第1章 誘導起電力 1.2 ファラデーの電磁誘導の法則によるアプローチの限界

 

 発電機や電動機の誘導起電力(電動機では「逆起電力」と言ったりもします)を求める際、よくファラデーの電磁誘導の法則が利用されます。

 

 ファラデーの電磁誘導の法則の説明では、よく図1に示すような閉回路がモデルとして利用されます。

 

  ファラデーの電磁誘導の法則によれば、図1に示した閉回路に生じる誘導起電力eは、閉回路の面積を貫く磁束Φの時間変化率(時間tでの微分)として、次の式(1)のとおり示されます。

 

  e=-dΦ/dt ・・・(1)

 

 この式(1)は、[理論]科目や変圧器の理解でも多用されますので非常に重要な公式です。

 

 しかし、発電機や電動機の誘導起電力を理解しようとする際には、このファラデーの電磁誘導の法則のみに依存していると、機器の回路と磁極の配置関係など、イメージできないと言う大きな「壁」にぶち当たります。

 

 なぜなら、式(1)を見れば明らかですが、磁束Φを時間tの関数として特定できない限り、式(1)を計算することができないからです。2極機という単純な構造であれば、磁束Φを容易に特定できるので問題は無いと思います。

 しかし、4極以上ともなると磁束Φを特定できますでしょうか?難しすぎて、考えるのも嫌になると思います。

 

 では、すごく簡単に考えて見て、磁束密度が一定となる単純なケースを仮定してみましょう。

 

 まず、図2のモデルのように閉回路の面積Sが変動するケースを想定してみましょう。

 

 図2では、磁束Φが時間変化するのは容易に分かると思います。したがって、式(1)により誘導起電力eを特定できるということになります。

 

 しかし、発電機や電動機での閉回路の面積Sは、図2のように変化しませんので、図2のモデルを採用すること自体に無理が生じます

 

 では、実機器に併せて、図1のように面積Sが変化しないとしたら、どうでしょうか。磁束密度が一定の場合、面積Sが変化しない以上、磁束Φは変化しません。なので、式(1)によれば誘導起電力eがゼロとなってしまいます。

 しかし、これでは、発電機や電動機に誘導起電力が生じているという事実と相反しますので、このような思考方法では、発電機や電動機に太刀打ちできていないことになります。

 

 これは困ったものです。特に、4極以上の発電機や電動機の誘導起電力を特定できません。これでは、機器の動作イメージができていないに等しいです。

 

 しかし、電験三種では、4極以上に関する発電機や電動機の問題が出題されますし、色々な公式(例えば、直流機の誘導起電力の公式、同期機や誘導機の同期速度)も4極以上に対応した形式となっています。

 

 それでも、その出題に対応していかないといけない…

 

 このようにファラデーの電磁誘導の法則のみに頼って思考してしまうあたりが、発電機や電動機で挫折する最大の理由だと思われます。

 

 そこで、本節では、発電機や電動機の誘導起電力にどのようにアプローチしたら、多極機でも動作イメージができるのか、解説しております。

 

(その解説は本書に記載されています↓)

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