2021年1月12日
ラウラが初めて可変機と初戦闘を行ってから数週間が過ぎ、年が明けた。
その後、可変機能を持つグラージと遭遇する事はなかった。
その間に海兵隊員としてきちんと任を全うしてるが、何処か心の中がぽっかり穴が空いたかのような感覚に陥った。
その頃、地球衛星軌道上では・・・
「オペレーション・ザ・フォー・ホースメン発動!」
「降下目標、ウラジオストク.エリアUー1」
「降下任務航空団、突入!」
「日本列島、朝鮮半島の航空部隊も呼応して目的地に向け出撃しました。」
新統合軍情報局がウラジオストクにて反統合勢力の朝鮮再興軍.
結果は数時間で新統合軍の圧勝に終わり、金正一やウラジミール・
【空母シナノ 吉野大樹執務室】
新統合軍の反統合勢力殲滅作戦の報は大樹にも伝わった。
当然の結果だろうとパソコン内の銀河ネットワークのニュースを閉じ、目の前にいる1人の女性兵士と対談を始めた。
「シュリ・ベルラン少尉、単刀直入で言うが私が転属するアンサーズ中隊の隊員にならないか?」
「大変申し訳ないのですけども、私の実力では吉野副隊長のお役に立つ事が出来ません。」
ゼントラーディ人で元海兵隊員だったシュリ・ベルラン少尉を勧誘するも、あっさり断られた。
腕前もよく文句ない人材だが、シュリ本人は乗り気ではなく断られた。
「どうしてもダメなのか?」
「後、クラビウスと言う環境お気に入りなので銀河転々とするのは嫌ですね。」
「そうなのか」
そもそも実力が足りてない.お気に入りの環境から離れたくないと言っているシュリであったが、明らかに嫌そうな表情を浮かべていた。
もう1人の部下であるリック・ニーヴン少尉も同様な反応をしていた。
「ならば1年前、我が隊に配属される前いや訓練生になる前の同僚で目ぼしい人は居るか?」
「第29海兵隊に・・・ですか?」
「そうだ。まぁ聞くだけだがな。」
シュリは1年前は第29海兵隊に所属していた。
第29海兵隊つまりラウラの同僚であり、同じキヨラ機動戦隊出身の戦友だった。
一期後輩のシュリは戦後長らく海兵隊員としてクァドラン・ローに乗っていたが、地球文明への憧れからマイクローン化し訓練を経てブラックパンサーズ中隊クーガー小隊の一員になっている。
大樹はシュリの第29海兵隊員としての前歴を利用し目ぼしい人材がいないかを確認しようとした。
「今も海兵隊にいると思うんですが・・・」
「誰だ?」
「ラウラ・ベルタリア曹長、ゼントラーディ軍時代からの戦友なんですが・・・」
大樹からの問いに対しシュリはラウラを推薦した。
現在進行形でゲラムの駆るヴァリアブル・グラージに遭遇し人生観が一変しつつあるラウラだが、戦友の1人であるシュリから評価は高かった。
「ラウラは私の1期上の先輩でして・・・・」
ラウラは1998年にゼントラーディ合成クローンシステムにて製造され、直後にキヨラ機動戦隊に配属された所からシュリは話し始めた。
これまでのラウラの戦歴や戦術などを話せる限りの事をなんでも・・・
いろいろと話すシュリだが、大樹はある話に食いついた。
「ラウラはパイロットとしての腕でなく、分隊長でしたが指揮能力も優れています。」
「なるほど、どんな戦術を執ったのですか?」
「僚機にミサイルで牽制し自身は正面から斬り込んだり、時には自身が牽制し僚機でトドメを・・」
「なるほどな。」
ラウラはパイロットの腕でなく、指揮能力も優れておりメフォリアやアンジェミラを指揮していた。
能力が優れているラウラは切り込み隊長として正面から仕掛け、メフォリアとアンジェミラに支援特化させるなどきちんと役割分担をした戦術を取っていた。
これらを徹底させた事によりラウラ達は今日まで生き残る事が出来た。
大樹はもしマイクローン化したらスカウト出来ないかと期待していた。
「でも頭は固くゼントラーディ軍人としてのプライドが高いため、恐らくは・・・・」
現実は残酷だった。
ラウラをアンサーズ中隊にスカウトできるかどうかだが、新統合軍人とは言えゼントラーディ軍人としてのプライドが高いため不可能に近い。
シュリは申し訳なさそうな表情を浮かべながら大樹に正直に伝えた。
「ありがとう、ベルラン少尉。」
「お役に立てずにすいません。」
ラウラがもしマイクローン化したらスカウトしたかったが、無理であるならば仕方がない。
大樹は残念がりつつ、部屋から退出するシュリを見届けた後再度もう一度人材探しに取り組んだ。
【同時刻 太陽系外縁部冥王星】
ケアドウル・マグドミラ級メルトラスは僚艦のスヴァール・サラン級2隻と共に、4隻のピケット艦に護衛されたキルトラ・ケルエール級と合流していた。
「冥王星ケルベロス宇宙軍基地所属.
「ありがとう、
「任せろ、
キルトラ・ケルエール級以下5隻は冥王星衛星ケロベロス基地から来た補給部隊であり、弾薬や修理資材.食料や水などの補給物資をメルトラスに届けに来た。
「こちら第3ヌ―ジャデル・
「頼むぞ、
「へいへい分かりましたよ、
メルトラスはハッチから補給作業の警備ため、ヌージャデル・ガー部隊が出撃させた。
ヌージャデル・ガー隊は艦隊の周囲に展開し、警戒任務に就き艦隊周囲に補給部隊クァドラン・ノナ隊やクァドラン・ロー部隊が展開した。
「・・・・」
「ベルタリア曹長」
「あぁご苦労様。」
補給作業中のメルトラスの廊下で女性兵3人に敬礼したラウラは少し離れた場所でため息を吐いた。
「同胞との戦い・・・先の戦いで見た姿を変えるグラージ・
あれ以来、ゲラムの駆るヴァリアブル・グラージと遭遇していない。
一ヶ月近く経っているが、特に何事もなく日々の勤務に務めていた。
可変する兵器と出会うことも無く、ひたすらはぐれゼントラーディと戦っていた。
「ラウラ大変よ!大変!」
メフォリアとアンジェミラが慌てた様子で駆け寄って来た。
ラウラはジト目で、振り返った。
「メフィリア、それにアンジェミラも一体どうしたの?
「
「へぇ〜」
意味が分からなかった。
VFと言う単語が分からなかった。
メフォリアの言っている事が分からなかった。
トップの実力を誇る部隊なのは分かったが、VFと言うのが何なのか分からなかった。
「初とVF部隊との演習、なんかワクワクするわね」
「そう言えば、VFってなんだっけ?」
ワクワクするメフォリアに対しラウラはきょとんとVFなんなのかを疑問を述べた。
笑顔で話していたメフォリアは一瞬真顔になり、信じられないと言う表情を浮かべ、アンジェミラは飽きれたと言う感じで頭を抱えていた。
「えっ5ターム前に一緒に戦ったじゃない忘れたの?
「覚えてない〜」
「この前、
VFは10年前にボドル基幹艦隊決戦の時に共闘しており、つい最近なんかはシュリがVFに憧れを抱きマイクローン化し訓練生を経て大樹のいるブラックパンサーズ中隊に転属している。
いくら海兵隊とは言えVFは常識単語であり、知らない人はいない。
ラウラのマイクローン文化への関心のなさに2人は驚き飽きれた。
「恋すらしらずのラウラはゼントラーディ軍時代と変わらず。」
「今も昔も私はゼントラーディ軍だ!」
メフォリアは皮肉る事を言うとラウラは今もゼントラーディ軍人だとキリッと答えた。
ドヤ顔してラウラは言っているが、2人は更に飽きれた。
「今は新統合軍軍人でしょう」
アンジェミラは呆れた顔をしながら、ラウラに苦言を述べた。
今の自分達はゼントラーディ軍ではなく新統合軍である。
ゼントラーディ軍人の身分なんて先の大戦末期にとっくに捨てている。
「まぁいいわ、VFは可変戦闘機。
何にも分かってないラウラに情報通のメフォリアは自信満々にVFの説明を始めた。
好奇心旺盛な性格であり、大戦後いろいろな知識を得ているメフォリアはオタク化した。
大戦中のアドクラス艦隊との戦闘の詳細やミリア隊との戦闘の記録の詳細など何でも知っている。
「マイクローンの?どんな形状を?」
「三段階に変形し、通常のファイター。
「変形・・・・・マイクローンの考える事分からんわ」
豊富な知識に基づく説明はラウラに関心を持たせる事に成功し、質問するようになった。
どんな形状をしているかとラウラは質問をし、メフォリアはファイター・バトロイド・ガウォークの3段変形すると応えた。
変形・・・以前見たグラージが使ってた変化だ。
地球人の考えている事が分からんとラウラは呟きながらも、心の中では地球人があのグラージを作ったのではないかと思った。
ゼントラーディ軍は新兵器は作らない、作るのは地球人だけだと・・・
ラウラの推測は当たっており、ゲラムの乗っていたヴァリアブル・グラージは惑星クラストラニアの反統合組織がニューナイル兵器開発工場にて開発された物だ。
マックスとミリア率いるダンシング・スカルにより開発施設は破壊されたが、設計データは分散されて保存しており全銀河にて製造され各地の反統合組織や闇商売人により運用されていた。
地球人の持つ技術と自分達ゼントラーディ人の技術が融合し新たな脅威となっている。
ラウラは地球人に畏怖の念を抱いた。
「で・・・・何故、今更演習を?
ラウラは10年以上、地球人の部隊と演習やってないどころか殆ど共に軍事行動した事が無かった自分達が何故今頃VF部隊と演習するのか疑問に思った。
何故、今になって自分達演習するのかは意味が分からない。
「人手不足なんじゃないのかしらね、
「製造じゃない・・・・・」
「ずっと裏方中心にやってきた私達は後回しにされ、
先の大戦末期のゼントラーディ軍の総攻撃で人類の大半を失った事により人手不足に陥っていた。
新統合軍は大規模な軍拡を行なっていたが、それでも人手不足を補えず模擬戦はVF部隊や一部の海兵隊に優先されラウラ達が所持する第29海兵隊などの末端の部隊は後回しにされていた。
今回、ようやく余裕が出始め第29海兵隊に演習する機会がまわってきた。
「っで・・・・何処の部隊だ?」
「知ってるのはSVFー31ホークス、マイクローンの海兵部隊よ」
「相手も海兵なのか、中々面白そうだな」
「まぁその他部隊も参戦予定らしいわ。」
演習に参加する予定の部隊は海兵隊VF部隊の一つであるホークス中隊を始め地球圏各地から集められた精鋭部隊ばかりであった。
移民船団や植民惑星所属部隊は参加しておらず、地球や月面を始めとする太陽系防衛を担う部隊のみが参加を許されていた。
「でも負ける気がしないな、
「
「エースのミリアがマイクローンの兵器に負けた・・・
ラウラは変形するグラージにリベンジを果たすため器量を上げる努力をしており、太陽系各地のVF部隊に負ける気がしないと言えるほどの自信を持っていた。
アンジェミラがさらっとミリアがマイクローンの兵器に負けた事実にラウラは満足そうに笑った。
笑っているラウラだが、ミリアが負けた相手が天才エースマックスであり、自身の実力よりも圧倒的上だと言う事実はこの時まだ知らなかった。
「笑ってていいのかね?」
「なんで?エースのミリアを地に落とした機体だよ、
「
「それは・・・・ん・・・」
ラウラは今馬鹿にしているミリアより技量は劣っているので笑える話ではない。
ゼントラーディ軍時代目の敵にしてはいたが、ミリアに匹敵するほどの実力はなかった。
戦友に指摘されたラウラは気まずそうな表情を浮かべながらも何処か不満を抱いた。
「キヨラ隊長を強く慕っているラウラ・
「なんだそれ?」
「マイクローンの言葉で、
「私がそれ?」
「まさにそれよ・・・・」
物知りであるメフィリアはラウラを猿も木から落ちると言う諺を使って皮肉った。
ラウラは猿という動物は当然知らないのでメフィリアに言葉の意味を聞くと、分かりやすく自信満々のエースが油断して名も無き兵士に撃墜されると答えられ顔を赤くした。
いくら油断しても名も無き兵士なんぞにやられんぞと
「まぁラウラも、
「VFに乗りたくなって、転属希望しマイクローン化〜
「茶化すな、
「強がっちゃって」
「強がってない!」
ラウラがVFにボロ負けして性能に驚きマイクローン化し転属してVFパイロットになるのではとアンジェミラに茶化されたが即座に否定した。
まだまだクァドラン・ローは現役で戦えるし乗り換える必要はないと思っていた。
とは言え本音を言えばラウラは変形する兵器に乗ってはみたかった。
ヴァリアブル・グラージの柔軟な動きを見たり、見たことのない戦術に興味があった。
クァドラン・ローはまだまだ戦えるが、もしVFと言うのが予想以上の性能であればマイクローン化し隊を離れてパイロットに志願するのも悪くないと思っていた。
表沙汰で言えないのはゼントラーディ人が故のプライドからであり、本音を素直に言えない。
「まぁ実際にやってみて考えてみたらどうかしら?」
「実際にやってみて考える・・・・」
「実際にやらなくて、見下すのはよくないよ。
「ぬぅ・・・・・ 」
「
ゼントラーディ人のプライドと自身の本音の狭間で悩むラウラの姿を見てメフィリアは助言した。
実際にやってみて考えてみてはどうか?・・・と
物事には実際やってみないと分からない事が多い。
人々は根は保守的であり、新しい事に挑戦する事を躊躇うどころか拒否し見下してしまう。
- 実際にやらなくて勝手に否定していいのか?
- やらなくて見下してもいいのか?
- 実際にやらなくて物事の価値を勝手に決めていいのか?
人類はまだ幼いが故に物事の価値をやる前に決めてしまいがちである。
その点は地球人もゼントラーディ人も変わらない。
メフィリアの助言を聞いたラウラは確かになと理解し、無意識に心境の変化が生じた。
「VFに・・・負けたミリアって生きてるのか?」
ラウラはメフィリアにVFに負けたミリアの生死について確認した。
ゼントラーディ人の常識的に負けたは死を意味する。
負けたとなるとミリアは戦死したと言う事になる。
質問を聞いたメフィリアは呆れた顔をして言葉を発した。
「あのエースのミリアが死ぬはずないでしょ、
「ミリアがVFのパイロット!?」
「噂じゃ特殊部隊やってるそうよ」
「ヤック・デ・カルチャー」
ミリアは生きており今もVFパイロットどころか特殊部隊の一員として全銀河規模で活躍している。
まさかの発言にラウラは思わずとても恐ろしいと思ってしまった。
思い出せばミリアがマイクローンスパイになり、マイクローンの艦に潜入した事があった。
食事の席でミリアの悪口を言ってた時、ミリアの部下達と乱闘騒ぎを起こした事があった。
ミリアは生きてたな・・・今でも・・・
「とりあえず、VFの演習次第で」
「何が演習次第で?」
「何でもない!」
「まぁその演習で戦えばいつぞやのグラージに勝てるかもよ」
「うっさい」
VFと戦えば何か分かるかもしれない、これからの自分がどのように生きればいいのかと・・
ラウラはヴァリアブル・グラージと戦った時、衝撃が大きかったし価値観に変化が生じていた。
VFと戦えば人生を大きく変える切欠になると考えており、演習を楽しみにしていた。
ただこれは今までの自分の否定、戦友との別離を意味しておりメフィリアとアンジェミラに正直に話す事に躊躇いがあった。
【西暦2021年1月15日】
【新統合宇宙軍クラビウス基地白川秀康提督執務室】
この日、茂人は単身.基地司令部の白川提督の執務室を訪れていた。
最初は仕事の話とは関係なくお茶と菓子を食べながら趣味の話をして場を和ませていた。
「いよいよ、最終段階だな。桐原少佐」
「はい、何とか人員はほぼ確保しつつあります。」
ある程度趣味の話が落ち着くと本題に入った。
本題であるアンサーズ中隊の人員確保の話である。
茂人曰く人員確保の面はある程度スムーズに確保が出来ており、茂人・大樹体制である程度の小隊が編成するに至っている。
「人員不足もある中で、優秀な人材を集められた事は幸運でした。感謝します。」
「いや感謝するのはこっちさ、出切れば君の妻の桐原大尉も招集したかったが・・・」
「妻はだめですよ、それにただでさえ迷惑かけてるし。」
妻の招集の件を軽く断りつつ、人員確保が予想以上に進んだ事に茂人は感謝した。
白川提督の尽力もあってか、過半数の人材を確保する事に成功した。
ただ・・・・・
「吉野大尉、あのマーズウォーズ事件の英雄は元気か?」
「はい、原隊で人員確保してますがうまく行かないそうで・・・」
「まぁ人手不足だし、仕方がないな。」
大樹の方は自分の所属部隊から人材を集めているが、成功してはいない。
エリート街道を歩んでいる大樹だが、頭が堅いと言う弱点を抱えていた。
真面目な性格であるが故に堅物であり、他人とのコミュニケーションが弱かった。
なんせ闇の貴公子と言う異名が言われるほど、近寄りがたい雰囲気がある。
「順調とは言え残りの人材が揃うか心配だな。」
「大丈夫だ、部隊に適切な隊員候補がいたら君に伝えておく」
いくら人員確保が順調とは言え残りの人材が全員確保できるかは不安である。
白川提督は適切な隊員候補見つけたら茂人に伝えるというが、先の大戦が原因の人材不足である今の御時世だからこそ信用ならない。
茂人は信用してないと言う表情を浮かべると、白川提督はニヤッと笑って言葉を発した。
「保険として君を機種転換センターの教官として出向する。」
「はぁ?」
「カゴメ・バッカニア少尉を副官として派遣する。オペレート役は必要だからな」
「・・・・・」
機種転換センターの教官としてカゴメを副官に出向させると・・・・
突然の命令に茂人は呆れるも、何を言っても無駄だと考え渋々承諾した。
承諾しなければ妻のデワントンが代りに招集され、子供たちが寂しい思いをしてしまう・・
白川提督なら絶対にやりかねない。
家族の危機を察した茂人は自ら人柱となり、矛先を向かないようにした。
「家族想いだな、桐原予備役少佐は・・・・」
「そうなのですか?噂では機種転換拒否して。左遷の末・・・予備役編入されたと噂ですが」
「噂じゃないよ、あの第1次星間大戦を生き抜き出世コースを歩むはずが・・・VFー1に拘り機種転換拒否した。まぁバカだよ」
「なるほど、馬鹿ですか・・・」
話し合いが終わりメロディーと2人きりになると白川提督は茂人について語った。
自身が拒否し妻のデワントンが招集されるのを防ぐ為に積極的に命令を承諾する。
これほどまでに使い勝手のいい人材はいない。
聞いていたメロディーは納得してない表情を浮かべながらも茂人の過去の機種転換拒否とそれが原因になって左遷された噂について述べた。
フフと笑った白川提督は噂を事実だと肯定した上で茂人をバカだと評した。
バカだと評したのは、茂人が正直であり与えられた任務は忠実にこなす反面、常識では考えられない発想で行動に移し予想もしない実績を残しているから。
「今回、桐原予備役少佐を招集したのは彼の腕を惜しんだからだ。このまま腐らせるのは勿体ない。だからアンサーズ中隊の隊長として抜擢したんだ。」
「なるほど」
「まぁバカだが、いい戦果を残してくれるだろう。あの地獄を生き抜いてきた猛者だからな」
予期せぬ実績を生み出すバカをスーパー銭湯の店主のままにするのは勿体ない。
せめてビンカーキン少佐との計画の橋頭堡となる1年間はきっちり働いてもらわねば・・・
「まぁどんな結果になるにせよ、いい結果は残してもらいたいものだな。」
「そのとおりですね。」
「我々のためにな。」
この1年間が勝負・・・
茂人が精鋭揃いのアンサーズ中隊を率いてどんな実績を残せるのか白川提督は楽しみにしていた。
どんな結果にせよビンカーキン少佐率いる一派とスポンサーである新星インダストリー社が進めるVFー1の真の後継である次期主力可変戦闘機計画を前進させる結果であれば満足である。
白川提督は茂人を使い次期主力可変戦闘機計画において実績を積み自派閥拡大を目論んでいた。
全ては来たるべき政界進出そして大統領選の為に・・・
【西暦2021年1月16日.クラビウス基地第8格納庫】
クラビウス基地外縁部にある第8格納庫にVFー4ライトニングⅢが飛来した。
左翼が大きく抉られていたが、ガウォーク・ファイター形態に変形した事もあり墜落せずホバリングで第8格納庫まで到達した。
「シナノに帰還せず直で来いか・・」
パイロットは大樹であった。
クーガー小隊を率いてリケトスクレーター哨戒任務中にステルス塗装のSVー52オリョール1個小隊の襲撃を受けた。
激しい格闘戦(ドックファイト)の末に実施したサッチウィーブ戦術の際に攻撃役である大樹のVFー4の左翼とSvー52のコックピットがぶつかる空中接触した。
Svー52と接触撃墜後、直ぐ様ガウォーク・ファイター形態に変形し事無きを得たが残りの2機が逃亡すると言う失態を犯してしまった。
そのままシナノ帰還を目指していたが、茂人からの呼び出しでシュリとリックの2人と離れ指定された第8格納庫に向かった。
「うひぃ派手にやらかしたなぁ。」
「あんたは?」
「自分は第8整備隊.西村陽一曹長であります。」
「俺はブラックパンサーズ中隊.副隊長の吉野大樹大尉だ!よろしく頼むぞ曹長。」
大樹はVFー4のコックピットから降りるとメカニックマン達がやってきた。
整備担当の西村曹長などのメカニック達は大きく抉れた左翼を見て驚きつつも作業に取り掛かった。
「翌日までシナノに帰れない?どう言う事なんだ西村曹長?」
「桐原少佐の命令で一緒に飲むから帰るなら明日にしろだそうです。しかも自宅に泊まらすと・・」
「マジかよ。」
「ついでに言うならばシナノには連絡済みで報告書や副隊長の業務とかは代行者いるのでやらなくていいらしいです。」
呼び出しは今日一日で終わるかと思っていたが、茂人は一緒に飲みたいと言う理由で翌日にシナノに帰還するようにと言われ大樹は唖然とした。
帰ったら報告書とか副隊長としての業務とかやらんといけんのにと頭抱えたが、シナノに連絡済みで報告書や副隊長の業務は隊長のクン・ドユン少佐等々が代りにやるので必要ないと西村曹長は言った。
「まっお言葉に甘えますか」
業務負担が減るし、臨時休暇もらえるようなもんだと解釈し大樹は今この現状を受け入れた。
【月面クラビウスシティー.スーパー銭湯滝の華内.桐原邸】
大樹はいざって時に常備していた私服に着替え茂人と合流し車に乗って基地を出た後、近隣市街地にある桐原邸に到着した。
茂人の経営するスーパー銭湯滝の華の裏手にあり、ごく普通の日本による一軒家であった。
「「「乾杯」」」
「吉野大尉、お疲れ様でした。」
「これはどうも・・・まさか宅飲みとは・・」
「娘達が泊まりだからデワと一緒に飲み会をってね。」
家に到着して早々、茂人の妻デワントンが食事と酒を用意して待っていた。
荷物を置いてそれぞれの席に座ると乾杯し、ビールを飲みながら談笑した。
茂人とデワントンの娘達は同じ市街地に住む親戚の家に遊びに泊まり込んでおり、ゴールデンタイムで宅飲み会が開催できた。
「吉野・・部下をスカウトして失敗して悩んでいるそうだがそんなに気にするなよ。」
「しかし、人手不足だからこそ俺がスカ・・・」
「その辺は白川提督がきっちりやってくれる。吉野は今いる部隊での業務に専念し後任に引き継ぎしておけ。」
ブラックパンサーズ中隊でスカウト活動していた大樹に茂人はあまり気にするなと言っておいた。
人材確保は白川提督が強いバックアップがあり、人員はある程度確保できている。
それに・・・・
「一応、部隊正式配備での間.機種転換センターに教官として出向し人材を見つけてくる。」
「少佐お一人で?」
「カゴメ・バッカニア少尉と言う方も副官で行くそうよ。まぁ茂人が浮気しない人だから安心だけど。」
「はぁ」
機種転換センターに教官としてカゴメと共に出向し訓練生の中からいい人材を発掘すればいい。
訓練生とは言え元は別機種に乗ってた兵士であり、エースパイロットの腕前を持つ者もいる。
VFの操縦技術と元々優れたパイロットの素質を合わせれば求めている人材が見つかる。
話を聞いた大樹も茂人とカゴメが教官として機種転換センターに行けば部隊の隊員として適したいい人材が見つかる可能性が高まると期待した。
とは言え男女2人なのでデワントンがどう思うのか不安に思ったが、胸を張って浮気するような人じゃないと言ってるので杞憂に終わった。
「所で少佐・・・」
「ん?なんだ?」
「部下のシュリ・ベルランからなんですがもし機種転換したらいい人材がいるそうです。」
「誰だ?」
「ラウラ・ベルタリアと言うんですけども。」
大樹はビールを飲みながら茂人にラウラの事を報告した。
第29海兵隊に今もなお所属しはぐれゼントラーディとの戦闘に明け暮れているラウラを本来報告しても意味がないのだが、教官として出向する茂人に今後を見据えて話しておかねばと考えた。
「機種転換したらの話だろ?それに海兵隊、意味ないじゃないか・・・」
「そうですけども、念には念を・・」
「念には念をねぇ、入る確率はないだろ。」
大樹から話を聞いた茂人は少し声を荒らげながら叱った。
いくら報告したからってラウラが機種転換し訓練過程を終えて卒業し部隊に配属される訳では無い。
これからもずっと海兵隊員として戦っていくかもしれないし、マイクローン化し転属しても必ずクラビウスに来るわけでもない。
「ラウラ?ラウラ・ベルタリアか・・・生きてたんだ・・・」
「大尉知ってるのですか?」
「知ってるも何もよく知ってるわ。」
生春巻きを食べながら話を聞いていたデワントンがラウラと聞いてぴょこんと割り込んだ。
デワントンは元ミリアの副官であり、ラウラの事を知っててもおかしくはない。
「ラウラ・ベルタリア3級空士長、キヨラ・ディーヴァの機動戦隊の隊員でよくうちらに突っかかる動物で言えば猫みたいな感じな娘よ。」
「猫みたいな娘?」
「ミリア1級空士長の事を一方的に宿敵視し問題起こしてたわ。乱闘騒ぎ起こした事あるし。」
デワントンはゼントラーディ軍時代のラウラの事を話した。
ミリアに対し宿敵視し問題を起こすのは日常茶飯事で、時には戦友と共に乱闘騒ぎを起こすなど大樹や茂人は想像もしてなかったのか絶句した。
「う~む、うちの部隊にもし加えるならば考えものだな。」
妻デワントンが話したラウラの詳細を聞いた茂人はもしVFパイロットになり部隊隊員の候補にするかは消極的な態度を取った。
「教官になるんだから教えたら軍人として地球の人間として・・・・」
「そうだな。」
ラウラは戦争しか知らず戦闘以外の楽しみを知らない典型的なゼントラーディ人だ。
機種転換センターの教官として勤務し、ラウラが候補生としてやってきたら1から10丁寧に軍人としての礼儀や地球人の振る舞いを教えればいいとデワントンは茂人に提案すると深く考え込む。
「少佐、バッカニア少尉が秘書官としているならば問題ないでしょう。バッカニア少尉にベルタリアを指導させる事を提案します。」
「バッカニア少尉?」
「同じ女性であればもしかしたら打ち解け心開き最低限の礼儀や常識が身につくのではないでしょうか?」
大樹は茂人の秘書官として出向するカゴメに着目し、ラウラと接すれば心を開き礼儀や常識が身につくのではと言う事で指導させるように提案した。
「いいかもしれないな。」
「相性合うかどうか分からないけど、いいかも。」
大樹の提案した案は茂人・デワントン夫妻が気に入り無事採用された。
だがこの案はあくまでもラウラがマイクローン化し転属しクラビウス基地の機種転換センターに訓練生として入ってきた時に機能する話で、それまでに人材が見つかれば廃案になる。
一種のギャンブルみたいな賭けだが、保険として
【同時刻・新統合宇宙軍総司令本部月面アポロ基地】
新統合宇宙軍総司令部が置かれている月の裏側アポロ基地から1隻の軍艦が出港した。
その名は新統合軍特務部隊シーアンタレス所属.アルゲニクス級特務艦サドワラである。
僚艦であるオーベルト級コル・スコルピイとカントーの後ろを追尾し目的地に向けて出発した。
「新統合宇宙軍参謀本部より命令、第4独立戦隊は冥王星にて実施される演習に参加せよ!宇宙軍総司令官ブリタイ・クリダニク.参謀本部長真里谷信保.以上。」
「「ハッ」」
シーアンタレス隊は宇宙軍総司令部から冥王星にて実施される演習に参加するように命じられた。
特務部隊らしい任務ではないが、腕慣らしになるので皆やる気満々だった。
「絵理、相手はクァドラン・ロー有するから油断しないでね。」
「分かってるわ・・・クァドラン・ローはかつての愛機だったから尚更。」
ベレー帽を被った若い士官が絵理と呼んだ隣にいた同じくベレー帽を被った緑のショートヘアをした女性士官に演習にクァドラン・ローがいるから油断しないよう忠告した。
落ち着いた表情を浮かべクァドラン・ローがかつての愛機だから分かっていると言った。
「星村和也大尉、星村絵理中尉・・・アポロ基地からの直掩機帰投します。」
「御苦労と伝えてくれ。」
「了解。」
若い士官の名は星村和也、シーアンタレス隊の隊長である新統合軍大尉である。
隣りにいる緑色のショートヘアの女性は星村絵理、シーアンタレス隊の副隊長を務める新統合軍中尉で和也の妻である。
2人は艦橋の窓から艦隊から離れるルナガードのVFー3メデューサを敬礼しながら見送った。
「クァドラン・ローかぁ元ミリア機動戦隊の一人として腕がなるわね。」
絵理は日系人どころか地球人ではなかった。
結婚する前はモーア・カリダムと言う名前で、元ゼントラーディ軍ミリア機動戦隊に所属していたゼントラーディ軍人であった。
元気っ子で戦闘好きであり上官であるミリアに対してタメ口で話すなど問題児であるが、腕前はミリア機動戦隊次点という高い実力を誇っていた。
「星村中尉、お疲れ様です。」
「御苦労、私の愛機の整備はどう?」
「ばっちりです。スタークルセイダーも最新鋭機に負けないほどの性能発揮できますよ。」
戦後はマイクローン化しVFパイロットとなりオセアニア方面に配属、その後一条輝らと共に月面アポロ基地に出向しVFーXー4のテストパイロットの一人になった。
そこで和也と出会いそのままアポロ基地に転属し、お付き合いをし結婚に至った。
「星村中尉、また機体見に来たんですか?」
「いけない?愛機見に来てはダメ?」
「いえ折角の演習までの休みなので星村大尉・・」
「ミアン・・・・和也は今仮眠中、それに好きでやってるから。」
結婚後、5人の娘を授かったり玉の輿に乗るなど順風満帆に生活を送っており夫婦関係も良好だ。
軍務に携わる中でゼントラーディ軍時代では味わえなかった事を数多く体験するなど充実していた。
絵理が副隊長として頑張ったお陰で業務が進んだり、厳しい戦場を生き延び成果をあげるなど和也から見れば幸運の女神であり何より一緒にいてくれるだけでも楽しい存在であった。
仕事や家庭などそれぞれの欠点を補い、幾度も厳しい困難を共に切り抜けてきたので、戦友でもありライバルでありそして大事な家族と強い絆で結ばれていた。
「中尉、ロイ・フォッカー勲章また受章したんですね。」
「まぁね、殺した相手の名を冠した勲章を何度も貰うのは正直心苦しいけどね。」
幸せな生活を送る絵理であったが、第一次星間大戦の戦闘でロイ・フォッカーに致命傷を与え死に追いやった。
死に追いやった絵理だったが、戦後ロイ・フォッカー勲章が出来ると何度も受章した。
その度に複雑な心境になるし、心苦しかった。
「戦争だから仕方がないけど、殺した相手の名を冠した勲章もらっても虚しいだけなんだけどね。」
「そんなまた・・・・軍上層部もそれだけ中尉の事を高く評価してくれてるんですよ。」
「そうかな〜」
新統合軍上層部は日々の絵理の活躍を和也と共に評価しており、チタニウム勲章とロイ・フォッカー勲章を何度も授けていた。
受章する度に絵理は心苦しい思いに駆られていた。
「演習・・・・どんな奴がいるんだろうね?」
とは言え持ち前の明るさや負けず嫌いな性格もあってかポジティブ思考であり、すぐ気持ちを切り替える事が出来るのでいつまでも囚われる事はなかった。
絵理は自分の愛機であるVFー3000クルセイダーを見て演習で現れるであろう第29海兵隊に所属する強敵を楽しみにしていた。
その強敵の中にかつてゼントラーディ軍時代に乱闘騒ぎを起こした事のあるラウラがいるとは、この時思いもしなかった。
次回予告
ついに始まる第29海兵隊とVF部隊による合同演習。双方はお互いの実力を出し切り模擬戦を行う中、ラウラはVFの実力に強い衝撃を受ける。
次回 マクロス外伝青い髪のメルトラン
【アンタレス・ザ・タイム】
戦火の宇宙を駆け抜けろ!クルセイダー!
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