
カウフマンのTurandot
去年12月にウィーンであった公演のビデオがBSで放送されたので。
カウフマンがカラフ、トゥーランドットがアスミク・グリゴリアン、リューがクリスティーナ・ムヒタリアン、という超豪華重量級メンバー。指揮はザ・中庸、マルコ・アルミリアート。絶対に邪魔をしない堅実な指揮(褒めてます)。演出はクラウス・グートで、中国趣味を抹殺して初演時の社会情勢=ファシズムの勃興を念頭において現代演出。
カウフマンは先月ミュンヘンで聴いた印象と大きくは変わらず、中低音は美しくて充実、高音はちょっと苦しそうなところもある、ってところか。Nessum Dormaは非現実的に高い音がないので安定の名唄。なぞなぞ合戦が始まるところに異常な高音があるけど、そこはちゃんと危なげなくクリアしてた(グリゴリアンがあまりに超絶に強烈なのでそれに助けられたのもあるかも)。で、とにかく白眉はグリゴリアンで、あまりに完璧かつ華麗なので100%音楽に没頭できる。それに年齢(43歳)の割にかなり童顔で、かつ演技達者なので、なぞなぞ解かれたあとにカラフに惹かれていくところなど、なんと可愛らしい、と思ってしまう(この印象は2018年のサロメ@ザルツブルグと同じ)。カウフマンの演技達者なので、2人でやってるとドラマ性高まることこの上ない。ムヒタリアンはロンドンでヴィオレッタ@椿姫歌っていて、うまいなぁと思ったけど、で実際うまいんだけど、グリゴリアンがあまりに超絶的レベルにあるんでやや可愛そう。
ということで圧倒されて、久々にいいオペラ公演聴いたなぁ、と本心から思える公演。勢いにのって、2018年のサロメ@ザルツブルグ、2022年の三部作@ザルツブルグでグリゴリアンを見直したけど、サロメの頃はまだ生硬な感じが残る(まぁ37歳だ)けど、今は本当にキャリアの絶頂期なんじゃないか、とおもうくらい、声の強さも柔らかさもパワーもレベルが違う。一度生で聴きたいもんだ。
最近読んだ本(大部)
最近このジャンルの記事がないのは大作を読んでたから。
・「JFK アメリカの世紀の新星」(フレデリック・ロゲヴァル)
上下で700ページくらいあって、撲殺できるくらいの大部。なんだけど、ページをめくる手がなかなか止まらない(その割に時間かかったけど、それは出張だのなんだのでいそがしかったから)。これだけの大作なのに、これでJFKが生まれてから上院議員になるまで(正確には大統領選でアイゼンハワーが再選されるまで)。後半生、つまりさらに劇的になる10年弱は現在執筆中ということでいまから出版が楽しみだ。読了して思うのはいかにJFKが魅力的な人かってこと。多動といってもいいくらい落ち着きがなくて忘れ物が多くて黒と茶色の靴を履いて出ていっちゃうとかあるんだけど、同時に名文家だし会話やルックスは魅力的だし好きなことには徹底して学ぶ読書家だし、個人的にも仲良くできると楽しい人、っていう印象。もちろん父親の財力と人脈で相当にスタート地点高く出発した人生だし、ものすごいプレイボーイだし(まぁでも会話が面白くて笑顔が素敵で頭の回転が早くておまけにお金もちだったら自然とそうなる)、毀誉褒貶あるのは知ってるけど、それを割り引いても魅力的な人、としか。これまでジョゼフは完全なコントロールフリークでJFKの人生にも口出ししまくった、と思ってたけど(実際そういうところは大いにあるけど)、息子の個性とか思想は尊重してた、ってことを知って意外だったのと、その一点だけは偉かったな、と(特に政治的・外交的には全く2人は一致してないけど、その不一致は不一致のまま置いておいた点。まぁそれもJFKの将来に悪い影響が出ないようなジョゼフの政治的配慮かもしれないけど)。JFLと違ってジョゼフJr.はどこから見ても嫌な人で、こっちは仲良くなりたくないタイプ。ロバートは以前の印象とはずいぶん違って、さほど魅力的な(人間的にも思想的にも)人には見えない。エドワードの出番は年齢差もあってほぼなし。まぁともかく早く続編が読みたい。
それ以外に読んだのは
・「教養としてラテン語の授業」(ハン・ドンイル)
バチカン裁判所で弁護士をしている韓国人が書いたラテン語の魅力を伝える本。少しナヨナヨした筆致なのは気になるし、肝心のラテン語は授業という割には内容がないけど、ラテン語の名言や格言をベースに人生を考える一助になる本をめざした、ということであれば、筆者の繊細な人生や世界に対する視点は一定程度共感できる。最近ラテン語流行ってるらしいし、もう少しチェイスするかも。
イタリア戦
バイデンさんも撤退させられたけど、エディもいつHCから撤退させられるか・・・。
しかし酷かったなぁ。グルジア戦で通用したスクラムもやられ、期待させた原田もこの日はスローイングがひどくて坂手の二の舞い。SHの小山は日本では通用してもワールドクラスではまだまだで・・・。むしろ藤原のほうがスピードはあったけど、一方で致命的なミスは藤原のほうで。矢崎も相変わらずの自信過剰なプレーで、あれで日本ではいいんだろうけど・・・。更にBKはスキルレスで、おまけに接点で負けて、いいところなしだったなぁ・・。
正直、試合ごとに観る気がなくなる試合ぶり。「超速」?はぁ?世界はもともともっと速いよ・・、と。同じ土俵で勝負するなら基礎スキルと体力がないと。秋にはNZ、フランス、イングランドか・・・。もうボロ負けしか見えない。
イタリア美食紀行後半戦
2週目はPerugiaへ。
初めて行ったけど、州都なのに小さい町で、おまけにものすごい急坂の上に旧市街があるんだね。毎日のディナーのためにフゥフゥ言いながら坂を登る羽目に。でもキレイで静かな街だった。これはきっと旧市街に泊まって、上でのんびり過ごして、ウンブリアの平原に沈む夕日を眺めながら食事するのが◯なんだろう。
行ったのは2つで、
Ristorante La Taverna
Osteria a Priori
La TaverunaはRistoranteというだけあって、大変上品でカメリエーレ/カメリエーラの対応も丁寧。アミューズのレンズ豆の冷製スープはとってもおいしかった。前菜は皆でいろいろ取ったけど、自分はトリュフクリームソースがかかったオニオンタルトが一番(美味しそうに聞こえないかもしれないけど美味しい)。まぁもちろんハム盛り合わせだって十二分にうまいんだけどね。パスタはやっぱり名物なのでトリュフのラヴィオリ。ワインはハウスワインなのでまぁ普通に美味しいウンブリアのワインだったけど、景色もいいし雰囲気もいいレストラン。
a Prioriはワインも売ってる店で、最初飛び込みで入って食べたMaltagliati(打ったパスタ生地の余りの部分で作るパスタ)がズッキーニとスペックが入ってすごく美味かったのと、メインでのキアニーナ牛のStuffato(シチュー)が繊細な味付けで最高(付け合せのスイスチャードもほの苦くて美味しい)だったので、翌日も有志を募って行った。2日目はメインの羊肉をロールして焼いて?スライスしたのがすごく美味しかった(逆にトリュフのパスタはいまひとつ)。
それぞれグラッパ飲んで楽しく過ごしました。
音楽会2題
海外出張に行くと、
・その街のオペラハウスの演目チェック
・そこの街のオケの演奏会チェック
・そこの街の野球の試合チェック
は欠かせない。うん、欠かせない。
今回はドイツとイタリアだったので、チェックしたところかな〜りいい感じで、
・ミュンヘンで「トロヴァトーレ」
・ボローニャで「三部作」(プッチーニ)
・ミュンヘンでヨナス・カウフマンのドイツリートリサイタル
とてんこもり。まず「トロヴァトーレ」は、V.グリゴーロを聴きたかったので予約。そうしたらG.ペテアンが代打でルナ公爵を歌うことになってさらに◯。指揮のF. Ivan Ciampaはどこかで振ったところを観たことがあるのかどうか・・・?(調べたら初めてでした)全体に情熱的な指揮で好感持てる。グリゴーロは正に熱演で、会場がクソ暑かった(外はもっと暑い)ので終演後は疲労困憊で立てず、カーテンコールも欠席。脱水症状だったの?トロヴァトーレは初めて聴くんだとおもってたら、これも調べて気付いたが2005年に日本にナポリが来たときに観てた!これはびっくり、なんだが、理由は明らかで指揮のN. Cavarettiがあまりにクソだったから。メンバーはリチートラ(死んじゃった?)、ツェドリンス、さらにマエストリでいいはずだったんだが、みんなイマイチだった、と感想に書いてある。ウィーンでファルスタッフ観たときのマエストリは最高だったんだけど・・・。まぁルナ公爵って感じでもないのか。
移動してボローニャなんだが、じつは歌劇場が改装中で、市民会館みたいなところでやってるらしい。なんと国際学会の会場と同じ建物だ。どんなホールかネット検索したらこれが座席間は狭いわ天井は超低いわで、これはたまらん、とパス。ジャンニ・スキッキは観たかったし、ロベルト・アバドの指揮も観たかったけど、さすがにこれは・・・。おまけにイタリアのオペラは20時開始24時過ぎ終了とかなので、準備と覚悟が必要。今回は本務があったので。
で、戻ってヨナス・カウフマン。弱音の繊細さと表現の奥行きは素晴らしい。立ち上がりはずいぶん安全運転で、声も小さくて不調かな、とおもったんだが、だんだん暖まってきて、自分は十分堪能できた。一点気になったのはリストの歌曲で出る高音が苦しそうだったこと。
にもあるけど、そろそろテノールとしてはキャリアの終わりなの?まだ55歳なんだけど・・・。忙しすぎ?それとも不調なだけ?DVDで観るカウフマンは圧倒的な声量と剛直な音色なんだけど、この先どうなるんだろう。
(追記)あー、やっぱり間違えてた。Ivan CiampaはロンドンのTraviataで観てる。オケは上手かった。歌手はアルフレートがだめだったんだ。ムキタリアンとルチッチは僕はよかったと思ったけど・・・。
ボローニャに戻る
3回目のボローニャだけど、15年ぶりくらい?懐かしいような新鮮なような。
学会は今日で無事終了。ラボで6人、無事に全部終了(自分も久々にcontributed talkをした)。花粉の舌下免疫療法をしているので口内炎があって食事が楽しめるか微妙だったが、これも無事に楽しんだ。以下、備忘録的に。
Osteria Broccaindosso
うちのイタリア人PDが取ってくれた。まぁ彼はボローニャ大学の出身だから隅々まで知ってるからいい店なのは当然か。サラミとハムの盛り合わせ、トルテリーニ・アル・ブロド(鶏のスープに入ってるので温かいしホッとする。スープみたいな感じ)、定番のボロネーゼ(やっぱりスパゲッティじゃなくてタリアテッレだった。山本益博さんの書いた通り)、タリアータ、これにサンジョヴェーゼ2本とハウスワインのカベルネソーヴィニヨン2本、グラッパ各自飲んで1人40ユーロ(✕9)。安い、としか。
Trattoria Dal Biassanot
15年前に気に入って2回行ってしまったTrattoria。懐かしくて再訪。経営は変わったのか、あのときの感じのいいおばちゃんはもういないみたいで、全体にプロっぽい(いや、みんなプロです)カメリエーレとカメリエーラばっかり。前菜でいつものサラミとハムの盛り合わせ、プリミはそれぞれ選んでたけど、僕はフンギポルチーニのパスタ。疲れていてあまり食べられなかったのでグラッパで〆。グラッパはAmarone Barriqueのを教えてもらってえらく美味しかった(ので、後日近くのエノテカで購入)。これも44ユーロ。さすがに街中なので値段はそこそこ。
Trattoria Da Vito
「世界入りにくい居酒屋」で紹介された、正に安食堂。なんだか味は剛直でうまい。前菜盛り合わせとパスタ(今回は定番ラザーニア)、それに豚のスネ肉煮込み(塊が9ユーロとは)、コトレッタ・ボロネーゼ(非常に重いです)、サンジョヴェーゼとランブルスコ1本づつで1人30ユーロ。ETHのグループもいたけど、どうやって知ったのか?チューリヒではNHK映るの?
Osteria San Carlino
市場で買い物(ポルチーニです)した帰りに裏道でみつけた。どう見ても隠れた名店っぽいので。店構えや場所からは想像できないくらい品の良いキレイな盛り付けで、味もとってもいい。サラミとアーティチョーク+ルッコラとペコリーノチーズの盛り合わせ+ほうれん草のトルテリーニ(Balanzoniというらしいです)+セミフレッド+ワイン2杯で41.5ユーロ。とてもおすすめ。
パルマに遠征して、トスカニーニ博物館で2時間近く滞在してしまった。いやー感動。ビデオをたくさんあったけど、指揮うまいんだなぁ、と。指先のニュアンスがすごい。で、お昼に行ったのが
Osteria Dei Mascalzoni
表通りから少し入っていて、日陰にテーブル出てて雰囲気良かったので入った。大正解で、ズッキーニとミニトマトとサルシッチャのGarganelleにInsalata mista(ビタミンC補充のため)、白ワインとエスプレッソで20ユーロとは・・・。本当にお値打ちで、いつかヴェルディ音楽祭で来るときには再訪決定。
ジャパンvsイングランド
17-52だっけ?
エディになってから興味も関心も応援もすっかりなくなって、試合の日を忘れてたくらい(同様の方、周囲に多数)。ビデオ録画も忘れたので試合はみてないんで、特にコメントできることはないんだが、3-45まで走られたそうで、FWは1本目ながらBKは1本半くらいのメンバーにコテンパにされたようで。
まぁメンバー見てもベストメンバーじゃないのはないんだけど、今のベストメンバーは全体にロートル化が進んでいて、3年後を見て選ぶとこれくらいまで落ちるんだよなぁ、と。一方でリーチ主将って・・・。HOを坂手から変えたのはいいけど・・・。まぁ全体に方向性が見えなくて、「超速」とか言っても昔の同志社の「PからGo」にしか見えない(要するに弱者の戦術)。そういう小手先の方向性でいいのかなぁ・・・。
ま、しばらくジャパンへの関心は薄れそう(ラグビーは相変わらず愛してるけど。トップリーグの決勝、すごかったなぁ)。
生存報告
気づけば3ヶ月も空いちゃった・・・。
まぁそりゃいそがしかったですよ。3月は学会2つ(うち1つは東京)。4月に新メンバー入れてテーマ決めたりいろいろ。学務も新年度だからいろいろある。で、5月末に6日間ドイツ。で、今ミュンヘン。これから2週間イタリアで国際会議の連投。
巷間喧しいのが「円安」。だけど、あの世紀のバカ政策を支持したお前らのせいだからな〜!自国通貨の価値を落とす政策に称賛が集まるなんて有史以来うちくらいだ。で、その体たらくが今の「後進国」化。外国人と日本人の間の一物二貨が増えてるらしいけど、こんなことしてるのはペルーとかインドとか「発展途上国」くらいなもの。日本はもう発展しないから「後進国」という分類でいいんだよ。
で、なんで円安の話題かというか海外行って円の弱さを実感するから。1ユーロ170円とかありえん。昔ドイツ在住のころはまだ「マルク」で、1マルク=60-80円をいったりきたりしてた。山一證券の破綻で80円くらいになったんだけど、その前は60円台、ヨーグルト1個1マルク以下で、パンが1個1マルクするかしないかだったんだから・・・。なのでほぼほぼ1マルク=0.5ユーロくらいの感覚だそうなので、それでも160円が許容できる上限。今朝、朝飯代をケチってパン屋でサンドイッチ買ったら5.4ユーロ。900円?そりゃ普通に美味しいけどさ(アメリカとの違いはここ)。オペラ見ても昔は10000円以下で余裕だったのになぁ。
もう一度言うけど、バカ政策の首謀者を断罪せよ!(ってもう地上にはいないけど「歴史の審判」ってのがある)
最近読んだ本
「マフィア帝国 ハバナの夜」(T.J.イングリッシュ)
「検証 ナチスは<良いこと>もしたのか」(田野大輔・久保田拓也)
「<悪の凡庸さ>を問い直す」(田野大輔・久保田拓也 他)
「マフィア帝国〜」は以前からキューバの歴史に興味があったので、ダークサイドからのカストロ革命史を知りたくて。ただ、副題の「ランスキー・カストロ・ケネディの時代」というのはやや誇大広告で、ケネディはほんの数ページしか出てこない。ちょっと不満。あと、概ねランスキーの評伝になっていて、カストロは脇役扱い(まぁそういうタイトルなんだから仕方ない)。内容の割に読み進む速度が遅かったのは大部分がマフィアの抗争史だからかなぁ。ツマラナクもないけど、すごく面白かったわけでもない。
田野・久保田の著書2篇は、最近アーレントの「イェルサレムのアイヒマン」の内容が誤読されているらしい、と仄聞したので最近の研究はどうなってるんだろう、という感じで(自分としては過去に一度興味を持ってサーベイして手放したネタではあったものの)読んでみた。「イェルサレムの〜」は自分史上最高の読書体験の1つなんだけど、あのメッセージを誤読することがあるんだろうか、という驚きと世の中での昏い不信を持って読んでみたわけ。「検証〜」のほうは、アーレントというよりもナチズムやヒトラーに関する評価・認識が昨今のA倍時代の歴史修正主義の流れでヘンなことになっていることへの反撃の書になっている。きちんと資料にも当たっていて、歴史研究の重みを感じるし、昨今の歴史修正主義ってこんなにトンデモなんだ、ふーん、という感じで呆れるやら驚くやら。「<悪の凡庸さ>〜」のほうも、どうやら「アイヒマンは普通の市民でただの歯車だった」というトンデモな誤読が広がっているらしく、それを正そう!という田野と久保田の情熱を感じる。その点の評価は2点を通じて非常に高い。
ただ、「<悪の凡庸さ>〜」で明らかになったのは歴史研究と思想研究の間の深くて暗い溝。自分の立ち位置はハッキリと思想研究のほうなので、「悪の凡庸さという言葉が一般に誤読されるようになってきたので、言葉を変えて(「悪の浅薄さ」とかに)再定義したほうがいい」という歴史研究家の意見には全く1mmも賛同できない。誤読するヤツが馬鹿なのか悪意があるのかなんなのか、なので、それをとにかくモグラ叩きのように1つ1つ叩いていくしかないんじゃないか、と思う。その意味でも、紙上シンポでも百木氏の意見は僕の意見と非常に一致度が高かった。そうなんだよ、あれを誤読するヤツが馬鹿なんだ(念の為書いておくと百木さんは馬鹿だとは言ってませんが)。現代文の試験なら0点だね。
イアン・ボストリッジ演奏会
父の一周忌、ということで父が愛したシューベルトのリートの夕べを世界一のシューベルト歌手であるボストリッジで。
ステージに出てきたボストリッジは想像よりずっと背が高い!もっと小柄だと思ったが、それだけスリムってことだ。59歳なんだそうだが欧米人として(まぁ日本人としても)ありえないくらいの痩身。黒のツイードのジャケットに白の開襟シャツ、グレーのスリムフィットのズボンで、いつもオシャレ。伴奏ピアノがスタインウェイのフルサイズで、さらにカバーを思い切り空けているのに、その爆音に負けない歌唱があの痩身から出てくることもびっくり。
曲はシューベルトの歌曲をボストリッジのチョイスで自由にならべた前後半各11曲づつ。新しい「白鳥の歌」というキャッチフレーズも宜なるかな、という感じで調整や歌詞のバランスがとてもよい。出色なのはやはり歌唱で、詩の朗読のようでもあり、一人芝居のようでもあり、オペラティックでもあり、紛れもない「ボストリッジの演奏会」(キャラ立ちまくり)。自分もこれまで何百回と演奏会聴いてきたが、これだけ出演者の個性がいい意味ではっきり立ち上がって伝わる演奏会は極めて稀で、実際類似の演奏会を思い出せない。自分の歴史の中でも極めて印象に残る演奏会で、これは本当にいいものを聴いたなぁ、という幸福感に包まれて帰宅。今年のベストコンサートはもう決まったな。
父のいい供養になりました。