序章:早朝の訃報


2020年、夏。
スマートフォンの画面が、まだ薄暗い寝室を青白く照らした。

LAの旧友からのメール。
そこには、40年もの間、
私が心のどこかで待ち続けていた答えが記されていた。

『お前がずっと探していた、
あの「いかしたオヤジ」を見つけたぞ。……だが、残念ながら、彼はもう墓地の中にいた』

「あ……」

声にならない溜息が漏れ、熱いものが頬を伝った。
早朝の静寂の中で、私は一人、震えていた。
果たせなかった約束。遅すぎた再会。
もし、時を戻せるのなら。もし、あの時この国に戻る決断をしていなければ。

こぼれ落ちる涙と共に、激しい後悔が押し寄せる。40年という時間は、あまりにも早く、残酷に過ぎ去っていた。



第一章:大国の拒絶と、安らぎの海

1982年 夏
若かった私は、アメリカという大国に恋をしていた。
フリーウェイ10号線から15号線へとレンタカーを走らせ、広大な景色の中に自分の居場所を探した。

ここで暮らしたい、ここで仕事を見つけたい。
だが、特別な技術も持たない東洋人の若者に、大国は微笑むことさえなかった。

「金髪でダイナマイトボディのアメリカン・ガールを捕まえれば?」
仲間内ではそんな冗談も飛ばしたが、不思議と結婚相手だけは、日本女性以外考えられなかった。

そんな意固地で、どこか中途半端な自分。
当時、付き合っていた彼女とも別れ、自棄(やけ)気味に取った一週間の休暇。
逃げ込むように辿り着いたハンティントン・ビーチは、少々古びていて、投げやりな私の心を静かに包み込んでくれた。

駐車場で、日本から持ち込んだボードを下ろす。当時主流だった鋭利なショートボードではなく、ロングとの中間のようなファンボード。自分でも「イマイチだ」と思っていたその板を眺めていると、一人の男が近づいてきた。

長く束ねた髪。無精髭。左耳のピアス。
ブッチのサングラスに隠された青い瞳。そして、左腕には場違いな「和文字」のタトゥー。

「いい板だね」
それが、ジプシー・シェイパー、デービッドとの出会いだった。




第二章:首筋の刻印

「kazu、一緒にどうだい?」
彼の誘いに乗り、海へ出た。
だが、ヘタクソな私はハンティントンの速いカレントに翻弄された。

波に巻かれ、あろうことか自分のボードが頭上から降ってきた。
右後首を直撃する激痛。
「おおおーーっ!」という叫び声。

血だらけの私を、彼は迷わずローカルの店へ担ぎ込んだ。

「大丈夫か、若造!」
いかしたローカルたちが笑顔で迎えてくれる中、私はただ「Thanks, Thanks」と繰り返すことしかできなかった。

その夜、デービッドは「ウチに来ないか?」と言った。
ガレージの奥には、レジンの匂いが漂う作業場。

彼は有名なメーカーの板を削りながらも、そこには一切自分の名前を入れなかった。
「名前なんていらない。最高の波に乗れれば、それでいいんだ」

理解しきれない英語で語りかけ、彼は何度も私に問いかけた。
「How about you, kazu?(お前はどうなんだ、カズ?)」

翌朝、彼はオンボロのブルーのシボレー・C-10に積んだ、巨大なロングボードを指差した。
「今日はこれを試してみてくれ!」

沖に出るだけでも大変だったが、一度波に乗れば、そこには魔法のような時間が流れていた。
板の上を踊るように歩くデービッド。私たちは、ただ笑顔で波と戯れた。
わずか二日間。だが、彼は間違いなく、私の人生で最も大事な友となった。


第三章:届かない約束

「必ずまた戻る」
そう言い残して帰国し、私はいつの間にかこの国で家族を持ち、30年の歳月を積み上げた。

ようやく再訪したハンティントン・ビーチ。

家族をナッツベリーファームに残し、一日だけ時間を貰って訪れたあの場所には、もう彼の姿はなかった。あの店も、あのガレージも、消えていた。

ただ、風の中で、どこからか聞こえた気がしたのだ。
「How about you, kazu?」と。

そして今日、届いた訃報。

あと30年が過ぎれば、私の命さえこの世にはないかもしれない。
届かない悲しさの中で、私は首筋の古傷をなぞる。


第四章:再び、その先へ

あのハンティントンでの再訪からさらに数年が過ぎ、私の体にもいよいよ年齢という波が押し寄せてきていた。

仕事は落ち着いたものの、首筋の古傷は寒暖差で疼き、波に乗る回数もめっきりと減ってしまっていた。

そんなある日、私は都内の古びたサーフショップに立ち寄った。目的は、古くなったワックスを買い換えるだけのつもりだった。

しかし、店の奥、ヴィンテージボードが並ぶ一角で、私の心臓は早鐘を打ち始めた。
そこに、一本のロングボードが立て掛けられていた。

それは、今の流行りとはかけ離れた、鈍重で、どこか無骨なクラシックスタイル。くすんだクリアにペイントされたその形。

間違いない。あの朝、デービッドが僕に差し出した、あの巨大な板だ。
私は震える手でボードに触れた。

長い年月、多くのサーファーの手を渡ってきたのだろう。デッキには無数のフットマークがあり、レールにはいくつものリペアの跡があった。
しかし、その根底にある「形」は、あの時のままだった。

「…これ、おいくらですか?」

私の声は、自分でも驚くほど掠れていた。店主は私の様子を不審げに見ながらも、その板の歴史を語り始めた。

「これは珍しい代物ですよ。二十年ほど前、LAのシェイパーから直接譲り受けたという人から
最近 買い取ったんです。

メーカーのロゴも、サインも入っていない。でも、削りの技術は本物だ。いわゆる『ジプシー・シェイパー』の板ですね。

彼らは自分の名前なんて気にしない。ただ、海と、その波に乗る人間のことだけを考えて板を削る。この板には、そんな魂が宿っているような気がしてね」

店主の言葉が、私の心に深く沈み込んでいった。
私は、そのボードを買い、家に持ち帰った。そして、ガレージの隅に置かれた、埃を被ったショートボードの横に立て掛けた。

「kazu、また会えたな」
あの時の、ブッチのサングラスの奥にある青い瞳が、私を見つめているような気がした。
私は、もう一度、海へ向かう決意をした。首の傷は疼くかもしれない。体は動かないかもしれない。それでも、私はこの板と共に、あの日のハンティントンへ戻りたかった。

あの穏やかな波、あの速い底の流れ、あの巨大な板の上で感じた、あの笑顔。

「How about you, kazu ?」

今、私はその問いに、自信を持って答えられる気がする。

「I'm back, David. I'm finally back.」

そして、私は、この板を削ったシェイパーの魂と共に、新たな波を追いかけ続ける。あの日の青春を、もう一度、この手に取り戻すために。



終章:青春のドルフィンスルー

私の心は、今もあの日のデービッドとの思い出の中で、波をくぐり抜ける「ドルフィンスルー」の真っ只中にいるのかもしれない。

出口の見えない波の下で、ずっと、あの青い瞳を探している。

目標に迷い、目的を失いかけている若者たちよ。
効率や正解ばかりを探さないで欲しい。
もっと熱く、もっと無様に、青春という名の波を追いかけたら良い。

たとえその約束が果たせなくても、たとえその傷が一生消えなくても、全力で駆け抜けた記憶だけが、君たちの血肉になる。

「さよなら、デービッド。さよなら、ジプシー・シェイパー」

次のLAでは、まっ先に貴方の眠る場所へ向かうよ。

そして、あのオンボロのC-10の助手席に座っているような気持ちで、空を見上げて答えるんだ。

「僕の人生、悪くなかったよ。……How about you, David?」

潮風が、一瞬だけ、あのガレージの匂いを運んできたような気がした。



エピローグ:約束の場所へ

LAの旧友からのメールが届いてから、数ヶ月後。私は再び、ロサンゼルス行きの飛行機に乗っていた。

家族を伴わない、一人だけの旅。目的は、ただ一つ。デービッドに会いに、彼の眠る場所へ行くこと。

フリーウェイ10号線から15号線、そして405号線へと乗り継ぎ、ハンティントン・ビーチへと向かう。

レンタカーの窓から見える景色は、40前とはすっかり変わり、洗練された街並みが続いていた。
しかし、潮の香りは、あの頃と少しも変わっていなかった。

旧友に教えてもらった墓地は、ハンティントン・ビーチから少し内陸に入った、静かな丘の上にあった。
広大な敷地に、いくつもの墓石が並ぶ。私は、デービッドの名前が刻まれた墓石を探した。

「David Miller, Gypsy Shaper, 1947- 2012」

65歳…

そこには、彼の名前と、彼の生き様、そして彼が生きた証が、静かに刻まれていた。
墓石の横には、小さな、しかし、確かに、波をモチーフにした彫刻が施されていた。

「デービッド……」

私は、墓石の前に座り込み、彼に語りかけた。
40年年もの間、果たせなかった約束。
そして、彼との出会いが、私の人生をどれほど豊かにしてくれたか。

「How about you, David?(貴方は、どうなんだ、デービッド?)」

私は、彼の墓石に向かって、あの問いかけを投げかけた。
風が、優しく私の頬を撫でる。まるで、彼が「最高だったよ、カズ」と答えているような気がした。

私は、彼が削ってくれた、あの巨大なロングボードを持ってきていた。
そのボードを、墓石の横に立て掛けた。

「これ、貴方の板でしょう?また、一緒に波に乗りたいな」

私は、そのボードと共に、ハンティントン・ビーチへ向かった。
あの日と同じように、波に巻かれ、血だらけになることはなかったが、私は、彼が削ってくれた板の上で、確かに、彼の魂を感じた。

「How about you, kazu?」

波の上で、私は、彼に答えた。
「僕の人生、悪くなかったよ。貴方と出会えて、本当に良かった」



私は、この板を削ったシェイパーの魂と、かつて愛した女性の思い出と共に、新たな波を追いかけ続ける。

あの日の青春と、そして、失った愛を、もう一度、この手に取り戻すために。家族との生活も大切にしながら、私の心の中にある「ハンティントン・ビーチ」を、永遠に守り続けるために。

今年 僕は
彼の齢に追い付いた


第7章 時を越えた再会 月の空洞に咲く記憶

月の内部
空気も音もない
真空のガランとした大空間

そこは本来
冷徹な物理法則が
支配する場所ですが
一組の男女にとっては
宇宙で最も親密な
再会の広場でもありました



銀色の静寂での密会

未来からやってきた
観測員の青年 レン
彼は2026年の地球での任務を終え月の空洞内にある
中継ユニットへと帰還しました

そこには別の時代
西暦3500年の母船から派遣された技術者のルナが待っていました

二人は異なる時間軸を
専門とする任務に就いているため
地球上では
決して出会うことが許されません

唯一 
時空が交差する
この空気のない月の空洞だけが
彼らが触れ合える場所だったのです

レンがUFOのハッチを開けると
そこにはルナがホログラムのような淡い光を纏って浮遊していました

真空の室内では声は届きませんが
二人はヘルメットを合わせ、
振動を通じて直接意識を共有します

鼓動の同期(シンクロニシティ)

今回の任務はどうだった?
ルナの思念が
レンの脳内に温かく流れ込みます

2026年の地球は
まだ月をただの岩石だと
思い込んでいる
でも
あの大気のある世界は
君に見せたいほど
生命の熱に溢れていたよ

レンは地球で採取した
風の音と
花の香りのデジタルデータを
ルナに転送します

空気のない月の内部で
ルナはそのデータを通じて
遠い過去の地球の春を感じ
瞳を潤ませました

二人は重力制御装置が作り出す
微弱な引力の中で
ゆっくりと手を重ねます

防護スーツ越しではあっても
この瞬間の体温だけは
どの時代にも属さない
今 という真実でした

永遠のすれ違い

私の次の行き先は
1979年の夏…
あなたがさっきまでいた時代の
数10年後よ
ルナが寂しげに伝えます

わかっている
僕たちが次にここで会えるのは
僕にとっての3年後
君にとっての50年後だね

タイムトラベルの残酷な計算

月の空洞は
時空の結節点であるがゆえに
二人の主観時間は
恐ろしいほどにズレていきます

それでも彼らにとって
この不毛な月の裏側は
銀河のどこよりも
色彩に満ちた場所でした

月の涙

レンが再び機体に乗り込み
ハッチが閉まる直前
ルナは月の内壁に向かって
小さな光の粒子を放ちました

それは真空の中で結晶化し
月の裏側の岩肌に
目には見えない
約束の印として刻まれます

地球の人々が
恋人たちを想って月を見上げるときその裏側では
時代を隔てた二人が
たった数分間の再会のために
何光年もの時を超えて
想いを馳せているのです




第8章 時空の栞 1979年の約束


月の裏側

位相差ゲートが閉まる直前の

わずかな数分間

レンとルナは

真空の静寂の中で

最後のリフレインを共有しました


地球での密会の記憶


二人が交わした約束

それは任務の合間に

特定の時代と場所で

互いの存在を感じるための

目印を残すことでした


レン 

私が次に行く1979年の夏

日本の高原にある

古いホテルのテラスに

小さな栞を置いておくわ


ルナの思念が

レンの意識に

鮮やかな初夏の光景を

映し出します


それは

霧に包まれた軽井沢の万平ホテル


彼女は歴史観測員として

ジョン・レノンが滞在していた

その時代の空気の中に

紛れ込む計画でした


わかった 

僕もいつか任務のルートを調整してそこへ行く


君が触れたであろうその場所の

数10年後の空気を吸いに


物理的な接触を超えて

二人は防護スーツのグローブ越しに

指先を絡めました


空気のない月の空洞では

直接肌を触れ合わせることは

死を意味します


しかし彼らの意識は

ナノマシンを介した

共感覚接続によって

互いの心拍数や体温を

リアルタイムで共有していました


ルナ

君の心音が聞こえる

この真空の中で

僕たちの鼓動だけが唯一の音楽だ


ルナは微笑み

レンのヘルメットに

自分のそれをそっと押し当てました


振動が骨を伝わり

言葉以上の切なさが響き渡ります

月の内壁を流れる

青い光のラインが

二人の感情に呼応するように

より深くより激しく脈動しました


月の裏側に刻まれた誓い


レンがUFOに乗り込み

機体が真空の滑走路へと

浮上し始めます


別れ際

ルナは月の内壁の超合金に

指先で小さな紋章を描きました


それは未来の言語で再会を意味する目には見えない

分子レベルの刻印です


この月が壊れない限り

私たちの時間は

ここで繋がっているわ


ルナの祈りを含んだ思念が

レンの意識の底に沈み込みます


結び 1979年へのダイブ


月の裏側のハッチが開き

レンの機体は

1979年の時空へと射出されました


機体の窓越しに

青く輝く地球が見えます

その片隅

緑豊かな高原のホテルで

ルナがこれから残すであろう

約束の栞を想いながら


地球の恋人たちが

月が綺麗ですね と

愛を語らう裏側で

月そのものが

時をかける二人の

愛の貯蔵庫となっていることを

地上の誰も知りません


第10章 重なる視線

青年は
その言葉に
言いようのない郷愁を覚えます

その夜
彼はホテルの庭から
夜空を見上げました

そこには
いつもと変わらぬ
穏やかな光を湛えた月が
浮かんでいます

彼が手に持っていた
高倍率の望遠カメラで
月の輪郭を捉えたその瞬間

大気の揺らぎのせいか
それともレンズの悪戯か
一瞬だけ
月の裏側の影から
銀色の小さな光の粒が
地球に向かって弾け飛んだように
見えました

青年は気づきません
自分が今立っているその場所が
数千年の時を超えて
二人の恋人が再会の約束を交わした
聖地であることを

そして
今見上げた月の裏側で
巨大な開閉式のハッチが
音もなく閉じ
一人の女性が
彼と同じように地球を見つめて
微笑んでいることを

結び 永遠の月光

月の裏側の空洞には
今もレンとルナが残した
鼓動の記憶が真空の中に
保存されています

地球上でどれほど時間が流れ
文明が移り変わろうとも
月は人工物としての
冷徹な沈黙を守り続け
その内部に時を超えた愛を
封じ込めているのです

空気が存在しないからこそ
その想いは決して風化することなく永遠に輝き続けます

今夜も
月は何も語らず
ただ静かに
未来からの旅人たちを
迎え入れているのです


2026年の現代

物語の舞台は
歴史の重なりが静かに息づく
埼玉の住宅街

そして
再びあの軽井沢へと繋がります

レンとルナの真空の約束が
ついに時を超えて
一人の青年の目に留まる運命の瞬間



真鍮の囁き2026年

2026年6月
埼玉の郊外にある
古い蔵を改装した私設研究所

歴史考古学を専攻する大学院生
秋山 瞬は
湿り気を帯びた
初夏の夜風を窓から入れながら
一台の古い家具と向き合っていた

それは
先月解体された
軽井沢・万平ホテルの旧館倉庫から
研究用として譲り受けた備品の一つ

1970年代に使用されていた
真鍮の脚を持つ
サイドテーブルだった

0.01ミリの違和感

瞬は
超高解像度の
マイクロスコープを手に
金属の経年変化を記録していた

半世紀の時を経て
真鍮は深い飴色に酸化し
独特の風格を纏っている

しかし
テーブル脚の裏側
通常なら
決して摩耗することのない場所に
彼は奇妙な光を見つけた

なんだ これは?

レンズ越しに覗いた世界
そこには
研磨剤で磨いても
決して落ちないであろう
精密すぎる幾何学的な紋章が
刻まれていた

それは彫刻ではない
まるで金属の分子そのものが
意思を持って整列し
内側から発光しているかのような
現代の加工技術を遥かに凌駕する
分子レベルの配列だった

真空からのメッセージ

瞬の指先が
その冷たい真鍮に触れる
その瞬間
彼の脳裏に一瞬だけ
空気のない静寂に満ちた
銀色のドームの幻影が走った

彼は震える手で
紋章の横に刻まれた微細な日本語を
解読用のレーザーでスキャンした

モニターに映し出された文字は
あまりにも繊細で
しかし力強い意志を宿していた

月で会いましょう
空気がなくても
あなたを感じられる場所で

1979年?
いや
この技術は未来のものだ!

瞬は言葉を失った
1979年の軽井沢という
ジョン・レノンが愛した
あの穏やかな時間の中に
誰かが未来から
このメッセージを置いていった

そしてその宛先は
地球上のどこでもなく
夜空に浮かぶあの月なのだ

結節点としての月

瞬は窓を開け
埼玉の夜空を見上げた

雲の切れ間から
鋭い光を放つ半月が顔を出す

月はただの岩石じゃない

彼は思い出す
最近の天文学界で囁かれている
月の内部にあるとされる
巨大な空洞説

そして
世界中で目撃されるUFOが
なぜか月の裏側へと
消えていくという噂

彼の手元にある真鍮の言葉は
それらすべてのパズルを繋ぐ
最後のピースだった

月は
愛し合う二人が時空を超えて
再会するための
空気のない約束の場所

瞬はカメラを構え
月の裏側の影の部分に
ピントを合わせた

その時
彼のファインダーの中で
月の輪郭が
わずかに歪んだように見えた

それはまるで
誰かが向こう側からハッチを開け
この栞を見つけた誰かを
見守っているかのような
温かな眼差しに思えた


夜空に浮かぶ銀色の円盤は
太古の昔から人類を見守ってきた
しかし
それは自然の摂理が生んだ
衛星ではなく
精密に設計された
巨大な時空構造物だった…



第1章 真空のハッチ

西暦3200年
地球は環境の変化により
物理的なタイムトラベルを
禁忌としていた

大気という抵抗が存在する場所で
時空を歪めれば
分子レベルでの衝突が起き
凄まじい熱量と
衝撃波を撒き散らしてしまうからだ

そこで
未来の科学者たちは月を利用した

月は常に地球に表側だけを向け
その沈黙を守っている
だが
その裏側
人類の視線が届かない暗闇には
巨大なチタン合金製の
ハッチが隠されていた

探査機すらも欺く
迷彩塗装を施されたその入口が
音もなく開く内部は
岩石の皮を被った完全な空洞だった

第2章 空気のない回廊

月の内部には
重力も大気も光さえもない
完全な真空状態

そこは
時空を飛び越えるための
滑走路だ

未来からやってくる
UFOと呼ばれた機体は
この真空の空洞内で
粒子を加速させ
次元の壁を突破する

地球上で同じことをすれば
周囲の空気が
核融合にも似た反応を起こして
都市一つを消し飛ばしてしまうが
何もない月の内部なら
物理法則の制約を受けずに
時空をスライドできる

第3章 監視者たちの帰還

2026年 深夜
数機の銀色の球体が
静かに
そして唐突に成層圏に現れる

人々はそれを
宇宙人の乗り物と呼び
遠い星からの来訪者を想像した

しかし
その中に座っているのは
私たちと同じ遺伝子を持つ
数千年後の人類だ

彼らは月から過去へとダイブし
自分たちの歴史が
正しく刻まれているかを
確かめに来る

地球は今日も青いな

未来の観測者は
窓の外に広がる
懐かしい故郷を見つめる
彼らにとって
月は単なる夜空の飾りではない

それは
遠い過去と未来を繋ぐ
唯一の扉であり
物理的な衝突を避けるための
宇宙で最も静かな中継基地なのだ


月の深淵 虚無の心臓部


月の外殻は数億年の歳月にわたって降り注いだ

隕石の塵(レゴリス)で巧みに擬装されています


しかし

その厚さ数十キロメートルの

岩石の皮を通り抜けると

そこには人類の想像を絶する光景が

広がっています


第4章 虚空のジオデシック・ドーム


ハッチを抜けた先にあるのは

直径数千キロメートルに及ぶ完全な真空の空洞です


そこには上下も左右もありません


内壁は鈍い

銀色に輝く未知の超合金で覆われ

無数の幾何学的なラインが

脈動するように青白い光を

放っています


この空洞こそが

時空の歪みを中和するための

バッファ・ゾーン(緩衝地帯)です


地球のような大気のある場所で

時空に穴を開ければ

周囲の空気は

瞬時に数千万度に加熱され

巨大な爆発を引き起こします


しかし

この空気も何もない

月の内部であれば

時空を物理的に折り畳んでも

干渉する物質が

何一つ存在しないのです


第5章 開閉式ゲートの鼓動


月の裏側

ちょうど

静かの海の真裏にあたる位置に

そのメインゲートは存在します


それは

岩盤そのものが

スライドするのではなく

空間そのものが収縮して開く

位相差シャッターです


未来からやってくる

機体(UFO)が接近すると

月の裏側のクレーターの一つが

まるで瞳孔が開くように

音もなく渦を巻いて広がります


そこへ滑り込む機体は

慣性を無視した動きで

空洞の中心部へと

吸い込まれていきます


第6章 未来人の眼差し


空洞の中央には

巨大な重力制御ユニットが

浮遊しています


そこでは

未来から来た

観光客や歴史観測員たちが

地球への降下準備を行っています


これから2026年の日本

長野の上空へ

大気圏突入時の摩擦係数は

ゼロに固定


観測終了後は

直ちに月の裏側ゲートへ帰還せよ


彼らにとってこの月の空洞は

時の駅


彼らが乗る銀色の球体は

この真空の中で時空の波に乗り

一気に目的の時代へと滑り出します


地球の人々が夜空を見上げ

UFOが消えた!と驚くその瞬間

彼らはすでに

この月の静寂な空洞へと戻り

ハッチを閉じているのです


終章 沈黙の守護者


月が常に同じ面を

地球に向けている理由


それは

この巨大な時空の駅の入り口を

常に地球から隠し通すための

プログラムに過ぎません


今夜も月の裏側では

音もなくハッチが開き

未来からの旅人が

私たちの知らない歴史を綴りに

やってきているのかもしれません


最終章 観測者と被観測者


西暦2032年

人類は再び月に降り立ち

今度はその裏側

永劫の闇に包まれた領域へと

足を踏み入れた


エピソード1  残された痕跡


有人月面探査車アルテミスIVは

月の裏側にある

これまでの地図には載っていない

奇妙な幾何学的な模様を持つ

巨大なクレーターに近づいていた


宇宙飛行士のエマ・ブランシュは

ヘルメットの中で息を呑んだ


ヒューストン…信じられない!


クレーターの底部

中心に向かって何かが

スライドしたような跡がある


そして

その跡は突然虚空に消えている


その痕跡は

隕石衝突によるものではなかった

まるで巨大な円盤が静かに着陸し

そのまま地中 

月の内部へ吸い込まれたかのような完璧な円形の亀裂だった


さらに驚くべきことに

その亀裂の周囲だけ

月のレゴリスが分子レベルで整列し


まるで超伝導素材のような光沢を

放っていたのだ

まるで扉が閉まった直後みたいだ


エマの呟きは

通信ラグによって

ヒューストンには届かなかった


しかし彼女は確かに見た


その瞬間

亀裂が音もなく

わずかに呼吸するように

動いたのを…


エピソード2  銀色の繭の中


一方

その扉の向こう側

月の空洞中央に浮かぶ

重力制御ユニットの中では

一人の未来人が

2032年の月面の様子を

マルチ次元モニターで

静かに眺めていた


彼の乗るUFOの内部は

地球人が想像するような

機械室ではなかった


壁面は存在せず

ただ 思考によって色が変化する

液状のホログラム光に包まれている


彼は座席に座るのではなく

その光の中に漂っていた


通信歴史ポイントC-12に

原始的な観測者が接触

予定通りのタイムラグで

フェイズ・シフトは完了


彼にとって

2032年のエマの驚きも

すべては

確定した過去の再現に過ぎない


彼は液状のホログラムに触れ

次の停留所を指定する


次は1969年

ヒューストン 着陸地点

アポロ11号の着陸を見守る


彼らが我々の存在を信じていた

あのピュアな時代へ


月の裏側のハッチが

再び位相を歪めて開く


銀色の球体は

真空の空洞内で粒子加速を開始し1969年の地球へと向かって

時空の波を滑り出した


結び

月の沈黙


月は今日も地球に表側だけを向け

静かに浮かんでいる


人類が月の裏側の扉に気づくには

まだ数百年の時間が必要だろう


そしてその真実を知ったとき

彼らは気づくのだ


自分たちが

宇宙人と呼んでいた存在は

自分たちの子孫であり


月は

彼らが過去の自分たちを見守り

そして導くために作った

巨大な銀色の

時のゆりかごであったことを



月はタイムマシン


その静寂の中に

私たちの過去と未来のすべてが

呼吸を潜めて眠っている


あの日
世界が崩れる直前
青い空に白い煙が昇る
そのわずか数分前

彼らは
時間と存在の隙間に現れる


第1章
位相の影 瞬きの瞬間に

リオン
南棟 78階のフロアを捕捉
ターゲットは… 約150名

アルトの声は
位相フィールドのノイズ混じりで
リオンの耳元に直接響いた

リオンは自身の認識を
現実世界からコンマ数秒ずらした
影の領域へと同期させる

彼の視界には
無邪気にコーヒーをすする男性
デスクで慌ただしく
電話をかける女性
そして窓から外を眺める
まだ若い女性の姿が映っていた

彼らは自分たちの運命が
わずか120秒後に
決定づけられることを知らない

回収を開始する
アルト
転送座標の調整をお願い

リオンは
ターゲットたちへと意識を向けた

彼の能力は
対象の肉体と意識を
瞬時に身代わりの残像 
ダミーとすり替えること

そのダミーは
次の瞬間に訪れる衝撃によって
現実世界に
彼らが亡くなったという
確たる観測事実を刻みつける

リオンは窓辺に立つ若い女性の
その澄んだ瞳に
引き込まれそうになるのをこらえた

彼女の瞳には
まだ見ぬ未来への希望が
映っているように見えたからだ

リオン
時間がない 90秒

アルトの冷静な声が
彼を現実に引き戻す。

分かってる
転送準備 完了!

リオンが
自身の能力を発動させた瞬間

え…?

窓辺に立っていた女性ミナは
何が起きたのか理解できなかった

一瞬
世界が白く染まったかと思うと
次の瞬間には
彼女は別の場所に立っていた

そこは
オフィスではなく、
広大な見たこともない色彩の花々が咲き乱れる草原だった

ここは…?

ミナの問いに答える者はいない
ただ彼女の周りには
同じように困惑した表情を浮かべる数多くの人々が立っていた

第2章
エデン・セカンド 二つの月の下で

リオン
今回の任務も無事完了だね!

エデン・セカンドの
母船へと戻ったアルトは
ホログラムディスプレイを
操作しながらリオンに話しかけた

ああ 153名
あの女性も救えた

リオンは
ミナの姿を思い浮かべながら
窓外に広がる二つの月が浮かぶ
夜空を見つめた

彼らは
時の回収者
クロノ・サルベージャー

歴史の因果律を守りながら
不慮の事故や災害から命を救い出す特殊任務を帯びた存在だ

彼女 ミナって言うんだって
まだ20代半ばだった

アルトは
ミナの情報を確認しながら
リオンに伝えた

そうか…

リオンは
ミナの瞳に映っていた
未来への希望を思い出していた
この星 エデン・セカンドで
彼女はどんな未来を
築いていくのだろうと…

数日後
エデン・セカンドの居住区で
リオンはミナと再会した

あ あの あの時
私を助けてくれたのは
あなたですか?

ミナはリオンに近づき
声を掛けた

私は ただの 回収者です
リオンは無愛想に答えた

彼にとって
救出した人々との接触は
極力避けるべきことだった

彼らは地球の歴史から切り離された存在であり
回収者である彼自身も
彼らの生活に干渉してはならない

でもあの時 一瞬だけ
あなたの姿が
見えたような気がして…

ミナは
リオンの言葉を気に留める様子もなく続けた

私 ずっと怖かったんです
あのまま死んでしまうんだって…

でもあなたが…
あなたが助けてくれたから
今 私はこうして生きている
ありがとうございます

ミナの瞳には
感謝の涙が浮かんでいた

リオンはミナの涙を見て
胸が締め付けられるような感覚を覚えた

彼にとって
救出は 任務であり
救出した人々の感情に触れることは今まで避けてきたことだった

キミが無事で良かった
リオンは不器用ながらも
ミナに言葉を返した

その日からリオンは
ミナのことが気になり始めた
居住区で彼女の姿を見かけるたびに胸が高鳴るのを感じた

第3章
禁断の恋 そして未来へ

アルトは
リオンの変化に気づいていた

リオン
彼女のことは
あまり深く考えない方がいい

ある日
アルトはリオンに忠告した

分かってる でも…
リオンは
自分の気持ちを
抑えることができなかった

ある夜
リオンはミナを連れて
居住区から離れた静かな森へと向かった

わあ…きれい…

ミナは
二つの月が照らす森の景色に
歓声を上げた

キミに話したいことがある

リオンは
ミナに自身の正体
そしてエデン・セカンドの真実を
打ち明けた

私たちは地球の歴史では
亡くなったことになっている

だから
二度と地球に戻ることは出来ない
この星で
ただ静かに生きることが
私たちの運命なんだ

ミナは
リオンの言葉を静かに聞いていた

そうだったんですね

ミナは
少し寂しそうな表情を浮かべたが
すぐに笑顔を取り戻した

でも私はこの星が好きです
二つの月も
見たこともない花も…

そして
私を助けてくれた
あなたがいるこの星が…

ミナは
リオンの目を見つめながら続けた

私 あなたと一緒なら
この星で
幸せに生きていける気がします

ミナの言葉に
リオンは胸がいっぱいになった

私も君と一緒にいたい
リオンはミナを抱きしめた

二人は禁断の恋に落ちた

回収者と
回収された人々
彼らの恋は
決して許されるものではなかった

しかし
彼らはその事実を知りながらも
互いに惹かれ合っていった


数年後…
エデン・セカンドには
新しい命が誕生していた

リオンとミナの間に生まれた子供

この子の名前は アオ にしよう!

あの日 見上げた
あの青い空のように
澄んだ心を持った子になるように…

ミナはアオを抱きながら
幸せそうに笑った

リオンはアオの寝顔を見つめながら夜空を見上げた

かつて
地球の空に白い煙が昇ったあの日

彼らは歴史の激流から
零れ落ちるはずだった命を
密かに掬い上げた

そして今
その命は
銀河の彼方 エデン・セカンドで
新しい未来を築き始めている

彼らの物語は まだ終わらない

地球がいつか争いを克服し
自分たちの住む星まで
会いに来てくれる日を
彼らは数千年のスパンで待っている

任務完了!
次のターゲット
20XX年…

アルトの声が母船へと響く

リオンは
アオとミナに別れを告げ
また次の救いの為に
青い惑星へと降下して行った

その胸には
ミナの笑顔
そしてアオの澄んだ瞳が
いつまでも温かく刻まれていた


あの日の空が
あまりにも青かったことを
覚えている人も多いでしょう

これは
歴史の激流から
零れ落ちるはずだった命を
密かに掬い上げる者たちの物語です

彼らは 時の回収者
クロノ・サルベージャー
と呼ばれています



第1章
午前8時40分
ワールドトレードセンター

ターゲット確認
北棟81階 32名
南棟 24名
タイムリミットまで残り120秒

高層ビルのオフィス
日常の喧騒の中に
場違いなほど冷静な声が響きました

姿は見えません
彼らは位相をずらした
影の領域を歩いています

任務の鉄則はただ一つ
歴史の観測結果を
変えてはならない!

つまり
世間が 亡くなった と
認識した事実はそのままに
肉体だけを瞬時にすり替える

彼らが使うのは
高度なバイオ技術で生成された
身代わりの残像です

転送準備
座標固定…
今だ!

衝撃が走る直前
一瞬だけ世界が白く染まりました

デスクで
コーヒーを飲んでいた女性も
電話をかけていた男性も
何が起きたのか
理解する暇もありませんでした

彼らの意識は
その瞬間に凍結され
大気圏外に待機する母船へと
吸い上げられました

地上では
予定通り悲劇が進行します
しかし
失われるはずだった魂は
すでに地球の手を離れていました

第2章
銀河の果ての 約束の地

目を覚ました人々が目にしたのは
崩れゆくビルの瓦礫でも
救急車のサイレンでも
ありませんでした

そこは
地球から数千光年離れた
惑星 エデン・セカンド

空には二つの月が浮かび
見たこともない
色彩の花々が咲き乱れて
静寂と平和に満ちた星です

ここは…天国なの?

一人の男性が
足元の柔らかな草の感触に
震えながら尋ねました

そこへ
任務を終えた一人の 回収者が
人間の姿を借りて現れます

いいえ 
ここは天国ではありません
新しい故郷です

彼は静かに説明しました

あなたたちは
歴史上では
亡くなったことになっている

地球に戻れば
因果律が崩壊し
歴史が変わってしまう

だからこの星で
同じく救出された人々と共に
争いのない
新しい文明を築いて欲しいと…

第3章
静かなる再始動

この星には
9.11だけでなく
あらゆる時代の
不条理な最期から
救い出された人々が暮らしています

1912年
タイタニック号から救われた航海士

79年
ポンペイの噴火から救われた
職人の家族

現代
理不尽な災害に巻き込まれた
子供たち

彼らは
自分たちが 
歴史の犠牲者ではなく
未来の開拓者に
選ばれたことを知ります

エデン・セカンドには
兵器も
差別も
資源を奪い合う境界線もありません

地球の歴史に影響を与えないよう
彼らはただ
静かに
そして幸せに生きることが
義務付けられているのです

結びの章
観測者の日記

今日も地球では
救いようのない悲劇が
起きるかもしれません

しかし
夜空を見上げてください

無数の星々の中に
かつて私たちが失ったと
嘆いた人々が
元気に笑い
畑を耕し
子供を育てている場所が
確かにあるのです

彼らは
地球がいつか争いを克服し
自分たちの住む星まで
会いに来てくれる日を
数千年のスパンで待っているのです



任務完了!
次のターゲット
20XX年…

回収者たちは
また次の 救いの為に
青い惑星へと降下して行きました

入院中に
マンションの登記が出来たそうで
それを取りに
出掛けねばと思いながらも
なかなか遠出が出来ず
今日になってしまった

ゆっくりと出て
何度も休みながら
下道をてくてくと走り
中之条の法務局へと着けば
もう夕方となり

登記済みの書類を頂き
そこから更に40分
山へと掛け上がれば

まだ雪が残る草津は
冷たい雨
氣温はぐっと落ちて
3℃の表示を示し

予報を見れば
明日の朝は
氷点下らしい



急いで
温泉へと飛び込めば
ここの強い酸性の湯船は
腹の傷痕に
まだ少し沁みる

ならば
温泉湯ではない
ジェットバスかと
そちらで温まって出ることに

温泉には
まだ少し早かったみたい


さてすれば
もしや
落語会は? と見れば

あらま!
偶然にも仲良しくんじゃない!

なんて思っていたら
彼からメールが来て
先週の笑点へ出たことを
褒めたメールへの返信

一昨日から
草津に来ていたようで
今夜までの出演

更には
5月から真打となるから
そろそろここも
最終章

そう
ここは二つ目だけの場所で
真打になれば卒業となる

では
出掛けようかと思ってみるが
この天気と
この寒さの中
この体調ゆえ

すまんね
来月の披露目のパーティーまでには
戻るだろうからと
失礼した

それでも
彼らの宿舎は
この真下の部屋だから
ちょいと手土産でも持ってと
伺えば
すでに準備で出掛けたらしく

明日の朝にでも
また と思いながら…

45年前
囲い込まれた
厄介な環境に疲れ果てて

このままでは
壊れてしまうと悟り
この国から逃げ出す決心をし

えいっ! と
飛び込んでみたアメリカで
丁寧に
僕を救い出してくれた
恩人中の恩人

ステイした家族のママ フィリスが
今 友達と3人で
久々にやって来てまして

先週末
大阪から入り
東京までの10日間の旅

そこへと
僕のようにステイした方々が
その道中
入れ替わり立ち替わり同行し
大阪 奈良と動き
昨日から京都を楽しんでいる画像が
沢山届き 嬉しくなった





本来ならば
このセミリタイアした身
そのすべてに同行しようかと
思っていたら
なんと
手術のタイミングと重なって

仕方なくも
西の方面は
西の仲間たちに任せて

今回ばかりは
東京でだけ
お会いすることにした




もちろん
東には東の仲間たちがいて
待ってました! と
準備を始めていて

渋谷で会う者
ディズニーへと同行する者
咲き始めた桜へとな者
帰国の見送りにと付き添う者…

調べれば
この半世紀ほどの中で
日本人学生だけでも
10人ほど受け入れたらしく

そのほとんどに
連絡が取れていて
こうして
ママが来る度に

フィリス祭りね! と
微笑んで集まってくれる

娘たちも
大学生の時
わずかにステイさせて頂いたので

ならば
今回は
旦那も孫も連れて
家族中でと予定しており

さあ
どんなことになるのでしょうか

半世紀も経てば
そろそろ
その世代も変わりつつあり

孫子たちもまた
こうして
お付き合いを続けて欲しいと
願いながら…

あの日
僕を選んで
受け入れてくれたことに
これ以上ない感謝をし

ありがとう! と
抱きついてみようかと
思ってみる


しかし
時代はあっという間に変わり
スマホひとつで
こうしてすぐに連絡は取れ

おかげで物事が
スムーズにこと運ぶ世の中

それでも
アナログだったあの日に
心を舞い戻らせたならば

不便とは思わず
そのひとつひとつの
約束事を大事にしてこそ
成り立っていたことに
驚いてもみる

きっと
そんな日があったから
今へと繋がっているのだろう

ネットが繋がり
フィリスから
facebookへと誘われて
もう20年

便利さは
益々 想像を越えるけれど
引き換えたものがあったことを
こうして振り返りながら…



桜が間に合って

良かった…


お袋側の墓参へと来れば
お隣の方から
どなたですか? と言われ

はい
こういう者でと返せば
それはそれはと
微笑んでくれた

そう
訊けば
そちらが本家だそうで

また
その裏手は
総本家とのこと

何も知らずに
ここだけに来ていたけれど
次回からは
そちらへも
手を合わせることにしよう

老いたお袋の兄弟たちも
もうなかなかここへは
来れないならば

せめてもと
僕が手を合わし
記憶を辿るけれど
長い時間が経ってしまった



墓誌をと見れば
お袋は
おばあちゃんの齢に並び
僕は
オジイちゃんの齢に並んでいる

もうそんなかと
ひとり熱くなるが
時間は進み続けている

こうして
先のルーツを知らされたのも
きっと意味があるのかと
微笑んでみるが
何も戻らない

それでも
いつもの氣配はし
玉響は歓迎してくれたようだ

ありがとう


そこから
実家の墓所へと周れば
そこでもまた
玉響は分かってるよと
告げるかのようにゆらりし

帰り際には
50年ぶりの友達夫婦と再会し
長話となった

そろそろ
実家に戻ろうかと思うと告げると
戻って来るのかと
微笑んでくれた

彼岸の入りに…


先日 出掛けてみた
連帯保証人の自宅

空き家のようで
庭も荒れており
もう誰もいないのかと
お隣さんに声を掛けた

すると
とても親切なオバさまが出て来て
長話となり

時折 夜にだけ
その身内らしい方が来ると

更には
ちょいとそれが厄介らしく
荒れ放題の庭木が
こちらに伸びて来たので

庭木の手入れをお願いしている
植木屋さんが
それをカットしたら
怒ってやって来たと

更には
警察を呼ばれ
つまらぬトラブルになったけれど
警官になだめられて
大人しくしたそうで

すれば
時折 来るその方に
訊いたらどうかと言われ

でもいつ来るのか
分からないので
もし今度来たら
お知らせしますと言われ
ありがとうございますと
連絡先をお渡しした

一昨晩
その連絡が入り
今 来てるわよ とのこと

ありがとうございます
分かりましたが
この時間から出掛け
返ってトラブルにならないかと
と問えば

では
以前の植木でのトラブルの時
ここに来た警官の交番に
行ってみたら? と言われ

そうですねと
昨日 出掛けてみれば

ここでは
対応出来ないので
本署へと案内され

ではと
本署へと回り込んだ



すると
そんな相談室があり
カクカクシカジカで
行方不明の本人か
連帯保証人の居場所をと
話してみたが

なかなか
警察もそこまでは
調査出来ないと言う

そしたら
その物騒なお宅へと
出掛ける時に
トラブルになるといけないので
一緒に来てくれと頼むと

それも出来ないが
トラブルになったら
呼んでくれたら伺うと言う

バカか!
そのトラブルを避けたいから
頼むのに…

結果
何ひとつ
解決出来ないことを知り

なーんだ
警察なんて
そんなもんか! と
苛立つばかり

そんなわけで
カネの掛かる弁護士でしか
先に進めない矛盾に
更に苛立ちながら
警察を後にした

さてすれば
本日は
その倉庫へと出掛け

おそらくまだ
佐川急便さんたちが
使っているだろうから
内部に置き去りの荷物の量を
確認して来ようかと思う


そうそう
先日 相談した弁護士に言われ

出した内容証明の
青いレターパックと
赤いレターパックとの
両方とも届いてないことを知り

それは
どんなことかと
品川の郵便局へと尋ねれば

不在の連絡票を入れたが
本人から
再配達の依頼がないので
保管中とのこと

いやいや
元からそんなだろうからと
わざわざ
赤と青とを送ったのだと
事情を言えば

ポストが小さくて
直接の受け渡し不要の
青パックも入らないとのこと

しかし
カクカクシカジカで
青だけは届いてないと困ると
説明すれば
折り曲げても大丈夫なのかと
問われ

もちろん
それで結構
ねじ込んで下さいとお願いした

そんなこんなで
それは本日
届くはずで

これで
まずは
契約が終了となり
さて後は
荷物の件だけとなった

担当の警官も
これは夜逃げですねと
苦笑いしていたけれど

いずれにせよ
早い時期に解決せねばと
急ぐわけだ

分かったことは
警察は事件にならねば
何もしてくれないということ

そして
世の中は
逃げたもん勝ちかも? ってこと

正直者が損をする世の中
なんとかしたいが
なんともならない

WBC観たさに加入した
Netflixも
JAPANが負ければ
半分は熱が冷めて

それでも朝からテレビの前 
準決勝
第一試合
アメリカが勝ち上がり

相手は
イタリアか
それとも日本を倒した
ベネズエラかは
これも今日の試合次第

すれば
それと決勝との
残り2試合となり

では
忘れない内にと
Netflixの解約を探した



加入はそこそこ簡単だったけれど
退会はなかなか難しい

やっと探し出したそこでも
これまた
退会とは書いてなく
キャンセルなんて言葉のアヤ

なかなか
解約に辿り着けないそれに
苛立ちながらも
きっとまた
3年後も
ここの独占配信ともなれば
わずかなこの期間だけ
契約するのだろうけれども…


賛否両論あろうけれども
JAPANは頑張ってくれたと思う

時の運は確かにあれど
他国が皆
本氣になり
メジャーリーガーばかりを
揃えたということらしい

ならば
JAPANも3年後までに
多くの
メジャーリーガーを送り出して
彼らでそこを構えたら良い

ボールも違えば
ルールも違う
場慣れしたら
きっともっと
強いかもと…