桜花に一撃必勝
そのエンブレムを掲げた2連装ビーム砲装備のスーパーパックを装着したVFー4ライトニングⅢは暗い月面の空を飛行していた。
その後ろに僚機と思われる2機のVFー4ライトニングⅢが背中を追っていた。
「クーガー3からクーガーリーダーへエネミータリホー。」
「クーガー2、エネミータリホー。」
「こちらクーガーリーダー、救難を発した友軍機を確認。同時にエネミータリホー」
「シナノコントロールからクーガーリーダー、突入してください。」
「クーガーリーダー了解!」
クーガーリーダーと呼ばれた目つきの鋭い20代の小隊長は救難要請を出した友軍の早期警戒機とそれを攻撃する敵を発見した。
空母シナノから哨戒任務に就いていたが、偶然救難要請を出す友軍機の存在を確認しシナノに報告し了承を得た上で現場に急行していた。
「さてどんな奴か知らんが、秩序を乱すならば排除するのみ!全機突入せよ!」
クーガーリーダーは意気揚々小隊員に号令を出し戦場に突入した。
アブレスト編隊で横並びに並んだ後、クーガーリーダーが前に出て2連装ビーム砲を放った。
【西暦2020年12月23日】
【新統合軍月面第2軍司令部所在.月面クラビウス基地】
月の表側にあるクレーターの一つに作られた新統合軍月面基地クラビウス
月の裏側に作られた新統合宇宙軍総司令部のある月面アポロ基地に次ぐ月面最大の軍都であり
月の表側防衛を担当する月面第2軍司令部が置かれていた。
クレーターの名前の由来はドイツの天文学者クリストファー・クラヴィウスである。
7年前には第1次超長距離移民船団メガロード01からリン・ミンメイが来訪しライブが行われており、基地飛行隊の一つにミンメイガードと呼ばれる部隊が結成していた。
建設は第1次星間大戦前であり、戦火を逃れた為
地球に比べて栄えており、地球由来の遺産が数多く残されていた。
そんな栄えのあるクラビウス基地から北西にある未開発地域シラークレーターではある歴史に残らないような小さな戦いが行われようとしていた。
【クラビウス基地北西シラークレーター】
シラークレーター
月面表側南西部にあるまるで人の靴のような形のクレーターである。
将来的にクラビウス圏内の軍都を建設する予定であり、将来的にメガロード級移民船の後継艦を建造する造船所を設置する事が検討されている。
ただ
新統合軍の完全な統治下に置かれておらず、反統合系組織やはぐれゼントラーディなどのならず者達が数多く潜伏しており治安はあまり良くない。
定期的に輸送船が襲撃され現金や物資の強奪が行われており、新統合軍は民間船の進入を禁止している。
そして今日もならず者に狙われる者がいた。
「クラビウス基地や近くの友軍に交信を続けろ!」
「メーデーメーデー、こちらアードウルフ14。所属不明機の攻撃を受けている救援を乞う。」
「何処か反応してくれよ。」
VEー1エリントシーカーが6機の可変戦闘機に追われていた。
追跡者の可変戦闘機はSvー51α、NATOネーム.フェンサーかつて第1次星間大戦で運用されていた反統合同盟の可変戦闘機だ。
第1次星間大戦では反応エンジンを搭載し、オリジナルより性能を落としたモンキーモデルの機体が何処かで生産され反統合組織に使われている。
月面は新統合軍の統治下だが想像以上に広大な広さを誇っており完全な統治下とは言えず、今だに反統合勢力やはぐれゼントラーディ軍が潜伏して商船や新統合軍艦隊を襲撃している。
定期哨戒任務中の哨戒飛行中隊アードウルフ隊所属のVEー1エリントシーカー/アードウルフ14も襲撃者の狩りの対象になった。
「ベルシュタイン軍曹、近くに友軍は?」
「駄目です、ECMで更新不能!」
「くそ!叛乱分子どもが・・・・」
「一体何処に潜んでいたんだ?くそ、来るなぁ。」
アードウルフ14は必死に近くの友軍に救援要請出すもECMを仕掛けられ交信困難であった。
なんとか新統合軍防宙圏内に逃げ切れればと思ったが、Svー51αの追撃は甘くはなかった。
「敵機、発砲!執拗に狙ってきます!」
「くそ逃さないつもりか・・・」
「メーデーメーデー、こちらアードウルフ14救援を・・・・追撃が激しい助けてくれ!」
等々Svー51αからの攻撃が始まった。
威嚇攻撃ではない本気で撃墜するつもりだ。
アードウルフ14は必死に回避行動取ろうとするも、執拗な攻撃に対しては力不足であり肉薄して接近したガンポッドの銃弾によりレドームを破壊されてしまった。
破壊されても尚生き残る為に必死に逃走するも、目の前に別方面から来たガンポッドを構えたバトロイド形態のSvー51が立ち塞がっていた。
「神様・・・」
「しまっ・・・」
流石に死を覚悟した・・・・
アードウルフ14のパイロット達は顔を手で覆い目を閉じ爆発音が響いた。
少ししばらくして目を開けて前を見ると、ガンポッドを構えていたSvー51が残骸になっており攻撃していたSvー51が散開していた。
「なんだ?」
メインパイロットは辺りを見渡すと2連装ビーム砲ストライクパック装備の赤ラインの入った黒いVFー4GライトニングⅢを中心にしたスーパーパック装備のVF小隊が飛来した。
「あの機だけ2連装ビーム砲を・・・隊長なのか。」
2連装ビーム砲装備している先頭のVFー4は恐らく隊長機だ。
そう考えているとモニターに若い目つきの悪い20代前半の男が映った。
「こちらブラック・パンサーズ中隊クーガー小隊、吉野大尉だ!救援要請を受け援護する!」
「こちらアードウルフ14、助かった感謝する!」
「まだ感謝するのは早い!敵を殲滅するまで油断するな!」
「あぁ・・・了解した。」
若い男はブラックパンサーズ中隊クーガー小隊の吉野大尉と名乗った。
20代前半だが口調も風格もベテランパイロットでたり、ただ者ではないと悟った。
現に吉野大尉は果敢に迫ったSvー51が来ても2連装ビーム砲を最初に放ち、相手が回避した先にガンポッドで仕留めている。
「クーガー2は陽動 3はアードウルフを護衛せよ!」
「2、了解しました。」
「3、了解。」
「よし行くぞ!アタック!!」
吉野大尉は部下のクーガー2に陽動、クーガー3にアードウルフの護衛を指示すると散開していたSvー51αを強襲した。
狙いを定めた機に対しては一方追い抜いて、逆さまの状態で前から迫り至近距離でガンポッドを掃射し撃墜しクーガー2に追いかけられていたSvー51の側面を突き撃墜した。
「クーガーリーダー、敵撃墜(エネミースプラッシュ) 引き続き脅威を排除するオーバー。」
「了解、引き続き敵脅威を排除しアードウルフ14を救助せよ!」
「了解!脅威となる敵機を殲滅し、アードウルフ14を救助する!」
ガンポッドを掃射し回避した先にビーム砲を放ちSvー51を貫いた。
目標を変えるとクーガー2に追いかけられていたSvー51を真上からガンポッドをコックピットに一撃を与え撃墜した。
「カモーン カモーン 良し!!もらったぞ!」
背後から2機のSvー51がファイター形態で追撃するも、脚部だけ前に出して逆噴射し背後を取りガウォークに変形し撃墜した。
「残り1機、改良型のSvー52か!逃がすか!」
「クーガーリーダー、追撃の許可は・・・」
「奴を逃がせば次の犠牲者が出る!奴らのせいで民間人は何人も死んでいる!だからやらせろ!」
「了解、大尉殿くれぐれも気をつけてください。」
次々とSvー51を撃墜し残るは1機、発展型のSvー52・・・恐らく指揮官機だ。
Svー52はクーガー2とアードウルフを襲っていたが、僚機全機撃墜された事を受け勝ち目がないと判断し逃走開始した。
逃走するSvー52に吉野大尉は追撃し、執拗な攻撃を咥えた。
「クーガー2、3手を出すな!」
逃げられないと悟ったSvー52はバトロイド形態に変形し反撃に撃って出た。
ミサイルを使った弾幕を使い吉野大尉に接近し、ガンポッドによる近接型戦を挑んだ。
吉野大尉は僚機に手を出さないように命令を出した。
「大尉!」
「そんな・・・・・吉野大尉・・」
僚機に命令を出した直後、吉野大尉のVFー4ライトニングⅢは爆発した。
機影が見えなくなる程の大爆発で、誰が見ても撃墜されたと言えるほどだった。
Svー52パイロットは勝利を確信しニヤけるが、それからまもなく引き攣った顔に変わった。
「チェックメイトだ!」
爆炎からバトロイド形態のVFー4ライトニングⅢが現れ、Svー52の顔面を蹴り上げ怯んだ所をガンポッドでトドメを刺した。
ストライクパックをパージしあえて攻撃を命中させ爆発、撃墜させたと見せかけてSvー52のパイロットを油断させたのだ。
油断している隙を突いてバトロイド形態に変形し爆炎から現れて威圧しそのままトドメを刺したのである。
トドメを刺した後、ファイター形態に変形しクーガー2と3と編隊を組みアードウルフの前に出た。
アードウルフのパイロットは一瞬、吉野大尉の翼の桜花マークと一撃必勝の文字を見て驚いた。
「桜花マークに一撃必勝、まさか・・・」
「少尉殿まさかとは?」
「吉野と聞いて思い出したよ、桜花マークに一撃必勝・・・火星の英雄.吉野大樹大尉。」
「火星の英雄で・・・ありますか・・・」
桜花マークに一撃必勝の文字、火星の英雄.吉野大樹
2年前に起きた火星独立ゼントラーディ軍の決起によるマーズウォーズ事件で危機的状況に陥った火星を救ったエースであり、クーガー小隊隊長兼ブラックパンサーズ中隊副隊長である。
鹿児島県出身で月面クラビウスシティー育ち、士官学校卒業後は火星サラ基地に配属。
マーズウォーズ事件においてロイ・フォッカー勲章を受章し、月面クラビウス基地に戻りブラックパンサー中隊に配属後小隊長から中隊副隊長になっている。
トレードマークは桜花マークに一撃必勝である。
桜花マークは特別攻撃機桜花由来なのではと言われたが吉野大尉もとい大樹は否定している。
「救援を感謝する吉野大尉。」
「我々は任を果たしたまで、では!」
「行ってしまわれたか・・・・」
月面クラビウス基地防衛圏内に到達した大樹率いるクーガー小隊はアードウルフと別れ母艦ARMD級シナノに帰路についた。
Sv編隊の潜伏先や母艦の存在については全機撃墜した為、まだ不明な点が多かったが後日VAー4ロズウェルによる掃討絨毯爆撃を実施する事が新統合軍月面第2総軍司令部で決定された。
第2総軍司令部はこの任務にアポロ基地のシーアンタレス隊とダンシング・スカル隊の参加を要請、各隊はそれぞれの母艦をクラビウス基地に急行させた。
【新統合軍宇宙空母ARMD-42シナノ】
アームド級改シナノ
アームド級宇宙空母42番艦で、クラビウス基地に所属している宇宙空母である。
艦名は日本海軍の大和型戦艦で空母に改修された航空母艦信濃から取られている。
緑色の迷彩色ダズル迷彩が特徴であり、かつての旧日本海軍のような姿をしている。
「あれ、吉野大尉は?」
「吉野大尉は艦長室、どうやら何か深刻な用事らしいわよ。」
「真面目な性格なのに何をやらかしたんだ?あの人?」
「さぁな、まぁ先程のような無茶すれば上から絞られるのも無理ねぇな。」
母艦シナノに帰還した大樹は愛機のVFー4から降りると艦長室に呼ばれていた。
艦長のジャスティン・ボーグナイン大佐は深刻そうな表情を浮かべており、大樹は何かやらかしたので処分されるのではと冷や汗をかいた。
目を開けたボーグナイン大佐は要件を話すと、大樹はホッとすると同時に驚いた。
「私が第2総軍司令部に出頭?なぜですか?」
「白川提督直々の命令だ。第2総軍司令部ではなくな。」
「司令部ではなく白川提督ですか?」
「そうだ・・・白川閣下直々にだ。」
第2総軍司令部に出頭
司令部からの命令ではなくクラビウス基地司令兼第2総軍司令官白川秀康中将直々の命令であると
司令官様が何故ただの副隊長である自分自身を呼ぶのだろうか?大樹は意味の分からなさに腹が立ち不機嫌そうな表情を浮かべた。
「大尉、不満そうな顔を浮かべるな。光栄な事だぞ。」
「そうでありましょうか?そうには思えませんが・・・・」
「そうとも。私なんかは先の大戦でエキセドル参謀を車で司令部に運ぶ大命を担った事あるが、今思えば光栄だった。」
「はぁ」
不機嫌そうな表情を浮かべる大樹にボーグナイン大佐は笑って光栄な事だから受け入れろと言った。
ボーグナイン大佐はSDFー1マクロスに乗艦時に和平交渉をするため来艦したエキセドル参謀を司令部まで運ぶドライバーをやってた事があった。
当時は意味が分からず貧乏くじ引かされたと思ったが、今思えば歴史的瞬間に自身が立ち会ったと自慢にするほど誇りに思っていた。
それが何処がいいのやらと大樹は呆れた。
「では私は今から制服を持って愛機でクラビウス基地に向かいます。」
「うむ気をつけていけよ。」
「無論、そのつもりです。」
呆れつつも命令である以上従うのが軍人として基本。命令を受領した大樹は制服一式持って愛機でクラビウス基地に向かおうとした。
制服は司令官に会う正装であるので必須アイテム。
基地に着いたら基地の更衣室で着替え軍港に向かい迎えの車を待つ。
とその前に・・・・
「ところで艦長。」
「なんだ?まだ何かあるのか?」
「今日一度も顔傷がトレードマークのダンパー小隊のワイルダー少尉の姿が見えないのですが?奴も・・・」
同じ部隊に所属している顔傷がトレードマークの屈強な若年兵ジェフリー・ワイルダーが1日中姿が見えないとボーグナイン大佐に言った。
ジェフリー・ワイルダー少尉 撃墜数8機 アメリカ合衆国フロリダ州タラハシー出身
新統合軍ブラックパンサーズ中隊に所属する年齢19歳の可変戦闘機パイロットで、初陣で顔を負傷しながらも敵機3機撃墜する精鋭兵である。
特徴的な顔つきからから必ず目につくのだが今日一日中姿見てない。
サボってプランキヌスクレーターの人口海施設でサーフィンに行くとは思えない・・・・
大樹の問にボーグナイン大佐は答えた。
「それなら白川提督からドライバーやれと基地にいるぞ。」
「うぃ?パイロットであるあいつが何故ドライバーなんぞやってるんだ?」
ドライバーやれと白川提督から命令が出されクラビウス基地にいると・・・・
まさかの問に大樹は呆れて鹿児島弁でため息が出た・・・
名将白川秀康提督は自由過ぎると・・・・
【新統合軍月面クラビウス基地第4軍港】
月面クラビウス基地の第4軍港は空母や巡洋艦が多数行き来しており、いつも賑やかだ。
周囲には2個小隊6機編隊のVFが哨戒飛行で飛び回っており、デストロイド・マサムネが警戒任務に就いていた。
「ダンシング・スカル所属.特務艦アルゲニクス ビーコンキャッチ!入港基準速度、上限マイナス2!姿勢良好!」
「アルゲニクス入港!各員、係留先の配置に就け!」
「駆逐艦カゲロウ出港は少し待て。」
ジェノサイドバルキリーが警護している中で、特務艦アルゲニクスが垂直降下した。
特務艦アルゲニクスはアルゲニクス級特務艦1番艦で特務部隊ダンシング・ スカルの母艦である。
アルゲニクスはそのままドック内に進入し、ドック内通路を進み係留地へ向かった。
「武器装填班、急げ!」
「レクリエーションサービス!何処に行っている?兵員接待の準備できているのか?」
「オーベルト級ステザムが出航!第2宇宙港通路から進入してください」
「第二桟橋、係留準備完了!各員、アルゲニクス係留後、直ちにに第二戦闘備品の搬入を行う!」
「了解!」
アルゲニクスは入港し、駆逐艦ステザムとすれ違いながらも係留完了。
内火艇がアルゲニクスから発進し艦内乗員は基地施設に上陸を果たした。
「クラビウスも久しぶりだね。」
「そうね。作戦本部での用事終わったらゆっくりしたいけど、アポロに戻ってオリヴァーの所に娘預けないとね。」
「とりあえず待ち合わせの場所に向かおう。」
上陸を果たした乗員の中に青の軍服と赤の軍服を着た特務隊員が降りて来た。
2人の特務隊員は待ち合わせの場所に向かうべくエレベーターに乗った。
そうした中、かつての陸上自衛隊の車両である軽装甲機動車が民間エリアのクラビウスシティーのハイウェイを走らせていた。
軽装甲機動車はハイウェイの軍専用分岐路に入り、軍港へ向かった。
「ジェフリー・ワイルダー少尉だったね?」
「はい。」
「俺以外の人間も相乗りさせるってのは本当か!?」
「はい!自分は隊長より、そう聞かされてます。」
「ふ〜ん、そうなんだ。」
制帽を被った30代の将校を乗せ、顔に傷跡のある青年兵が運転する高機動車。
走行中に30代の将校は顔に傷のある青年に相乗りさせる同乗者の事を聞いていた。
将校の名は桐原茂人予備役少佐、かつてSDFー1マクロスに乗艦していた可変戦闘機パイロットで現在はスーパー銭湯滝の華を営んでおり召集命令に応じ予備役復帰していた。
顔に傷のある青年兵は空母シナノで大樹が探していたジェフリー・ ワイルダー少尉その人である。
39年後のバジュラ戦役にてSMSフロンティア支部マクロスクウォーター艦長として活躍するのだが、この時はまだ軍歴の若い若年兵だ。
話を戻し・・・・
茂人から聞かれた同乗者についてジェフリーは答えた。
「少佐もご存じの方ですよ、大戦時戦友だったかたです。」
「誰だ?」
「天才と言えば分かりますよ。」
「天才・・・・・あいつか・・・」
同乗者は天才だと・・・
天才と聞いて茂人は大戦中を生き延びた2人の戦友の名が頭に浮かんだ。
まさかな・・・と茂人は思いながら軽装甲機動車が宇宙軍港PAの中に入っていった。
宇宙軍港PAのビルの車寄せに近づくとベレー帽を被り特務部隊の制服を着た男女の姿が見えた。
「マクシミリアン・ジーナス大尉.ミリア・ジーナス中尉、お待たせしました。」
「御苦労、司令部まで頼むぞ。」
マクシミリアン・ジーナスとその妻ミリア・ファリーナ・ジーナスの2人だ。
マックスとミリアは7年前から特務部隊ダンシング・スカルとして銀河各地を転戦し難問題を解決していった新統合軍のエースである。
マックスは第1次星間大戦で一条輝が率いるバーミリオン小隊に亡き友人柿崎速雄と共に配属し天才と言われる技量で活躍。
ミリアはゼントラーディ軍ラプラミズ艦隊きってのエースであり、地球.太平洋上でマックスと戦うまでは誇り高き無敗のエースであった。
2人は第1次星間大戦で戦場で出会い3度に渡って対決し最終的に相思相愛になり結婚。
今は2人の娘と1人の養女と言った子宝に恵まれている。
「マックス!ミリア!久しぶりだな。」
「お久しぶりですね桐原少佐、少佐の結婚式以来ですね。」
「そうそう。お互い中々忙しかったからなぁ。」
マックスとミリアの姿を見た茂人は仲の良い友人に出会ったかのように喜びながら声をかけた。
茂人とマックスは第1次星間大戦時は他部隊とは言え上官部下の間柄で、ミリアは敵ではあったが末期の頃は戦友として共に戦った。
「デワントンやお子さん元気かしら?」
「元気さ!俺が予備役復帰中はスーパー銭湯を守ってる。」
「なるほど!」
「戦死したり怪我したりしてデワントンの顔が曇ったら許さないわよ。」
「分かってますって」
茂人はミリアの副官の一人デワントン・フィアロと結婚しており、第1次星間大戦後間もなくから今にかけて交流関係がある。
お互い忙しすぎて直接会うのは今日で数年ぶりであり、普段はモニター動画でやりとりしていた。
ただしミリアからは戦死や怪我とかでデワントンの顔が曇ったら許さないときついお約束事があり、会うたびに言われるので茂人は毎回苦笑している。
マックスとミリアを乗せ軽装甲機動車は司令部のあるエリアまで向かった。
軍用エリアを抜け軍民共用のルナハイウェイに進入した。
外からは民間区画のクラビウスシティーの街並みが見え一件いつもと変わらぬ姿だが、目の前にデストロイド・シャイアンが見えた。
ハイウェイ内にはMPが交通誘導しており、横にはストライカー装甲車と高機動車数台が止まっており銃を構えたMPがスーツ姿の男女を壁に手をつかせていた。
「あれは?あれはなんだ?」
「反統合系のスパイ狩りですね、最近多いんですよ。」
「へぇ、今もいるんだな。クラビウスでは見なくなったと思ったんだが。」
茂人達の目の前で行われているのはMPと統合警察情報警備部.国防省情報局による反統合系組織のスパイ狩りであった。
新統合軍は対テロ作戦に厳しく爆発物検査や銃火器の持ち込みは厳重であり、町中にMPが立っている事も珍しくはなかった。
「壁に手をつけ!」
「こちら第3分隊、反統合シンパの乗るワゴン車を拿捕。」
「1名逃げたぞ!」
「逃がしてはならん!射殺しろ!」
「エゲツないな。軍人であるとは言えこの光景は堪えるなぁ。」
MPが逃亡した反統合シンパを射殺した。
反統合系ゲリラに対し新統合軍は容赦ない態度を示しており、少しでも抵抗や逃亡の素振りを見せたら射殺される。
予備役軍人である茂人から見てもエゲツない光景であった。
軽装甲機動車は再び軍専用ハイウェイに入った。
【新統合軍クラビウス基地中枢区第2総軍司令部庁舎】
新統合軍クラビウス基地中枢区にある第2総軍司令部ビルは常時2機のマシンガンを装備したデストロイド・ジャベリンが警備している程の重要施設である。
裏手にもデストロイド・マーベラスとデストロイド・シャイアンが5機警備している他、周辺にもデストロイド・トマホークやジャベリンなどが多数展開している。
更に軍湾港施設に繋がる軌道上エレベーターを備えており、軍幹部の移動に使われている。
「御苦労、後は原隊へ復帰していいぞ。」
「はっお役に立てて光栄であります。」
「さてと桐原茂人少佐とやらを待つとしますか。」
司令部車寄せにハンヴィーが止まった。
ハンヴィーから降りて来たのは制帽を被り鞄を持った大樹であった。
大樹はゼントラーディ人のドライバーに挨拶すると、そのまま司令部のエントランスに向かった。
「待って今の人・・・」
「かなりイケメンじゃない?」
「階級は大尉、目つきは怖いけどカッコいい」
「地球人ってあんなにカッコいい人いるの?」
大樹はイケメンと言ってもいい風貌の為かすれ違った女性兵や受付の女性兵、エントランスで待ち合わせている女性兵.同盟国の女性兵など多種多様な女性兵から好意的に注目されていた。
女性兵からモテる事には大樹はあんまし関心はなかった。
第1モテる為に軍に入ったのではなく、国民を敵対勢力からの理不尽な行為から守るためである。
女からモテる為でもチヤホヤされるためでもない。
「まさか他部隊の副隊長の辞令とはねぇ、しかも中隊長就任前提で・・・」
大樹が司令部に出頭したのは他部隊の副隊長就任の辞令を受け取る為である。
ブラックパンサーズ中隊副隊長である大樹は単に引き受けたのではなく、1年後に中隊長に就任する前提で引き受けた。
中隊長は1年間復帰の予備役少佐であり、副隊長として支えてノウハウを蓄積し満了時に中隊長に就任と言うのが白川提督の考えらしい。
一応話は乗ったがなんか上手い話すぎて、信用できない。
大樹はそう思っていたが、キャリアを考えれば引き受けておくのも悪くないと考えた。
しばらくエントランスで待っていると車寄せに軽装甲機動車が止まったのが見えると、大樹は近くに寄った。
「お待ちしておりました。桐原少佐殿、ジーナス大尉.中尉もお初にお目にかかります。」
「君は?」
「私は新統合軍ブラック・パンサーズ中隊.副隊長大尉、吉野大樹です!本日付けで桐原茂人少佐の副官の任に就けと命じられました。以後よろしくお願いします。」
「吉野大樹、噂の火星の英雄ですか。」
大樹は茂人に軍人らしくキリッと挨拶をした。
SDFー1マクロスに所属したエースパイロットであり、大樹が子供だった統合戦争の頃から長い軍歴を誇る大ベテラン。
そればかりか、天才夫妻であるマックスとミリアまでいるので幾ら自分の腕前が良くても3人の前ではちっぽけである。
ベテラン相手に粗相のないようにしなくてはと大樹は緊張する一方、生真面目な姿の大樹を見た茂人は好青年と言う好印象を持った。
まるでかつてのスカルリーダー.一条輝かのように
「つまり俺の部下になるのか?」
「はっ!そうであります。まぁ正式配属はまだまだ先ですが・・・」
「火星の英雄の異名を持つ君がねぇ、どうして引き受けたんだ?」
「少佐が予備役復帰解除される1年後には隊を引き継ぎ中隊長に就任する確約をもらった為であります。」
「なるほどねぇ。召集命令の意味分かってしまったなぁ。」
大樹の言葉で茂人は白川提督の召集命令の意味を理解した。
新しい部隊を編成するための臨時中隊長に就任させる為に予備役復帰させたのだと・・・・
正式中隊長は副官として付けられた大樹であると白川提督のタヌキっぷりに心底呆れた。
短期間の招集だと思っていたので、長期招集前提の中隊長勤務は流石にキツいと思った。
「ワイルダー少尉・・・ お前何してんだ?」
「た・・・大尉それはその・・・人手不足と言う事でし・・・」
「いや何も言わんでいい、人手不足だからやらされているんだな可哀想に。」
「目が怖いです大尉(闇のオーラ感じてこぇ)」
軽装甲機動車に近づいた大樹は呆れた顔をしながらジェフリーを問いただした。
大樹の顔を見たジェフリーは慌てるも、当の本人は呆れてたのか何も言うなと念を推して言った。
人手不足だからドライバーとして使われているのは経験上あるので理解しているが、本来可変戦闘機パイロットの仕事ではない。
今の現状にため息と呆れしか無いと言うのが大樹の感想だ。
一方、大樹に詰め寄られたジェフリーは闇のオーラ感じて少しだけ恐怖心を感じた。
言葉では同情しているように言ってはいるが、表情が同情しているように見えない。
悪い人ではないと思ってはいるが、怖い者は怖い。
「桐原少佐、中々いい人材が副官で安心したんじゃない?」
「そうか?普通の人材だと思っているが?」
「2年前のマーズウォーズ事件前でも士官学校で優秀な成績で卒業、日々の勤務態度も模範的で優れてる逸材よ。」
大樹の姿と開いたスマホで閲覧した大樹の履歴を見たミリアは羨ましそうな顔をしながら茂人にいい人材の副官で安心したのではと言った。
デワントンやメールと言った優秀な副官に恵まれたミリアだが、それに匹敵する副官の器にある大樹の姿を見て茂人が羨ましく思った。
士官学校卒業した優秀なエースで将来的な将官候補、今後の大樹の姿を想像してミリアは笑顔を浮かべた。
「なるほどね・・・・・ 」
羨ましいと言ってきたミリアに茂人はポカンとするが、言われた事を理解した。
ただ真面目すぎで成績優秀な副官だけではつまらないので一つ意地悪な指摘をしようと考えた。
「吉野大樹大尉、一ついいか?」
「ハッなんでしょう。」
「目の輝き不備、堅苦しいぞ。」
「!?申し訳ございません。」
「堅苦しいかぁ、僕も人の事あんまり言えないなぁ。」
目の輝きが不備。
大樹は真面目であるが、近寄りがたい闇のオーラを放っており堅苦しい。
意地悪な指摘であるが、近寄りがたい闇のオーラを発していたら初対面の人からの印象は最悪だ。
今のうちに治せる所は治さんと。
「目の輝き不備って何?マックス知ってる?」
「日本にあった防衛大の用語だったけど詳しく知らないなぁ。」
腕を組んで今のやりとりを見ていたミリアは目の輝きが何なのかが気になった。
マックスは防衛大の用語で詳しく知らないと応えたが、ミリアはむしろ更に興味を持つ事になった。
9年近くの後、VFパイロット育成センターであるイーグル・ネスト空戦戦技センターの教官になった時に目の輝き不備を好き好んで使うのだが、それはまた別の物語である。
【クラビウス基地司令部庁舎白川秀康提督執務室】
白川秀康
新統合軍中将.月面クラビウス基地司令官兼月面第2軍副司令官の地位を持つ日系将官である。
地球統合軍時代は統合戦争における功績から防衛大同期の早瀬隆司.星村謙三と並ぶ日系英雄三羽烏と称される大物人物であった。
地球統合政府に参加せず混乱を極めた日本政府に対し事実上のクーデターを早瀬.星村らと共に実行するなど考えはタカ派である。
現在は早瀬隆司は先の大戦で戦死、星村謙三は宇宙軍総司令官になるも予備役編入と三羽烏最後の現役軍人として今もなお活躍している。
今は副官の秩父俊仁大佐と在原業高大佐、そして秘書である士官学校首席で卒業した才女メロディー・ギンヌメール中尉と共に他軍幹部と切磋琢磨しながら働いている。
「新星インダストリー社のVFーXー8コードネームファントムⅢか・・・・いい名だな。」
「ゼネラル・ ギャラクシーのVFーXー10の競合機として開発されたらしいです。向こうはカットラスと。」
「幽霊と海賊刀か中々洒落ているな悪くない。」
白川提督は新星インダストリーの最新鋭機のレポートを読んでいた。
新星インダストリーはかつてのFー4ファントムⅡをVF化したVFーXー8愛称ファントムⅢを開発、ゼネラル・ギャラクシーが開発したVFーXー10と軽可変戦闘機制式採用の座を争っていた。
「それがなんで我が基地圏内のブランキヌスクレーターに?」
「月面アポロ基地の宇宙軍総司令部からの命令であります。」
「命令って・・・・誰からだ?」
「無論、ノプティ・バガニス5631のブリタイ・クリダニク総司令からのお墨付きであります。」
「ふ~んクリダニク総司令がねぇ・・・ ん・・・ L.A.I技研のパーツか・・責任者はカルロス・アンジェローニCEO・・」
開発拠点は外縁部ブランキヌス基地。
新統合軍月面第2研究実験団が所在する月面基地でファントムⅢの開発元新星インダストリークラビウス支社が置かれている。
開発拠点に選ばれたのは新統合宇宙軍上層部とブリタイ・クリダニク大将が協議した上であった。
更にパーツにはL.A.I技研の使われているが、白川提督的にはピンと来ないメーカーであった。
ファントムⅢの協議をしているとモニターに秘書士官のメロディー・ギンヌメール中尉が表示された。
「失礼します。」
「どうしたギンヌメール中尉?何かあったのかね?」
「閣下が招集した桐原予備役少佐と吉野大尉が到着しました。」
「そうかすぐに通せ!中尉、急ぎ執務室に帰還せよ。」
「イェッサー」
大樹と茂人が司令部に到着したとの連絡であった。
メロディーは軍のエントランスで監視任務に就いており、軽装甲機動車から降りる大樹達の姿を見て白川提督に報告していた。
任務が終わったメロディーはすぐさま執務室に戻っていった。
「桐原茂人少佐、吉野大樹大尉・・・私のために働いてもらいますよ。」
白川提督は大樹と茂人の経歴書を見て笑った。
それを何を意味をするのか、どんな気持ちで言ったのかは白川提督本人しか知らない。
不敵な笑みを浮かべながら白川提督は2人を自室で待った。
「では我々は原隊に復帰します。」
「御苦労、気をつけて帰れよ。」
「ジェフリー、気をつけてな。」
「少佐、予備役復帰の割には慣れてますね。」
「一応な予備役とは言え軍人だからな。」
ジェフリーや銃座の隊員は任務を終えると直ぐ様軽装甲機動車に戻っていった。
茂人は現役時代の感覚を思い出しジェフリー達に対し上官としてあるべき姿で接した。
また1年間とは言え軍人になる。
昔の感覚を思い出さなければと茂人は気を引き締めた。
「マックス、そろそろ時間よ。モーアや和也君達と合流しないと。」
「そんな時間か・・・僕たちは作戦本部に行くのでここで失礼します。」
「おうそうか、また会えたら酒でも飲もうな。」
「はい、その時を楽しみにしてます。」
マックスとミリアはクラビウス基地作戦本部に向かうのでここから別行動になる。
茂人はマックスに次回再会したら酒を飲む約束をとりつけた。
2人は忙しいのでそれがいつになるのかは分からないが・・・・
「桐原少佐?その隣は火星の英雄吉野大尉?何故ここに?」
「どうしたんだい?」
「いや何でもない。ミリア達と合流しないと。」
ベレー帽を被った緑色のショートヘアの女性兵が大樹と茂人を見て驚いていた。
隊長らしき人物からどうかしたと聞かれると慌てて何でもないと答えた。
緑色のショートヘアの女性兵は隊長や他の隊員と共に作戦本部の受付に向かった。
「では少佐行きましょう。」
「あぁ、タヌキ親父の顔を拝みに行きますか。」
「タヌキ親父・・・でありますか?」
「白川のタヌキ親父・・・さ。」
大樹と茂人は受付に向かった。
本日の面会時間は14時、行き先は白川秀康提督の執務室。
将官クラスの人間と初めて会うのか表情は真顔だが、何処か緊張しているように見える。
若い大樹はマーズウォーズ事件での活躍でロイ・フォッカー勲章を受章した時、最高位の軍人が佐官クラスで更にそれ以上の軍人と今から面会する・・生きた心地がしない
「本日、白川秀康中将の招集を受けた予備役桐原と申します。14時のお約束で伺いました。」
「了解しました。データ照合の為、IDカードのご提示を・・・」
「そうだったな・・・吉野もIDカードを」
「了解した。」
「確認が取れるまで少々お待ちください。」
受付での手続きを始めた。
見た目は可愛らしい受付の女性士官は提示したIDカードのデータ照合の作業を始めた。
司令部の身元証明はテロや暗殺対策で厳重であり、データ照合にある程度の時間を要する。
大樹と茂人はデータ照合の作業を行う女性士官の様子を見ながらしばらく待った。
待っているとベレー帽を被ったMPが近寄ってきた。
「警務隊である、一応手荷物検査を・・・・」
一応、高級将官のエリアに入るのでMPによる手荷物検査を行った。
面倒だが、高級将官に会うので最低限やらないといけないので我慢した。
「IDカードデータ照合の結果確認取れました。どうぞお入りください」
「よし、吉野大尉行くぞ。」
「はっ、お供させてもらいます。」
データ照合が完了すると大樹と茂人は司令部ビルのゲートをくぐった。
これから新統合軍名将白川秀康と会い召集命令の内容を確認する。
一体どんな事を話すのか・・・今の2人には想像がつかない。
次回予告
偵察飛行に出たラウラの分隊は交代の部隊と任務を引き継ぐべく合流ポイントに向かった。合流直前、交代の部隊がいる宙域で閃光が走る。ラウラの目の前に現れたのは異型の戦闘メカであった。
次回 マクロス外伝蒼い髪のメルトラン
【ヴァリアブル・ ゾーン】
死の運命を乗り越えろクァドラン!
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