Skiddaw Stones、Art Vista Virtual Grand Piano 2と以前から気になっていたけど後一歩踏み出せなかったプラグインと音源を買ってしまいました。セールにおいて一番手を出しちゃいけないパターンですが、それぞれ品質は素晴らしく満足しています。本当はずっと狙っているものが安くなった時だけ買うのが賢いのでしょうけどね。

年末のセールではありませんが、Spitfireの新製品Hans Zimmer Percussion01とRicotti Marimbaもイントロセール中に購入しました。また使い込んでから改めてレビューを書きますが、第1印象はずば抜けて良いです。

さて前回のブログを書いた直後に大きな発表がありました。

まずBerlin WoodwindsなどをリリースしているOrchestral Toolsから一気に13もの音源が発表になりました。
http://www.orchestraltools.com/observatory/index.html
単独の発表では最大規模ではないでしょうか。これらの素晴らしいところは、ソロ音源を除いて全て同じ空間で録音されていることとメインライブラリーと追加音源という形を取っているので、例えばセクションのストリングスは間に合っているけどソロストリングスは欲しいなどニーズに合わせて必要なものだけ購入できることです。欠点としては、競合メーカーの製品と比べると恐らく割高になることでしょうか。

Orchestral ToolsのBerlin Stringsのメインライブラリは8-6-5-5-4という中編成。プロデューサーのHendrikによれば細やかなニュアンスが失われることなく、同時にフルストリングスの厚みも得られる大きさを選んだということです。私も音源の編成としては最も魅力を感じます。演奏するときの速度などから自動的に異なるレガートのスタイルを選ぶプログラムなど独自の哲学によって作られているようです。

メインライブラリが今月中に発売、追加音源として(特殊な?)ボーイングによる奏法を集めたパッケージが2種、コンマスや各セクションリーダーとしてアンサンブルと一緒に演奏させるためのFirst Chairsと協奏曲の技巧的なソリストのようにアンサンブルから独立して演奏させるためのSoloistsの2種のソロ音源とエフェクト集がリリースされます。

個人的には、今使っているストリングス音源に特別不満は感じていないので、未だ理想の音源がみつかっていない金管楽器に期待しています。Berlin BrassがBerlin Woodwindsと同じコンセプトなら、各楽器において複数奏者を収録していると予想できるので期待できます。私の仕事ではトランペット、ホルン、トロンボーンを各4パート書くのが基本型なので、4人ずつ収録されていれば感激です。(すでにViennaから4人ずつのDimension Brassが出ていますけどね)

またSpitfireからも来年の3月ぐらいまでにMuralという大編成のストリングス音源をリリースするという発表がありました。Sableが4-3-3-3-3という小編成なのに対してMuralは16-14-12-10-8という16型です。Solo Stringsもアップデートが予定されているので、合わせると様々なストリングスのニーズに答えられそうです。

こういった音源情報は英語のサイトや英語のフォーラムにしかないことが多いので、今後も時々これからリリースされる音源の情報も書いていきたいと思います。
いよいよペンギンレッスンの新しいホームページがオープンしました!

http://penguinlesson.com

 2014年はここから様々な発信をしていきます!

メディア音楽に特化した管弦楽法やアレンジ法、映像音楽の作曲法など、ハリウッドの映画製作の現場で身につけた様々なテクニックを紹介します。楽譜や音源、場合によってはどのように打ち込みをしているのかが分かるようにプロジェクトファイルやMIDIファイルを、できるだけお求めやすく販売していきます。来年制作するソロアルバムなども舞台裏のレポートから録音で使った楽譜の販売、CDより高音質の音源の販売など、このサイトを活動の拠点にしていきます。

まだコンテンツはほとんどありませんが、様々なコンテンツをダウンロード販売できる仕組みを構築してくれた友人に感謝の気持ちでいっぱいであります!

試験的に作成した教材第1号【Sibelius 101基本操作編】もすでにダウンロードを開始しています。2時間のビデオレクチャーと教材の中で使用したファイルを1500円で購入後すぐにダウンロードできます。(できるはずです!問題があったらすぐにご連絡ください。)はじめてのことで、まだどのような形で作るのがベストなのか手探りの部分が多いので、いろいろとご提案いただけると嬉しいです。

まだこのSibelius101しかコンテンツがありませんが、2014年はここからスタートします。これからもブログやツイッター共々ペンギンレッスンをよろしくお願いします。
11月の第4木曜日がアメリカのThanksgiving Day(感謝祭)です。収穫を祝うお祭りで、家族や親しい友達と七面鳥の丸焼きなど御馳走を食べながら楽しい時を過ごします。感謝祭の終了と同時にアメリカではホリデーシーズンが始まります。私がはじめてアメリカで冬を過ごした十数年前は、どこでも「クリスマスシーズン」という言葉が使われていましたが、それから数年で他の宗教を意識するようになり、「ホリデーシーズン」という言葉に置き換わった印象です。

感謝祭の木曜日が金曜日に変わった瞬間からBlack Fridayと呼ばれるアメリカ最大のセールが始まります。0時から店を開けるところもあります。本来はアメリカだけのお祭りのはずなのですが、数年前からアメリカ以外のメーカーの中にも積極的にセールするところが出てきています。この日を楽しみにしているDTMerも多いことでしょう。その次の月曜日をCyber Mondayと呼び、昨年のSlate Digitalのようにこの日にセールをする会社もありますから、Black Fridayに何もなかったとしても油断は禁物です。

年中セールをやっているためすでに定価という概念が崩壊しているEast Westはともかく、すでに8dioの最大で40%オフになるセールや私を含め愛用者の多いCinematic Strings 2の20%オフセールなどの情報が出てきています。

ただでさえ出費が多くなりそうなセールを前にした11月26日に大型音源が2つ発売になります。CineStringsとHans Zimmer Percussionです。

CineStringsはCineBrass、CineWinds、CinePercに続くCinesamplesのオーケストラシリーズのストリングス編です。すべてスパイダーマンなどの名エンジニアDennis Sandsによってハリウッド大作の録音によく使われるSony Pictures Scoring Stageで収録されているのが特徴です。

最近の音源は様々なパラメータをコントロールできるように作られているため、ただ音符を弾き入れただけでは聞かせられるものにはなりにくく、音源の進化に比例するように作り込みにかかる時間も長くなってきていますし、より高度な技術も求められます。その中で、全く作り込んでいない状態でもそれなりに聞けるのがCinesamplesの特徴です。

ストリングスの打ち込みでは全ての音に対してModulationを書き込むのが基本なのですが、今回のCineStringsはModulationを全く書かなくても(ある程度)自然に聴こえるようにするためのHairpin Creatorなど様々な工夫があるようで、短時間でデモを仕上げないといけない時などに重宝しそうです。

まだYouTubeビデオとデモ音源を見聞きしただけですが、これまでのシリーズの中で一番SONYらしい音だと感じました。またこの大きなステージにしては詳細が鮮明に記録されており、予想していたよりはドライ目なので、これも使いやすそうです。

Cinesamplesのオーケストラシリーズはこれで完結ではありません。まず私も大好きなHollywoodwindsを同じSony Stageで再処理したアップデートが登場します。それによって、他のシリーズと混ぜやすくなりそうです。またHollywoodwindsと同じパターンを演奏したストリングス版(CineStringsとは別音源として)もリリースされます。また今回のCineStringsはCOREで、PROはまだ録音もされていません。COREを使ったユーザーの意見を聞きながらこれから制作を開始しますから、ほしい奏法や機能などをリクエストしていけば理想のストリングス音源を作ってくれるかもしれません。

定価$499のところ、26日から1週間限定で$429です。

Spitfire AudioのHans Zimmer Percussionは、映画音楽で有名なハンス・ジマーと彼のチームによる巨大な打楽器音源で、3つのボリュームがリリースされます。26日から販売されるのは#01 London Ensemblesで、他のSpitfireのオーケストラ音源と同じLondonのAir Studiosで打楽器アンサンブルの形で録音されています。

02はLos Angelesでローン・レンジャーの録音セッションのタイミングで収録されたもの、03はLondonで収録されたソロ楽器です。

予告編音楽や全て打ち込みによるアクション音楽はあまりやらないので、元々は巨大なアンサンブルサウンドにはあまり興味がありませんでした。しかし先日公開されたYouTubeビデオを見て、あまりのクオリティの高さに打ちのめされました。

まず全ての楽器は、Hans Zimmer自身や彼のほとんどの作品をミックスしているAlan Meyersonなど5人のアーチストそれぞれのバージョンが用意されており、元の素材は同じなのにも関わらず全く違う音になっています。その全てがステレオミックス版とマルチマイク版で提供されているので、各アーチストが調整した音をそのまま使うことも、アーチストの調整した音を元に自分の好みを加えていくことも自在です。もちろんアーチスト加工前の生素材もあるので、1からミックスしていくことも可能です。#01だけで200GBを超える巨大音源は、複数の打楽器音源を同時に買ったような充実感があります。

YouTubeビデオの圧縮された音質でも、太鼓やティンパニの音に鳥肌が立ちました。

定価は£399ですが、初めの2週間だけ£299です。さらに今後の購入に使える25%オフクーポンももらえます。定期的にセールをやるCinesamplesと違い、Spitfireは基本的にはリリース時にしか値引きをしません。例外的に、旧音源に大幅なアップデートをした時にだけセールをやることもありますが、全ての音源ではないし、あったとしても数年先のことです。

そのSpitfireからは数日前に何と4つ別の音源も発売開始しています。Leo AbrahamsのEnigma、Analogue Foundry #1 Pylons、Kitchenware #1 Metal、Frank Ricotti Marimbaです。Enigmaは12月2日までセール、その他は12月4日までセールをしており、恐らくこれらの音源が今後割引されることはないと思います。各音源の音はhttp://www.spitfireaudio.comで確認してください。

2日前にはEmbertoneからソロヴァイオリンに続くソロ弦楽器としてBlakus Celloがリリースされています。ソロヴァイオリンの方が素晴らしい表現力だったので、このチェロにも期待しているのですが、今出ている
デモの範囲ではまだ衝撃を受けるところまではきていません。ただEmbertoneがこれまで出した音源は全て素晴らしかったので、いずれ欲しくなりそうです(笑)

その他11月に発売された音源で気になっているのがChris Hein Chromatic Harmonicaです。ハーモニカ音源もいろいろ試してみたことはありますが、どれも満足できる表現力を持っておらず、身近にハーモニカの上手い友人が何人かいたこともあって、結局デモ段階から家に来てもらって録音することがほとんどでした。ようやく細かなニュアンスまで再現できる音源が登場したように思います。

欲しいものは無限にありますが、全部買うわけにもいきませんし、それら全部を研究するほど時間もありません。(音源も楽器ですから、ある程度練習しないと上手に聞かせられませんからね。)

とりあえずBlakus CelloとChris Hein Harmonicaは、リリース後数日限定のセールをやっているわけではないのでじっくり考えてみます。私はマレット打楽器に弱く、何でもかんでも買ってしまう悪い癖があるのですが、Frank Ricotti Marimbaは音も好みでこれは間違いなく買ってしまうと断言できます(笑)。

あとはBlack Fridayセールで目ぼしいものがなければ、CineStringsかHZ Percussionを勢いで買ってしまいそうな気がします。私自身SONYで録音する仕事が多いのでCineStringsの音には惹かれるのですが、すでにLASSとSableでかなり満足していることもあり、気持ちはややHZ Percussionに向いています。特にSpitfireは私が最も信頼し仕事で使っているメーカーなので、今後使える25%オフクーポンのポイントも高いです。恐らく年内にはBMLのフルートも出ますし、今後はトランペットなども予定されていますからね。

無事誘惑に負けた暁には、購入した音源をまたブログで紹介したいと思います。
先日アメリカの大学の学校新聞で「あなたの人生を変えたアルバム15枚をあげてください」というアンケートがありました。この「無人島に持っていくとしたら……」的なベスト盤企画は参加する度に相当悩むのですが、ふつうは1枚か、5枚か、多くて10枚ぐらいじゃないですか? もうなんか「あんたらに10枚に絞り込むのは無理でしょ?」みたいな意思が感じられます。でも15枚でもやっぱり難しいです。

「誰も知らないような自分だけの名盤」を挙げていこうかとも思いましたが、読み手は学生なので、「お前らこれ知らないだろ?」と知識をひけらかすのも嫌なので、私が作編曲家として影響を受けた数多くの作品から最も王道的なものでアメリカで入手しやすいものを素直に選びました。

1. Jerry Goldsmith 『First Knight』

最も影響を受けた作曲家を一人挙げるなら間違いなくJerry Goldsmithです。同じ作品でも出直す度に購入しているので、今iTunesに入っているJerry Goldmsithのアルバムは393枚、計7458曲で、連続して再生すると14日17時間かかるそうです。もうゴールドスミスだけで15枚選ぼうと思ったぐらいですが、その中でゴールドスミスに夢中になるきっかけになった作品です。できればLa-La Land Recordsから出ている2枚組完全版を手に入るうちに!

2. Alan Menken 『Der Glöckner Von Notre Dame』

ディズニー音楽にも多大な影響を受けていて、特にAlan MenkenとRandy Newmanは自分の中で大きな存在です。Alan Menkenらしさが最も発揮されるのは「リトルショップ・オブ・ホラーズ」「リトル・マーメイド」「ヘラクレス」といった軽快でコミカルな作品だと思っているのですが、ベイジル・ポールドゥリスのコナン・ザ・グレートを意識して書いた「ノートルダムの鐘」の破壊力は大きく、このドイツ語舞台版のアルバムは何度も聴いています。これの英語版をテレビ映画として制作する話が随分前からあるのですが、実現して欲しいです。

3. Randy Newman『A Bug's Life』

Randy Newmanのアニメ音楽もどれも傑作揃いです。私にとって「アメリカらしい音楽」として最もしっくりくるのがRandy Newmanの作品です。「トイ・ストーリー」や「モンスターズ・インク」などとも迷いましたが、いろいろな要素がバランスよく入っているのでこれにしました。

4. Bruce Broughton『Tombstone』

何でもっと評価されないのか不思議で仕方ないBruce Broughton。オーケストラによる正統なハリウッド音楽が書ける人なのですが、今のハリウッド映画にはこういう音楽はあまり求められていないようで悔しいです。ブロートンの音は商業音楽における私の理想のオーケストレーションです。どの作品も素晴らしいですが、一番よく聴いたアルバムということで。

5. Michel Legrand 『The Essential Film Music Collection』

ミシェル・ルグランもジャズアルバムからサントラまで愛聴盤が多すぎて、もうどれを選んでいいか迷ったので、いっそのこと作曲者自身によるベスト盤を挙げました。選曲もアレンジも演奏もよく、素晴らしい映画音楽のコンサートになっています。

6. Maria Schneider 『Sky Blue』

ニューヨークに住んでいた頃に何度もライブで聴いていたこともあってマリア・シュナイダーにもかなり影響を受けています。このアルバムの中のCerulean Skiesは聴く度に涙が出てしまいます。12月の2度目の来日も楽しみです。

7. Bob Florence 『Earth』

Bob FlorenceのLimited Editionも全アルバム繰り返し聴きこんでいます。このアルバムに収録されているEmilyについては、前にブログで紹介しています。

8. Bert Joris 『Dangerous Liaison』

ヨーロッパジャズだとこの人。このアルバムも以前ブログで紹介しています。

9. Count Basie 『Straight Ahead』

曲がりなりにもアレンジを仕事にするものにとってSammy Nesticoは神ですから、Nestico時代のCount Basie Orchestraに影響を受けないはずがありません。どのアルバムを挙げても良かったのですが、最初に聴くならこれかなと思って選びました。

10. Jean Martinon 『Debussy & Ravel: Orchestral Works』

もちろんクラシック音楽にも影響を受けまくっています。中でもフランス音楽は私にとって初恋のような存在です。デュトワ、サロネン、ブーレーズ、アバドなど好きな演奏は多数ありますが、一番良く聞いているのはやっぱりマルティノンです。「人生を変えた15枚」というアンケートで、8枚組のボックスを挙げるのは反則かなと思いましたが、他の投票者のを見たら「バッハ全集」とか「モーツァルト全集」など100枚ぐらいのセットを挙げている人が何人もいて、おいおい!と思いましたww

11. Yan Pascal Tortelier 『Dutilleux: Orchestral Works』

フランス音楽が好きなのでもう1つ。Henri Dutilleuxの作品集です。20世紀から21世紀の作曲家としてはJennifer HigdonやChristopher Rouseをはじめ誰を挙げるべきか最後まで迷いました。Chandosのセットは代表曲がまとめて聴けるのでオススメです。

12. Sir Colin Davis 『Stravinsky: Petrushka - The Firebird - The Rite of Spring - Orpheus』

オーケストラの音楽を書く人でストラヴィンスキーの影響を受けていない人はいないのではないでしょうか。シリアスな楽曲でもユーモアがたっぷり入っていることに惹かれます。「Symphony In 3 Movements」や「Symphony of Psalms」が特に好きなのですが、学生に聴いてもらうのはやはり3大バレエかなと思いました。無数に好きな演奏はあるのですが、ロイヤル・コンセルトヘボウ管の響きが素晴らしいSir Colin Davisにしました。この1枚に絞り込むのに相当悩んだのに、自作自演のWorks of Igor Stravinskyという22枚組ボックスを挙げている人が大勢いて「なんだよ!」と思いましたww

その他にもバーンスタインのマーラー全集とかアーノンクールのベートーヴェン全集とかショルティのバルトークとか、他にもホルストやショスタコーヴィチなど挙げたかった作品は無数にあります。

13. Claude-Michel Schonberg 『Les Miserables (Original London Cast)』

ミュージカルの「レ・ミゼラブル」はブロードウェイで舞台を見て、楽曲の素晴らしさや斬新な演出にも感銘を受けましたが、何よりJohn Cameronのオーケストレーションの素晴らしさに衝撃を受けました。未だにこの編曲が私の中での大きな目標になっています。映画版ではじめてこのミュージカルを見た人も多いでしょうけど、私はJohn Cameronの編曲でなかったのでがっかりしました。ぜひオリジナルを聞いて欲しいです。その後で「Les Miserables: 10th Anniversary Concert」もぜひ。

14. The Beau Hunks & Metropole Orchestra『Raymond Scott: The Chesterfield Arrangements, 1937-1938』

Raymond Scottの音楽もRandy Newmanと並んで私にとっての理想のアメリカンサウンドです。The Beau HunksのRaymond Scottアルバムはどれも良いですが、これまたアメリカ音楽で重要な存在であるPaul Whitemanのためのオーケストラアレンジということで、これを選びました。

15. 植松伸夫 『FINAL FANTASY IV: Celtic Moon』

私は前世はアイルランド人だったのではと思うほどケルト音楽やアイリッシュ・ダンスを熱狂的に愛していて、所有しているアルバムが数えきれないほどです。その中から1枚選ぼうかと思っていたのですが、思い返してみるとケルト音楽にはまったきっかけは、このファイナルファンタジーのアレンジアルバムだった気がします。今回はアメリカの大学生向けの企画なので日本のアーチストは入れなかったのですが、全くないのも寂しいと思い、調べてみたらアメリカのiTunesでこのアルバムの入手が可能だったので選びました。

これが今回のアンケートで答えた15作品です。最後の最後まで迷っていたのがBlue Mitchellの『Blue's Moods』。これがトランペットをはじめたきっかけなのです。もちろんClifford Brownなどにも影響を受けていますが、『Blue's Moods』に一番思い入れがあります。ちなみに今一番好きなトランペット奏者はCarl Saundersです。