【西暦2021年1月30日】

【月面.東の海周辺中域】

スヴァールバルサラン級2隻からなるはぐれゼントラーディ軍は艦載機計54機からなる大部隊を展開させ、ラウラ達の艦隊に迫った。

 

VFー4ライトニングⅢからなる護衛部隊であるマナット中隊はレーダーの反応のあった方向へ迎撃に向かっていき、戦闘状態に入った。

 

レフトウィッチは露天繋止してあったデストロイド・ドーントレスを直掩として出撃させ、護衛艦シンプソンとハシダテからもデストロイド・ドーントレス部隊が出撃していった。

 

S.M.Sもマヤン級輸送艦アブサランを守るようにオーベルト級宇宙駆逐艦ヒュドラとガリアが前に出て、護衛のVFー1A初期型2個小隊が展開しアブサランの甲板に新星インダストリーの警備隊のデストロイド・シャイアンが防空任務に就いた。

 

更に砲台代わりにプロトタイプ・モンスター3機が各所に展開し、スヴァール・サラン級に備え砲撃態勢を取りつつアポロ基地やクラビウス基地そして各地の新統合軍部隊にSOS信号を出した。

 

「カゴメ!この艦に私が乗れる機体はないの?」

 

「ラウラ、まさか出撃するつもり?」

 

「戦場で死ぬのは誉れだけど、こんな死に方誉れじゃない!この艦に出せる機体があれば使わせて!」

 

ラウラはカゴメに出せる機体がないか確認した。

 

つい最近まで死に場所を求め戦い続けてきたラウラだったが、機体に乗らず軍艦の中で何も出来ないまま死ぬ事だけは絶対に嫌だった。

 

「冗談言わないで!連絡機にVFー1Dはあるけど、操縦の事知らないでしょ?」

 

「ゼントラーディ語のマニュアルなるものがあれば出来る!」

 

「それでもダメなものはダメ!」

 

一応レフトウィッチには連絡機にVFー1Dバルキリーが配備されており、自衛用にミサイルやガンポッドなど戦闘機に相応しい最低限の装備が備わっていた。 

 

だが、ラウラはVFに一度も乗った事がなく操縦方法が分からない。

カゴメは法律面や技量面を考慮し必死に止めに入った。

 

「それでも私は行く!」

 

「ちょっと待ってラウラ!」

 

ゼントラーディ人としての血からなのか、誇りからなのかカゴメを振り切り更衣室へ向かった。

 

ラウラは女性更衣室に入ると、近くにあったパイロットスーツを強奪した。

自分の身長に似た物をたまたま見つけ出し、制服を脱いでパイロットスーツに着替えた。

ファスナーを締めようとしたところ、カゴメがドアを開けた。

 

「勝手に出撃は重罪よ!何を考えているの!?」

 

「カゴメはこのまま黙って死ねとでも言うの?」

 

「死ぬと決まったわけじゃない!」

 

「死なないと決まったわけじゃないか!私は戦わずに死ぬのは嫌なのよ!」

 

このまま出撃すればラウラは機体強奪による重罪であり、VFパイロットになるどころか警務隊留置所生活を送る事になってしまう。

最悪な場合、軍籍剥奪により職を失う事になる。

 

「いい加減にして!」

 

ラウラはカゴメに思いっきり平手でビンタされた。

 

「どう見ても死に急いでいるようにしか見えないわ。軍籍剥奪により職を失うのはまだいい、でも操縦方法を知らないでしょ!」

 

「私はゼントラーディ軍のエースだったんだ!なんとか・・・・・」

 

「ふざけないで!いきなりやって出来る程甘くないわ!」

 

出会って間もないが、カゴメがここまで怒ったのを初めて見た。

泣き出しそうなのを我慢して、自分自身の身を案じて怒っているのが言葉から伝わってくる。

 

自分の為に心配してくれる人は初めてだった。

 

製造されてきて真剣に心配してくれる人は今まで、誰もいなかった。

戦友と言えどもそこまで心配してくれる事はなかった。

 

だが

 

「ごめん、カゴメ・・・・甘くないのは分かっている。」

 

「なら・・・・」

 

「でも、それでも戦いたい。軍人として何をするか見つけるために・・・」

 

戦わければここまで親身になって心配してくれるカゴメを死なす事になる。

確かに甘いかもしれない、それでも戦わければ自分の命どころか多くの人を失う。

 

同じ志の者から何から全部、それだけは絶対に嫌だ。

 

今のラウラが述べた本音は嘘偽りもない。
 

「カゴメ?」

 

「VFー1Dは複座型、私も乗ってサポートするから乗りなさい。」

 

「それじゃ重罪に・・・・」

 

「別にいいわ、私も黙って貴女を死なせない。」

 

ラウラの本音を聞いたカゴメは少し諦めた表情を述べると制服を脱ぎ始め、下着姿になるとロッカーから自分のサイズに合ったパイロットスーツを探し着始めた。

操縦方法が分からないラウラを自身も乗ってサポートして支えるしかない。

 

当然、パイロットじゃないかつ重罪のでラウラから心配されるが覚悟を決めている。

 

パイロットスーツに着替え終わるとラウラとカゴメはVFー1Dのある場所に向かった。

 

 

戦闘は一進一退の攻防を繰り広げていた。

マナット中隊とS.M.Sのオルペウス小隊とベロボーグ小隊が前衛、艦隊直掩にデストロイド・ドーントレスとVFー1Dの混成部隊が務めていた。

 

数の上ではゼントラーディ軍部隊が優勢であったが、新統合軍とS.M.Sの連合軍は機体性能や練度が高い為善戦していた。

 

ただ・・・・

 

「反応弾がないから敵艦を仕留められない!」

 

「艦載機を抑えたとしても艦を沈められなければ意味がないぞ!」

 

「艦砲射撃を喰らえば我が艦隊は・・・」

 

反応弾を装備してないが故にスヴァール・サラン級を撃沈するには火力が足りない。

そればかりか、艦砲射撃も強力でありオーベルト級ヒュドラが蜂の巣になり撃沈されていた。

 

僚艦ガリアが撃沈されたヒュドラの穴を埋めるべくアブサランの盾となりながら、奮戦するもスヴァール・サラン級の圧倒的火力に押され気味だ。

 

「レフトウィッチを沈めさせるな!送り狼を我が艦の意地に賭けて通すな!」

 

護衛艦オーベルト級ハシダテとシンプソンはラウラ達を乗せたレフトウィッチを守るように必死に防戦を展開していた。

直掩のドーントレスと共に防戦した結果、レフトウィッチは無傷であった反面ハシダテとシンプソンはボロボロであった。

 

「うわぁぁぁぁぁ」

 

直掩としてオーベルト級各艦から発進したVFー1Dの1機が艦砲射撃に巻き込まれ爆散した。

爆発の余波はハシダテに影響を与え対空防御が鈍った。

 

VFー1Dとドーントレスが必死で防御に当たるも損害が増える一方だ。

 

「ロイエンタール少佐、どうなりますかね?」

 

「相手は死兵と化してるから生きて帰れるのは五分五分だな。」

 

レフトウィッチのブリッジにて戦闘の様子を見ていたロイエンタールは冷静に今の戦場の状況を分析していた。

善戦しているとは言え既に帰る場所を失った事により死兵となっており戦意が高いため、最終的にどんな結末を辿るのか分からない。

 

「ん?我が艦のVFー1Dが出撃してないがどうした?」

 

「おかしいですね、まだ係留されたままだ・・・・・」

 

レフトウィッチに係留されたVFー1Dが動いてない。

 

ブリッジ要員はVFー1Dのパイロットが被弾した際に戦死した事に気がついておらず、戦闘中なのに動かない事に疑問を感じていた。

パイロットが戦死している為、VFー1Dは当然動かない。

 

オペレーターがVFー1Dに向け呼びかけようとしたが、邪魔が入った。

 

「艦長、北東よりIFFのない3機の機影確認!」

 

「はぐれゼントラーディか・・・・」

 

「これは・・・・Svー51Ωです!更にアタッカー2機!」

 

レミア率いる反統合ゲリラの航空戦隊が戦場に乱入してきた。

 

反統合ゲリラ航空戦隊は新統合軍とゼントラーディ軍.両軍に攻撃を仕掛け次々と撃破。

攻撃目標であるアブサランに向け突撃した。

指揮官であるレミアの駆るSvー51ΩはS.M.Sオルペウス小隊を殲滅し、オーベルト級ガリアの艦橋の前に出てガンポッドを構えた。

 

「おぉぉぉ」

 

ガンポッドでガリアのブリッジを破壊し、エンジンを破壊。

コントロールを失ったガリアは月面の重力に引かれ、墜落し爆散した。

 

レミアはそのまま近くにいたリガードやヌージャデル・ガーを撃墜し、アブサランへ向かいドーントレス部隊が守る防衛線の突破を試みた。

 

「ラウラ、私が後部座席から操縦方法教えるからその通りに動いていい?」

 

「うん、死にたくない死なせたくないからねしっかりやるわ。」

 

レフトウィッチの甲板ではラウラとカゴメが係留されているVFー1Dに乗り込もうとしていた。

不用心にもコックピットが開いており、いつでも出撃が可能であった。

 

コックピットに乗り込んだラウラはクァドラン・ローと違う操縦系に驚きつつ、まるで子供であるかのように胸がときめいた。

 

「これがマイクローンの兵器なのか・・・・」

 

「こちらグリップ1、302番機何故発艦・・・・えっ!?」

 

「あのぉ・・・・・ごめん!」

 

胸がときめいていたのも束の間、ブリッジから発艦の催促の通信が入り背筋が凍りついた。

今やっている事は正規の軍事行動ではなく、違法行為。

 

背筋の凍りついたラウラは強引に操縦桿を握り係留ロープを引きちぎりレフトウィッチから離れた。

 

 

 

「艦長、302番機強奪されました!」

 

「なんだと!?」

 

「我が艦から離れます!」

 

レフトウィッチから離れたラウラ達は強奪者扱いをされた。

 

咄嗟の行動とは言えVFー1Dに勝手に乗り込んでいる時点で軍規違反を犯しており、主犯であるラウラは勿論共犯であるカゴメも処罰の対象だ。

VFー1Dはレフトウィッチから離れつつ戦場へ向かい友軍部隊と合流しようとしていた。

 

「こちらグリップ1から302、直ちに帰還せよ!貴官の行為は立派な軍規違反である!」

 

「302からグリップ1、クラビウス基地のカゴメ・バッカニア少尉です。今訳あって出撃してます!」

 

レフトウィッチから帰還命令が出た。

いくら戦闘中とは言え、軍規違反を見逃すわけにはいかない。

 

オペレーターからの帰還の催促にカゴメは説明しようと返答した。

今更説明しても無駄だがしないよりかはマシそう判断したが、オペレーターからある質問が来て青ざめた。

 

「正規のパイロット・・・ホルデ少尉はどうしたんですか?」

 

「それは・・・・・」

 

本来のパイロットであるホルデ少尉の事を聞かれた。

当然、カゴメはホルデ少尉の事を知らないので不味いと言う表情を浮かべ、ラウラは戦死したパイロットスーツ姿の兵士の事を思い出した。

 

目の前で死んだあいつがホルデ・・・・本来のパイロットか・・・

 

今乗っているVFー1Dは本来はホルデが乗るはずだった。

だがそのホルデはもういない。

 

「ホルデと言う奴は私の目の前で死んだ・・・・以上」

 

「それはどう言う意味ですか?302番機?302番機?」

 

ラウラは素直にホルデが死んだと答え、通信を無理やり切った。

死んでしまった以上、どうしようもないこれ以上の説明は必要ない。

説明したところで何も変わらないし、意味がない。

 

「艦長・・・ダメです・・・302戻りません・・・・どうします?」

 

「撃墜しろ!」

 

対応が悪かった。

 

今のラウラの一連の対応は艦長以下、レフトウィッチ乗員に不信感を抱かせ脱走兵として各部隊に向け撃墜命令を下そうとしていた。

ホルデが死んだと言うのはVFー1Dを奪うために殺害した。

ラウラは反統合系ゲリラのスパイで、カゴメは共犯であると。

 

艦長は部隊にラウラ撃墜命令を出そうとしたが・・・・

 

「いや待て!」

 

「ロイエンタール少佐・・・・」

 

「今は戦力がいる。それに302が今まで出撃してないのはホルデ少尉が艦が被弾した際に戦死したんだろう。ホルデ少尉亡き今、あの無断出撃者がいる・・・・」

 

「しかし・・・・」

 

「今の行為を不問にするのはどうかと言いたいのだろう?愚か者め、今はこの状況をどう切り抜けるかが重要だ!軍法会議に処するかは今考える事ではない。」

 

戦闘中でありレフトウィッチもいつ撃沈されるか分からない状況にある中で、様子を見ていたロイエンタールが異議を唱えた。

ここでレフトウィッチを撃沈されたらVFパイロットとなる人材を多く喪失する事になる。

艦長はここで不問にするのはどうかと反論しようとするも、ロイエンタールは正論を唱え黙らせた。

 

「また通信・・・・」

 

「ラウラ・・・・出なさい、流石にまずいわ。」

 

「うん・・・・・・」

 

友軍と合流を目指すラウラの302番機に再び通信が入った。

 

既にレフトウィッチに不味い印象を与えている為これ以上自分の立場を危うくするわけにはいかない。

通信を無視するよりも素直に応対し、自分達は仕方がない事情で出撃している事を伝える必要がある。

 

カゴメの深刻そうな声を聞いてラウラはあっさり命令に従った。

 

先ほどの対応で自身の夢を断つような真似をしており、カゴメからきつい言葉で叱られた。

相当堪えており、いつもの勝気な性格も鳴りを潜めていた。

ラウラは応答するため通信モニターをONにした。

 

「はいこちら302・・・・・」

 

「302番機・・・・ラウラ・ベルタリア曹長は君か?」

 

「はい・・・・」

 

「私はクラビウス基地人事局ヴィルフリート・フォン・ロイエンタール少佐だ!君に命令を出す。」

 

「今回の件は不問にする、曹長は我が艦隊の防衛任務に当たれ!」

 

「でも私達は軍規に違反しているんですよ?」

 

「今は戦場だ・・・今気にしている場合ではない。」

 

通信の内容は思っていた物とは程遠かった。

VFー1D無断使用の件を不問とし艦隊の防衛任務に従事せよと。

 

命令違反を犯し重大な処罰が下されると思っていたラウラとカゴメは驚いた。

無断出撃による脱走の罪で処罰されるのが当然なのに不問にする。

なんて寛大な処置だと思った。

 

ラウラは軍規に違反しているので寛大な処置を丁寧に断ろうとしたが、今は戦場でいつどうなるか分からない環境なので気にするなとロイエンタールに言われた。

 

「アンノントループ・・・・シンプソンに目掛けて接近中!」

 

「援護に行ける機はないのか?」

 

「ダメです・・・・・ドーントレス隊も過半数やられており防衛網は機能しません。」

 

直後、Svー51編隊が護衛艦シンプソンに向けて攻撃を仕掛けようする報告が入った。

 

ハシダテは数分前に満身創痍になり戦線離脱中であり、頼みのVー1D部隊全機喪失・ドーントレス隊も過半数が喪失し防衛網はほぼ機能しておらず残存機はレフトウィッチ防衛に専念しかできないありさまだ。

マナット中隊はゼントラーディ軍艦載機部隊を抑えるのがやっとどころが徐々に追い込まれており、部隊の4分の1が戦闘不能に陥りいつ壊滅してもおかしくない状況だ。

S.M.Sの護衛飛行隊は既に全機喪失、全員戦死と艦隊はもう風前の灯火と化した。

 

「ベルタリア曹長、お前しかおらん。シンプソンを防衛しろ!」

 

「拒否権はないんですよね?」

 

「今のお前には・・・な。」

 

「エスケスタ、ただちに急行します。」

 

撃沈の危機に瀕しているシンプソンを防衛するように命令されたラウラは操縦桿を握り急行した。

拒否権は当然存在しない、ラウラはただロイエンタールの命令に従うしかない。

 

不問にされたからと言ってラウラとカゴメは無罪放免になるわけではないが、ただ生き残る為に必死に働くしかない。

今のラウラにそれ以上の選択肢は存在しないのだから。

 

「レミアが物を入手する前に退路を確保する、セルゲイ・・・・・お前はもう一つの艦をやれ!」

 

「ダー!!(了解)」

 

レミアが駆る僚機のSvー51は退路確保する為、レフトウィッチの僚艦に狙いを定めた。

第一目標は懸命に防戦中のシンプソン、第二目標は戦線離脱中のハシダテ。

この2艦さえ沈めばレミアが目的を達し脱出する際に逃走が容易になる。

 

早めに沈めないと新統合軍の増援部隊が到着し逃走は困難を極める。

 

シンプソンに狙いを定めたSvー51は対空防御網を突破し、ブリッジに狙いを定めようとしていた。

 

「よし!もらった!」

 

「やらせない!」

 

 

シンプソンのブリッジの前にラウラが駆るVFー1Dが立ち塞がった。

 

無断出撃しているラウラは何処の部隊に所属しておらず、実質ロイエンタール指揮下の兵と化していた。

バトロイド形態に変形し、ブリッジを狙うSvー51を迎撃した。

 

「新統合政府の飼い犬が1匹前が出ようとも防ぎきれると思うな!」

 

Svー51のパイロットは統合戦争からのベテラン兵であった。

祖国が地球統合政府により敗北し滅亡しており、10年経った今でも復讐の念を抱いて戦っていた。

 

生誕してから戦いエースの地位に相応しい実績を持っているとは言え、正規のVFの訓練を受けていないラウラは素人同然であり、しかも1機でベテランのゲリラ兵の駆るSvー51に挑むのは無謀である。

支援攻撃に徹していればまだ勝ち目はあったかも知れない、だが今のラウラの周囲にいるのはドーントレス隊とシンプソンのみ。

 

生きるか死ぬかの行く末はラウラの腕に委ねられていたが、VFパイロットの技能と経験の差は早々埋められない。

 

「飼い犬は飼い犬らしく愚かな飼い主と共にしねぇ!!!」

 

「あぐっ・・・・・」

 

歯を食いしばりながらラウラはSvー51の猛攻に耐えていた。

 

空戦を得意とする遺伝子を持つメルトランであるラウラだが、ベテランパイロットの駆るSvー51が駆使するドックファイトは不慣れだ。

エースの技量を持つラウラとは言え苦手分野で戦うのはごく普通の兵士より少し上の技量しか発揮できない。

 

苦戦を強いられるラウラの姿を見たカゴメはある事を伝えた。

 

「ラウラ!ヒットエンドラン!」

 

「ヒットエンドラン?何それカゴメ!?」

 

「一撃離脱、攻撃を加えたらすぐ逃げて再度反撃して!」

 

一撃離脱戦法(ヒットエルドラン)

 

目標となる敵に一撃を与えそのまま離脱し、それを繰り返す戦術である。

歴史は古く紀元前パルティア王国の騎馬戦術パルティアショットや78年前の米軍による格闘戦術に優れる日本軍の零戦対策など、様々な戦場で登場した。

 

格闘戦に優れるSvー51と戦うにはこの戦術しかない。

 

「でも・・・・」

 

「クァドラン・ロー!クァドラン・ローを思い出して!」

 

「クァドラン・ロー!?」

 

一撃離脱戦法を駆使し数々の敵と戦ってきたラウラだが、一撃離脱戦法と言う名前を知らずに困惑していた。

戦術の内容を聞いても必死にSvー51の攻撃を防いでいる為頭に入らなかったが、クァドラン・ローの単語を聞いて一瞬で理解した。

 

「エスケスタ(分かった)」

 

理解してからのラウラの動きが変わった。

長年愛機として駆って戦ってきたクァドラン・ローの動きを思い出し今操縦しているVFー1バルキリーの特性を理解した。

クァドラン・ローのパイロットとしての経験を活かせば十分に戦う事が出来る。

 

「こいつ、動きが変わっただと!?」

 

「形さえ分かれば私だってまだまだ戦える!」

 

自身の特性を理解してからのラウラは強かった。

 

バトロイド形態のVFー1Dをクァドラン・ローのように見立て一撃離脱戦法を実質、格闘戦を得意としていたSvー51は一気に劣勢に立たされた。

先程まで追い詰められていたラウラが逆に攻勢を仕掛け、Svー51を追い詰めた。

 

「私の邪魔するならばしねぇ!消えてしまえ!」

 

追い詰める所は徹底的に追い詰めたラウラはガンポッドの銃砲をSvー51に照準を合わせた。

上手く行ったラウラは自身の夢を壊される寸前に追い込まれた事に激怒し、Svー51に怒りをぶつけトリガーを引き弾丸を放った。

 

「犬が・・・・・勝ったのは・・・・・・お・・・・」

 

「しまった・・・・・・」

 

Svー51を一撃離脱戦法を用いた上で撃墜に成功したが、散り際にミサイルとガンポッドをシンプソンに向けて放たれた。

ミサイルとガンポッドの銃弾の雨を受けたシンプソンは大破、ブリッジ艦橋全員戦死。

生き残った乗員はランチにて総員退艦した。

 

「ハシダテ・・・・・撃沈」

 

違う方向でハシダテが撃沈された。

既に満身創痍であり、戦える状態ではなかったが餌食になってしまった。

 

ラウラの目の前には無残に破れ散ったドーントレスやVFー1Dの残骸が漂っていた。

 

「こちらレフトウィッチ、マナット中隊後退・・・・戦線崩壊。」

 

更に悲惨な報告が入った。

マナット中隊過半数を喪失し、防衛線を維持が出来ないと。

 

救援もなく、更に多数のゼントラーディ軍部隊を相手にしなければならない。

ラウラはその辺に漂ってたガンポッドから銃弾を抜き取り補充、過剰な分の弾薬は予備として装備しゼントラーディ軍の迎撃にむかった。

 

【西暦2021年1月30日】

【アームド級宇宙空母シナノ・アームド級宇宙空母アルタミラ.ランデブーポイント】

 

アームド級宇宙空母シナノは予備宇宙艦隊所属のARMDー213アルタミラと合流していた。

 

予備宇宙艦隊のアルタミラはアンサーズ中隊が母艦とする空母であり、予備宇宙艦隊所属ながら3個飛行隊・攻撃飛行隊・早期警戒飛行隊を有しておりしかも単艦で来ていた。

 

「単艦で来るとは度胸あるな。」

 

アルタミラは護衛艦を付けずに単艦で現宙域にたどり着いており、大樹は艦長のジェイル・ベレスフォード大佐は中々の強者と見なした。

 

単艦と言っても周辺には2個中隊しかも最新鋭機のVFー5000スターミラージュが直掩に付いており、白川提督お墨付き部隊もあってか装備も豪華であった。

 

大樹は煙草を吸おうとアメリカンスピリットの箱から煙草を取り出し、口に加えようとしたところ上官であるクン少佐と元部下になるシュリとリックがやってきた。

 

「吉野大尉!」

 

「クン少佐!どうしたんです?私の最後の日に?」

 

「緊急事態だ!ワイルダーの小隊と共に出撃してくれ!」

 

「出撃?」

 

来て早々に言われたのは緊急事態に伴う出撃命令。

 

大樹は30日を以てブラックパンサーズ中隊から離れアンサーズ中隊の副隊長になるべく、ランチで宇宙空母アルタミラに向かう予定であった。

最後の日に煙草を吸って一服しランチに乗ろうとしていたが、まさかの緊急事態出撃にリラックスした表情から緊張感のある表情に変わっていた。

 

「少佐、何があったんです?」

 

「アポロ基地から出港した艦隊と同時期に出航したS.М.Sの艦隊がはぐれゼントラーディ軍、第3軍にアンノンによる襲撃を受けた。」

 

「大型艦ともあり有効打のない艦隊は放置すれば全滅する、大尉・・・・ワイルダーと先遣隊として応援に向かって欲しい。」

 

緊急出撃の命令の内容はラウラ達がゼントラーディ軍やレミアらゲリラ部隊の攻撃を受け苦戦中であり、大樹は先遣隊としてクーガー小隊とジェフリーのダンパー小隊と共に救援に向かってほしいと。

救援任務の命令を聞いた大樹は煙草を仕舞い、部下のシュリとリックに近づいた。

 

「ベルラン少尉.ニーヴン少尉・・・最後の出撃だが着いて来てくれるな?」

 

「エスケスタ!勿論です大尉。」

 

「俺達の強さ敵に見せつけてやりましょう!」

 

「うむ・・・・よし行くぞ!」

 

『『ハッ』』

 

クーガー小隊の隊長としてシュリとリックを率いて戦うのは今日で最後。

 

本来であればランチに乗り数時間後、そのまま別れる予定であったがまさか緊急出撃で部隊長として最後の華を飾れるとは思わなかった。

予期せぬ行幸に大樹はグッと拳を握りしめた。

 

【マヤン級輸送艦アブサラン】

S.M.S護衛隊全滅し、残ったのは新星インダストリーの護衛のドーントレスと甲板防衛のシャイアンのみであった。

予備戦力として残りのドーントレス部隊を全機出し迎撃に当たらせるも、迫りくるゼントラーディ軍相手に防ぎきれる自信はなかった。

 

「新統合軍の駆逐艦1隻と戦力の過半数失った飛行隊、ヒタチアチーフ・・・ファントムは出せないのか?」

 

「ダメです、ファントム2号機は無事にクラビウス基地に届けなくてはいけない物なんですよ。」

 

「だがやられるのは我々なんだぞ!」

 

アブサラン艦長は新星インダストリーのアム・ヒタチア.チーフに積荷のファントムを使えないかどうかを確認したが、クラビウス基地に届けなくてはいけない物だと拒否した。

ファントムは形式番号VFーXー8と呼ばれる最新鋭機であり、VFー4000シュメブルーメをベースにした新星インダストリーの自信作であった。

 

ゼントラーディ人でありながら新星インダストリーに所属した天才技師アム・ヒタチアにより、ゼネラル・ギャラクシーのアルガス・セルザーの製作するVFーXー10に劣ると勝らない性能を有していた。

 

「敵可変戦闘機1機及び攻撃機2機接近!」

 

「アンノントループか!警備隊、迎撃しろ!」

 

レミアと追随する攻撃機2機はアブサランに防衛圏内に侵入した。

 

護衛のドーントレスは防戦を開始するがレミアの優れた操縦技術の前に次々と撃破され、最後の防衛線であるシャイアンが立ち塞がるも一瞬で宇宙の藻屑と消えた。

 

「やれ!」  

 

攻撃機ヴェルステンはバトロイド形態に変形するとアブサランの隔壁を破壊した。

 

破壊した隔壁にあったのは最新鋭のVF、アムが言っていたVFーXー8.コードネーム.ファントムⅢ試作2号機であった。

レミアはSvー51Ωから降り、ファントムⅢのコックピットに移動した。

 

「新星インダストリー社が開発したファントムⅢ・・・・私の力になってもらうぞ。」

 

「レミア、首尾はどうだ?」

 

「問題ない、物は手に入れた・・・・・行くぞ!」

 

ファントムⅢを強奪したレミアはアブサランを脱出した。

ヴェルステンと合流すると戦場から脱するべく戦線離脱を開始。

アブサランに目もくれず艦から離れていった。

 

「ファントムⅢ試作2号機奪われました!」

 

「なんだと!?・・・・ヒタチアチーフ何処に行く?」

 

「私は元ゼントラーディ軍兵士です。ファントムⅢ奪い返します!」

 

「待て!機体は・・・・」

 

「なんとかします!」

 

ファントムⅢを強奪され、アムは頭に血が上り機体を取り戻すべく格納庫へ走った。

別の格納庫にはアムがこの時のために保管していた予備機がある。

 

しかし、いくら元ゼントラーディ軍兵士とは言えアムは通信兵出身でありクァドラン・ローや空戦ポッドで戦った兵士ではなく戦闘能力が高いわけではない。

いくら予備機に乗れたとしてもレミアに叶うとは限らない。

 

艦長はアムの身を案じて止めようとするが、そのまま更衣室でパイロットスーツに着替え格納庫に向かい秘密兵器に搭乗した。

 

「アム・ヒタチア、SDPー1スタンピード行きます。」

 

秘密兵器の正体はSDPー1スタンピード、マクロス艦内で開発されたVFー1の亜種である。

開発主任として新型VFに開発に携わる一方、保険としてVFパイロットの資格を持っていた。

イザって時のために密かにSDPー1を購入し改造した上で予備機として保管していた。

 

「私が開発した大事な機体返してもらうわよ!」

 

アブサランから発進したSDPー1はレミア率いる編隊を追撃した。

 

既に艦周辺のドーントレス部隊とシャイアン部隊は壊滅し、生き残っているのはたったのドーントレス2機とシャイアン1個小隊言う有様であった。

追撃するアムについて来れる機体は1機もいない。

 

「追撃機1機、まだ連中にそれほどの力が残されていたとはな。」

 

「相手は1機だ・・・・・私達は機体を無事に持ち帰る事を第1にせねばならん。」

 

「前方に1機、どうする?」

 

「無論、突破あるのみ!」

 

アブサランから離脱中のレミアからすれば追撃は敵ではなかった。

 

レフトウィッチはもはやはぐれゼントラーディ軍に任せても問題はないし、両軍とも疲弊している為後はそのまま離脱するのみである。

前方に1機が残りのSvー51と戦闘しているが、たかが1機すぐに撃墜できる。

 

「ラウラ、アブサランから未確認機が接近・・・データ照合なし。」

 

「データ照合なし?それはどう言う事なの?」

 

「分からない、でも1機は反統合系の物ではないわ。」

 

ラウラ達は反統合ゲリラ部隊のSvー51やはぐれゼントラーディ軍部隊と交戦中にアブサランから向かってくる編隊を確認した。

1機は未確認機であり、新統合軍や反統合系のデータに照合しない。

 

Svー51と戦闘し、近くにいたリガードを撃墜しながらアブサランから向かってくる編隊を目視で視認するとラウラの顔は真っ青になった。

 

「何こいつ!?」

 

ラウラの目の前に表れたのは見たことない、新型のVFであった。

国籍標記は新統合軍の物があるが、IFFに反応がない。

 

IFFのない新型の新統合軍のVFは無論、レミアに強奪されたVFーXー8だ。

 

公表もされてないので新統合軍のデータベースに入ってないのも当然だ。

 

 

「くっ・・・・」

 

「旧型のD型なのによく動けるわね。」

 

先手を取ったのはレミアだ!

 

ラウラの駆るVFー1Dをただの旧型ザコと認識しており、一撃で撃墜できると思っていた。

旧型のVFー1を駆っていたのはエースの実力を持っていたラウラ、そう簡単にやられる程技量は低くなく攻撃を難なく回避した。

 

「ラウラ、凄いわね。訓練もなしに回避できるなんて・・・」

 

「それでも慣れてないからクァドラン・ローの時よりかなり腕が落ちてる。」

 

訓練もなしにVFー1Dでレミアの攻撃を回避したラウラだが、明らかにクァドラン・ローに乗ってた頃よりも技量はかなり落ちていた。

それもそのはずVFに乗ったのは今日が初めてであり、乗り慣れてないから。

 

操縦方法はカゴメのサポートもあってかある程度理解しているが、まだまだ不慣れである。

 

「前方で戦闘?新統合軍か?」

 

ラウラとレミア率いる部隊が交戦開始してから2分後、アムは追いついた。

 

最新鋭機ファントムを含む複数の敵機を相手に旧型のD型で単身奮戦するラウラの姿を見て並のパイロットではないなと言う感想を述べた。

ヴェルステンを1機撃墜し、はぐれゼントラーディ軍のリガードを撃墜している。

普通のパイロットでなければできない芸当だ。

 

「こちら新星インダストリー.所属アム・ ヒタチアから前方の新統合軍機へ。」

 

「通信?こちら・・・新統合軍ラウラ・ベルタリア曹長.......」

 

「ラウラ・ベルタリア?まさかキヨラ機動戦隊のラウラか?」

 

「そうですけども・・・・」

 

「なるほどね。」

 

アブサランから逃走中のレミアら反統合ゲリラをと交戦中のラウラに後方から追劇中の

アムから通信が入った。

突然の通信にラウラは迷うことなく通信に応えると、アムは予想もしなかった人物の応答に驚き善人じゃない笑みを浮かべ驚いた。

 

キヨラ機動戦隊のエースと言われた人物が目の前にいる。

 

ラウラは気がついていないが、アムはどんな人物かは知っていた。

 

アムは先の大戦以前にラプ・ラミズが指揮していたケアドウル・マグドミラの通信兵をしていた。

面識はなかったがキヨラ機動戦隊のエース、ラウラ・ベルタリアを知っていた。

まさかゼントラーディ軍の幼いエースが生きて目の前にいる。

なんたる僥倖!目の前に表れたラウラを見たアムはこの状況を利用しようと思った。

 

「まぁいいわ、ベルタリア曹長・・・・目の前の新鋭機の動きを止めて。」

 

「新鋭機?目の前にいる敵(デ・ブラン)ですか?」

 

「奴は私が乗ってた艦から奪った敵なの?奪われたら色々厄介なんだ。」

 

「了解しました。撃墜しないよう気をつけながら動き止めます。」

 

言葉巧みにラウラはアムの言いなりになった。

 

ゼントラーディ軍に対し強い忠誠心があったラウラは軍人としての使命感にかなり弱く、言葉巧みに物事を活用すればすんなり信じてしまう。

知らずにアムの言葉を信じたラウラはファントムに対し激しい攻撃を加える事になった。

 

「ラウラ!?さっきより攻撃的になっているわよ!」

 

「えっそう?」

 

「動きがさっきより素早くなったと言うか・・・・」

 

ラウラはあんまり気がついていないが、アムに命令されてから激しい攻撃に加え機体を操縦する時の動きも良くなっており普通の一般兵よりも上の実力となっていた。

バトロイド形態が得意だと認識しており、クァドラン・ローを操っているかのような機動を駆使しヴェルステン1機を撃墜した。

 

「動きが良くなったな、遊び甲斐があるわけだ。」

 

動きが良くなったラウラと戦うレミアはこの時を楽しんでいた。

 

今までつまらない雑魚しかいなかった戦場に殺し甲斐のあるエースが目の前に現れた。

旧型のVFー1Dとは思えない優れた動きをするので興味津々だ。

出てくるのであればもっと早く出てくればいいのにと思える程。

 

だが・・・・・

 

「動きが良くなったと言っても、クァドラン・ローの一般エースと同じ。実力の差を教えてやる!」

 

動きが良くなったとは言えラウラの実力は一般エースと言う強さのレベルでは平凡であるとレミアは評価し、難なく倒せると強く確信していた。

背後からアムのスタンピードがガトリングを放ってくるが、実力は眼中にない。

 

ガトリング攻撃を回避しながら、残骸を足場に跳ねるかのように動いてみせた。

 

「こいつ、動きが速すぎる!」

 

飛び跳ねるかのように動くレミアに攻撃的になってたラウラの頭が冷えた。

まるで化け物が迫りくるかのようだ。

 

この時のラウラの手は激しく震えていた。

 

そうこうもしているうちにレミアのファントムⅢの顔が殺意強めでカメラ越しに現れた。

 

「ラック・・・・」

 

「性能の違いを・・・・思い知るんだな!!

 

「あグッ!!」

 

思いっきり殴ってきた。

一時的にカメラの調子が悪くなるほど強い衝撃を受けた。

 

殴られたラウラのVFー1は大きく後ろに吹き飛ばされるが、脚部バーニアを駆使して態勢を整えガンポッドを構え自身が得意とするクァドラン・ローの機動戦術を駆使して抗った。

 

なんとか持ち直したが先ほどの勢いを取り戻すことが出来なかった。

ラウラはこの時、夢はもう無理かも知れないと諦めかけていた。

 

【同時刻】

【新統合宇宙軍クラビウス基地.第34格納庫】

 

クラビウス基地第34格納庫ではトリコロールからのVFー5000が発進準備に入っていた。

パイロットはダークカラーのパイロットスーツに身を包んでおり、左腕には軍事警察を意味する『MP』の文字が描かれていた。

 

パイロットは整列し、赤いヘルメットを持っている指揮官が入ると一斉に敬礼をした。

 

「レフトウィッチから通報が入った、脱走兵がVFー1Dを強奪し艦から逃走した。我が隊は現地に向かい脱走兵を逮捕する。」

 

彼らの任務内容はラウラとカゴメの逮捕であった。

 

実はロイエンタールの命令に反発した艦長がクラビウス警務隊司令部に密かに通報しそれを受理し、警務飛行隊が出撃する事となった。

無論、この出撃は白川提督は知らない。

 

「現場到着後、該当機302番機がその場にいた場合もしくは遭遇した場合は即座に拘束せよ!」

 

「隊長、目標が抵抗した場合はどうしますか?」

 

「即座に撃墜・・・・と言いたいが情報を聞き出す必要がある。逃走できないように機体を損傷を与えろ!可能な限りな。」

 

抵抗したら逃走できないように損傷し拿捕。

極めて穏便に見えるが、場合によっては撃墜も暗黙の了解で承認されており、不慮の事故で撃墜に至ってしまっても不問とされている。

 

それが地獄の鬼よりも恐ろしい集団が新統合軍警務隊なのである。

 

「説明は以上だ!全機搭乗!」

 

警務飛行隊各隊員は搭乗の一声でそれぞれの愛機に搭乗した。
 

トリコロールカラーに塗装された最新鋭機VFー5000は次々と格納庫から発進して行き、目的地である輸送船団襲撃ポイントへ飛び出して行った。

幻影の集団は何も事情も知らず、ただラウラとカゴメを拿捕もしくは処刑しに向かう。

 

そしてラウラにとって運命の出会いとなる人物である大樹もまた、自身の小隊とジェフリー率いるダンパー小隊を率いて現場に先行して向かっていた。

 

次回予告

爆炎の中から目覚めた亡霊、異型のバルキリーの姿にラウラは恐怖を覚えた。実力の差と性能差からどんどん追い詰められていく中、漆黒の海から黒いバルキリーが戦場に舞う。

 

次回 マクロス外伝蒼い髪のメルトラン

 

【ファースト・エンカウンター】

 

地獄の海にもがけバルキリー!

 

前回

 

次回

 

 

 

 

 

1999年のASSー1の小笠原諸島南沖島(南アタリア島)への落下と2009年の第1次星間大戦開戦は20世紀と21世紀それぞれのターニングポイントとなった。

 

後にSDFー1マクロスと命名されるASSー1から得られたテクノロジー、初めて遭遇する亜プロトカルチャー種族の1つゼントラーディ人との戦争。

2つの出来事は大きな犠牲を払いつつも地球人類に恩恵を与えた。

 

地球人類に与えた恩恵は大きく、人類播種計画が発動。2012年9月、第一次超長距離移民船団メガロード級移民船1番艦メガロード01が出航をしたのを皮切りに人類の生活圏が拡大した。

 

メガロード01が出航して9年・・・・

 

【西暦2021年1月28日】

【ゼントラーディ工業衛星Ⅵ】

 

海兵隊の補給施設として機能しているゼントラーディ工業衛星Ⅵに向かう小型艦船があった。

 

オーベルト級宇宙駆逐艦改ゴダード。

宇宙駆逐艦2番艦であり、マクロス艦長で新統合政府初代大統領ブルーノ・J・グローバルが艦長を務めた古参艦である。

 

現在はアポロ基地所属となっており、今だに地球圏防衛を担っていた。

 

ゴダードは護衛のVFー5000スターミラージュ.計9機を引き連れながら目的地に向かった。

 

「あれがゼントラーディ工業衛星、ゼントラーディ軍の兵器を作ってただけに大きいですね。」

 

「全長50km、SDFー1マクロスよりも大きいゼントラーディ艦艇を作れるぐらいだからな。」

 

全長50kmを誇る圧倒的な大きさを誇るゼントラーディ工業衛星を見てゴダードの女性オペレーターは震えるように驚いていた。

200mしかないオーベルト級宇宙駆逐艦と比べたら、鯨と蟻のようなもんである。

 

「こちら工業衛星Ⅵブリッジからゴダードへ、ガイドビーコンを出した。ただちに誘導に従われたし。」

 

「ゴダードからゼントランプラントⅥコントロール、了解(エスケスタ)誘導に従う。」

 

ゴダードは工業衛星から出たガイドビーコンに従い入港開始した。

工業衛星には地球製船舶の入港ドッグがあり、少数であるがマイクローン化しているゼントラーディ人が勤務している。 

 

「いよいよかぁ。いよいよ、私もマイクローンの兵器を扱えるのか・・・・」

 

工業衛星について早々、ラウラはマイクローン化し他の転属希望者と共にメルトラスから退艦した。

元のサイズのままアンジェミラとメフィリアに顔を上げながら敬礼し分かれ、メルトラス出航後はミュレら転属組と共に工業衛星で月面からの出迎えを今か今かと待ちわびていた。

 

「全員整列。」

 

10分後.ドッグ管理隊長のガムエル・ロイザー大尉が転属希望者に整列するように指示を出した。

40名に及ぶ転属希望者はマイクローン化し支給されたTシャツに短パンを履いており、制服に袖を通すのは人事局員に渡された後である。

 

しばらくすると接続した連絡路から人事局員らが降りてきた。

 

「新統合宇宙軍参謀本部人事部長.チェスター・スティルウェル大佐である。」

 

「アポロ基地人事局長.頼翠花.少佐です。」

 

「クラビウス基地人事局長ヴィルフリート・フォン・ロイエンタール少佐だ。」

 

参謀本部から派遣されたチェスター・スティルウェル大佐を筆頭に人事局員団のメンバーがラウラ達の前に並んで転属出陣式が執り行われた。

直で見る地球人達の姿を見て、ゼントラーディ人とほぼ変わらないと思った。

 

人事局団が来るまでの間、新統合軍の基礎知識を学んでおり最初に挨拶をしたチェスターがこの中で一番階級が高い人物だと認識していた。

 

「ユク・ミヨン少尉です。」

 

「警務隊員.賀谷愛梨少尉です。」

 

「ラウラ・ベルタリア曹長です。」

 

「ララミア・ジェレル曹長です。」

 

転属出陣式を終えると、ラウラ達.女性兵(メルトラン)はミヨンと護衛の賀谷愛梨少尉と謁見した。 

今回転属しクラビウスに行く女性兵の中ではララミア・ジェレル曹長と共に階級が高かった為、ミヨンと賀谷少尉に挨拶する事になった。

 

「ユク少尉殿、これは?」

 

「握手です。友好の挨拶です。」

 

「なるほど、よろしく。」

 

初めての握手する動作に戸惑うも、難なくミヨンに握手して返した。

 

挨拶を終えるとラウラ達は制服一式を渡された。

制服を渡されるとすぐ女性兵員更衣室に連れて行かれ、着用の仕方が教えられた。

 

「結構キツくないか?」

 

「これが普通ですよ。事前にサイズデータ送られているのでベルタリア曹長に合ったサイズのですよ。」

 

「上はともかく、このスカートとやらはキツいなぁ。」

 

初めて着る地球式の軍服にラウラは戸惑っていた。

ズボンではなくスカートであり、下にストッキング履くので着慣れてないラウラはキツさを感じた。

他の転属希望者の女性兵も同様であり、苦戦していた。

 

ようやく着替えを終え、制帽としてベレー帽を被り広場に集まった。

 

「乗組員乗艦。」

 

 

ラウラ達は行進しながらゴダードに乗艦した。

乗艦する際に旧海上自衛隊で使われていた軍艦行進曲が流れると、聞き慣れない悠長な音楽にビクッと怯えるが平静を保ちながら連絡路を通じゴダード艦内に入った。

 

「ユク少尉・・・」

 

「なんでしょう?」

 

「行進する際に流れた音は何でしょうか?」

 

艦内に入ったラウラは隣にいたミヨンに音の正体に聞いた。

軍艦に乗艦するのに悠長な音楽を流す行為が理解できなかった。

ミヨンは制帽を整え、真顔で口を開いた。

 

「日本の軍艦行進曲って言う軍の音楽よ。」

 

「軍の音楽?」

 

「貴女音楽知らないの?」

 

「えぇ」

 

ラウラ達が乗艦した時に流れた音楽は軍艦行進曲と言う日本の行進曲だ。

地球統合政府が出来る前にあった日本国の海上自衛隊と前身国.大日本帝国の帝国海軍にて使用された歴史のある行進曲であり、今も一部で使用されている。

韓国出身のミヨンはあんまり好ましい印象を持っていないが、慣れたので気にしてない。

 

返答を聞いたラウラだが、音楽が何なのか分からなかった。

 

「リン・ミンメイって知っている?」

 

「リン・ミンメイ?誰それ?」

 

「はぁ・・・・(マジ知らないの・・・)」

 

ボドル基幹艦隊決戦で同胞殺しのショックでまともにリン・ミンメイの歌を聴いてなかった事もあってか、ラウラはミヨンを振り回す。

先の大戦の英雄であるリン・ミンメイを知らないと言うラウラの世間知らずさはあり得ない。

 

「すいません、ベルタリア曹長はいろいろありまして。」

 

「いろいろですか?フリジェル軍曹それはどう言う・・・・」

 

「とにかく深い事情がありまして・・・」

 

近くにいたミュレはラウラのフォローに入る。

変に解答されるといろいろとややこしくなり面倒くさいので、慌ててミヨンから離れた。

ラウラとミュレの反応を見てミヨンはまるで疑いの目で見るかのように見続けた。

 

「あんま下手な事言えないわよ曹長殿。」

 

「私は本当に知らないんだって。」

 

「なら勉強する事を提案します。ゼントラーディ軍とは違うんですよ。」

 

艦内の休憩所のテーブルに座ったラウラはミュレから叱られていた。

地球人からすれば帰化したゼントラーディ人はリン・ミンメイの事を知っているのが当たり前であり、それを知らないラウラは異質だった。

知らないと言いたいが、流石に不勉強であれば勉強すればいいとミュレに言われたので不満げな表情を浮かべたが観念して勉強する事になった。

 

【西暦2021年1月30日】

【新統合宇宙軍.月面アポロ基地湾口施設】

 

2日後、ラウラ達の乗る宇宙駆逐艦ゴダードはアポロ基地に入港した。

入港すると内火艇に乗船し、軍港に下船する。

 

ラウラ達は数時間上陸休憩の後、返りのクラビウス基地所属艦レフトウィッチに乗艦し護衛艦のシンプソンとハシダテと共にクラビウス基地に向かう予定である。

既にクラビウス市役所に提出するラウラの戸籍手続きの準備は終わっており、しばらく羽根を伸ばして2月4日の入所式に備え英気を養うつもりだ。

 

同時期にアポロ基地に到着した人物がいた。

 

「ライナス君、ごめんね。私の護衛任せて。」

 

「いえ、卒業まで時間ありますので。」

 

卒業を控えたライナス・フィルダー少尉と共にレフトウィッチに乗艦しやってきたのはカゴメだ。

茂人から一足先にラウラと会う為、アポロ基地に派遣されていた。

 

「カゴメさん、あれじゃないですかね?」

 

「えぇと・・・・情報通り、あれがラウラ・ベルタリア曹長。蒼い髪のショートカット、まるでイケメン系女子みたいな娘ね。」

 

ゴダードから降りてきたラウラを見つけると、第一印象としてイケメン系女子と評した。

中性的な容姿であり、大きい胸やスカート履いてなければイケメンな男の子と見間違えてしまう。

 

まるで王子様だな。

 

カゴメは爽やかな容姿の隊員候補を見て微笑むと、ラウラの方へ向かって歩いた。

 

「失礼ですけれども、貴官はラウラ・ベルタリア曹長ですね?」

 

「か・・・カゴメさん。」

 

遂に対面した。

 

バックを持ちながら興味津々に周りを見ていたラウラに、カゴメが話しかけた。

白川提督が推薦する元ゼントラーディ軍のエースパイロットで、女性兵士(メルトラン).ラウラ。

カゴメは気になってしょうがなかった。

 

「そうですけれども、貴・・・・ 少尉!?」

 

「初めまして、クラビウス基地から参りました。予備艦隊空母アルタミラ所属カゴメ・バッカニア少尉です。」

 

「護衛を任されてます、訓練生ライナス・フィルダー少尉です。」

 

話しかけられたラウラは振り返り、誰なのか確認しようとしたが少尉である事を見抜き慌てた。

慌てて敬礼しているラウラに、答礼しながらカゴメは微笑みながら口を開いた。

 

「そこのハンバーガーショップで食事しながら話ししませんか?」

 

「話ですか?一体何の為に?」

 

ハンバーガーショップで食事しながら話をしようとカゴメが提案した。

いきなり来て食事しながら話をしようとする提案にラウラは疑念を抱いた。

 

気難しい表情を浮かべるラウラを見て、カゴメはフフと意味深な笑みを浮かべた。

 

 

【西暦2021年1月30日】

【セグナークレーター上空、空母シナノ】

 

アポロ基地とクラビウス基地間のはぐれゼントラーディと反統合ゲリラなどの掃討作戦に従事している大樹らはクーガー・ダンパー両小隊はブラックパンサーズ中隊長のクン・ドユン少佐を交えてブリーフィングルームに集合していた。

 

ブリーフィング内容はシッカルトクレーターにてパトロール中だった警備隊所属のVAー3インベーダー2個小隊と母艦であるオーベルト級宇宙警備艦クリケットが撃沈された事だ。

 

他にも民間船舶が多数襲撃されており、安全保障的にも経済的にも多大な被害を被っていた。

 

「吉野大尉、貴様はどう考える?」

 

「通信記録ではSvー51Ωが単機で襲来となると、単なる反統合ゲリラの仕業じゃないですね。」

 

被害を受けた警備隊第38哨戒部隊には8機のVAー3インベーダーと警備艦1隻がいたが、僅か1機の統合戦争時代の旧型Svー51Ωにより撃墜された。

単機となるとはぐれゼントラーディでも反統合ゲリラとは考えにくい。

 

『報告、インギラミクレーターにて警備隊第18哨戒部隊が襲撃を向けました。』

 

「何?状況は?」

 

『エリトリアからの報告だと、Svー51Ω単機が襲来。第18哨戒部隊は喪失4 エリトリア中破の被害を受けアポロ基地に撤退したと。』

 

ブリーフィングしている最中に新たな被害が出た。

アポロ基地から出撃し、民間航路警戒の任に就いていた第18哨戒部隊が襲撃された。

損害はエリトリア中破、4機撃墜.2機損傷と言う大被害であった。

 

「この分では追撃は不可能か、敵機の離脱方向は確認出来たか?」

 

「北東方面に逃走、場所は何処かまでは・・・・」

 

「それだけ分かれば十分だ。」

 

大樹はモニター越しの女性オペレーターに向かって逃走経路を確認し、北東だと聞くとあらかた敵が何処に逃げるか予測した。

 

月面の地図を見て何処に潜伏場所が相応しいか考えられるとすれば1つ。

 

「ハインツェルクレーターか・・・」

 

ハインツェルクレーター・・・

シッカルトクレーターやインギラミクレーターの北東にあり、Svー51Ωの潜伏先とするならばこの周囲にあるに違いない。

 

そう確信した大樹はクン少佐にハインツェルクレーター方面に進出する事を進言しようとしたが、空母シナノはシッカルトクレーターに向かう事になり直掩として出撃する事が命じられた。

 

悔いを残す結果になってしまった大樹だが、Svー51Ωは予想外の場所に逃走していた。

 

【フォキリデスクレーター内、秘密基地】

 

山吹色をしたSvー51Ωフェンサーがフォキリデスクレーター内の秘密基地に降り立った。

格納庫内にはSvー52オリョールやSvー53フルクラムⅡが駐機しており、横流しされた新統合軍のデストロイド・ドーントレスも整備中だった。

 

「レミア・ジフォン、一連の活躍見事だな。」

 

「ふん、大した事もない。先ほどの連中だって弾薬が十分であれば殲滅できた。」 

 

Svー51Ωフェンサーから降りてきたのはレミア・ジフォンと言う紫色のショートヘアと赤い口紅そして鋭い目つき特徴のメルトランであった。

レミアは第1次星間大戦後、マイクローン化し反統合思想の強い傭兵として各地の戦場を転々としており今は月面で暗躍していた。

 

フェンサーから降りたレミアを応対したのはコートを羽織りサングラスとスーツ姿のゲラムだ。

 

「一連の働きに関するギャラは振り込んでおいたぞ。」

 

「金はしっかりしてるな。」

 

「金は地球人社会には必須だ、きちんと働かせるには相応の金をギャラとして支払う当然の話だ。」

 

ゲラムは通商破壊をしてきたレミアの銀行口座に多額のギャラを支払った。

武器の補給などは天引きであるが、個人のギャラとしては破格だ。

ギャラを支払ったゲラムだが、次の一手に移行しようとしていた。

 

「次の任務だが、極めて重大だ。」

 

「極めて重大?・・・・ふ・・難しい内容だな。」

 

「やり遂げれば、これからの傭兵稼業更に楽になると思うぞ。」

 

「そうならばやらせてもらうわ。」

 

次の任務内容は難しい内容であるが、成功すれば莫大な金も入るどころか今後の傭兵稼業が更に楽になる代物であった。

データを受け取り内容を見たレミアは難しいと言いつつも、何処か楽しんでいた。

 

「彼女上手くやりますかね?」

 

「レミア・ジフォンは確実にやる女(メルトラン)だよ、惑星クラストラニアで何度も見ている。」

 

「そうでありますが・・・・・」

 

「心配するな、失敗したところで私には何も損はしない。利になるか、現状維持かだな。」

 

Svー51Ωの整備を見守るレミアの後ろ姿を見ながら、ゲラムは悪意のある笑みを浮かべた。

 

自身の愛機であるヴァリアブル・グラージと設計図の受領の契約を惑星クラストラニアの反統合勢力と結んだ時、クラストラニア自治政府軍掃討部隊を相手に戦うレミアの姿を何度も見ている。

難しい任務内容ではあるが、レミアなら確実にやり遂げると確信していた。

 

失敗したとしてもゲラム的には何も損はしないどころか、通商破壊による混乱と言う目的はどの道成功するので任務内容はプラスアルファでしかなかった。

 

「さて新統合政府の犬どもが嗅ぎつける前に月面をおさらばして、マーズ(火星)のHGウエルズシティの郊外かオリンポス山にでも行きますか。」

 

「ハッ・・・」

 

「なぁにレミアが事を起こすまでは行かんがな。」

 

通商破壊に成功したとは言え、月面周辺の新統合軍の警戒が強まっており月面圏からの退去し遠く離れた火星圏に本拠を移そうと考えていた。

表向きゲラムは財界人であり、引き続き活動していくので移動するのは私兵のみである。

 

とは言えレミアが任務成功するまでは移動するつもりがなく、当面は月面に居続けるつもりだ。

 

 

【新統合宇宙軍.月面アポロ基地湾口施設】

【民間エリア・バーガーキング.アポロ湾口店】

 

ラウラ達はバーガーキングにて楽しく食事しながら会話していた。

 

カゴメが機種転換センターに出向していて、上官である茂人からラウラに会うように命じられた事や機種転換センターで学ぶ内容と暮らしなどを話し合われた。

 

話の内容はよく分からなかったが、何より初めて食べて飲むハンバーガーとコーラが美味しかった。

 

「バッカニア少尉は何故私に会うように命じられたんですか?」

 

「確かにベルタリア曹長が目的みたいな。」

 

「えぇっと・・・・・ね。」

 

ダブルステーキワッパーを食べながら、ラウラは疑問をぶつけた。

 

何故自分だけなのか?

 

クラビウスの機種転換センターに行くのはラウラだけではなく、ミュレなど多くの候補生がいる。

それなのに数多くの候補生の中で、自分だけが目をつけられているのか?

 

「私・・・・・目の敵にされてません?」

 

「目の敵にしてないわよ、ただ貴女の経歴を見て桐原少佐が関心を持っただけで・・・」

 

「私の経歴に関心を持った?」

 

疑念をぶつけられたカゴメは慌てて誤魔化すが、流石に誤魔化しきれない。

ラウラはハンバーガー食べ続けながら、本質を下げるため質問を攻めを続けた。

 

その頃、バーガーキングアポロ湾口店の外ではとある私服姿の緑色のショートカットの女性が黄緑色の女性と共に歩いていた。

 

「和也はミリアと仕事、子供は学校・・・お義父さんとお義母さんは夫婦で温泉・・私だけ暇かぁ。」

 

「中尉、だからと私と一緒じゃなくても・・」

 

「ミアンがたまたまいたから悪い、暇つぶしぐらいさせてよね。」

 

「強引だなぁ。」

 

たまたま休暇中であった絵理とその副官のミアンだ。

 

休暇中とは言え子供は学校で、義両親は温泉に出かけており広い家で警備の兵や家政婦と執事しかおらず心細くなった絵理は一人外出した。

 

またまたミアンを見かけたので、同行する事になった。

 

「ミアン、何故市中ではなく湾口なの?」

 

「機種転換センターの候補生が到着する日で、どんな相手が来るのか気になるんので見に来ただけです。」

 

「ふ〜ん、彼氏いるのに他の男を見に・・・」

 

「人聞きの悪いこと言わないでくれます?中尉。」

 

ミアンがこの日湾口施設に訪れたのは機種転換センターの候補生を見に来ただけである。

機種転換センターの候補生を見たら民間施設でランチを取って家に帰宅するだけであったが、絵理が来た事でややこしくなった。

 

おまけに変な誤解までするので、誤解が解けるまで説明で苦労した。

 

後にミアンはマクロス7船団の人気歌手で娘のフラスチャカヤ・シュラインに、上官である絵理に説明しようにも変な誤解生んで大変だと語っているがそれはまた別の話。

 

「中尉、私は別に・・・」

 

「「バッカニア少尉、私は確かにエースだったですけれども上から褒められるような兵士ではないです!」」

 

「あの声と口調は・・・・ラウラか・・・声の方向はバーキンか・・・」

 

ミアンが必死に説明している最中、ラウラの声が聞こえた。

 

声が聞こえてくるバーガーキングの店内を見ると追加注文のトリプルワッパーチーズを食べながらラウラがカゴメに執拗な質問攻めをしている姿だった。

 

「ベルタリア曹長、元戦友の方から貴女の事を聞いた上で・・・・」

 

「にしても私の事、気にしすぎです。」

 

カゴメといい、白川提督といい何故そこまで自分に固執されるのか分からない。

エースと呼ばれる程の実績を残しているが、結果論であるし特に凄くない。

元上官であるキヨラの方が凄いし、それに比べ自分はエースなだけで平凡だと思っている。

 

更に質問をぶつけようとした直後。

 

「うるさい声がすると思えば、ラウラ・・・やっぱりマイクローンになりVFパイロットになりに来たのか・・・」

 

聞き慣れた声がラウラに向けて話しかけてきた。

 

話しかけてくる聞き慣れた声はつい最近聞いた事のある声であり、ゼントラーディ軍時代は特に何度も聞いた事があれば喧嘩したことのある主であった。

振り返ってみると、ラウラの顔は唖然とした。

 

「モーア・カリダム!何故ここに?」

 

「何故ってここが私のホームグラウンドだからだよ。」

 

インフェルノ・ザ・ワンパウンダーセットとバーベキューチーズホットドッグを載ったトレーを持つ星村絵理と小隊副官のミアンの姿だった。

私服姿の絵理の姿を見てカゴメ達は慌てて敬礼したが、ラウラだけはしなかった。

 

「ラウラ相変わらず不躾ね。」

 

「モーア、その服装は何だ?」

 

「これは私服、地球人の普段の服装よ。」

 

「私服?」

 

ラウラは絵理とミアンが着ていた私服に興味を持った。

 

絵理はキュロットパンツにTシャツ、その上にカーディガンを羽織っており、ミアンはタイトミニスカートに革ジャンを着ていた。

軍服と違う地球人の私服に、戸惑いつつも魅力的に感じていた。

 

「星村中尉、何故貴女がここに?」

 

「休暇だからミアンの付き合いしているのよ。たまたま懐かしい戦友見つけたから話にね〜♫」

 

「何を話したいモーア・・・」

 

「適当〜♫」

 

わざわざ話しかけて来たと言う事は重大な事かと思ったが、絵理は適当と答え苛ついた。

ラウラが苛ついたのは、ある意味期待して損した事からで意味深な事を話すのかと思っていた。

 

「VFパイロットに志願したって事だけども、覚える事は多いのって知っている?」

 

「知っているここに来る道中覚えたから。」

 

「へぇ。」

 

質問してきたが、至って普通であった。

言葉の通り適当であり、何も考えていない。

そう考えていたラウラだったが、予想外の質問が来て心臓が止まるような感覚に陥る。

 

「生身で人を殺す事は?」

 

「生身?」

 

「そう生身、人を殺す事は出来る?これから殺す相手の顔を見ながら・・・・ね♫」

 

これから殺す相手の顔を見ながら生身で人を殺せるが出来るか?絵理が笑顔で質問してきた。

過激すぎる質問に周りはドン引きし、ラウラはコーラの入った容器を持つ手が震えた。

不幸中の幸い、他の一般客はいないが周りからしたら不愉快極まりない。

 

「中尉、ここは食事する場ですよ!」

 

「軍人なのに、人の生死を関わる発言を気にするのかね?」

 

「民間人もいます。」

 

「だけど周りには私達しかいないわ、ラウラどう?答えられる?」

 

食事する場としてはあんまりな発言にカゴメは抗議するが、絵理は笑顔をやめ嫌悪顔になりながら見下すように言い返される。

カゴメは押されつつも、反論したが絵理は抑え込むかのように言い返した。

 

「別にVFパイロットになるんだから、目の前で人を殺す事なんて・・・・」

 

「そうとも言い切れない。非正規戦である今、ゲリラ部隊や工作員との戦闘があるのよ。拳銃などの武器で戦う事もゼロではない。」

 

「工作員との戦闘・・・・」

 

「後は自機が敵勢力圏に墜落した際の逃避行とかね。」

 

VFパイロットとなっても、生身で殺し合う事は無くならない。

 

反統合ゲリラのゲリラ戦や破壊活動.テロ活動により、自ら拳銃を持って迎撃戦をする事がある。

非正規戦と言う概念のないゼントラーディ人からすれば、生身で人を殺し合う概念はなく兵器による一方的な殺戮行為しかない。

 

相手の顔を知らないまま殺し合いをしてたあの頃と違い、ゲリラが生身で仕掛けてくれば相手の顔を見て戦闘する事になる。

 

「生身で戦闘と言う事ですけども、マイクローンは結構生身で戦うのですか?」

 

ミュレは生身で戦う地球人の事が不思議に感じた。

 

ゼントラーディ軍は兵器に乗って戦う軍隊であり、歩兵は入れど艦内警備の類でしかなかった。

ラウラやミュレは重火器は一応扱えるが、生身で戦闘を経験した事は一度もない。

 

生身で戦う地球人兵士の姿はラウラ達ゼントラーディ人から見れば異質に見える。

 

「地球人は原始的な時代から今日まで生身で戦闘するわよ。」

 

「あんな兵器があっても?」

 

「そうよ、地球人曰くいくら技術が進歩しても戦い方の基礎は変わらないって。」

 

地球人から言わせれば戦略・戦術の多様化により、様々な戦い方があるだけに過ぎない。

歩兵戦も基本中の基本であり、どんだけOTMやゼントラーディの技術を取り入れ大幅に技術が進歩しても無くなる事がない。

 

「ラウラ、地球の戦い方は単純じゃないんだ。かなり複雑だし、VFに乗って至って無力さ痛感する事あるわ。」

 

「モーアは無力さを痛感した事があるのか?」

 

「かなりある。」

 

VFパイロットになってからもエースとして、特殊部隊の副隊長としての名声と実力を兼ね備えた絵理であったが、戦場によって無力さと屈辱を味わった経験は何度もあった。

 

ラウラより10年以上、地球の戦争の流儀を経験してきた絵理は何十回地球の戦争は悲惨で胸が張り裂けそうな出来事を何度も遭遇した。

 

「お前は志願したのはいいけど、理不尽な目に遭う覚悟がなければやっていけないわ。」

 

「・・・・・・」

 

「でもね、お前がそんなヤワな女(メルトラン)じゃないのは知ってるから・・・」

 

地球は素晴らしい文化はありこの世の生き天国である一方、戦争や諸問題は戦争ばかりのゼントラーディ人を絶句させる程理不尽極まりないこの世の生き地獄だ。

 

生半可な覚悟では生きてはいけないそれが地球人文明だ!

 

とは言えラウラは理不尽極まりない状況に陥っても切り抜けられると絵理は思っていた。

 

「モーア、私は自分を変えたくて志願したんだ。今さら退く事なんて出来ない。」

 

「そう言うと思った。私は期待しているのよ、お前がどんなVFパイロットになるのか・・・どんな軍人になるのかってね。」

 

「期待・・・・・」

 

マイクローン化し転属する道を選んだ時点でもう退く事が出来ないと言う事を知らない程愚かではないし、それなりの覚悟を持ち合わせている。

むしろ、心配せずともラウラがどんなVFエースパイロットに育つのかの点を楽しむ事が出来るし期待しても問題はない。

 

後は本人の頑張り次第で何処まで伸びるかだ。

 

そう考えている絵理はミアンと共に食べ終わると席を立った。

 

「そろそろ他所に行くわ、じゃあね♪」

 

「しばらく顔を見せるな!」

 

「おー怖、あんまり感情的だと私にいつまでも勝てないわよ!」

 

「ほざけ!」

 

トレーを片してバーガーキングの外に出る2人にラウラは吠えた。

余裕そうな振る舞いを見せる絵理の姿を見てムカついた。

 

「ベルタリア曹長、感情を押させないと。」

 

「だってあいつが・・・・」

 

「あいつではありません、星村中尉です。」  

 

「うぅ、申し訳ございません・・・バッカニア少尉。」

 

吠えるラウラは能面のような真顔のカゴメに注意された。

あまりにも背筋の凍るようなカゴメの表情を見て、心臓を掴まれたかのようにラウラは震えた。

 

震えるラウラの姿を見て能面のような表情を解き、天使のような笑顔を浮かべある提案をした。

 

「堅苦しいのはなしです。ラウラ、これから下の名前で呼ぶから私の事をカゴメと言ってくれる?」

 

「バッカニア少尉、それはダメですよ。上官ですし、下の名前・・・」

 

「単に仲良くしたいからよ。友達にならない?一人じゃ心細いでしょ。」

 

「友達ですか?それは・・・なんですか?」

 

「戦友よ!私は貴女と戦友になりたい。」

 

友達にならないか?

カゴメは自身の事を下の名前で呼ぶように言ってきた。

 

突然の提案に最初はラウラは困惑し下の名前を呼ぶのを丁寧に断ろうとしたが、天使のような笑顔を浮かべるカゴメの姿を見て断れる気にはなれなかった。

 

むしろ、戦友になりたい。

その言葉に心地よさを感じた。

 

「よ.よろしくカゴメ、戦友になろうと言われるのは心地よい気がした。」

 

「そう、こちらこそよろしくねラウラ。」

 

ラウラとカゴメは握手をした。

 

長年の戦友と離れ寂しさを感じていたが、カゴメが戦友(ともだち)になってくれると言う事は青天の霹靂であり初めてゼントラーディ人以外の友を得る事にラウラは感激した。

 

先程までカゴメを追求していたが、今となってはどうでも良くなった。

 

その後、ラウラ達はバーガーキングを出るとしばらくカゴメのエスコートにより外出を楽しんだ後.クラビウス基地行きのレフトウィッチに乗艦した。

 

【月面クラビウス基地とアポロ基地間、某所】

 

度重なる戦闘で数多くの新統合軍部隊と反統合ゲリラ、はぐれゼントラーディの艦艇や艦載機が無残な姿が月面の大地に転がっていた。

 

宇宙に漂う死体は真空の世界が故に腐敗もせず、死んだ直後の姿まま無残に晒していた。

 

そんな戦場で散った骸の大地の上を小隊規模の可変機部隊が通り過ぎる。

 

「上手く新星インダストリーが密かに輸送中の新鋭機を強奪しろか・・・」

 

「我々がしっかり援護する。お前はしっかり任を果たせよ!」

 

「はいはい」

 

フォキリデスクレーターの秘密基地から飛び立ったレミア率いるSvー51Ω3機はゲラムの命を受け標的に移動中であった。

更にレミアの後方にSAー1ヴェルステンと言うゼントラーディの技術と地球の技術を融合した可変攻撃機2機が随伴していた。

 

「ん?」

 

「どうしたレミア・ジフォン?」

 

「先客だな。」

 

レーダーに反応が映った。

 

大型艦が2隻、ラウラ達の新統合軍艦隊とS.M.S船団の進路上向かっていた。

予想外の先客であったが、レミアはお構い無しに操縦桿を握り、目標に向かっていった。

 

【西暦2021年1月30日】

【月面.東の海周辺中域】

 

ラウラ達はアポロ基地を出航した。

オーベルト級3隻の艦隊とアポロ基地とクラビウス基地の防空圏に重なる地点までの護衛飛行隊マナット中隊が出撃し警護に就いた。

 

「S.M.Sと新星インダストリーの輸送艦ね。」

 

「S.M.S?新統合軍と違うのか?」

 

「民間軍事会社、国家を顧客にした警備会社みたいな物ね。」

 

「なんか分からんな。」

 

艦隊と並行するようにS.M.Sのオーベルト級宇宙駆逐艦2隻、護衛のVFー1A初期型バルキリー2個小隊が新星インダストリーのマヤン級アブサランを守るように航行していた。

 

S.M.Sアポロ支社は新星インダストリー社の依頼を受けてある物資を輸送していた。

物資の中身は部外秘であり、警護しているS.M.Sの隊員や輸送担当の星間運輸の社員は何も知らないままクラビウス基地まで運ぶことになる。

 

自身に関係のない事だと分かったラウラは、与えられた自室の椅子に座りリラックスした。

 

「いよいよ、VFパイロットとしての道か・・」

 

月面クラビウス基地に到着すればVFパイロットへの道の最初の第一歩を踏み出す。

10年前ゼントラーディ軍人としての立場を失い同胞を殺し死に場所を求め生きてきたが、ようやく自分がやりたいと思える事に巡り合った。

 

やりたい事を実現が出来る、今からそう考えると戦闘での高揚感以上の興奮を覚えた。

 

無論、絵理から言われた地球軍人としての現実に関する事もあるが今のラウラの頭の中は楽しみと言う感情に支配されていた。

 

だが

 

人生早々簡単に思い通りには進ませてくれない。

 

「艦長、レーダーに反応。IFFにない大型艦2隻!」

 

「なんだと?艦級は?」

 

「2000m・・・スヴァール・サラン級標準型です。」

 

レフトウィッチのレーダーに艦影が反応した。

 

2隻共、2000mを誇るゼントラーディ軍主力戦艦スヴァール・ サラン級であり、小口径多砲主義に基づく武装で敵艦隊を蜂の巣にする戦車のような軍艦である。

 

500mのマヤン級アブサラン除くオーベルト級宇宙駆逐艦は200mしかなく、スヴァール・サラン級の10分の1くらいの大きさしかない。

 

「艦長、敵艦隊は小型艇5・斥候艦1です。」

 

「斥候艦はマイクローンにとって大型艦、確証はありませんが輸送艦かと。」

 

「だとすれば弾薬等の物資を搭載しているに違いない。全艦に発令。インファイト・ゾーンへ突入する。小型艇と艦載機は殲滅していいが、斥候サイズの敵艦を沈めるなよ!脅しを放て!」

 

「第一射撃放て!相手の陣形を崩す!」

 

はぐれゼントラーディ艦隊は戦闘態勢に突入した。

 

ボドル基幹艦隊決戦以降、他の基幹艦隊に合流できずはぐれゼントラーディと化したが、海賊行為をしながらしぶとく10年間新統合軍による掃討作戦を生き延びてきた。

 

しかし、度重なる掃討作戦により戦力と物資を喪失し戦闘継続が困難になっていた。

 

つい最近は第9機動艦隊を引き連れていたクラビウス艦隊総旗艦である第1世代型マクロス級SDFNー13ニール・アームスロングと交戦し、艦隊は風前の灯火と化した。

 

それでも艦隊には70機以上の艦載機を有しており、安全保障上脅威であった。

 

2隻のスヴァール・サラン級は艦載機を発艦準備しつつ、脅しの第一射を放った。

 

「なんだ!?わっ・・・痛」

 

砲撃はレフトウィッチに命中するギリギリを通過した。

自室でリラックスしていたラウラは砲撃音の轟音を聞いた直後に、通過した衝撃で椅子から転げ落ちた。

 

『総員第一種戦闘配備!これは演習ではない。繰りかえす、これは演習ではない!』

 

「戦闘!嘘でしょ!」

 

艦内アナウンスを聞いて戦闘状態に入った事を知った。

 

「貴様!機種転換センターの訓練生か!」

 

「はい!」

 

「食堂で待機しろ!戦闘は・・・・」

 

部屋から出たラウラは外の様子を見ようと廊下に出るとパイロットスーツを着た兵士と遭遇した。

兵士はラウラの制服姿を見て食堂で退避するように言おうと突如爆発が後ろで起こり、空いた放り出された。

ラウラも空いた穴に吸い込まれそうになったが、運良くエアロックのハッチが閉まった。

 

「死んだ・・・・・・・・」

 

目の前で人が死んだ。

 

パイロットスーツを着ていた兵士だけでなく、近くにいた乗員も何人かが宇宙に放り出され死んだ。

後一歩間に合わなければ自分も死んでいた。

 

「戦闘で死ぬのは誉れだけど、あんな死に方は嫌だ。絶対に嫌だ。」

 

初めて戦闘が行われている中で恐怖を抱いた。

 

人が目の前で呆気なく死にゆく姿にとてつもない恐怖心を抱いた。

戦闘の中で何も出来ないまま死ぬ事が何より耐えられなかった。

 

「そうだ、艦には艦載機があった。」

 

恐怖心を抱いたラウラだったが、乗艦する際にレフトウィッチや護衛艦にデストロイド・ドーントレスが係留されているのを見た事を思い出した。

ドーントレスだけでなく、可変戦闘機のようなシルエットを艦上部にあるのを見かけた。

 

「ラウラ!大丈夫!」

 

そう考えていると、カゴメが心配しながら駆け寄ってきた。

ジャケットを着ておらず、顔から血が出てたり擦り傷が出来てたり、ストッキングが破れているのを見るに先程の攻撃で負傷したのだろう。

そうした姿を見てラウラは恐怖心を抑え、意を決して愚直に考えている事を述べた。

 

「私、出撃して戦いたい!」

 

「えっ!?どう言う・・・・」

 

「カゴメ!この艦に私が乗れる機体はないの?」

 

ゴダードに乗れる機体があれば戦いたい。

 

何も出来ないまま死ぬのが怖い、やりたい事が出来ないまま死ぬのが怖い。

どうせ死ぬのであれば戦って戦場の花として散華したいとラウラは思った。

 

正直、ようやくやりたい事を見つけたのに死ぬ事になるのは無念極まりないがこれも仕方がない。

そう考え素直に言ったが、カゴメの顔は物凄く怒っている表情に変貌した。

 

表情の変わったカゴメの姿を見てラウラは困惑した。

何故、そんな表情で私を見るのかと?

 

西暦2021年1月30日、ラウラの運命の出会いと価値観を大きく変える戦いが今幕を開けた。

 

次回予告

ラウラ達の艦隊が襲われた。はぐれゼントラーディとレミア率いる反統合ゲリラの攻撃で艦隊に多大な犠牲が出る中、ラウラは初めてVFの操縦桿を握る!

 

次回 マクロス外伝蒼い風のメルトラン

 

レミア・アサルト

 

月面の大地を駆け抜けろ!バルキリー!

 

前回

 

次回

 

 

 

 

デザイン.ネル

【生年月日】
2000年6月8日
【所属】
新統合軍
【階級】
少尉

【前職】

歌手・アイドル
【人種】
地球人/イギリス人(ウェールズ人)
【姉妹】
カオリ・バッカニア
ミユ・バッカニア

【イメージ声優】

安野希世乃
【解説】

新統合宇宙軍.予備宇宙艦隊アームド級宇宙空母アルタミラ.オペレーター。

 

士官学校に入る前の1年間、リン・ミンメイに憧れて歌手やアイドルをやっていたが売れなかった事もあってか自信が持てず引退し同時並行で受験していた士官学校に入学した。

 

士官学校時代は後に白川秀康提督の秘書官になるメロディー・ギンヌメールと親友兼ライバルの関係になり、首席の座を争った。

 

卒業後はクラビウス基地オペレーターとして勤務していた。

 

性格は真面目で面倒見があり、後輩から慕われている。負けず嫌いであり、ムキになる事も。

 

【親族】

(ラグナ駐留軍祭りにての新統合軍コスプレを披露する従姪孫のカナメ・バッカニア)

 

46年後に活躍するカナメ・バッカニアは従姪孫である。

 

曽祖父のトラフォード・バッカニアは英空軍第13飛行群.中尉として第二次世界大戦中のバトル・オブ・ブリテンの防空戦に参加している。

 

他にも多数の親戚がいるが、第1次星間大戦で戦没し断絶した家系もいつくかある。

 

トラフォード・バッカニア(英空軍第13飛行群.中尉)

|

ニコル・バッカニア

|―――――――――――――――― |

トマス・バッカニア           スタンリー・バッカニア   

|                                                               |                      

エルマー・バッカニア        カゴメ・バッカニア

|

ヒュー・バッカニア

|

カナメ・バッカニア

【ギャラリー】

 

 

デザイン.鈴花ベル

【生年月日】

1993年10月26日

【所属】 

新統合軍

【階級】

少佐

【人種】

地球人/ドイツ人(ソルブ人)

【髪色】

黒髪

【イメージ声優】

若本規夫

【キャラクターデザイン】

鈴花べるさん

【解説】

新統合軍クラビウス基地人事局に所属する将校。

 

士官学校時代に南アタリア島攻防戦に巻き込まれSDFー1マクロスに乗艦し第1次星間大戦を生き抜いてきた過去がある。

 

人事局に所属していながら非凡な才覚で実績を積んでおり、次期に参謀本部所属の参謀の座に就くとして周囲から期待されている。

 

アポロ基地内のドイツ軍閥の幹部である父のヴォルフガング・ロイエンタール大佐は統合戦争時代は地球統合軍側の軍人として功を挙げ、月面アポロ基地に配属されている。

 

アームド級宇宙空母シナノ副長であるオスカー・ミッターマイヤー少佐と並びクラビウス基地ドイツ軍閥の双璧と称されている。

 

【モデル】

銀河英雄伝説のオスカー・フォン・ロイエンタール

こんばんは

当ブログの管理人長田義家です。

 

完全版漫画掲載用にPixivアカウント開設しました。

 

当ブログでも掲載しますが、Pixivは裸の描写などアメブロでは表現できないような表現ありです。

皆様よろしくお願いします。

 

(Pixivアカウントの管理人は私含め4人です)

(デザイン ネル

【生年月日】

2002年2月28日

【性別】

男性

【種族】

地球人/ラテン系アメリカ人

【出身】

アメリカ合衆国フロリダ州

【所属】

新統合軍

【階級】

少尉→中尉

【声優】

大川透

【解説】

新統合軍ブラックパンサーズ中隊に所属するVFパイロット。

 

クラビウス基地建設に携わった技士モーガン・ワイルダーの息子であり、家族と共にクラビウス基地に移住し第一次星間大戦におけるボドル基幹艦隊による艦砲射撃を逃れた過去を持つ。

 

成長すると新統合軍に志願しVFパイロットとなるも、最初の戦場にて戦果をあげるものの戦傷を負い額に傷を負ってしまう。

 

順調に戦果をあげていきエースパイロットと呼ばれるに相応しい実績を残した。

 

趣味はサーフィンであり、休暇の時に月面の海洋プラントでサーフィンするのが楽しみ。

 

後に38年後のバジュラ戦役にてS.M.Sマクロスクウォーターの艦長ととして活躍する。

 

【西暦2021年1月25日】

【新統合政府首都惑星.地球北米.マクロスシティー】

【新統合議会下院】

 

この日、新統合議会下院にてボドル基幹艦隊決戦勝11周年記念式典が2月11日に、第1次星間大戦戦勝11周年記念式典が3月31日に執り行われる事が賛成多数で可決された。

 

新統合政府大統領フランク・マロニーの演説後、上院での採決が始まった。

 

「国防総省よりマクロスレイク及び国会議事堂.政府各省庁の防衛の為戒厳令を発令、各首都防衛部隊は記念式典まで防衛任務に徹せよ!」

 

国防総省は不穏分子による妨害活動やそれに伴う治安悪化を懸念し戒厳令を敷き陸軍部隊や各軍航空隊によるマクロスシティー警備が実施された。 

統合警察も警備デストロイドや特殊部隊も動員され、シティー内は物々しい雰囲気に包まれた。

 

「不穏分子が5名逮捕か・・・」

 

「はい。」

 

厳戒態勢においても不穏分子は式典の妨害を目論んだ。

警備開始して6時間も経たない間に不穏分子が5名が警察に逮捕されている。

これはあくまでも逮捕された人数であり、郊外では警察と不穏分子による銃撃戦が起こっており既に死傷者が多発していた。

 

戦争が終わって10年、人類は今だに苦しい戦いを止められずにいた。

 

【翌・26日12時4分】

【月面クラビウス基地.クラビウス市役所食堂】

 

クラビウス基地内にあるクラビウスシティーの市役所の食堂ではクラビウス市役所職員やクラビウス市議会議員がお昼休憩を取っていた。

 

『星間大戦戦勝式典には・・・』

 

「戦勝11周年か、僕的にあんまり喜べる話じゃないんだよね。」

 

クラビウス議会無所属議員の石崎ひでゆきはコーヒーを片手にタブレットでニュースを見ながら渋い顔を浮かべ戦勝11周年記念式典についての私見を述べた。

 

石崎市議は議員になる前、経営者として活躍していた第1次星間大戦の2月11日、地球統合軍の避難勧告により退避シェルターに避難し奇跡的にボドル基幹艦隊による艦砲射撃から難を逃れた。

だが難を逃れたものの、自身が経営していた企業のあった市川市は壊滅し人生大事にしてきた物を殆どを失う挫折を味わった。

 

戦後、心機一転をかけて月面クラビウス基地に移住し戦前までとはいかないものの経営していた企業を再興する事に成功していた。 

その後、クラビウス市議会選に立候補し当選。

2期連続当選し、クラビウス市民の為に働いていた。  

 

「Mrイシザキ、また戦勝記念式典に渋い顔だな。」

 

「グラスリー市議、先の大戦で勝てたと言っても代償が大きすぎます。経済基盤も秩序もまともに機能してたのは月面だけだと聞いております。」  

 

「確かにな、あれから10年以上経ったがようやく今がマシになったと言うレベルだしな。」

 

「そうです、ここまで来るのに全国民は苦労しました。素直に先の戦争で勝てたからと言って素直に喜べる物ではありませんよ。」

 

同じく無所属市議のジム・グラスリーに石崎市議は自身の考えを述べた。

先の大戦で得られた物が大きかった反面、失うものが多すぎた。

全人類の大半や全地球規模の経済基盤や秩序、数えたらきりがない。

 

10年経ってようやく経済基盤は回復したが、ここに至るまで国民の苦労は壮絶であった。

 

「いくら失った物が大きいとは言え、生き残ってしまえば何かを成せると考えれば喜べるものよ。」

 

イ・ジェウク

クラビウス議会国防委員長を務める自由共和党所属の市議会議員である。

元新統合宇宙軍大佐であり、統合戦争では平壌解放戦で多大な功績をあげている。

 

ジェウクはロコモコ定食を食べながら戦勝記念式典についての私見を述べた。

 

第一次星間大戦は奇跡の勝利であり、今こうして生きて過ごす事だけでも僥倖だ。

生きているからこそ、経済基盤や文明の回復や短距離・超長距離移民船団による銀河播種計画により、地球人類の生活圏の拡大が行えている。

 

リン・ミンメイ

 

先の大戦ではSDFー1マクロス艦内で行われたミス・マクロスで誕生した歌手リン・ミンメイがボドルザー基幹艦隊決戦の最中で歌い、勝利の鍵を握った。

 

「8年前のASHES・TO・ASHESのライブでリン・ミンメイを見たが分かる気がするな。」

 

8年前のメガロード01船団から来訪したリン・ミンメイのライブ『ASHES・TO・ASHES』がクラビウススタジアムにて行われた。

新統合軍中佐としてイベント警備隊長としてミンメイの歌、熱狂するゼントラーディ人達の姿を見て何故先の大戦を勝ち抜けたか理解した。

 

 

第1次星間大戦は確かに辛い戦争であったかもしれないが、得られた物は遥かに大きい。

今では銀河各地に新統合政府の存在感が大きく、旧時代のアメリカ合衆国のような覇権を握れた事は先の大戦において大きな成果だとジェウクは評価した。

 

「!?あ・・あの人は!?」

 

「軍の大物のお出ましだな。」

 

牛ロースカツ丼を食べていた石崎市議とグラスリー市議は市役所食堂に来訪した人物を見て驚いた。

制帽を被り将官用制服を着用し、副官2名と秘書士官を引き連れ堂々と歩いている。

将官用制服を着用している士官はジェウクの前に立ち止まった。

 

「イ・ジェウク市議、久しぶりだな。」

 

「白川提督、先の選挙戦以来です。」

 

「うむ、少し話がしたいから基地から出向いた。久しぶりにそれぞれの近況でも話し合おうじゃないか。」

 

士官の正体は白川提督であった。

 

白川提督は副官の秩父大佐や在原大佐、秘書士官のメロディーを引き連れジェウクと話をするために市役所食堂を訪れた。

 

石崎市議を初めとするクラビウス市議達や警備の常駐警察官は勿論、一般市民も驚いて見ていたが白川提督は気にせず堂々と振る舞っていた。

 

「話し合おうって第2総軍副司令の立場である提督が堂々と、もしもの事があったらどうするのです?」

 

「心配なく優秀な護衛はおりますので。」

 

「優秀な護衛?」

 

「桐原少佐、吉野大尉きたまえ!」

 

第2総軍副司令の立場でありながら、護衛をロクに付けず手荷物検査があるとは言え堂々と市役所を歩く事がジェウク的には不安で仕方がなかった。

そんな事を知らずか白川提督は笑顔を浮かべたままハンドサインをすると、4人の士官が近づいてきてそのうち2人がジェウクの前に並び敬礼した。

 

「自分は第64飛行隊・隊長切原茂人少佐であります。」

 

「同じく副官・吉野大樹であります。」

 

「私の部下達だよ、一応私服MPもいるがね。」

 

「流石に職権乱用じゃないか、まったく防大の頃から変わりませんね。」  

 

やってきたのは茂人と大樹だ。

きちんと制帽を被り乱れぬ動きで敬礼するなど、普段よりも真面目な態度をとっている。

ジェウクに挨拶を終えると2人は下がると、大樹が不満げな表情を浮かべ本音を吐いた。

 

「なんで俺までこんな事を・・・」

 

「提督の気まぐれだよ、私服MPもいるのに俺も護衛で使うし。」

 

「本当に分からんな。後ろに控えている本多中尉とイ少尉が引いてるぞ。」

 

突然軍司令部から召集命令がかかり、クラビウス沖で停泊中の空母シナノで副隊長業務してた大樹は愛機に乗り制服を持ってクラビウス基地に向かい同じく茂人とアンサーズ中隊に配属された隊員と共に召集先に向かった。

召集内容が護衛兼クラビウス市議会議員のジェウクに挨拶する事とは・・・

 

「ほうここの食堂、タブレット式か・・・軽くたこ焼きに・・・」

 

「本日の要件は・・・・・」

 

「ビールだな。」

 

「そうそうビール、なっビールだと!?」

 

自由すぎる白川提督の暴走は続く、前に座ってタブレットを開きたこ焼きとビールを注文した。

勤務中に飲酒と言う前代未聞の行為にジェウクは絶句し、遠くから見ていた石崎市議は飲んでいたコーヒーを思わずむせてしまう程驚いた。

 

「何しに来たんです提督、まさかビール飲む為にしかも仕事中に・・・」

 

「堅いなジェウク、まぁいいトークメインデッシュはこの2人ではない単に上官だからな。」

 

「何?」

 

「本多中尉、イ少尉きたまえ」

 

今回来訪した目的はビール飲む為でも、部下をお披露目する為ではない。

きちんと目的があって市役所食堂で話し合いをしているわけだ。

白川提督の命令で後ろに控えていた男女の士官らが前に出るとジェウクは驚いた表情を浮かべた。

 

「え・・・エラ!?」

 

「父上、お久しぶりであります。」

 

「本多義輝.中尉であります。彼女はイ・エラ少尉で私の副・・・・」

 

「私の娘だ・・・・皆までいい。」

 

驚いた理由は娘イ・エラがパイロット要員のベレー帽と女性制服を着用し、目の前に現れたからだ。

 

長男と次男が将校として軍へ、新星インダストリー社に入社した長女以外の娘3人皆軍人希望で軍学校に通っているが内心最前線へ送りたくないと思っていた。

次女であるエラはわずか16歳で軍に志願し反対を押し切りVFパイロットになった。

1年半の学生生活の後、ケロヨン中隊に配属され実戦を経験している。

 

同じく配属された本多義輝中尉はエラの上官でケロヨン中隊からの付き合いであり、エラは義輝の副官としてアンサーズ中隊に配属されている。

 

「提督、これはどう言うつもりだね?私の娘を前線に・・・・」

 

「今回のトークメインデッシュはまさにそれ、私が行う計画の為.イ・エラ少尉を貰い受ける。」

 

「正気か・・・・」

 

トークメインディッシュはエラをアンサーズ中隊の一員として貰い受ける事だ。

エラがVFパイロットに志願する際に反対したジェウク本人で、

 

「ジェウク、今後の為話し合いでもしようか。」

 

不敵な笑みを浮かべながら白川提督はジェウクに話し合いを提案した。

 

後ろから見ていた茂人は対等な話し合いと言うよりかはワンサイドゲームになるだろうと思った。

なんせジェウクの票田の半分は白川提督が握っており、何よりトーキングスキルがかなり高い。

 

話し合いは終始、白川提督が圧倒しジェウクはエラのアンサーズ入りを反対するも正論をぶつけ続け最終的にエラの自身の意思もあってか最終的に了承合意に至った。

 

「反論しても圧倒され負けるだけか、なるほどな。」

 

この場にいる面々は、改めて白川提督が恐ろしい人物だと認識した。

若手で副官である大樹はなるべく敵にしたくないと畏怖の念を抱いた。

 

 

【同時刻】

【地球軌道上衛星都市エクシア・ローダー宙域】

【ケアドウル・マグドミラ級メルトラス】

 

第29海兵隊はL4にある衛星都市エクシア・ローダー建設現場防衛の任に就いていた。

防衛任務に就いているものの、至って平穏であり戦闘こそ趣向と言うゼントラーディ海兵隊員からすれば退屈極まりない日々を過ごしていた。

 

「ベルタリア隊、発進!」

 

ラウラ達は担当宙域の哨戒任務の為出撃した。

 

模擬戦以降のラウラは絵理に言われた事やVFの操縦性に魅了され、今後どうするかは悩んでいた。

転属するにせよ、アンジェミラやメフィリアら長年苦楽を共にした戦友との別離を意味しておりその事を考えると躊躇ってしまう。

 

それでもマイクローン化し、自分自身が変わっていきたいと思っていた。

 

その頃、ラウラ達のパトロールルートの先のある宙域では民間の輸送艦が航行していた。

 

10年後に公開される戦勝20周年記念映画Remember・LОVEに登場する勢力・メルトランディ軍のピケット艦として使われている、ゼネラル・ギャラクシーが開発製造したマヤン級輸送艦でありリチャード・ビルダーが経営する星間運輸の所属艦クロスレイである。

 

エクシア・ローダー建設用の資材を運搬しており、星間運輸が所持するオーベルト級駆逐艦2隻を含む私設軍隊S.M.Sが護衛に就いていた。

 

S.M.Sとは星間運輸が所持する私設軍隊であり、元新統合軍人や元反統合ゲリラ出身者で構成され星間運輸輸送艦の護衛や要人警護を主な業務としていた。

 

後に38年後のフロンティア船団で起きたバジュラ戦役で当支部所属だった早乙女アルトやオズマ・リーなどの面々や後にマクロスクウォーター艦長となるブラックパンサーズ中隊のジェフリー・ワイルダーが活躍するのだが、それはまた別の物語である。

 

「輸送艦を確認、都市建設の為の物と思われます。」

 

「上物だ・・・攻撃準備」

 

エクシア・ローダーに向けて移動中のクロスレイを見つめる異型のVFー1の姿があった。

 

機体名Svー53フルクラムⅡ

 

裏取引ないし鹵獲されたVFー1バルキリーをリバースエンジニアリングし、MIGー29の翼を備え付け比較的安価で生産されている可変戦闘機である。

 

反統合ゲリラやテロリストに販売もしくは横流しされており、多数の機体が確認されていた。

 

反統合ゲリラのSvー53はバトロイド形態からファイター形態に変形しクロスレイに強襲を仕掛けた。

 

「敵可変戦闘機確認!アンゲロス小隊.ウリエル小隊、迎撃せよ!」

 

輸送艦は星間運輸所属であり、クロスレイから護衛の企業私軍であるS.M.SのVFー1が出撃した。

2個小隊からなるS.M.S護衛戦闘機部隊は反統合ゲリラの襲撃に迎撃し、数的不利を質で補い一進一退の攻防を繰り広げた。

 

『メーデーメーデー、こちら星間運輸所属輸送艦クロスレイ、ゲリラの攻撃を受け苦戦中。新統合軍に対し救援を求む・・・・』

 

「マイクローンからの救援?」

 

「ラウラ、私達の方が一番近いから救援に・・・」

 

「そうだな、よし行くか・・・」

 

ラウラ達は輸送艦からの救援要請を受け取った。

 

S.M.Sと反統合ゲリラとの戦闘宙域から一番近い新統合軍部隊はラウラ達であり、真っ先に駆けつけられる位置にいる。

優れた戦果を残せると期待していた。

 

だが・・・・・・・

 

「デ・マーカ・・・プレ・ガドラス・・・」

 

戦闘宙域に着く頃には戦闘が終了しており、S.M.SのVFー1が戦後処理を行なっていた。

既に反統合ゲリラのSvー53部隊は壊滅しており、残機はS.M.Sにより武装解除されていた。

 

「完全に出る幕もないか・・・・」

 

武装解除される反統合ゲリラの姿を見てラウラは酷く落胆した。

まるで自分達が時代遅れの産物かのように。

 

その後、エクシア・ローダー基地からVAー3インベーダー編隊が飛来しS.M.Sが拿捕した反統合ゲリラのSvー53の残存機を引き取っていた。

 

落胆しながら帰還の途についたラウラだったが、思わぬ事態がこの後起こる事をまだ知らなかった。

 

「ベルタリア曹長!」

 

「フリジェル軍曹か、どうした?」

 

帰還すると先の模擬戦で一緒になったクァドラン・ノナパイロットのミュレが話しかけてきた。

何やら嬉しい事があったのかミュレの表情が明るかった。

 

「なんか嬉しい事あったの?」

 

「もしかしてクァドラン・ロー乗りに昇格とか?」

 

アンジェミラとメフィリアはてっきりミュレの実力が認められ、簡易量産型のノナからローに乗る事になったのではないかと思っていた。

ミュレの実力は高くラウラ自身、この前の模擬戦で頼もしい存在だと認識していた。

 

そんなラウラ達の認識にミュレは首を横に振り、口を開く。

 

「実は私、転属しようかと思ってます。」

 

「転属?何処へ?」

 

「ハッ、マイクローンになりVFパイロットに志願しようかと思っております。」

 

「えっ・・・・」

 

転属・・・マイクローンになりVFパイロットになる。

 

ミュレの衝撃的な一言にラウラは激しい衝撃を覚えた。

堂々と躊躇いもなくゼントラーディ軍人としての生き方を捨てマイクローンになりVFパイロットになるミュレに失望感を覚えたが、何処か羨ましく思えた。

 

なんせ、ラウラは優柔不断・・・・今後どうするか決められていないから・・・

 

「今度、工業衛星に寄港するんですけれども転属希望者を引き取りに月面アポロ基地からシャトルが来るのでそこで私は他の希望者と共に海兵隊去ります。」

 

「残念だね、ミュレの実力ならばローに乗れたのに。」

 

「いえ今のままだとローよりも高性能な機体に乗れないので実力高め、マイクローンの作る新型に乗ってみたいんです。」

 

ゼントラーディ軍海兵隊は接収したゼントラーディ軍装備をそのまま運用したり、地球の技術で改修された兵器を運用している。

反面、旧来の装備のままであり革新的な最新鋭機はVFやデストロイドなどに集中しており、時代遅れと言う印象が強かった。

 

先の模擬戦で多種多様な装備と機種を誇るVFを見たミュレは海兵隊に居続けたら、自身は何も進歩できないと感じマイクローン化し転属を望んだ。

 

「ベルタリア曹長、私はいつまでもゼントラーディ軍人として生き続けるのは無理です。曹長の後期とは言え、私は地球人としての人生歩みます。」

 

「私からは何も言えない、軍曹・・・好きにしろ・・・」

 

「ハッ好きにさせてもらいます。ですが、曹長からの恩は忘れません。では失礼します。」

 

ミュレは今の今までより目が輝いていた。

それに比べ自分は何も決められず、過去の事でいつまでも引き摺っている。

下級兵であるミュレは堂々と進路決めてるのに、上級兵である自分は何も決めれてない。

 

本当になんだろう・・・・

 

下級兵であるミュレが未知で危険な道を進む覚悟があるならば、自分に出来ないはずがない。

 

「ラウラ〜何ボケっとしてるのよ?」

 

「早くしないと飯の時間遅れるぞ!」

 

「すまん、考え事していた。」

 

興味があるのに怖気づいて転属を躊躇うか、ミュレのように勇気を持ってマイクローン化し転属してVFパイロットになってみるか。

 

ラウラは歩きながら意を決して重大な決断を下した。

 

【西暦2021年1月26日15時2分】

【月面クラビウス基地宇宙港】

 

この日、ゼントラーディ海兵隊転属希望者引き取りの為クラビウス基地人事局からヴィルフリート・フォン・ロイエンタール少佐以下の兵員の出発式が執り行われていた。

 

「ヴィルフリート・フォン・ロイエンタール少佐以下、11名.転属希望者受領の為出発します。」

 

「うむ、無事任務完遂頼むぞ。」

 

「ハッ」

 

ロイエンタール少佐を始め副官を含む人事局隊員5名、警護警務官6名による編成でありアポロ基地にてアポロ基地人事局員団と合流しゼントラーディ工業衛星に向かう予定である。

 

「ゼントラーディ人の転属希望者か・・・・」

 

「八原参謀、連中信用できますかね?」

 

「信用も何も人手不足だからな、生物兵器連中を信用したくないが縋るしかない。」

 

ロイエンタール人事局団の出発を見送った後、保安参謀八原博嗣大佐はタバコを吸いながらこれから迎えるゼントラーディ人に不信の意を顕にしつつも人員不足だからと言う理由からか諦めの表情を浮かべていた。

 

月面はゼントラーディ人に対する忌避感や不信感は地球に比べ少ないものの、それでも持つ層は一定数存在する。

 

まだまだ戦争により引き起こされた溝は深い。

 

「ロイエンタール少佐・・・」

 

「どうしたユク少尉?」

 

「今回の任務上手くいきますかね?」

 

マイクロシャトル.スター・グースの機内にてユク・ミヨンが不安そうにロイエンタールに作戦が上手くいくかどうか聞いた。

ミヨンは配属されてから浅く初めてゼントラーディ人転属者を引き取りに行く任務に従事するので不安に駆られていた。

 

「心配するな、地球人ではないとは言え同じ人間だ。普段通りにやればいい。」

 

「はぁそうですか・・・・」

 

「最初は厳しいだろうが、次第に気にしなくなる。頑張れよユク少尉。」

 

ロイエンタールは不安がるミヨンに同じ人間として普段通りに接すればいいと諭した。

ゼントラーディ人も地球人関係のない、ただ人事局員としての業務を遂行すればいいと。

 

その言葉を聞いたミヨンは胸をほっと下ろし安心したが、ロイエンタールは辛気臭い笑みを浮かべ仕事中なのにラム酒の入ったグラスを口に近づけた。

 

【同時刻】

【月面アポロ基地宇宙港】

 

アポロ基地の宇宙港では同じように人事局団の出発式が執り行われていた。

クラビウス基地からの人事局団を迎えた後、オーベルト級宇宙駆逐艦ゴダードに乗艦し目的地である工業衛星に向かい転属希望者を引き取る予定である。

 

「元上官であるミリアを迎えるとは不思議な気分ですね♪」

 

「お前・・・私と同じ階級になったからと言ってますます態度がデカくなったな。」

 

「今はゼントラーディ軍ではなく新統合軍です。それに元部下ですし、同じ階級で同じ立場で対等です。」

 

人事局団を他所に、絵理はミアンと共にシーアンタレス隊に出向してきたミリアを出迎えた。

絵理は元上官であるミリアに対し、同じ階級とあってか態度がデカかった。

既にゼントラーディ軍人でもなく上官部下の関係でもなく、新統合軍人であり別部隊の人間であり何言われようとも気にしなかった。

 

「全くお前は地球の文化に染まりすぎだ。結婚してゼントラーディ人としての名も捨てて、星村絵理と・・・・」

 

「いいじゃないですかミリア、今の私は地球人の星村絵理♫ゼントラーディ人のモーア・ カリダムじゃないですから」

 

「少しはゼントラーディ人としての誇りは残しておけな(はぁ)」

 

「(それに関しては同感です、ミリア1級空士長・・・・・)」

 

絵理はミリアの部下の中で一番地球文明に感化されているかつ、比較的裕福な生活を送っており今日に至るまで様々な事を楽しんできた。

夫の和也と結婚する前も親族の養子入りし、自ら名前を考え星村絵理と名乗っておりゼントラーディ人であるモーア・カリダムとキッパリ決別していた。

 

ミリアは地球人化する絵理に少しでもいいからゼントラーディ人としての誇りを持ってほしいと思っていたが、無理だなと諦めた。

 

「今が楽しいからいいじゃないですか、味気ないゼントラーディ軍時代と比べたら最高。」

 

「味気ないと言ったら戦死した仲間が報われんぞ」

 

絵理にとってゼントラーディ軍時代は味気なく、今は物凄く楽しい。

味気ないの発言にミリアはゼントラーディ軍時代に失った戦友達を絡め苦言を呈した。

 

「死んだ仲間の為にも私達がその分楽しめば問題はないない。」

 

「それもそうだ・・・ってお前が楽しみたいだけだろ!」

 

「(これから作戦会議あるのに大丈夫かな、この二人)」

 

絵理とミリアの会話を見てミアンはこれからある作戦会議が上手く事が運ぶか不安になった。

楽天家である絵理と真面目なミリアの関係は水と油のようであり、よくゼントラーディ軍時代同じ部隊でやってこれたなぁと思った。

 

「星村中尉、そろそろ仕事モードに・・」

 

「そう」

 

「いつもこのぐらい真面目に出来ないのかしらね?」

 

ポーカーフェイスのままミアンは絵理に仕事モードに入るように進言した。

流石の楽天家も状況を理解したのか、夫に迷惑かけない為仕事モードに入った。

 

しばらく淡々と会議室に向け歩いていたが、絵理の表情が崩れた。

 

「さてあいつ、そろそろ来るかな。」

 

「ん?モーア・・・・あいつって誰だ?」

 

「ん?内緒、どうせいつか会えると思うから言わな〜い。」

 

「はぁ?」

 

表情が崩れた絵理は両手を頭を押さえながら、ラウラがマイクローン化し転属する事に期待した。

必ずVFパイロットになる、あの時ここまでボロ負けさせれば悔しさから転属しVFパイロットとなって自身に対しリベンジしに来る。

 

ラウラ・ベルタリアはそんな女(メルトラン)だ!

 

またまた聞いていたミリアは気になって質問をしたが、絵理はお茶を濁すかのように誤魔化した。

 

 

 

【2021年1月26日17時30分】

【第4工業衛星沖・航行中】

【ケアドウル・マグドミラ級メルトラス】

 

ラウラは艦長室の方に向け一人歩いていた。

第29海兵隊司令ガミロフ・ボーマン大佐と面会し、自身の本音を打ち明け転属を申請するためだ。

 

ミュレの姿を見て何も決めれてない自分に嫌気が差し、意を決して転属する覚悟を決めた。

 

面会し転属する旨を伝えるとガミロフは疑いの目でラウラを見ながら、口を開いた。

 

「お前が転属ね。」

 

「はい、悩みましたが・・・・・」  

 

「マイクローンの連中も、人手不足だし。転属は受理できる。」 

 

予想に反してあっさり申請は通った。
 
それもそのはず、現在新統合軍は人手不足である。
先の大戦での被害により、人的リソースが足りないのだ。
開拓惑星の原住民やゼントラーディ人の編入、クローンなど人口を回復しているが、移民船団などなど人的リソースは足りない。

全て軍人と言うわけにもいかないので、2020年に入っても新統合軍は慢性的な人員不足に悩まされていた。

そんな中のラウラの転属は歓迎される話だった。

ラウラは嬉しがるが、予想外の事がガミロフの口から伝えられた。

 

「転属したいと申し出た兵はお前だけじゃない。」

 

「知ってます、フリジェル軍曹が話してましたので。」  

 

「ゼントラン5名、メルトラン6名。貴様を含めたら7名。戦力としては大損害だがな。」

 

転属希望者はラウラやミュレを含め計12名、1個中隊に相当する人数だ。

第29海兵隊としては大損害だが、投降し恭順した兵士を代わりに補充する為問題はない。

 

「アポロ基地、クラビウス基地の機種転換センターですか?」

 

「そうだ。訓練の為、クラビウス基地の方に行ってもらう。」

 

「しかし、実戦部隊・・・・」

 

「貴様にいきなりマイクローンの部隊に転属するのは、不味すぎる話だ。地球の習慣知ってるのか?」

 

「いえ・・・」

 

転属先はクラビウス基地の機種転換センターとされた。

実戦部隊に配属されるかと思っていたラウラは驚き何故機種転換センターに配属されるかと質問をしようとしたが、ガミロフからの逆質問され不発に終わる。

 

地球の習慣を知っているか?

 

当然の事ながら第1次星間大戦後も新統合軍海兵隊員とは言え実質ゼントラーディ軍同然の生活を送っている為、地球の習慣は知らない。

これからVFパイロットになるには地球の習慣は覚えなくてはならん。

 

「給料は?」

 

「給料?何それ?」

 

「この大馬鹿者が!それで転属とはいい度胸だ!それに可変戦闘機には資格だけでなく地球の風習に慣れる事も必要なんだぞ!」

 

「ひっ・・・・そうなんですか?」

 

習慣の知らないラウラだが、事前に給料と言う概念もなかった。

転属希望者は給料の事を上級士官から教わるが、ラウラの転属動機が突然だった為.上級士官から給料の事を教わらなかった。

 

給料を知らないと発言したラウラにガミロフは激怒し、給料とは何かを一から十まで教えた。

 

「地球のエルメンドルフ基地も候補にあったが、流石に地球は厳しすぎる。」

 

「はい」

 

「工業衛星到着.後各種準備!マイクローン装置は既に起動可能だ!後は人事局員団の指示に従え!」

 

「はい・・失礼しました」

 

いろいろ話をして1時間、ラウラのマイクローン化し転属する事が決定した。

工業衛星到着後、マイクローン装置を使い地球人サイズになった後人事局員団と合流し制服やキャッシュカードを受け取り月面に向け出発するだけだ。

 

以外と簡単に事が進んだ。

知らなかった事があったけど、なんだかんだ上手くいけそうな気がした。

 

ただやり残している事が1つある・・・・

 

「私・・・・転属しようかと思う」

 

『えっ』

 

戦友であるアンジェミラとメフィリアに転属する事を報告する事だ。

突然の報告に二人は驚き、涙目になっていた。

 

「本気なの?転属なんて・・・・」

 

「私は可変戦闘機に乗ってみたい・・・・・転属しかないわ」

 

「転属・・・・突然すぎるわ・・これからも一緒だと思ったのに。」

 

当然の反応だった。

人員製造衛星で製造後、同じ隊に同時期に配属され数々の激戦をくぐり抜け生き延びてきた仲だ。

それがいきなり無くなって離れ離れになるのは辛すぎる。

 

「ごめん、メフィリア.アンジェミラ。でも私は生きる意味を探してみたいと思うんだ。」

 

「本気なんだね?」

 

「私だって離れたくない・・・・でも私はやりたい事を初めて見つけたから。」

 

戦友との分かれは辛いがやりたい事を見つけたから自ら行動して実行に移したい。

今のラウラの心はそれしか考えていなかった。

 

かつてマイクローン化し転属していったシュリ達のように、自ら進んで行って新しい価値観を体験して自分自身を変えてみたいと。

 

「私が死ぬわけじゃないし、悲しまないでよ。」

 

「そうだけど、やっぱり寂しいから辛いわ。」

 

「共に生き抜いてきたし、離れ離れになるのは嫌よ。」

 

「アンジェミラ、メフィリア・・・・・」

 

それでも生まれてずっと過ごしてきた戦友達は泣き崩れた。

ラウラは今までアンジェミラとメフィリアに大事にされたからこそ今まで戦ってこれたんだなと思うと、思わず涙が流れた。

 

「ごめんね私は、転属する。ここでしなかったら、私は前へ進めなくなる。だから行かせて、必ず生きて会いに来ますので。」

 

転属すると覚悟を決めたので、今更やめるわけにはいかない。

立派なVFパイロットになり、二人の下に戻ってくる。

ラウラはゼントラーディ軍式の敬礼をして、2人に約束をした。

 

「まぁ言いだしたらしょうがない。」

「頑張りなさい、応援してるわ。」
 

決意を聞いたアンジェミラとメフィリアは新たな世界に旅立つラウラを応援する事を決めた。

ボドル基幹艦隊決戦後、死に場所を求めていた感があったので10年間心配していた。

死に場所を求め生きてきたラウラに生きる意味を持てたと言うのが嬉しかった。

 

2人は悲しい半面、生きる意味を持てたラウラを新たな世界に応援しながら送り出そうと思った。

 

「うん、私・・・頑張ってくるよ」

 

二人の応援にラウラは奮い立った。

立派なVFパイロットになり、必ず戻ってきて再会してやると。

 

シュリだって自ら進んでやって見せたんだ。

私にも出来ないはずがない。

 

ラウラは拳を握りしめ、これからの人生を挫けずに頑張ろうと誓った。

 

【西暦2021年1月26日19時4分】

【月面シッカルトクレーター上空】  

 

空母シナノはシッカルトクレーターにてオーベルト級駆逐艦カーペンター.コルホーンの護衛の下、VF2個小隊が発艦した。

 

リーダーズ・ベネフィットフォーメーションを組むのはブラックパンサーズ中隊のVFー4ライトニングⅢのクーガー小隊とダンパー小隊である。

 

「エネミータリホー・クーガープラトゥーン・コンバットオープン!」

 

先頭を行く大樹はシュリやリックそしてジェフリー率いるダンパー小隊に敵を目視で発見、戦闘開始を大きな声で告げた。

 

サーベル小隊の護衛で守られているVEー1エリントシーカーからの敵に対する電波妨害の支援の下、一斉に急降下しながら目標の敵に対し攻撃を開始した。

 

「レーダーに乱れ、新統合軍の来襲!」

 

「犬どもめ!返り討ちにしてくれる!」

 

ゼントラーディ軍のピケット艦を改造したゲリラ組織の駆逐母艦からSvー53とSvー51の混成部隊が出撃してきた。

数は24機数は4倍であり、クーガー小隊とダンパー小隊は圧倒的に不利である。

 

「各チーム散開!ジェフリーは俺に続け!5分だけ持たせろ!」

 

「「了解」」

 

ただでさえ不利なのに部隊を3つに分けた。

これにより敵の数12倍となり、誰が見ても無謀と言ってもいい状況になった。

 

「相手はたったの2機?楽勝だな!」

 

だが、ゲリラ組織の飛行隊長は大樹達が2機だけで襲撃してきたと勘違いをした。

電波妨害と、シュリ達が後方にいた為分散した事に気が付かなかった。

 

「ぶちかませぇっ!」

 

戦闘を開始すると二人は圧倒的数的不利ながらも奮戦していた。

ジェフリーはゲリラのSvー53とすれ違う寸前にスーパーパックをパージし、サーファーが記念が波に乗るかの如く機体を動かしバトロイド形態に変形し撃墜した。

大樹は斜め宙返り左横滑り左捻り込みを駆使し、複数のゲリラ飛行隊を翻弄した。

 

「仕上げだ!全機突入せよ!」

 

ゲリラ飛行隊を翻弄している隙にシュリとリック達ら各2機のチームが左右から攻め込んだ。

大樹は自身とジェフリーを囮にして各部下達を二手に分けゲリラ飛行隊を包囲殲滅をする釣り野伏せに似た戦術を考えていた。

 

左右から攻められたゲリラ飛行隊は数は勝っていたが強襲により混乱が生じ総崩れになり、次々と撃墜され全滅していった。

 

「バカな3分も経たずに24機の可変戦闘機が壊滅!?化け物か!残りの機を出せ!我が艦を守れ!」

 

圧倒的戦力を誇っていた飛行隊がたった6機のVFにより全滅させられた。

艦長は予備機を出し艦を守らせようとした。

 

だが、ここでトドメを刺す一報が部下から届く。

 

「艦長!」

 

「なんだ?」

 

「背後より新統合軍艦隊です!」

 

「なんだと!?」

 

アームド級宇宙空母アルタミラ以下オーベルト級宇宙駆逐艦3隻がゲリラ組織母艦の背後から接近、更にVFー5000スターミラージュ配備の3個中隊が発進していた。

 

更に大樹達の増援として無人機ゴーストを引き連れたサーバル小隊が参戦した。

 

「ぬわぁ!?」

 

「降伏しろ!ゲームオーバーだ!」

 

大樹はゲリラ駆逐母艦の艦橋にガンポッドを向け降伏を促した。

抵抗しようにも周辺には大樹含む57機の新統合軍VFに囲まれており、ゲリラ母艦の艦長は観念し降伏する決断を下した。

 

「アポロ基地と我が基地の航路の反政府組織やはぐれゼントラーディの排除、颯爽獲物が出てきて大手柄ですねぇ大尉。」

 

「ジェフリー、本来なら存在してはダメな連中だぞ。」

 

拿捕した反統合ゲリラの母艦を曳航する空母アルタミラと護衛艦と所属飛行隊のVFを見ながら大樹達は戦後処理をしていた。

 

白川提督の嫌なやり取りを見せられてすぐ原隊に戻り、反統合ゲリラやはぐれゼントラーディの掃討をやらされており大樹は何処か不満げだった。

ジェフリー相手に愚痴を言い続ける大樹に一件のメールが届いた。

 

「なんだこのメール?海兵隊からの転属希望者名簿.新統合軍クラビウス人事局・・・」

 

何故か知らないがクラビウス人事局から転属希望者名簿がメールで届いた。

VFのモニターを開きメールを開き、転属希望者名簿を読んだ。

 

「ん?これは・・・・こいつは・・・」

 

赤マーカーに塗り潰された名前にラウラ・ベルタリア曹長と言うのを見つけた。

シュリのかつての戦友で石頭で転属しそうにないラウラの名前が転属希望者名簿に記載されていた。

 

更にメールにはラウラが無事に到着するよう、反統合ゲリラやはぐれゼントラーディを掃討するようにと言う命令が記載されていた。

 

「なるほどな、何故今この任務やらせているのか理解できましたよ。」

 

大樹はメールの送り主が誰なのか想像が出来た。

クラビウス人事局名義だが、背後にいるのは白川提督であろう。

わざわざ転属希望者名簿を送ってくるとは危ない橋を渡るにも程がある。

 

「吉野大尉!」

 

「・・・・・」

 

「吉野大尉!!聞いてますか!!」

 

「おおうすまんな。」

 

転属希望者名簿を見るのに集中していた大樹は話しかけてきたシュリを無視してしまった。

無視されたシュリはかなり怒ってる様子だった。

 

薄っすら忘れかけていたがラウラとシュリは同じ海兵隊・同じ部隊の出身だ。

ラウラが転属すると言う事を伝えたいが、極秘事項の情報なので言えない。

 

『クーガー小隊、ダンパー小隊ただちにシナノに帰還しサーベル小隊とピューマ小隊と交代せよ!』

 

「了解!クーガー小隊帰還する。」

 

「ダンパー小隊、同じく帰還する。」

 

シナノの若い女性オペレーターから帰還するように指示が出た。

まだまだアポロ基地とクラビウス基地間の航路の反統合ゲリラやはぐれゼントラーディを掃討し安全を確保しなければならない。

 

指示を受け大樹とジェフリーは母艦シナノへの帰還の途ついた。

 

この後、思いもよらない出来事でラウラと大樹が初めて出会うのだがそれは少し後の話。

 

次回予告

 

次回、マクロス外伝蒼い髪のメルトラン

 

マイクローンになったラウラはクラビウス基地機種転換センターに向けて旅立った。途中で立ち寄ったアポロ基地にて、戦争以外の楽しみを知ることになる。

 

次回

マクロス外伝蒼い髪のメルトラン

 

カルチャー・ファースト・コンタクト

 

新しい扉を開け!ライトニング!

 

前回

 

次回

 

 

【西暦2021年1月18日午後15時 冥王星】

 

新統合軍.第29海兵隊と任務航空団・シーアンタレス隊の演習が始まって1時間が経過した。

海兵隊は作戦により任務航空団に対し優位に立ったが、シーアンタレス隊の参戦により一気に劣勢に追い込まれてしまった。

 

「こちらコーカサス3、敵1個小隊沈黙完了。」

 

「こちらコーカサス7、敵指揮官制圧。敵指揮系統を分断完了したわ。」

 

シーアンタレス隊は当初、隊長である星村和也大尉の父統合軍提督星村謙三中将の七光部隊と言う侮辱的仇名が付けられていた。

その後数々の功績を残し、次第に七光部隊と呼ばれなくなった。

星村絵理と星村和也の実力が高いだけでなく、人員も優れたエースや能力の高い乗員などがおり高い組織戦を行えるエキスパート集団となっている。

 

「何だこいつら?」

 

「一瞬で複数の部隊が殲滅されただと!?」

 

「模擬戦でこれじゃ、俺達は全員戦死だぞ!」

 

高い組織戦は強力であった。

少数精鋭であり、2つの実働部隊と2つの支援部隊計24機で多数の反統合組織やはぐれゼントラーディの部隊を討伐していった。

 

「デストロイド・ドーントレス隊前に出せ!」

 

シーアンタレス隊の母艦であるサドワラ艦長.醍醐忠義大佐は艦隊直掩のデストロイド・ドーントレス部隊を前面に出すように指示を出した。

デスストーカー隊.イエローファットテール隊のデストロイド・ドーントレス部隊は最前線に急行し、シーアンタレス隊や任務航空団を支援攻撃を開始した。

 

「醍醐大佐、いい支援だね。」

 

「デスストーカー隊は副隊長のスコーピオン隊支援するようですね。」

 

「まぁ絵理の実力であれば、必要はないと思うけどね。」

 

ドーントレス部隊の活躍は和也を唸らせた。

高機動を駆使し、連装ビームカノンで海兵隊のクァドラン・ローですらいとも簡単に命中させた。

回避した機体は和也直結のコーカサス隊や各支援隊が撃墜し効果は2倍に発揮した。

 

「実際の敵として現れたら恐怖でしかない。」

 

撃墜判定が出て離脱する海兵隊員はシーアンタレス隊が敵として現れる事に恐怖を感じた。

実戦部隊のパイロットの実力、徹底した組織戦と戦術どれも見事と言ってもいい。

見事が故に敵にしたら恐怖でしかなく、同じ新統合軍で良かったと思った。

 

「ラウラ大丈夫かな?」

 

「まだ帰還してないから大丈夫だろ。」

 

アンジェミラとメフィリアは艦内のモニターで他の撃墜判定者と共に戦場の様子を見ていた。

真っ先に狙撃でやられた二人は、演習の大半はモニターで見て過ごす事となった。

模擬戦の様子は観測用リガードが撮影しており、各艦内のモニターで放映されていた。

 

「あれは!?」

 

「ラウラ!?」

 

モニターにラウラと絵理が戦っている姿が映し出された。

ラウラは善戦しているように見えるが、絵理に押されている一方である。

二人はVFー3000クルセイダーに乗っているのは絵理と知らないが、動きから見てかなり手練れの同胞(メルトラン)であると見抜いた。

 

「ラウラ・・・・」

 

ただ見ているだけしか出来ないアンジェミラとメフィリアは望みは薄いとは言えラウラが絵理を制し最後まで生き残る事を祈るしかなかった。

今二人に分かるのは、完全に負けるのは我々第29海兵隊であると・・・

だからこそ、ラウラに生き残ってほしい。

 

長年の戦友として今まで苦しんでいたところを見ていた者としてそう願うばかりだった。

 

 

ラウラと絵理の戦闘は続いていた。

近くは先の大戦でマクロスのフォールドに巻き込まれ、宇宙の目ずくとなったアーレイ・バーク級駆逐艦やワトソン級輸送艦が漂っておりそれを足場にして死闘を繰り広げていた。

 

「マイクローンの死体か・・・・小さいな」

 

ラウラの目の前に先の大戦で南アタリア島で亡くなった女性兵士を始めとする複数の遺体がまるで生きているかのような姿で目の前で見えた。

宇宙区間では地球上と違い完全な分解プロセスがないため朽ちる事がない。

11年経った今でも死んだ当時のままの姿を保っている。

だが宇宙空間に晒された遺体は未知の病原菌等の関係で回収されず、今もこうして漂っている。

 

「もらった!!」

 

「くっ」

 

一瞬の隙だった。

ラウラは女性兵士の姿に気を取られ、絵理の接近に気が付かなかった。

隠れていた物陰から、飛び出てガンポッドで銃撃しラウラは慌てて回避した。

 

「危なかった・・隙を作ってしまうなんて不覚。」

 

隙を作った自身を恥じながらラウラは反撃に移った。

ミサイルを一斉発射しつつパルスレーザーで攻撃するラウラだったが、絵理は愛機の脚部のバーニアを駆使しフレアを撒き急バックからの反転し回避した。

 

「いい加減やられろよ・・・」

 

ラウラは歯を食いしばりながらパルスレーザーを撃ち続けるが、絵理はステップするかのように回避しガウォークに変形しガンポッドを放ち逆襲した。

 

「よく耐えるなぁ、ならばこれならどうだぁ!」

 

「逃げる?何を企んでいる?」

 

絵理は何か閃いたのかファイターモードに変形し、まるで逃げる動きを見せた。 

ラウラは絵理の動きに疑問抱きながらも追撃した。

追撃してくるラウラの姿を見た絵理は振り返り、くすっと笑いながら然りげ無くクァドラン・ローやリガードを撃墜しながら操縦桿を引いた。

 

「消えた!?」

 

「ほぉら!もらったよ!」

 

絵理の姿が突如消えた。

コブラ機動を行い、ラウラの背後についた。

ただのコブラ機動ではない、ファイターからバトロイドに変形した上でのコブラ機動だ。

背後に突かれたラウラは振り返ると、ガンポッドを構えた絵理からの銃撃を受けた。

 

「モーアの奴、いつの間にこんな技能を・・・」

 

「流石はエース級、見事・・・」

 

それでもラウラは回避し、ミサイル攻撃するも絵理は回転するかのように動きながらフレアを放ちながら回避行動を取り、ガンポッドで反撃した。

 

「思い出した、この動きはラウラ・ベルタリア!生きてたのか・・・あの程度で死ぬバカじゃないか。」

 

絵理は目の前にいるクァドラン・ローのパイロットがラウラだと気がついた。

癖や技術はラウラであるが、必ずしもそうとは限らない。

限らないが、絵理的にはラウラだと確信していた。

 

「流石にあいつが上だなんて認め・・・ラック!」

 

「何処から?グラージとリガード、もろに付着したな。」

 

ラウラと絵理の間に突然砲撃が割り込み近くにいたグラージやリガード数基にに命中し全体がペイント弾の色が付着した。

再び砲撃が開始される中、ラウラ達の前にVFでもない機体が編隊を組んでやってきた。

 

「ドーントレス?デスストーカー隊?」

 

「星村中尉殿、援護します。」

 

「河窪中尉か!」

 

デスストーカー隊のデストロイド・ドーントレスが戦闘に割り込んできた。

ラウラと絵理に気にせず、デスストーカー隊はフォーメーション・フィンガー・フォーで高機動を活かし、一撃離脱戦法でラウラを一斉に砲撃した。

 

「あれだけの砲撃を避けるとは・・・ 」

 

「やられたぁ」

 

「各機、3番機がやられた油断するな!奴はエースだ!」

 

ラウラは砲撃と砲撃の間を上手くくぐり抜けるかのように回避し、そのまま反撃しドーントレス3番機をパルスレーザーで撃墜した。

デスストーカー隊は戦術を変え、ラウラ撃墜を目指した。

 

「河窪中尉、支援は不要です。」

 

「星村中尉殿、我々はシーアンタレス指揮下の部隊ではありません。それに戦場では個人の武勇なんぞ優先順位は下位です。」

 

「まぁそれはそれで正論か・・・仕方がない。」

 

絵理は河窪信経中尉に支援は必要ないと抗議するかのように言ったが、河窪中尉は戦場は個人の武勇を誇る場ではないと反論した。

正論を突きつけられた絵理は苦虫を噛み締めながら、戦術変更を考えた。

 

「モーア・カリダム!個人の力を使わず卑怯な!」

 

事情を知らないラウラは激怒した。

一対一に等しい戦いを行なっていたのに、意味の分からない部隊が援護した。

ゼントラーディ軍人の塊やゼントラーディ人の本能そのものとも言うべきラウラからすれば受け入れがたい卑劣極まりない行為だと認識していた。

 

「バレック少尉、スコーピオン3から7を指揮せよ!」

 

「はぁ、フローラン少尉は・・・・」

 

「ミアンは私のロッテパートナー、だから連れて行く!」

 

「はいはい了解しました。(全く自由すぎる人なんだから)」

 

ラウラの猛攻を確認した絵理は副官の一人ジャック・バレック少尉に部隊指揮を命じ、ミアンには自分のロッテパートナーとしてついてくるように命じた。

絵理の命令を聞いたミアンは適当な返事で了承した。

 

「河窪中尉殿、この敵は私達で十分です。私の部下達と共に他の海兵隊を相手にしてはいかがでしょう?」

 

「ぬぅ・・・・了解した。」

 

「ありがとう♡」

 

十分部下に指示出した絵理は河窪中尉にラウラの相手するよりも、部下達と共に他の海兵隊を相手にするように提案した。

的確な指示を出した絵理の姿を見てた河窪中尉は苦虫を噛み潰したような表情で了承した。

 

「よーし思いっきり楽しむぞ!」

 

「いいんですか?一対一ではなくて?」

 

「一応エース兼指揮官なので、戦術駆使して仕掛けるわ!」

 

「指揮官としての自覚強く持ってくださいね。」

 

思う存分、ラウラと戦えるような状況を作った絵理はミアンを相棒にした戦術駆使しようと企んだ。

囮戦術を使うのだが、囮役としてラウラと戦うのはなんと絵理である。

 

「本気ですか?」

 

「いいから、ミアンは周囲のザコ倒しつつ私が引きつけた奴を撃墜。なぁに失敗しても、私が討ち取れば問題ない。二段構えの策、なんちゃって♡」

 

「そんなにお気楽で大丈夫なんですか?」

 

「まっ私にまっかせなさーい」

 

普通であればミアンが担当するのだが、絵理はあえて自分自身を囮役として徹する事を決めた。

ミアンであれば囮役として十分果たせるが、絵理は自身の技量を活かし戦術を持ってラウラを必ず撃墜できる作戦を練っていた。

 

「モーア!?急に!!」

 

真面目に作戦を練り上げた絵理は強かった。

ラウラは絵理のVFパイロットとしての癖を理解し対策を練ったが、予想を上回る技量と戦術を出した絵理に対し無意味だった。

 

「ふっふっふー、ビクともしませんなァー」

 

技量と技術の面で絵理が上回っていたが、本気を出していなかった。

まるで遊んでいるかのような戦い方をしている。

 

「最初から本気を出して来なかったのかよ。そんなに私の事を自分より弱いと思っているのかモーア・ カリダム!!」

 

ラウラは絵理が最初から本気を出さず自身と対峙した事に腹を立てた。

ゼントラーディ軍人として常日頃、敵と戦ってきており全力で自身と力を出してきた。

本気を出さず舐めプレイをして来る絵理に物凄く腹がった。

 

「モーア・カリダム!私が弱いからと言って本気を出さなかったたな!」

 

「怒った♪怒った♫こうして挑発すれば潜在能力は発揮するかも♫」

 

「くそ舐めやがって!ゼントラーディ軍時代からもいつもいつもそんなふざけた態度取りやがって!」

 

全ては絵理の腹の中であった。

ラウラは絵理が自分よりも弱いと思って本気を出さないと勘違いした。

戦って分かったゼントラーディ軍時代、絵理が自分自身どう思っていたのかを・・・

 

「私は弱くなんかない!私はお前より強いんだよね!ゼントラーディ人の誇りにかけて!」

 

ゼントラーディ軍人としての誇りを持ち今まで数々の戦場を生き残ってきた。

苦しさを抑え同じ同胞を殺してきた、死に場所を求めていた。

ゼントラーディ軍の兵士として、負けるわけにはいかない!

 

「それがお前の弱さなんだよ!ラウラ・ベルタリア!」

ラウラの動きを察した絵理の目つきが急に鋭くなった。

別方向からミアンのVFー3000がファイター形態で急接近し、ガンポッドを発射しつつ横回転しながらバトロイドに変形しガンポッドとミサイルを発射した。

 

「こんな程度でやられる私ではない!」

 

ラウラは当然のように回避してみせた。

いくら絵理の相棒ミアンがエースでもこの程度の攻撃であれば簡単に回避できる。

回避し反撃に移れば絵理の相棒(ミアン)を撃墜出来る。

この時のラウラはそう確信したのと同時にミスを犯してしまった。

 

「ならばこれならばどう?」

 

「ラック!」

 

ラウラの背中に絵理がガンポッドを突きつけた。

ミアンに気を取られすぎて、絵理の存在を一瞬だけ忘れてしまった。

回避行動を取るも間に合わずガンポッドの銃弾の餌食となった。

 

「負けた・・・・私が負けた・・・・」

 

「賭けだったけど、結果オーライね。」

 

ガンポッドの銃弾(ペイント弾)の餌食になったラウラは実戦であれば顔面を潰れ、腹を撃ち抜かれるなど悲惨な状態になっていた。

絵理のVFー3000は、周囲を見渡しミアンを引き連れて他の戦線に向かおうとしたが直後艦隊司令部から通信が入った。

 

『艦隊司令部より全部隊へ、第29海兵隊各部隊の組織的戦闘能力喪失した事により降伏により模擬戦を終了します。』

 

「終わったか・・・・」

 

ラウラと絵理が戦っている合間に第29海兵隊はラザルを含む指揮官が全員戦死判定、喪失率は過半数越えた事により戦闘継続が困難になり司令官ガゼフ・ボーマン大佐は降伏を決断した。

勝利した任務航空団側も損害判定機は大きく、シーアンタレス隊の参戦が無かったら艦隊に突入され制圧され敗北もしくは任務航空団のVF部隊全滅に全力を上げていたら敗退していた。

 

「辛うじて我々が勝利しましたが・・・・」

 

「巨人共にここまでやられるとはな、今回の結果を元に我々の戦術を変えねばな。」

 

今回の模擬戦の結果はどの陣営も戦術変更を余儀なくされた。

今のままでは想定敵である反統合ゲリラのVF部隊やゼントラーディ軍と実際に戦闘になった時に大損害を被り、国家安全保障上の危機に陥ってしまう。

戦死するのが軍人だけならまだしも、守るべき民間人に被害が出てしまう。

 

両陣営上層部は自分達の問題にせず、新統合宇宙軍総司令部と海兵隊総司令部にすぐさま報告した。

 

「モーア・カリダム・・・・」

 

演習を終えたラウラは帰還しようとしたら、絵理にずっと見られている事に気がついた。

しばらく沈黙を貫いていたが、突然絵理が近づいてきた。

すると右腕を大きく上げて、殴った。

 

「あっ痛」

 

「やはりラウラ・ベルタリアか!やはり生きてたわね。」

 

「やはりはこちらのセリフだ・・・モーア・カリダム」

 

殴られた衝撃は強かったが、モニター越しの通信に映し出された絵理の姿の方が衝撃的だった。

ミリア機動戦隊次点の強さを誇るエースであるモーア・カリダムが見慣れない真っ青なパイロットスーツを着てモニター越しに映っている。

 

生きてても当然か、簡単に死ぬような奴ではない。

 

「まぁいい、帰還する前に少し話をしない?」

 

「話?私に何の話をするつもりだモーア。複数機で対決とはエースも堕ちたものだな。」

 

絵理から話さないかと言われたラウラだが、一瞬で気まずい雰囲気になった。

勘違いしていラウラは、複数機で対決してきた事に絵理に抗議した。

ラウラの抗議に明るい雰囲気だった絵理の表情は冷たい冷酷な表情に変わった。

 

「戦場は個人芸の場じゃないんだよなぁ、それがお前の弱さなんだよラウラ。」

 

「私の弱さだと?」

 

「そうお前の弱さ、だからこそ話さない?ベルタリア曹長殿。」

 

ラウラの弱さ

 

絵理の放った言葉にラウラはまるで心を鷲掴みにされたかのような感覚に襲われた。

まるで怯えるような表情を浮かべたラウラを見た絵理はクスッと笑いながら、話し合おうと言った。
 

【西暦2021年1月18日 同時刻.午後16時】

【クラビウスシティー中央中枢区.スターダスト】

ラウラと絵理が会話している頃、大樹は有給を使い一人バースターダストで酒を飲んでいた。

飲んでいる酒はショートカクテルのオーロラである。

カクテル言葉で偶然の出会いと言うのがあり、転属先の部隊の人材集めの為願掛けに来ていた。

 

『本日、冥王星で宇宙軍と海兵隊による合同軍事演習ジャイガントが実施されました。軍の発表によりますと・・・・』

 

「演習やってたのか・・・」

 

テレビのニュースではラウラ達の演習の様子が映し出されていた。

大樹は演習の様子を見ながらこの中から我が隊に相応しい人材いないかなと考えた。

 

「吉野大尉、ジェフリー・ワイルダー中尉参上しました。」

 

「ジェフリーかぁ、まぁ座れ・・・何を飲む?」

 

「モスコ・ミュールを一杯。」

 

アメリカの若者らしい私服を着たジェフリーが来店した。

大樹の隣の席に座るとモスコ・ミュール一杯とチョコレートの盛り合わせを注文した。

 

「ジェフリー・ワイルダー中尉 中尉昇進とダンパー小隊隊長就任おめでとう。」

 

「それほどでも、転属になったドライバー中尉やキム少尉の分頑張ります。」

 

本日の会合の目的はジェフリーの小隊長就任と中尉昇進の祝いであった。

ジョン・ドライバー中尉が転属し、エースとしての実績を認めらダンパー小隊長に任じられた。

 

「大尉殿、人材集めは順調ですか?」

 

「微妙だな、中々集まらない。まぁ桐原少佐や白川提督がなんとかしてくれるらしいが・・」

 

ジェフリーの祝いの会であるが、話は基本的に仕事の話ばかりだった。

お互い軍人であるが故、洒落た話ができなかった。

そうした時間がだらだら続いたが、ジェフリーはカールスバーグビールを飲んでる最中にSNNテレビの模擬戦特集の映像で何か気がついた。

 

「大尉、あの機体シーアンタレス隊の星村絵理中尉のVFー3000クルセイダーですね。」

 

「星村絵理?スカルリーダー殺しの?」

 

「本人の前で言ったら大問題ですよ・・大尉。」

 

ラウラのクァドラン・ローと絵理のVFー3000クルセイダーの戦っている姿だ。

絵理のパーソナルマークの独自のアンタレスマークは新統合軍内では有名であり、一般兵卒のジェフリーですら星村絵理の名を知らない者がいない。

 

大樹はフィッシュアンドチップスを食べバレンシアコブラーを飲みながら、スカルリーダー殺しと言う発言をしジェフリーは呆れた顔をしながら大問題発言だと諌めた。

絵理が元ミリアの部下モーア・カリダムで、ロイ・フォッカーを殺した事も有名である。

 

「にしてもあのクァドラン・ローいい動きだな。」

 

「敵として出てくれば流石の俺でも厳しいな。」

 

「その意見は同感ですよ、大尉。」

 

模擬戦を観ていた二人はラウラのクァドラン・ローに注目していた。

ミリアに次ぐ技量を持つ絵理の動きに付いてこれるラウラの実力を見て敵として現れたら厳しいだろうと高く評価した。

 

「あれがラウラ・ベルタリアって女よ。」

 

「なるほど・・・あれがラウラか・・・」

 

「確かシュリと同じ部隊にいた噂のエースだったな。あれがそうなのか。」

 

近くから女の声が聞こえ、クァドラン・ローのパイロットがラウラだと教えてきた。

大樹とジェフリーはシュリから散々話を聞いてたので近くから聞こえた女の言葉に納得した。

 

だが女の声は聞き慣れた声だった。

 

「ん?」

 

「どうしたの副隊長?」

 

「お前・・・何でここにいるんだ?」

 

大樹は声の主の女に呆れた表情で何故ここにいるのか質問をした。

ジェフリーも声の主の女を見て同様に呆れた表情を浮かべていた。

 

「私も有給取ってたので昼飲みしてます。」

 

「ベルラン少尉、俺は聞いてないぞ。」

 

「隊長には申請出してます。」

 

「今度から俺にも言え・・・な。」

 

声の主の女の正体はシュリであった。

大樹はシュリがリックと共に停泊中のシナノ艦内で勤務していると思っていた為、仕事サボって昼呑みし事と次第では叱ろうとしたが実際は有給だと発言し叱る気も失せた。

 

有給取るのはいい、だが自分にも言って欲しかったと大樹は思った。

 

「ところでベルラン、何故あのクァドラン・ローがラウラだって分かるんだ?他にもクァドランいるし。」

 

「ワイルダー中尉、私達ゼントラーディは動き見ただけで誰が乗ってるのか分かるのよ。」

 

「そりゃ凄いな。」

 

「まぁだいたい知っている人に限るって話ですけどね。」

 

ゼントラーディ人はだいたい知っている人であれば機体を見ただけで誰が乗っているのか分かる。

身近な人の戦闘スタイルや癖は大体覚え、一目見ただけでも分かってしまう。

シュリは紫の長い髪を結びながら、呟いた。

 

「モーアやっぱ強いなぁ、組織戦上手く活用してるし。」

 

「そりゃシーアンタレス隊の副隊長だしな。」

 

「副官を相方に二段構えの策でラウラを討ち取る、地球の文化に触れてかなり強くなったなぁ。」

 

絵理が自身の部隊を上手く活用し、自身が望む環境を作り良き副官であるミアンだけ連れていきエレメントフォーメーションによる連携でラウラを討ち取った。

二段構えでラウラの逃げ道を塞ぎ、2度目の回避で背後を取り零距離射撃で撃墜する絵理を敵に回したくないなとシュリはつくづく思った。

 

「ベルラン、お前とベルタリアどちらが強いんだ?」

 

「ラウラだね・・・あんな風にモーアとは戦えんし。」

 

「あの副官機相手ならどうだ?」

 

「それが精々ってあの副官機が倒せるかどうかって所だね。」

 

ラウラとシュリが一対一で戦ったら軍配が上がるのはラウラである。

兵士としての実力はラウラが優れており、ゼントラーディ軍時代は優れた実力を発揮し何度も上官であるキヨラに可愛がられていた。

 

一方で絵理はラウラよりも更に上を行く実力を有しており、ミリアに次ぐ実力者としての名声を欲しいままにしていた。

 

シュリからすればラウラや絵理は高嶺の花の実力者であり、敵として相まみえるのならば確実に死ぬのは自分であろうと思っている。

 

「ベルタリアがこれほど強いとはなぁ。」

 

「大尉、彼女来てくれますかね?」

 

「ワイルダー中尉、ラウラは頭硬いからね。その可能性は低いと思うわ。」

 

ラウラが今回の模擬戦を切欠にマイクローン化しVFパイロットになるかジェフリーは大樹に質問をしたが、シュリに否定された。

シュリ曰くラウラは頭が硬い為、模擬戦を経験したとしてもマイクローン化する気はない。

 

「残念だな、パイロットになってくれたら・・・」

 

「期待しない方がいいですよ、むしろ転属した方が奇跡ですから。」

 

「奇跡でもいいから、可能性のある種は欲しいもんだ。」

 

頭が硬いラウラが転属するのは奇跡だとシュリは言うものの、大樹はそれでも欲しいと願った。

まだ未熟であるが育てたら凄いパイロットになるのではと動画を見た大樹は確信していた。

 

「大尉殿、マティーニ奢ってくれませんか?」

 

「シュリおまっ何、奢らせようとしているんだ?」 

 

「ジェフリーくん硬ーい。」

 

「俺はお前の上官だぞ!中尉だぞ!」

 

深く考えていた大樹だが、シュリが調子に乗りマティーニを奢ってくれと頼んだ。

しかもシュリが望んだマティーニは一番高い部類のマティーニにであり、大樹は思わず苦笑いした。

 

地球人の女もゼントラーディ人の女も何も変わらんなと。

大樹は心の中ではそう思った。

 

「ジェフリー、シュリお前ら二人に奢ってやる。」

 

「いいんですか!?」

 

「いいの!!」

 

「飲みたい気分だからな、特別に許す。」

 

飲みたい気分だったので特別に奢ることを許可した。

どんな事言われようがラウラがマイクローン化してVFパイロットとなり、自身が所属する部隊にスカウトしたいと思った。

 

【同時刻・木星軌道上衛星都市ホワイトフローラ】

【新統合軍駐留基地・アルゲニクス艦内】

 

惑星ネオ・ヨークでの任務を終えアポロ基地に帰還中のアルゲニクスは補給の為、木星軌道上衛星都市ホワイトフローラに停泊していた。

アルゲニクスの一室で冥王星の模擬戦の模様を見ていた人がいた。

 

「流石はモーア、腕前もどんどん上がっているわね。」

 

ダンシング・スカル副隊長であるミリア・ファリーナ・ジーナス中尉だ。

ミリアはSNNの報道を見て元部下である絵理の姿を見て感心していた。

第29海兵隊に圧倒する実力、エース相手に隙を見せない実力を発揮する絵理を見て流石は自分に次ぐ実力を持つ部下と評価した。

 

一方・・・・

 

「上官にもう少し敬意を払ったり謙虚であればなぁ、そこが欠点だわ。」

 

絵理の性格に対して厳しい評価を下した。

ミリアは上官としてゼントラーディ軍時代の絵理と接しており、散々自由気ままな絵理に振りまわされ今になっては同じ階級ともあってか更に酷くなっている。

 

「ミリア、冥王星での演習のニュース見ているのかい?」

 

「そうよ、偶然見てたらモーアが出てたからね。」

 

「モーア・・・星村絵理中尉か、あの人は腕はいいがモア並に元気のある娘か。」

 

「元気があるのはいい事だけど、ありすぎるのもねぇ。」

 

絵理の自由きままな性格はミリアの夫であるマックスを振り回していた。

振り回されているマックスであったが、絵理の実力を高く評価しており地球の文化を取り入れて成長している事を評価していた。

 

そうこうしている内に演習が終わり、報道も終盤に差し掛かった。

 

「ん?星村中尉、何やっているんだ?」

 

「モーア何をやってるのかしら?クァドラン・ローと睨み合ったりして?」

 

クァドラン・ローとVFー3000が睨み合っていた。

動く事もなく、ただずっと睨み合っているだけ。

画面はすぐ切り替わったが、ミリアとマックスは何をしているのか疑問に思った。

 

その同時刻

 

 

 

【冥王星】

 

ラウラのクァドラン・ローと絵理のVFー3000クルセイダーは睨み合っていた。

近くにはミアンのVFー3000が控えており、絵理に内緒で実弾を装填し不測の事態に備えた。

 

「私の弱さって何?」

 

ラウラは絵理の言った自身に向けて言った弱さについて質問をした。

自分自身の弱さを指摘する絵理の意図が知りたい。

腹が立つが、絵理が指摘した意図を知らなければ釈然としない。

 

キツい表情を浮かべるラウラの姿をモニター越しで見た絵理はクスッと笑い口を開いた。

 

「いつまでも過去の栄光と出来事に囚われたり、視野が狭い事だよ・・・・ ラウラ。」

 

「過去の栄光と出来事・・・視野が狭い?」

 

「本当にくだらない事に拘ってるから私に勝てない。」

 

絵理が出したのは過去の栄光と出来事に囚われている事とラウラの視野が狭いと言う事だった。

出された答えにラウラは呆然としたが、絵理は淡々と拘ってる限り自身に勝てないと言った。

 

「だったら何故、集団でけしかけた!」

 

「あのさここ戦場みたいなもんよ、個人芸を披露する場じゃないし。私も予期せぬ展開だったし。」

 

出された答えに反発したラウラはデスストーカー隊の乱入やミアンの援護の件を絵理を追求した。

ラウラからの追求に絵理は淡々と予期せぬ展開だったと釈明した。

銃を構え見ているミアンは自分自身も個人芸を楽しんでたじゃないかと心の中で突っ込んでいた。

 

「もっともゼントラーディの誇りを捨てた私からすれば、ラウラなんてものの数ではないわ。」  

 

「なにぃ」

 

「腹立つのもいいけど、最終的にそれ何処に行き着くの?腹を立てても今の自分の弱さに直視しなければ私に勝てない。」

 

いくら反発しても絵理に正論の前では無力だった。

ゼントラーディ軍の誇りを捨てたと言う絵理の言葉が許せずラウラは反発するものの、絵理からは最終的にその怒りは何処に行き着くのか?今の自分の弱さに直視しなければ勝てないと言われ何も言えなくなってしまった。

 

「私は先の大戦で地球文明を知り歴史を知り、今の自分がある。今のラウラは何がある?」

 

「私は・・・・・」

 

「ゼントラーディ軍人としての誇りはあの戦いで終わってるし、ゼントラーディ軍人としての誇りをいつまでも囚われたままでは漂流者のままだわ。」

 

絵理は地球の文明と歴史を知り、そして夫であると和也と結婚し5人の子宝に恵まれた。

文明と歴史から己の戦闘技術を組み合わせ独自の戦闘スタイルを確立し、結婚し家族を得た事で自分自身の戦う意味を見出している。

それに対しラウラは今だに同胞殺しの罪悪感やゼントラーディ軍人としての誇りにいつまでもこだわり続けており、何も成長していない。

 

「わ・・・私は好きでゼントラーディ軍人を辞めたわけじゃない!好きで同胞殺したりしてない!」

 

ラウラは声を荒くして反論した。

 

ゼントラーディ軍人の人生を終わらせたのも、同胞を殺したのも自ら望んだ事ではない。 

ある日、司令官ラプ・ラミズがブリタイと共にボドル基幹艦隊と戦うように命令された。

命令のまま同胞を殺し仲間を失った上、戦後ゼントラーディ軍から新統合軍になった。

出来るならば海兵隊を脱走し他の基幹艦隊やはぐれ部隊と化した直衛艦隊に合流したい。

 

「こいつ!」

 

「待てミアン・・・」 

 

「しかし・・・」

 

「何もしてないのに発砲したら軍法会議、いい?」

 

ラウラから漂う殺気にミアンはガンポッドを向けようとするも、絵理に制止された。

絵理はミアンを制止しながら、ラウラに向け今自分が思っている事を嘘偽りもなく吐き出した。

 

「私もそう、好きでゼントラーディ軍人を辞めてないかつ同胞を殺してなんかない。」

 

「だったら・・・・」

 

「でも私達をそうしたのはボドルザーでは?」

 

「ボドルザー司令が・・・」

 

自分達がゼントラーディ軍人としての人生を終える切欠になったのはボドルザーの決定だ。

絵理自身も望んでゼントラーディ軍人を辞めたわけでもなく、同胞を殺してなんかいない。

気持ちの根はラウラと同じだ。

 

「私達やブリタイらアドクラス艦隊は任務に従事したのに文化に触れたから消去刑、忠実に命令に従った結果が5ターム(10年)前の戦いなのよ。」

 

「しかし・・・何故、マイクローンと?」

 

「ただでやられるくらいならマクロスと共に抗っただけ。」

 

同胞と殺し合いになったのも理不尽な粛清に抗う為であり、共に抹殺される運命であった敵戦艦SDFー1マクロスと手を組み破滅の運命に抗った。

必死の抵抗の末、辛勝と言う結果に終わり今に至っている。  

 

話を聞いたラウラは暫くの沈黙の後、口を開いた。

 

「モーア一つ聞きたい?」

 

「何?」

 

「何故マイクローンになった?」

 

何故マイクローンになったのか?

 

ラウラの目の前にいる絵理はマイクローンであり、VFに乗っている。

何故、絵理がマイクローンになりVFに乗ろうと思ったのかラウラは不思議に思った。

 

「なりゆきよ。」

 

「なりゆき?」

 

「そうなりゆき、いろいろあったから今に至る。」

 

返ってきた答えはなりゆき

自ら志願したわけでもなく、ただ世の中の流れに任せたままマイクローン化しVF乗りになった。

なりゆきの意味をアンジェミラから一応知っていたラウラは自らの意思ではなく、自然に身を任せマイクローン化しVF乗りになった絵理に驚いた。

 

「自らマイクローン化しマイクローンの兵器に乗ったと?」

 

「そう言う事、ただスパイとして潜入していたミリアが上手く乗りこなしてたり地球文明楽しんでいる姿を見て私も乗り気になったんだよね。」

 

「そんなにいいのか?」

 

「そこにいる私の副官ミアンもその一人だけどね。」

 

マイクローン化しVF乗りになったが、絵理自身は快く受け入れていた。

 

上官であるミリアがVFパイロットとなり戦果を挙げていく姿や地球文明の素晴らしさに感銘を受け、積極的に受け入れていった。

ゼントラーディ軍時代にはない美味しい食べ物や娯楽があり、戦闘以外の楽しみも出来た。

 

「ラウラ、貴女は今後どう生きたい?」

 

「どう生きたいって?」

 

ラウラが考える前に絵理は今後どう生きるか問いかけてきた。

問いかけに対しラウラはボドルザー基幹艦隊決戦から抱き続け苦しかった感情を露わにした。

 

「私はできれば同胞を殺したくない。」

 

ボドルザー基幹艦隊決戦時、新統合軍海兵隊に所属してのはぐれゼントラーディ軍や反乱ゼントラーディ人の討伐で数多くの同胞を手に掛けたラウラはこれ以上同胞を殺したくないと言った。

聞いていた絵理であったが、持ってたガンポッドを鈍器のようにしてラウラを殴った。

 

「痛っ何をする!」

 

「ゼントラーディ人のくせに甘い事を言うのね。アマちゃんだわ。」

 

「なっ!?私が甘い?なんで?」

 

「何故甘いかって?地球人は戦争でたくさん同じ地球人を殺している中で、現地球の軍人であるお前が同胞殺しを気にするなんて甘い考えだなと思ったまで。」

 

殴られたラウラは抗議するが、殴った絵理は気にせず甘いと苦言言ったりアマちゃんだと弄った。

考え方が甘いと言われたラウラは戸惑うが、絵理は地球人の戦争による同胞殺しの事実とそうした中で地球軍人になったラウラが同胞殺しを気にする事を甘い考えだと吐き捨てた。

 

「どう言う事?地球人が戦争で同じ地球人と殺し合っている?」

 

「私達ゼントラーディ人と戦争する前から、そして現在進行系で今も。」

 

「今も?」

 

地球人が同じ地球人同士で戦争をして殺し合っている

 

その事実にラウラは激しい衝撃を受けた。

自分達ゼントラーディと戦争する前どころか、現在進行系で戦争を行い殺し合っている。

同じ地球人同士で殺し合う、何故同じ種族殺し合えるのか?ラウラは不思議に感じた。

 

「モーア私はどうすれば・・・・」

 

「バカ、私を頼るな。今後どうするかはお前が決めろよラウラ。人間ならば人生どう決めるかは自分だろ?決めるのは他人じゃない。」

 

「決めるのは自分?」

 

「分からないなら一生考え続けるんだな。一つ言えるならば今日感じた体験した事をどう思うか、今後どうするかを考える所を始める事ね。」

 

いろいろ戸惑ったラウラは思わず絵理に助けを求めたが、無慈悲にも拒否され厳しい言葉をかけた。

ラウラ厳しい言葉をかけた絵理だが、一つだけアドバイスを送り成長を促した。

 

「私としてはマイクローン化し、戦争以外の楽しさ知って欲しいなぁと思うんだけどな。」

 

「戦争以外の楽しさ?私に?」

 

「ん?単なる独り言よ。」

 

同胞殺しの罪悪感により心に傷を負いゼントラーディ人の本能のまま生き戦場で死ぬまで戦い続けるラウラは見てもいられなかった。

絵理としてはラウラにかつての元気で猫のように煩かった姿に戻ってもらいたいと思っていた。

 

「そろそろ御時間が・・・」

 

「そうね、ラウラ・・・次会う時はマイクローンの姿でね。」

 

「誰が・・・やると決めたわけじゃ・・・」

 

「それもそうね。」

 

会話していた時間は短かったとは言え、次の予定を控えている為お開きになった。

絵理は母艦サドワラに向けて帰還する為ファイター形態に変形した。

 

「そうそう今の私はモーア・カリダムではなく、ゼントラーディ系地球人1世星村絵理、ただの5人の娘を持つ母親よ!」

 

「ゼントラーディ系地球人?母親?それは何?」

 

「マイクローンになれば分かる事よ。また会おうラウラ・ベルタリア曹長。」

 

絵理はそう言い残すとミアン引き連れその場から去っていった。

モニター越しで映った絵理の表情はゼントラーディ軍時代見たことのない希望に満ち溢れた飛び切りの年頃の女の子の笑顔であった。

絵理の笑顔を見たラウラは何処か羨ましいと言う感情を抱いた。

 

「どう生きるか、考えた事も無かったな。」

 

自分の目の前から去っていく新たらしい力を得たかつての別の部隊の同胞の後ろ姿を見ながら、ラウラの心に変化があった。

 

ラウラに生じた心の変化はこの日を境に活発化していった。

 

次回予告

模擬戦の結果と絵理との再会はラウラの価値観に衝撃を与えた!今までの自分とこれからの自分の行く末に深く悩んだ。ラウラの葛藤を他所に世界情勢は少しずつ動き始めていた。

 

次回、マクロス外伝蒼い髪のメルトラン

 

ロスト・ゼントラン

 

新たな道を切り開けクルセイダー!

 

前回

 

次回

 

 

【前職】

ゼントラーディ軍

新統合軍

【階級】

大尉(最終階級)

【クラビウス市議会議員】

3期 

(2013年ー)

【所属政党】

(自由共和党→)
自由ゼントラン党

【役職】

クラビウス市議団長

【キャラクターデザイン】

いわしぃさん

【イメージ声優】

野島健児

【解説】

クラビウス市議会自由ゼントラン党市議団長。

 

ゼントラーディ軍第67分岐艦隊所属で、ブリタイ・クリダニクの腹心であるランドル・オルカ指揮下のケアドゥル・マグドミラ級戦艦(クラークゲス)のヌージャデル・ガー部隊の隊長として勤務した。

 

戦後は新統合軍に属したが政治の道を志し退役、自由共和党候補としてクラビウス市議会選に立候補し当選した。

 

自由ゼントラン党が結党すると離党し参加している。

 

現在は市議団長。

【生年月日】

1999年5月4日

【所属】 

新統合軍

【階級】

少尉

【人種】

ゼントラーディ

【髪色】

【イメージ声優】

瀬戸麻沙美

【キャラクターデザイン】

いわしぃさん

【解説】

ブラックパンサーズ中隊クーガー小隊に所属する新統合軍人・少尉。

 

元ゼントラーディ軍ラプラミズ直衛艦隊キヨラ機動戦隊に所属していたゼントラーディ兵で、ボドルザー基幹艦隊決戦後はメルトラスに収容されそのまま新統合軍海兵隊に長年属していた。

 

戦後10年経って心機一転の為、マイクローン化しVFパイロットとして宇宙軍に移籍し訓練の後ブラックパンサーズ中隊に配属された。

 

◆能力

元々優秀なエースパイロットであり、訓練課程で車の免許やバイクの免許を同時に取得する優等生であり地球語の標準語である英語や日本語など話せる。

 

自由ゼントラン党との関係

熱烈な自由ゼントラン党支持者であり、下院議員サリア・ロルファやエリラ・マーシェル市議とは友人関係である。

 

愛機 

・ゼントラーディ軍から海兵隊時代

クァドラン・ロー

 

・ブラックパンサーズ中隊

VFー4ライトニングⅢ

 

戦友

戦友にナザリア・ファロやチェリア・ユリンがいたが、基幹艦隊決戦中に生き別れた。

ナザリアは戦傷の為.チェリアは軍以外の道を選び退役し、ナザリアはアポロシティーにチェリアは惑星エデン・キャピタルシティーにそれぞれ暮らしている。

 

◆リン・ミンメイ

容姿がリン・ミンメイに似てる事からミンメイファンの男性、特にゼントラーディ人ファンから好意を寄せられる事がある。

 

仇名に気が強いリン・ミンメイと言うのがある。