マクロス二次創作漫画のメカ絵担当のロボさんに依頼中の

VAー4ロズウェル

 

ロズウェルの名の由来はロズウェル事件からで、機体モチーフは攻撃機サンダーボルト

VAー3インベーダーに代わる可変攻撃機として開発された設定です。

 

開発が難航し1年以上の月日が流れましたが、ようやく進展し攻撃機というよりかは爆撃機と言ってもいい大型機になりました。

 

VAからVBー1の型番に変えてもいいほどに。

 

 

 

 

 

前章

 

プロローグ

 

 

 

第1話

 

第2話

 

 

第3話

 

【西暦2021年2月14日】 

【月面クラビウス基地機種転換センター】

 

 

ラウラが機種転換センターに入って9日目・・・・

可変戦闘機の訓練もしつつ、車やバイクの資格を取ろうと奮闘していた。

やる気に満ち溢れながら教室に入ると、女性兵達がいたる所で騒がしかった。

 

皆辛そうな表情ではなく、何か興奮したり慌てたりと統一されてない。

偶然近くにカゴメがいたので聞いてみる事にした。

 

「カゴメ、この騒ぎは何?特に女性兵達がそわそわしているけど?」

 

「今日はバレンタインデーだからだね。」

 

「バレンタインデー?何それ?」

 

聞いたことのない単語・・・

だがまだまだ地球文化に疎いラウラでも分かるのは女性兵が騒ぐ事の出来事と言う事。

女性兵だけではない、男性達も一部が何やらそわそわしている。

 

それほど大きなイベントなのだろう・・・・

そう考えているとカゴメがバレンタインデーがどんな日なのか言った。

 

「女性が好きな男性にチョコレートを贈る日よ。」

 

「チョコってあの甘いお菓子と言う・・・・」

 

「そうよ、まぁ日本式文化だけどね。」

 

バレンタインデーは女性が好きな男にチョコレートあげる日である。

だがそれは日本式文化であり、実際は家族や親友と祝う日であり全然違う。

 

熱心なキリスト教徒からは否定的であるが、カゴメのような穏健層からは好意的であり日本同様に好きな男性にチョコレートあげたりしている。

 

無論、キリスト教往来の伝統だったりと旧各国特有のものだっりと多種多様だ。

 

カゴメは勢いづいてバレンタインデーの起源について語りだした。

 

「元々はローマ帝国時代に戦争で愛する人の事を思って士気が下がると言う理由で婚姻禁止になり、キリスト教の司祭だったウァレンティヌスがこっそり婚姻・・・」

 

「話を聞いていると処刑された日なんだろ・・・」

 

「何故分かったの?」

 

「流れ的に殺されたパターンになりそうだから。」

 

恋愛的イベントであるバレンタインデーの起源の説明をカゴメから聞いたラウラだったが、最後まで聞かないで本来はどんな日なのかを言い当てた。

正解は婚姻禁止の中に兵士達の婚姻を執り行います、禁止命令を破り処刑された日だ。

 

何故ラウラが最後まで聞かないで正解出来たのかはパターンを読み取ったからだ。

普通に考えて無断関連はどれも処刑されるがオチだとラウラは思っていた。

 

「ラウラは想い人いるのかしら?」

 

「私はそんなのにはあんまり・・・」

 

「吉野大尉、あの時のラウラ・・・いつもと・・・・」

 

「そ・・・そんな関係じゃな・・・・いから・・」

 

バレンタインに関する会話が過熱するとラウラと大樹の関係性に触れた。

 

実はラウラが大樹と二人っきりで会話し、女の顔をしてたと教えられた。

教えてきたのはラウラの元戦友であるシュリであり、その敵の顔は小悪魔だった。

大樹の名を出した途端のラウラの反応を見るに、内容が事実だとカゴメは確信し微笑んだ。

 

まだ文化慣れしてないラウラとは言え、恋に関しては初心・・・・

 

意地悪な意図のある質問にラウラはまた不思議な感覚に襲われた。

 

「ちなみに昨日は女同士の友情を祝うギャレンタインデーだったらしいわよ。」

 

「何それ?地球人はそんな事までやっているのか?」

 

「一応・・・・・・ね。まっ前日だったけど。」

 

初心であるラウラを十分辛かったカゴメは別の話題で話を逸らした。

下手にいじりすぎると可哀想と言う理由だ。

 

狙い通りラウラはギャレンタインデーに乗っかり大樹の事を忘れた。

 

いろいろと不思議そな表情をしながら考えていると目の前にチョコレートがあった。

しかも丁寧な箱に入っており誰かにあげる予定なのだろう・・・・・

 

「カゴメ、それはなんだ?誰かに贈るのか?」

 

「これね一応・・・・ARMDー06宛に・・・」

 

「確かコンステレーションと言う名の・・・・」

 

カゴメはARMDー06コンステレーションにいる誰かにチョコをあげるのだという。

 

コンステレーションは初期ARMD級であり、大戦を生き残った武勲艦だ。

現在はクラビウス基地所在の予備艦隊の所属であり、航路の哨戒任務に就いている。

 

最前線で戦っている兵士の中にカゴメの想い人がいるのだろうか?

 

更に深く質問しようとしたがカゴメに申し訳ないと思い自重した。

 

【同時刻】

【クラビウス基地外縁部ブランキヌス基地上空.空母アルタミラ】

 

 

クラビウス基地外縁部ブランキヌス基地上空にて空母アルタミラは展開していた。

 

僚艦にオーベルト級宇宙駆逐艦3隻(オリンピア.グリッドレイ.タチバナ)が付けられ、VFー5000スターミラージュで編成された3個中隊が配備された。

アンサーズ中隊を含めると4個中隊計64機、早期警戒機8機の大編隊.連絡機のVTー1.10機、オーベルト級宇宙駆逐艦に搭載された直掩隊の空間デストロイド×9.VFー1D×6と大部隊だ。

 

とは言えVTー1.10機は誰も乗らない予備機であり、隊員の4割はゼントラーディ人だ。

更にAIを活用した艦内の省人化が進み整備する人員を含め、かつてのミニッツ級よりも圧倒的に少ない550人程度しかいない。(乗員300名.航空団250名)

 

とは言え他のARMD級空母はこんなに搭載もしてないし、人員もいない。

かつて大樹が乗艦してたARMD級空母シナノは1個中隊+空間デストロイド1個中隊のみだ。

 

人員不足の中、これだけの装備や人数を集めた白川提督に大樹は畏怖の念を抱いた。

 

大樹はと言うと中隊長代理と言う立場でアンサーズ中隊を纏めていた。

本来の指揮官は茂人だが教官職をやっている為、副隊長たる大樹が代行している。

 

「吉野大尉お疲れ様です。」

 

「ニクソン中尉もな。」

 

この頃になると小隊長は全員着任していた。

 

各小隊の隊長は本多義輝中尉.エミリー・ニクソン中尉.ガブラ・ノーボレス中尉であり、どれも技量が優れ部下に慕われているエースパイロット達だ。

白川提督が各方面に問い合わせて参集した精鋭であり、技量もかなり高い。

 

その一方で・・・・・

 

「中尉、胸の谷間どうにかしろ・・・」

 

「嫌です。」

 

「吉野大尉諦めましょう、下手したらセクハラですよ。」

 

「ぐぅ・・・」

 

曲者揃いであり率いていくには難があるとつくづく実感させられていた。

 

例を挙げるならばエミリーは制服の上着の胸元を空けており、胸の谷間を露わにしていた。

会う度に目のやり場に困るし、注意しても拒否してくる始末。

下手にやれば他の女性兵からセクハラだと言われる可能性が高い。

 

「全くうちの部隊は変人揃いか・・・・」

 

「隊長である桐原予備役少佐もかなり変人だとか?」

 

「否定しない・・・・」

 

アンサーズ中隊は揃いも揃って変人揃いであった。

 

国政与党所属.市議の次女イ・エラ少尉、文化慣れ過ぎるゼントラーディ人.ロザ・べサーズ准尉、やる気のない態度が目立つアリサ・バレンタイン准尉癖が強すぎる。

男性陣も三国志の英傑である曹操の末裔である曹涼.少尉や食いしん坊なカレント・バーガー准尉など女性陣に負けずも劣らずクセが強すぎるので頭が痛い。

 

「あいつは今頃どうしてるかな・・・・」

 

「あいつとは?」

 

「いやなんでもない。」

 

ふとラウラの顔を思い出す・・・・・

 

無断出撃し奮戦した蒼い髪が印象的なゼントラーディ人、以外にも素直で良い娘だった。

癖のあるアンサーズ中隊の中ではまともに思えるような若い女性兵だ!

 

いやラウラはラウラで癖はある・・・・

 

機体を持ち出して無断出撃してるだけでもまともではない。

頭のネジは何本かぶっ飛んでいるとんでもない生物兵器として生まれた異星人の女だ!

 

「ラウラ・ベルタリア・・・・か・・・近いうちに会いそうな気がするな・・・」

 

ゼントラーディ人の・・・ラウラ・・・

アンサーズ中隊の隊員候補として最有力の元海兵隊員・・・・

近い将来、入隊前に一度どこかいや何回か会うかもしれない。

そんな気がしてしょうがない。

 

大樹は更衣室に向かいパイロットスーツに着替え出撃に備えた。

 

【西暦2021年2月14日】

【月面クラビウス基地とアポロ基地間、輸送路】

 

 

カゴメの想い人ライナス・フィルダー少尉はアームド級宇宙空母コンステレーションに配属になり、クラビウス基地とアポロ基地との間の輸送路警戒任務に従事していた。

配属先のフライング・フィッシュ中隊はVFー4ライトニングで編成されている精鋭で知られており、はぐれゼントラーディとの戦闘でかなりの実績を残していた。

 

「フィルダー少尉、部隊に慣れたか?」

 

「はい、問題なく勤務できそうです。」

 

「そいつは良かった。」

 

ライナスは上手く馴染んでおり問題なく勤務している。

 

元々、SFー3AランサーⅡに乗っていた戦闘機乗りであり新人ではない。

新人ではなく現役戦闘機乗りであった為、慣れない現場でも難なく出来ている。

 

だが先任士官は苦い顔をしていた。

 

「似たような名前の奴いたな。」 

 

「ライナス・フィランダー大尉、星間大戦でブルズアイ作戦に参加して戦死した。」

 

「似たような名前だからこそ、心配しているんだな。」

 

ライナスに似たライナス・フィランダーと言うVFパイロットが先の大戦にいた。

 

しかし

 

ゼントラーディ軍艦隊に対する特殊任務作戦.ブルズアイ作戦で戦死していた。

激しい戦闘の最中奮戦するも、集中砲火を受け戦場の塵と化した。

 

なおブルズアイ作戦で指揮官を務めていたのはラウラの前で講演していた英史だ。

英史はスカル大隊の副隊長とも言うべき地位に就いており、特殊任務作戦の指揮官として自身を含む4機でゼントラーディ軍艦隊に打撃を与えていた。

 

ライナスは同名で似たような姓の人物に似ている為、戦死してしまわないか心配だ。

 

「大丈夫ですってそんな事はありませんから!」

 

『ミレニアムゴブリンズ中隊とフライング・フィッシュ中隊は持ち場を交代せよ!』

 

「油断するなよ!油断した時、人は簡単に死ぬからな。」

 

「了解です。」

 

迷信だと思ってかライナスはそんな事はないと笑った。

 

必ず生きて帰り機種転換センターで短い間だが世話になったカゴメと世間話がしたい。

いつか告白しあわよくば恋人同士になれたらなと想像した。

 

ライナスはVFー4ライトニングⅢに乗り込み、出撃の時を待った。

そしてコックピットにカゴメがソロアイドルやってた頃の写真を挟んだ。

 

「All system is green. Good luck !」

 

「Thank You」

 

アームド級コンステレーションからVFー4ライトニングⅢが発艦していった。

入れ替わるかのようにミレニアムゴブリンズ中隊が帰還し、前方で待機していた。

 

ミレニアムゴブリンズ中隊は航路防衛の任を終えており、直掩として残ってた機体もどんどんコンステレーションから伸びるクレーンに積まれるかのように収容された。

 

「カゴメさん、また帰ってきます!任務をやり遂げ一人前になれた姿見せます!」
 

ライナスはそう意気込むと操縦桿を強く握り月の宇宙を駆けていった。

 

出撃したフライング・フィッシュ中隊各隊は予定パトロールコースを回ったり、コンステレーション周辺の警戒任務に就くなど様々な活動を開始した。

パトロール任務に就く事になったライナスが所属する小隊は4機編隊で所定コースを回ったが哨戒任務に就いていたVEー1から敵部隊発見との報告を受けた。

 

【西暦2021年2月14日】

【クラビウス基地.演習エリア】

 

 

ラウラは他の候補生達と共に初めてVTー1に乗り込み実機訓練に臨んだ。

 

先導する教官の乗るVFー1Dを追いかけ所定のコースを回ると言うもの・・・・

VFに乗るのは先の遭遇戦で無断使用して以来であるが、不思議と操縦感覚は忘れていなかった。

 

いや忘れてはならない、忘れてはならないこれから自分の武器になる力だから・・・

 

「ひょっこ以下の卵野郎どもついてこい!VF乗りの実力教えてやる!」

 

教官は日本文化好きのゼントラーディ人であるルルドルドだ!

垂直尾翼に大日本帝国陸軍の飛燕の部隊の一つのマークと必勝が描かれており、カラーリングはその部隊と同じく迷彩色となっている程こだわっている。

 

「ん?だらしねぇな!海兵隊や他機種で実戦は積んでたか知らねぇがチェリー(童貞野郎)しかいねぇのか!」

 

VFに乗り慣れているルルドルドの実力は高い!候補生達に差をつけ先行した。

中々追いつけない候補生達にチェリーと呼んで叱責した。

 

カチンと来たラウラは操縦桿を握りしめ何とか追いつこうと奮起し、差を縮めた。

 

「おい!貴様はまだマシな方らしいな、貴様は名は?」

 

「第29海兵隊出身ラウラ・ベルタリア!」

 

「キヨラ機動戦隊のラウラ・ベルタリアか・・・・・とは言えまだ未熟の半端者だな。」

 

「なにぃ今の言葉撤回してください!」

 

「撤回して欲しければ実力で示すんだな!まだマシな方だが・・・チェリー(童貞野郎)に過ぎん。」

 

必死に追いついたラウラだが、待っていたのは更なる叱責であった。

 

ルルドルドはアドクラス艦隊出身でありSDFー1マクロスと何度も交戦しており対VF戦を学び大戦後にVFに乗り数多くの実戦を経験していた。

一方のラウラはキヨラ機動戦隊の隊員であり、マクロスと交戦せず対VF戦術を学んでないどころか戦後10年間ははぐれゼントランとしか戦ったことが無い。

 

いくらエースとは言え対VF戦術を持ってなければチェリーでしかない。

 

「言われなくなってやってやる!」

 

言われてるカチンッときたのかラウラは奮起した。

 

海兵隊時代エースと言われる程の実力を持っており、数々の激戦を生き抜いてきた。

必死に座学だって学んでいるし、可変戦闘機技術も熱心に研鑽に励んでいる。 

言われっぱなしで黙っているほど賢くはない。

 

必死に食らいついているとカゴメから通信が入った。

 

『ベルタリア曹長、挑発に乗らないように・・・』

 

「分かっている・・・・でも言われっぱなしでやるほど・・・」

 

『それで敵の罠に嵌って死んでしまってはどうするのよ?』

 

挑発に乗るラウラを見兼ねたカゴメは諭した。

 

戦場で挑発に乗ると言うのは敵の罠に嵌まりやすく危険だ。

明らかに見え透いた挑発に簡単に乗るラウラは罠に嵌って危機に陥らないか心配になる。

諭したが明らかにラウラは感情的になりルルドルドの挑発にどんどん乗った。

 

「だからチェリーなんだ!」

 

ルルドルドがそう言うと突然反転し攻撃を開始した。

 

銃弾は実弾ではなく演習で用いられるペイント弾を使っている。

突然の演習に伴う攻撃にラウラは間一髪回避するも、他の候補生達の声が響く・・・

攻撃を開始したのはルルドルドだけではない、茂人などの教官らも候補生に牙を剥いた。

 

「ヒョッコども、演習が突然出てきて驚いたか?戦場はそう簡単なもんじゃねぇ、いつ戦闘になるか分からねぇもんだ!特にベルタリア曹長、お前は簡単に嵌まりやすくいいカモだ!」

 

「こいつ一般のゼントラー・・・・」

 

「馬鹿野郎!いつまでゼントラーディ軍をやっているつもりだ!チェリーガール!」

 

ラウラは今までクァドラン・ローに乗っていたから分からなかったが、同じ土俵となった結果、空戦ポッド乗りのゼントランのエースの本当の実力を思い知る事になった。

 

想像以上に強く回避するのが精一杯であった。

 

ゼントラーディ軍時代はラウラのようなクァドラン乗りの戦闘能力が高く、ルルドルドのような空戦兵が戦闘能力が低いのが常識であった。

現実はそう見えたのはクァドラン系と空戦ポッドの性能差が原因であり、実際は能力値的に個人差はあれどそこまで大きな差はなく人によって立場が逆転していた。

 

一度、レミアと戦闘を経験し奮戦したが遊ばれていた。

つくづく情けない。

 

「チェリーガールと言われたくなければ奇襲に備える心構えを身につけるんだな!」

 

呆気なくラウラはペイント弾の餌食になった。

 

地球人の常識を身に着けたルルドルドは強く、まだまだゼントラーディ人な自身は弱い。

だから強くなりたい、どんな相手だろうと強くなって嫌な過去から脱却したい。

 

同胞を殺したラウラは二度とゼントラーディ軍人には戻れない。

だったらひたすら強くなって軍人として極めていきたい。

今のラウラは我武者羅に強さだけを求めていった。

 

「ラウラ・・・極めるのはいいけど、それじゃ・・・」

 

我武者羅に強さを求め続けるラウラにカゴメは不安を覚えた。

 

ゼントラーディ人は戦争の為に作られた生物兵器であり人間ではない。

だが地球人との接触で戦争以外の生き方を見いだして人間になろうとしていた。

 

そうした中でラウラは今だに力を求め続けている。

まるで更に戦争の為に生きていくしかできない生物兵器としての生き方に・・・

それではいつかは戦場で命を落としてしまう・・・・

 

カゴメは心の中で変わってくれる事を祈るしか出来なかった。

 

【同時刻】

【月面クラビウス基地とアポロ基地間、輸送路・戦闘宙域】

 

 

ライナスが所属するメヒカリ小隊はVEー1からの通報を受けとある宙域に到達した。 

 

はぐれゼントラーディの一部隊を発見、大至急確認に向かわれたしと・・・

メヒカリ小隊は指定された宙域に到達、岩陰に隠れて様子を伺った。

 

「敵はクァドラン・ローか・・・・母艦はピケット艦クラス複数隻・・・」

 

指定された場所にはゼントラーディ軍ピケット艦が複数隻展開していた。

周辺にはクァドラン・ローが展開しており、直衛艦隊の残余がはぐれ化した部隊だ。

メヒカリ小隊の隊長は奇襲を仕掛け、本隊到着するまで戦力を釘付けにしようと考えた。

 

幸いにも大型対艦ミサイルがあるのでピケット艦撃沈もしくは航行不能に出来る。

 

「連中もよくこれほどの戦力を・・・・フィルダー少尉、無茶はするなよ。」

 

「了解です。」

 

「他の小隊も直に来る。無茶はするなよ。」

 

可変戦闘機パイロットとしての初陣であるライナスは興奮していた。

 

旧型の宇宙戦闘機から時代の主役になりつつある可変戦闘機パイロットとして初めて自分の実力を発揮する好機であり、名をあげれば一躍有名になる。

クァドラン・ローだろうとなんだろうとやってやる。
 

士気が高いライナスらメヒカリ小隊ははぐれゼントラーディ軍部隊に向け突貫した。

 

「隊長、友軍艦隊に応援を頼んではどうでしょうか?」 

 

「空母アルタミラか・・・ブランキヌス基地から進出してきた艦か・・」

 

「母艦コンステレーションと交代予定の友軍艦です。」

 

「いやそこまでではない。今は我々だけでやるぞ。」

 

隊員の1人がアルタミラを旗艦とする艦隊に応援を出すべきだと進言した。

 

アルタミラは現宙域からほど近くすぐ駆けつける友軍部隊の中で一番だ。

クァドラン・ローはリガードやヌージャデル・ガーよりも遥かに強力であり、メヒカリ小隊単体で対応するには犠牲が出る可能性が高くアルタミラの応援が必要であると隊員は考えていた。

 

隊長は実力に自信を持っており部下からの進言を一蹴した。

 

メヒカリ小隊ははぐれゼントラーディ軍を強襲した。

強襲によりはぐれゼントラーディ軍艦隊に打撃を与えるのに成功。

クァドラン・ローとクァドラン・ノナ何機か撃墜した。

 

見る限りメヒカリ小隊が優勢に見えるのだが、現実はかなり厳しいものであった。

 

突如、リガード部隊が現れ地上からメヒカリ小隊を狙撃した。

この狙撃によりメヒカリ小隊の隊員の1機が撃墜され、戦況は一気に不利に傾く。

 

【20分後】

【月面ブランキヌス基地南西・宙域】

 

月面ブランキヌス基地から離れた空母アルタミラはクラビウス基地とアポロ基地の輸送路に近づき、空母コンステレーションと任務を交代しようとしていた。

 

大樹は賢二郎と共にVFー1Pの前に立ちガブラ・ノーボレス中尉率いるラーチャー小隊の隊員達にパトロール任務の詳細について説明をしていた。

 

『吉野大尉、大至急ラーチャー小隊を率いて出撃してください。』

 

「劉少尉、どうしてだ?」

 

『友軍可変戦闘機部隊がエリア108にてクァドラン・ロー部隊と交戦中!現場に近い我々は援護に入ります!』

 

説明している最中にブリッジオペレーターの劉夢華(リュウ・モンファ)から出撃要請が出た。

 

エリア108にて友軍可変戦闘機部隊がはぐれゼントラーディのクァドラン・ロー部隊と交戦中であり、苦戦を強いられた為救援要請を出したとか。

無論その友軍部隊とはライナスが所属するメヒカリ小隊だ。

 

突貫したはいいものの、クァドラン・ローの性能とパイロットの実力が高く月面地表に隠れていたリガード部隊

 

近くにアルタミラがいた為、出撃待機中だった大樹達に出撃を命じた。

 

「友軍可変戦闘機部隊?何処の部隊だ?」  

 

『コンステレーション所属フライング・フィッシュ中隊です。』

 

大樹は何処の部隊かと確認すると、所属はコンステレーション所属のフライング・フィッシュ中隊(ライナスの部隊)だとモンファは真面目な声で答えた。

 

コンステレーションにはミレニアムゴブリンズ中隊がいるが、現場近くにいるのはアルタミラであり艦長のジェイルは前述の通り大樹らに救援に向かわせようとした。

 

「吉野大尉殿、どうかしました?」

 

「ノーボレス中尉、出撃命令だ!速やかに各機搭乗しろ!」

 

「出撃でありますか?」

 

「突然で悪いが俺達にご指名だ!まぁ黙って俺について来い・・・」

 

モンファとの通信を終えると大樹は神楽やラーチャー小隊に出撃を命じた。

 

ガブラら隊員は驚いた顔をするが、大樹は黙ってついて来いといい搭乗機に向かった。

出撃準備を終えると大樹らハンター小隊とガブラのラーチャー小隊は次々とアルタミラから発艦し月面上空の宇宙(そら)をアンサー(灰色ガン)の群れが飛び立った。

 

同時刻・・・・・・

 

アポロ基地から出航し月面クラビウス基地に向かう艦があった。

アルゲニクス級特務巡洋艦アルゲニクス、特殊部隊ダンシング・スカルの母艦だ。

 

クラビウス基地に向かう理由は同地でイベントに参加していたゼネラル・ギャラクシーの天才技術者アルガス・セルザーを収容し惑星エデンに向かう為である。

惑星エデンのニューエドワーズ基地に到着後は、現地にて行われる新型機のテストを行いYFー9とYFー10を完成に近づける作業を行う予定だ。

 

「ジーナス大尉・F・ジーナス中尉、前方α5宙域にて戦闘を確認しました。友軍部隊が交戦中・・・なお苦戦との事です。」

 

「こんな所で戦闘?この辺りは新統合軍の統治下では?」

 

「ミリア・・・敵がいる事実には代わりはない。」

 

マックスとミリアはオペレーターからの言葉で前方にて戦闘が行われていると知った。

 

ミリアは新統合軍の統治下で戦闘が行われている事に疑問に思うが、マックスはそこに敵がいて戦闘が行われている事実にかわりはないと判断し格納庫へ向かいアルゲニクスから発艦していった。

 

【同時刻】

【月面クラビウス基地機種転換センター・バイク教習所】

 

 

 

VFの訓練を終えたラウラは教習所でバイクの教習を受けていた。

 

日常的に車やバイクに乗れれば生活が楽になるのと趣味でいろんな乗り物を乗りたいので、VFの訓練同様に熱心に教習所で車やバイクの教習を受け技能を高めていた。

 

「次こそ必ず勝ってやる・・・・」

 

このまま負けっぱなしではいられない。

受け入れたら自分自身のプライドが許さない。

 

軍用バイクに跨がりバイクの教習を受けるラウラは胸の中でそう呟いた。

特にルルドルドのあの罵声が嫌い、聞くたびに自身のプライドが故に余計に許せない。

機種転換センターに居るうちは何とかして勝たないといけない。

 

馬鹿野郎!いつまでゼントラーディ軍をやっているつもりだ!チェリーガール!

 

「いつまでゼントラーディ軍をやっているつもり・・・か・・・・私だって好きで地球人をやっているつもりなんて・・・ないのに・・・」

 

ルルドルドの言葉が突然脳に響く…いつまでゼントラーディ軍をやっているつもりだと…

 

ラウラは好きで地球人をやっているつもりはないと思っていた。

 

出来れば今でもゼントラーディ軍の軍人をやっていたかった。

全てはあの日、ボドル基幹艦隊決戦の日から変わってしまった。

本来居たかった自分や居たかった世界は皆、綺麗さっぱり無くなった。

 

「様子を見てみれば・・・・ラウラ、あんたは変わらないね。」

 

「シュリ・・・・・何故ここにいるの?」

 

「別にいいでしょ、今の私にとって家はここだからさ・・・」

 

休憩に入り、好きな飲み物であるコーラを飲んでると制服姿のシュリが訪れた。

 

ゼントラーディ軍や海兵隊にいた頃と違ってシュリもいろいろ変わった。

サングラスをかけたり、耳には星の形をしたピアスなんかしている。

 

そう思っているとシュリは自販機でコーラを買いラウラの隣に座った。

 

「シュリはいいよな、悩みなんてなくて・・・」

 

「そう?地球人になってからは色々あるよ。」

 

「地球人になって悩みなんてあるんだ・・・・」

 

価値観が違う何もかもが違う・・・

 

シュリは海兵隊から転属した頃と違って完全にカゴメ達のような地球人の女になった。

 

話していくうちに部隊の話や日常的な話などどれもついていけない。

思っているシュリの姿とは程遠かった。

 

「ラウラさぁ・・・・・地球人として生きるなら何をしたい?」

 

「何をしたいって・・・・・今は強くなりたいだけ・・・・」

 

「やっぱ変わってないか・・・ 」

 

シュリから地球人として何をしたいかと聞かれたラウラは強くなりたいと答えた。

 

ラウラの強くなりたいと言う言葉を聞いたシュリは少し驚くと冷たい表情を浮かべた。

冷たい表情を浮かべたながら変わってないかと言うシュリにラウラはムッとした。

 

「シュリ・・・・・私の何処が変わってないわけ?」

 

「そうね、単にゼントラーディ人としての帰属意識が強すぎて生物兵器から抜け出してない。」

 

「生物兵器!?私が?なんで!?」

 

「そう、戦う事しか目標を見出していない・・・それって人間って言えるかな?」

 

ムッとしたラウラは口調を荒くし問い詰めるが、シュリはルルドルドと同じく非情な答えを返した。

 

戦う事しか生き方を見いだせてない自分は生物兵器のままだと。

返ってきたシュリの言葉が今の自分を惨めにする。

胸が苦しくなり、ラウラは返す言葉もなくただ黙ることしか出来ない。

 

「じゃあねラウラ、私明日から出港しパトロールだから・・・私の戦友達によろしく。」

 

「うん・・・・分かった。」

 

この場から去っていくシュリの姿が眩しかった。

 

生物兵器・・・・人間って言えるのか?

ルルドルドの言葉と同じくシュリの言葉も痛く重かった。

 

再びバイクに乗るとラウラは再び教習を行う。

今日の教習を終えればまたバルキリーの訓練が始まる。

 

シュリがなんと言おうが、強くなる。

強くならなければ、自分自身に存在価値を見出だせない。

今のラウラはただ強くなる事を強く求めた。

 

【西暦2021年2月14日】

【月面クラビウス基地とアポロ基地間、輸送路・戦闘宙域】

 

 

クァドラン・ローの動きは想像以上に速かった。

 

伊達に10年間戦っているだけあってリガードやヌージャデル・ガーとは違う。

教本通りにいかない展開にライナスは焦りが出始める。

 

「バカッ無茶をするな!敵は・・・・・・」

 

「俺だってパイロットです、やれます!」

 

敵は明らかにただのはぐれゼントラーディ軍とは違う・・・・

 

クァドラン・ローの動きに合わせてリガードが支援攻撃、地球流の戦術を取り入れている。

想像以上に強い。

 

ライナスはバトロイドに変形しクァドラン・ローに支援攻撃を行うリガードを攻撃し何機か撃墜した。

初陣にしてある程度の成果をあげる事が出来た、教官として世話になったカゴメにいい報告が出来る……ライナスは高揚感を覚え近くにいるリガードに銃口を向けた。

 

1機のクァドラン・ローがライナスの目の前に立ちはだかった。

咄嗟の判断でガンポッドを構え、精神が限界に達しライナスは叫んだ。

 

「くそぉ!俺はまだやる事があるんだぁぁぁ!」

 

ライナスのVFー4とクァドラン・ローの銃口はお互い向き合いトリガーを引いた。

 

ガンポッドとパルスレーザーの銃弾の雨は双方に降らせ、双方を通り過ぎる。

フライング・フィッシュ中隊やコンステレーションの乗員達、そしてはぐれゼントラーディ軍のクァドラン・ローのメルトラン達は息を呑みつつその様子を目撃した。

 

双方はまるで力尽きたかのように月面の重力に引かれた。

 

「マックス!見えたわ・・・エネミータリホー!」

 

「よし行くぞミリア!」

 

現場にマックスとミリアが到着し戦場へ突貫した。

 

それに気がついたクァドラン・ローや指揮官機のログレン・ローはメヒカリ小隊を無視して突貫し迫るマックスとミリアを迎撃していった。

ログレン・ローの姿を見たミリアはフッと笑うとクァドラン・ローを2機を血祭りにした。

 

1時間後・・・・

 

「こちらハンターリーダー、ラーチャー小隊と共に現場に到着した。」

 

『こちらアルタミラからハンターリーダーへ、現場はどうですか?』

 

「友軍部隊がはぐれゼントラーディ軍を鎮圧完了、出番は無かったみたいだ。」

 

『了解。』

 

「ジーナス夫妻・・・月にいたのか・・・」

 

戦闘の光を確認した大樹は賢二郎とラーチャー小隊と共にコンステレーションへの増援として戦闘宙域に到着したものの、戦闘は新統合軍の勝利で終わっていた。

青と赤い機体、マックスとミリアらダンシング・スカル隊がクァドラン・ローやリガードの一部隊に打撃を与え残存した機体や艦隊は降伏してしまった。 

 

ダンシング・スカル隊は苦戦しているメヒカリ小隊を発見し突貫し、クァドラン・ローやリガードを次々と撃破し艦載機部隊のログレン・ ローを戦闘不能にし制圧した。

2人の圧倒的な実力を前にクァドラン・ロー達は戦意を消失、一瞬で降伏したと言う。

 

マックスとミリアの駆るVFー5000は残存したクァドラン・ローとクァドラン・ノナを集め機体から兵士を降ろさせ頭を後ろにし一箇所に集めていた。

 

艦艇らは今到着したコンステレーション航空隊が到着し拿捕されている。

 

「大尉、あれは・・・・」

 

「ハンター2・・・そしてラーチャー小隊各員・・・しっかり見ておけ・・・俺達軍人は軍人である以上戦場で墓標を作る事になる。」

 

「あ・・・はい。」

 

月面の大地に鎮座するVFー4とクァドラン・ローの姿を見て、大樹は敬礼した。

 

軍人をやっている以上、五分五分の可能性で自分も同じ姿となるかもしれない。

大樹は今目の前に見える光景をしっかり記憶に焼き付けていた。

 

1人の軍人として人間として決して生涯忘れぬ為に・・・・・

 

「大尉、クァドラン・ローのパイロット生きてますよ。」

 

「何?」  

 

クァドラン・ローが生きていた

 

相討ちになったと思いきやパイロットは負傷に留まり、額から血がたれていた。

大樹はクァドラン・ローのハッチを開け中の操縦士の顔を見て少し驚いた。

 

「ラウラ・ベルタリアと同じ顔の兵士か・・・・」

 

「誰なんですそれ?」

 

「じゃじゃ馬だよ、命令違反するほどの・・・な」

 

動けなくなったクァドラン・ローのパイロットの顔はラウラと同じ顔をしていた。

 

クローン兵士であるゼントラーディ人が同じ顔同じ身体をしているのは珍しくない。 

だが大樹の目の前のメルトランは同じ顔をしてても表情は違った。

ラウラと違って何処か憎悪のあるかのような表情をしていた。

 

しばらく見ているとクァドラン・ローのパイロットは少し意識を取り戻し少し動いた後、大樹らと目が合い怯えはじめた。

 

「デ・・・デ・デブラン・マイクラーン(ち・・・地球人・・・)」

 

「こいつ!大尉、撃ちますか?」

 

「やめろ!神楽・・・こいつは敵とは言え捕虜だ!殺すな・・・」

 

神楽は発砲許可を求めるが大樹は拒絶した。

 

既に戦闘能力はなく、殺せば戦争犯罪人になるだけだ。

更に言えば大樹はラウラと同じ顔をした敵を無意識に殺す事を拒絶していた。

 

必死になり神楽を抑える大樹だがクァドラン・ローのハッチが更に上に開いた。

 

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

「大尉…!?」

 

「くそっ・・・・」

 

クァドラン・ローのパイロットは突然機体から降りて大樹のVFー1に向けて突撃した。

 

身体はボロボロであったがそれを感じさせない程の気迫で圧倒し大樹を怯ませる。

神楽は反撃しようとガンポッドを向けるが、とても間に合わない位置にいた。

 

大樹のVFー1にクァドラン・ローのパイロットが掴みかかり、頭部を潰そうとする。

 

ラウラと同じ顔のクァドラン・ローのパイロットは何かに取り憑かれたかのように気狂った笑いをしながらじっと見つめ、大樹はたじろぐ・・・・

頭を掴みこのまま潰すかと思ってたが、クァドラン・ローのパイロットは何者かに弾き飛ばされた。

 

「!?」

 

「吉野大尉、危ない所でしたね。」

 

「ジーナス大尉・・・・」

 

「火星の英雄(マーズ・ヒーロー)がらしくないですよ、ここは僕とミリアに任せて!」

 

飛び出して襲いかかろうとしたクァドラン・ローのパイロットを制圧したのはマックスだった。

バトロイド形態の青いVFー3000はガンポッドの銃床で肩を叩いて動きを封じ、よろけた所をミリアの駆る赤いVFー1Jバルキリーが銃口を向け制圧した。

一瞬の隙を突いて一矢報いろうとしていたクァドラン・ローのパイロットは完全に戦意を失った。

 

「ラウラ・・・・お前はいざって時に自分を殺す事が出来るのか・・・・」 

 

大樹は取り押さえられるラウラと同じ姿をしたクァドラン・ローのパイロットを見て呟いた。 

 

襲いかかってきたクァドラン・ローのパイロットは自身に向け憎しみの表情で迫った。

しかもただの表情ではない、これから迎え入れるメルトランと同じ顔をした兵士だ!

ガンポッドを構え反撃しようとしたが、大樹はトリガーを引く事が出来なかった。

 

いくら別人とは言えラウラと重なってしまい引き金を引く事が出来なかった。

 

自身ですら無理であったラウラがVF部隊として編入されれば、今後自分と同位体を殺す機会が何度も訪れる・・・・ゼントラーディ軍への帰属意識の強いラウラにそれが出来るのか?

 

舌打ちをしながら大樹はこれからの懸念に苛立たせる。

 

【西暦2021年2月15日】

【クラビウス基地機種転換センター.教官室】

 

午前中の授業は無事に終わり、食事が終わるとラウラとカゴメは仲良く会話していた。

 

食事に関して言えばTボーンステーキとロブスターがあり、候補生達が青ざめる中ラウラだけはウキウキとしながら楽しく美味しく食事することが出来た。

 

午前中の教科もなんかも・・・

 

「凄いわね、半月もしないでVFの操縦をマスターするなんて・・ 」

 

「一応クァドラン・ローではエースでしたから、感覚さえ掴めれば楽々だね。」

 

「ファイター形態ではイマイチだけど・・・ 」

 

「出来れば触れて欲しくなかったなぁ・・・」

 

VFのシュミュレーションでかなりの高得点をラウラは叩き出した。

 

クァドラン・ロー乗りであるラウラは当然と言ってもいいのかバトロイド形態で成果を出しており、一方でファイター形態がイマイチと言わしめる程特徴が出た。

その一方で見るからにラウラの性格は明るくなっている。

 

「ベルタリアの成績、中々いいな。」

 

「色々あって前向きにやってますわ。」

 

「そうでなくては困るからな。」

 

ラウラの成績は茂人にとって喜ばしい話であった。

 

強いラウラの向上心が想像以上に力を発揮し可変戦闘機パイロットとしての実力を高めた。

更にだが車やバイクなどの技能も高く更に知識も覚え一瞬で運転免許を取り、教習所の教官が腰を抜かす程、軍人として人としてのスキルを高めていた。

 

これならば安心して卒業後、隊員として引き取る事ができる。

茂人はコーヒーを飲みながら確信した。

 

一人の職員である若い女性兵高谷玲子准尉が入ってきた。

 

「桐原少佐、来客です。」

 

「来客?」

 

「今お連れします。」

 

珍しく来客が訪れる・・・内容は高谷准尉の表情見て良い物では無さそうだ。

 

訪れた来客はコートを着たままの鋭い目突きの将校だ。

見た目はサングラスをかけ顔痩せ型であるが、身体ある程度ガタイがいい感じの男だ。

教官室に入るといきなり背筋を伸ばし敬礼をした。

 

「失礼します。人事局太田祐三.大尉であります。」

 

「人事局だと?」

 

「ハッ・・本センターにて卒業された候補生が戦死されたので戦死通知をお届けに・・・」

 

「そうか・・・ご苦労さん・・・・」

 

人事局死亡通知担当官から卒業生が戦死したと言う通知があった。

 

卒業して一定数戦死する事があるが、通知なんて珍しい話だ。

そう考えながら茂人は死亡通知書を受け取って内容を読むと目の色を変えた。

 

戦死したのは卒業したばかりの卒業生だ!

 

「バッカニア少尉・・・・・バッカニア少尉!」

 

「はい・・・なんでしょう?何かあったのですか・・・・・」

 

「落ち着いて聞いて欲しい・・・ 」

 

茂人は慌てて近くにいるカゴメに声を掛けた。

 

内容が内容なだけに明るい雰囲気で話せるような感じではない。

話しかけられたカゴメは不思議そうな表情を浮かべながら、茂人の顔を見た。

 

ただカゴメが知っているのは悪い報告と言う事・・・

出来れば外れて欲しい話ではあるが、無慈悲にも当たってしまう・・・

 

「フィルダー少尉が戦死した。」

 

「えっ・・・・・・」

 

「コックピットをレーザーガンで・・・・相打ちだったそうだ・・・」

 

茂人から聞かされたライナスの戦死の知らせを聞いたカゴメは手に入していたチョコを落とした。

 

戦死した理由はともかく、カゴメにとってライナスの戦死は意識が遠のくほど辛かった。

一時は茂人の言葉が聞こえないくらい隔離状態になり、感情が麻痺した。

戦争の一人の兵士の戦死は気にしない人がいるが、誰かにとってそれは耐え難い事実でしかない。

 

次回予告

失った命は戻らない、戦場の非常に現実が戦争を忘れかけてたラウラに突きつける。外の世界では大樹が愛機を駆り戦闘を繰り広げる中、ラウラはカゴメからある物を譲られる。

 

次回、マクロス外伝蒼い髪のメルトラン

 

【リブート・ラウラ】

 

戦場の黒い突風、耐え抜けろクルセイダー!

 

前回

 

 

 

次回

【所属】

新統合軍

【全長】

400m

【全備重量】

9500トン

【エンジン】

フォールドエンジン

【搭載機】

20機 

・VF.16機

・VT.4機

【解説】

新統合宇宙軍が2020年に就役させた輸送艦。

 

ARMD級宇宙空母の後継艦で建造が進められているグァンタナモ級宇宙空母のテストヘッド艦であり、輸送艦でありながら菱形の艦断面を持ち2面の飛行甲板を備えている他、ゼントラーディ由来の技術を用いられている。

 

乗員は150名(航空隊は後方要員含め50名)

 

主に重要航路のみで使われており、僻地ではオーベルト級宇宙駆逐艦やゼントラーディ軍ピケット艦を改造した物が使われている。

 

【同型艦】

01番艦・ハバナ

02番艦・パレオロゴス

03番艦・イオー・ジマ

04番艦・アンティータム

05番艦・シュガーローフ

06番艦・オハナビーチ

07番艦・ブルーコード

08番艦・建造中

09番艦・建造中

10番艦・建造中

 

 

【本拠地】

クラビウス基地

【編成単位】

総軍

【司令官】

チャールズ・ブラウン.大将

【解説】

新統合政府が統治する月面の表側を管轄する新統合軍部隊を纏める総軍である。

元は地球統合軍第2総軍であり、月面人口が増えた事に加え総軍に昇格した。

 

主な任務は月面表側の防衛任務であるが、地球圏有事の際は地球衛星軌道艦隊と共に最終防衛線を形成しゼントラーディ軍基幹艦隊もしくは監察軍艦隊を迎撃する役割を担っている。

 

月面第2総軍を形成する艦隻はSDFNー13を旗艦とし、空母70隻、駆逐艦120隻、補助艦35隻、強襲揚陸艦3隻、巡洋艦30隻などを有している。

VF.645機・VA.220機・VB.16機・VE.54機・VT.120機などの航空戦力を有しており、更に各基地に所在するS.M.Sなどの民間軍事会社と連携している。

 

地球人が中心となっているが、クラビウス基地以外の基地にはメガロード07が見つけた惑星ゾラの先住民族ゾラ人や同化作戦で恭順したゼントラーディ人などの亜プロトカルチャー民族の兵士と家族が居住している。

 

エンディミオン基地はゼントラーディ海兵隊基地が置かれており、ノプティ・バガニス級3隻・ケアドウル・マグドミラ級4隻・キルトラ・ケルエール級2隻・スヴァール・サラン級10隻・キルトラ・ケラミッツ級5隻・トゥ・レディール級20隻と言う大兵力が置かれており、司令官であるラバル・ボルガール.中将は第2総軍に属しながら参謀長並の権限を有している。

 

宇宙軍総司令部が置かれており第1総軍の本拠地であるアポロ基地同様、メガロード級移民船を建造している他2030年に出港予定の新マクロス移民船団の艦船が建造中である。

 

◆参謀副長

 

【人事】

司令長官

チャールズ・ブラウン.大将

 

副司令長官

白川秀康.中将

 

参謀長

カン・ ヨンソプ.中将

頼家樹.中将

 

月面第2軍統合艦隊本部司令官

セバスチャン・ビュルカール.中将

 

クラビウス管区北部統合司令官(月面コペルニクス基地)

キム・ギョンドゥ.少将

 

クラビウス管区南部統合司令官(月面グリマルディ基地)

丹羽浩一.少将

 

ゼントラーディ海兵隊エンディミオン艦隊(月面エンディミオン基地)

ラバル・ボルガール.中将

 

参謀副長

キア・ラダギン.少将

三好長持.少将

草鹿三郎.少将

 

高級参謀

井上飛鳥.准将

 

高級副官

柿沼雄太郎.大佐

兵器部長

ナタポン・ヌンパクディー.大佐

経理部長

ターマン・キムヨン.大佐

軍医部長

アンワル・イスカンダル.大佐

獣医部長

フランシスコ・サンチェス.大佐

法務部長

ヘルト・イェッテン.大佐

 

◆麾下

張振立.准将(クラビウスシティー防衛司令官)

フランク・フォン・ハーバード.少将(月面工廠クラビウス支部長)

オム・ダンカール.少将(クラビウス開発プラント総括本部長)

ジェフリー・キム.大佐(月面第2軍警務隊本部長)

橘圭一.大佐(クラフロートクレーター基地司令官兼クラフロート支隊長)

コク・ホンイル.大佐(モレトスクレーター基地司令官)

ハリー・ナカモト.大佐 (マギヌスクレーター基地司令官)

ダニエル・ジョスト.大佐(ロンゴモンタヌス基地司令官)

渋川義澄.大佐(シャイナークレーター基地司令官)

真鍋浩一.(大佐ロンゴモンタヌス基地基地司令官)

(作画ロボノヒトさん

【開発】

新星インダストリー

【開発形態】

量産型

【エンジン】

(主機)新中州/P&W/ロイス FF-2015RB 熱核タービン×2

(副機)P&W 高機動バーニアスラスター HMM-3A

【推力】

(主機)12,500kg×2(宇宙空間瞬間最大推力)

【最高速度】

M2.85+(高度10,000m)

M4.73+(高度30,000m以上)

【武装】

対空パルスレーザー機銃×1(複座型×2)

多目的ガンポッド×1

マイクロミサイルランチャー×4

【拡張装備】

大気圏内外両用ブースターパック

【解説】

ストンウェル・ベルコム、新中州重工2社により開発され後に両社の航空部門が合併した新興企業新星インダストリーに引き継がれ完成させた新統合軍の制空可変戦闘機。

 

VFー1バルキリーの後継機であるVFー4ライトニングⅢは新統合軍の新しい世代の主力可変戦闘機であったが大気圏内においての戦闘が苦手と言う弱点があった。

その穴埋めとしてアドバンスド・バルキリー計画が発動し、VFー5などの多種多様な可変戦闘機が次々と開発されていき大気圏内における可変戦闘機の穴埋めとして導入した。

 

信頼性・耐久性に優れ安価であり、VFー4と二分するほどの主力可変戦闘機となった。

 

アポロ基地とクラビウス基地の防空隊に最優先に配備されており、各地下司令部のビルにはライフルベルトでガンポッドを肩にかけ警備するスターミラージュが確認されている。

 

【警務飛行隊】 

(作画ロボノヒトさん

 

警務飛行隊にも採用されており、一般機と異なりMILITARY・POLICEを示すMPの文字を右肩に記載されている。

 

【頭部形状】

指揮官機

 

一般機

 

複座型

マクロス外伝蒼い髪のメルトラン

 

だいふくさんに描いてもらった漫画です。

現在進行中の脚本小説でも加筆した上で小説を描き正規漫画版でリメイク予定です。

 

 

【西暦2009年2月7日】

 

今から12年前、南アタリア島から宇宙に向けて一つの閃光が走った。

その閃光は人類史上最悪の結果を招いた第1次星間大戦の始まりだった。

 

地球統合軍所属ブルーノ・J・グローバル率いるSDFー1マクロスとゼントラーディ軍所属ブリタイ・クリダニク率いる第67分岐艦隊のその周囲で行われ、地球統合政府並びに地球統合軍は終盤まで一切関与する事が無かった。

 

おまけに開戦を隠蔽し「南アタリア島は反統合勢力のゲリラ活動により全滅」と偽の報道を出してゼントラーディ軍との戦闘を国民に知らせなかった。

 

戦争は1年1か月も続き地球人類はゼントラーディ軍の本当の存在を知った時は時既に遅く人類の9割と今まで培った歴史的文明を喪失した。 

 

ボドル基幹艦隊決戦は地球統合軍とブリタイ・ラプラミズら造反ゼントラーディ軍の連合軍がリン・ミンメイや全軍将兵の奮戦の末多大な犠牲を払いながらも奇跡的に勝利する事が出来た。

 

しかし

 

1か月間も続いた地上戦もまた酷かった。

 

「くそ巨人共め!」

 

「宇宙に叩き出してやる!」

 

ボドル基幹艦隊がフルブス・バレンス42101とボドルザー司令官を失い他基幹艦隊へ撤退する中、落伍した艦隊の一部が地球各地に降下した。

奇跡的に艦砲射撃を生き残った各地地球統合軍残存部隊はゼントラーディ軍落伍部隊と交戦を開始、希望の見えない地獄のような悲しい戦闘を強いられる事になった。

 

2010年3月末

 

地球統合政府暫定政権とゼントラーディ残留軍はようやく戦闘停止し終戦協定を結んだ。

 

「新統合軍・・・・・地球統合軍のままではなく・・・新組織か・・・・」

 

「はっゼントラーディ軍残留部隊と接収に伴い新国家設立と・・・・」

 

「そうか・・・・我々、月面軍もいろいろと考えねばならぬな。」

 

地球統合政府暫定政権は残留ゼントラーディ軍勢力を吸収した事に伴い新統合政府を設立し、これに伴い国軍たる地球統合軍を新統合軍と改変した。

新統合軍は失われた戦力を再建すべく宇宙軍中心に軍備増強を図り、同時に人類播種計画すなわち宇宙移民計画を進め地球文化存続のため銀河各地に人類居住圏拡大を目論んだ。

 

そして10年経った現代・・・・・

 

【西暦2021年2月7日】

【月面クラビウス基地・クレーター表面部湾口施設】

 

新統合政府国防総省による会見中継が街頭映像で映る中、30代の黒人の佐官が歩いていた。

映像を見ながら国防総省の役員の演説を見てまるで怒りを露わにした表情を浮かべた。

 

「シンの事だけじゃなく・・・・あの戦争の開戦を隠蔽した癖に毎年良く言うな・・」

 

怒りを浮かべるのはエドガー・ラサール、かつて統合戦争にレーダー迎撃士官として参加した地球統合軍の軍人であり、今は新統合軍少佐として活躍している。

13年前のオペレーションイコノクラスムに参加後、地球統合軍により監禁された。

 

しばらくの監禁の後、エドガー含む関連者にオペレーションイコノクラスムを含むマヤン島関連の事を口外しない箝口令に言い渡され、飲む事を条件に解禁を解除された。

 

監禁解除後.空母アスカⅡに乗ってた乗員はマクロスや月面基地に転属されると、エドガーは進んでクラビウス基地の航空要員になった。

 

理由はただ鳥の人と消えた相棒工藤シンを探すために・・・・

 

だが、毎年.第1次星間大戦のイベントを見る度に腹が立つ。

マヤンの時も同じく地球統合軍は南アタリア島の出来事を隠蔽し関係者を死んだ事にし、大戦が終われば掌を返し関係者を英雄として褒め讃える。

 

もう少し統合軍が対応が良ければ大戦の死者も・・・マヤン島で行方不明になった相棒シンも死んだアリエス・ターナーもマシな結果になれたものを・・・

 

腹が立ちながら歩いていると後ろから声がかかった。

 

「ラサールさん!貴方、ラサールさんですか?」

 

「ん?・・・もしかしてノーム、マオ・ノームですか・・・久しぶりだな。」

 

「マヤン以来ね、大戦もあってか生きているなんて思ってませんでした。」

 

地球人でありながら紫髪を持った褐色肌の元気よさそうな女性だった。

後ろには緑色のショートカットの女性がおり、友人か仕事の同僚と思った。

 

褐色肌の若い女性をエドガーは知っていた。

彼女の名はマオ・ノーム、マヤン島の風の導き手であったサラ・ノームの妹だ。

第1次星間大戦で生死不明であったが、数年前からDrマオと言う名で表舞台に再登場しプロトカルチャー研究の第一人者として活躍していた。

 

「そちらの女性は?」

 

「彼女?ランメル・F・ワン、私の助手よ。」

 

「ランメル・F・ワンです・・・よ・・よろしくお願いします。」

 

「あぁよろしく(ゼントラーディ人・・・・?)」

 

緑色のショートヘアのゼントラーディ人・・ランメル・F・ワン・・マオの助手だ。

 

ゼントラーディ人は軍人しかいなかった軍人組織の種族だと聞いていたが、ランメルのように軍人とは無縁どころか真逆の研究者になるとは・・・・

その点にあんまり無関心なエドガーとは言え驚きを隠せなかった。

 

もっともマオの助手ランメルはゼントラーディ軍ラプラミズ直衛艦隊の遊撃隊の元隊員で艦隊内ではエリートに属する優秀な兵士であった。

大戦後、地球人とゼントラーディ人の関係性に興味を持ち新統合軍に入隊せずマイクローン化し学業に力を入れ研究者の道を歩みマオ・ノームの助手になった。

 

数年前に結婚し元の苗字フォルカをミドルネームにして2人の子宝に恵まれている。

 

「ところでカバン持って何処へ向かうのです?」

 

「あぁこれから機種転換センターで講演です。古巣の滝田と共に・・・」

 

「へぇ講演ねぇ・・・・シンが聞いたら驚くわよ。」

 

「へへ・・・そうですかね・・・」

 

マオはエドガーが一昔前の将校用カバンを持っているのを目にして何処に行くのかを聞くと機種転換センターでかつての同僚.滝田英史と共に講演すると答えた。

茂人がゼントラーディ人候補生達にかつての空戦やVFー0フェニックスに関するエピソードを教えたいと思っており旧知の英史とエドガーを招集し講演させようと考えた。

 

2人は快く了承し、開戦記念日に講演する事が決まった。

 

「また何処かでね。」

 

「そちらこそ、お身体を大切に!」

 

エドガーとマオ一行は別れた。

分かれた時の彼ら彼女らの姿は和やかであった。

 

マオ一行を見送ったエドガーは何処か影の落とした表情を浮かべ機種転換センターに向けて歩いた。

 

【西暦2021年2月7日】

【機種転換センター.射撃場】

 

 

ラウラは朝早くから射撃場で自主的に射撃訓練に励んでいた。

昨日の一件もあってか心身を鍛える為武道や護身術を磨こうとラウラは思った。

 

長らくクァドラン・ローに乗って戦ってきたラウラにとって生身で武器を使うのはあんまり得意ではなく、何度か出てくる的を外したりしていい結果は出なかった。

 

「生身で戦うのがこれほど大変なのか・・・・」

 

「そんな事言ってたら夕食前にやるCQC(近接格闘術)では私に勝てないわよ。」

 

「なんか言われると悔しさしかないな・・・・・」

 

中々上手くいかず弱音を吐くラウラに対しカゴメは挑発するかのような激励した。

負けず嫌いな性格であるラウラにとってこの挑発は有効であり、何度も繰り返すうちに技能は上がっており弱音を吐く度にカゴメは挑発し喝を入れていた。

 

「やった・・・・命中した・・・・・カゴメやったよ。」

 

「喜ぶのは早い、命中しても敵の反撃能力削いだわけじゃないからね。心臓を狙う。」

 

「手厳しいな・・・・カゴメは・・・喜んでもいいのに。」

 

「今の結果は私の為ではありません、自分の為です。」

 

「うっ・・・・厳しい・・・・分かりました・・・よっ・・・」

 

命中しても実戦では役に立たない・・・・命中率を上げなければ意味がない。

 

命中率だけじゃない判断力なども鍛えなきゃいけない。

その点ではまだまだ生身での戦闘力ではまだまだラウラは後方要員のカゴメに劣る。

射撃のスキルを磨いたら次はCQCのスキルを磨き心身と生身の戦闘力を鍛える。

 

それがカゴメから課せられた試練だ。

 

「そう言えば今日自主練可ってなんだろうね?今日はVF訓練やるはずでしょ。」

 

「それがね明後日に延期なのよ、なんでも講演する為に変更したと桐原少佐が・・」

 

「講演・・・要は話をするんでしょ?誰が何を話すんだ?」

 

「私は聞いてないなぁ。」

 

ラウラ達は本来座学だったり、VFの操縦訓練を学ぶ時間帯だが自主練をしている。

教室に入ると黒板に所定の時間まで自主練するようにと書いてあった。

途法に暮れるラウラだったがカゴメの誘いもあってエレベーターを使いクラビウス基地地上エリアの射撃場などがある施設で射撃のスキルを磨いていた。

 

ミュレは別の候補生と共にCQCの訓練をしている為不在である。

 

「ほう・・・・射撃訓練か・・・・精が出るな。」

 

「えっ誰?わっ・・・・大尉殿!?」

 

「驚かせてすまんね。一部訓練生がここにいると。」

 

ラウラ達が会話している最中後ろから話しかけられた。

話しかけられた先にいたのは30代前半の士官で、ラウラやカゴメより上の大尉だ。

 

慌ててラウラとカゴメは敬礼すると大尉は気さくな笑顔を浮かべた。

 

「俺の名は滝田英史大尉、今回講演の為に呼ばれたおっさんだな。」

 

「そのおっさんが私達に何の用なんです?」

 

「かつての敵ゼントラーディ軍のウェーブ(女性士官)のVF候補生のか拝みたくてね。」

 

「はぁ?」

 

大尉の名は滝田英史・・・・講演の為に呼ばれた自称おっさんの士官だ。

訪ねてきた理由はかつての敵の女性士官のVF候補生を拝みたいと・・・

 

そう言われたラウラは表情をムッとしてはぁと言った。

 

滝田英史・・・・

SDFー1マクロス.航空隊スカル大隊の一つであるプランジャーズ中隊を率いていた地球統合軍のエースパイロットであり、大戦時であればラウラと敵として戦っていた男だ。

ゼントラーディ軍強襲攻撃作戦ブルズアイ作戦では特別強襲任務部隊ハードダーツ隊を率いて過酷な任務をやり遂げたという伝説的な実績を誇る凄腕だ。

 

軍籍は古く16歳の頃から統合戦争に参加しVFー0フェニックスに搭乗し戦っていた。

 

ギャンブル好きであり、凄腕のギャブラーでポーカーやブリッジやカジノでほぼ負けなしであり戦場でもその能力を遺憾無く発揮し厳しい勝率の任務でも難なく勝利しており戦場のギャンブラーと呼ばれるマクロス艦内上位のエース兼名指揮官だった。

 

ラウラからすればそんな風には見えなかった。

 

「大尉殿、他のゼントラン(男共)の候補生がいるのでは?何故、私達女性兵対象で?」

 

「それはだ・・・・な。」

 

「私も思ったナンパ目的だと。」

 

女性候補生目当てのナンパ目的のスケベなセクハラ男だと・・・

 

ここの射撃場にはゼントランの候補生もおり、両方とも見ればいい。

それなのに女性候補生限定にするあたり下心満載にしか見えない。

 

ラウラ達はそう受け止めて口にした途端、英史は慌てた。

 

「それは違うってメルトランは空戦兵として高い耐G能力あるから強いVF適正あるから興味を持ったまであってナンパと言うスケベな理由じゃないだって。」

 

「本当なんですか?本当に?」

 

「本当だってば・・・・・」

 

「まぁ確かに私達メルトランは耐G能力は優れてますけど・・・さ、先程のは誤解しても当然ですわな。」

 

スケベな理由あってラウラ達を訪ねてきたわけではない。

メルトラン特有の耐G能力があるが故に興味を持ったからであると・・・

 

ラウラは疑いの目を向けながら英史の顔を見た・・・嘘偽りもない。

 

嘘偽りもない顔を見たラウラは一応信じたけれども完全に信じきれてない。

何というか自分自身の胸を見られているようであり、後ろ振り向けば尻を見ている。

これで信じろと言われても完全に馬鹿を見るだけである。

 

そうしたやり取りの中、クラビウス基地防衛隊のVFー5000の1個小隊が上を通り過ぎた。

 

「俺は講演の準備があるからそれじゃ!」

 

「・・・・・カゴメ、本当にあの人エースなの?」

 

「ナンパな人だけれども大戦時は優れたエースパイロットだったのよ。」

 

1個小隊のVFー5000が通り過ぎてから5分後、英史は講演の準備があると言って去った。

 

ラウラは英史が本当に第1次星間大戦よエースなのかカゴメに聞く程頼りない印象を抱いた。

肯定の返答を得てもまだ信用出来ない・・・だって戦士の顔をしていないから・・・

 

とは言え星間大戦のエースであれば、もし戦場で出会っていたら敵の兵士だ。

激しい戦闘を繰り広げ自身は殺し自身を殺してくる相手である。

そんな相手がナンパで戦士の顔してない男である事実にラウラは認めたくなかった。

 

【西暦2021年2月7日午後13時】

【機種転換センター.講堂】

 

 

 

機種転換センターの講堂では英史とエドガーが前に立っていた。

黒板には地球語で「Union War and Fighter Technology(統合戦争と戦闘機技術)」と書かれており、神妙な顔つきの茂人と新統合軍参謀本部の矢吹一郎大佐が立っていた。

 

ラウラは統合戦争についてはある程度知っていたが経験者から話を聞くのは初めてだった。

先程のナンパな第1印象だった英史が真面目な顔して講演している姿見て笑いそうになったが、ラウラは堪えて真剣にメモを取りながら聞いた。

 

「星間大戦前に起きた統合戦争における戦闘機戦は今のようにバトロイド・ガウォークの形態は存在せずファイターのみで戦っていた。」

 

英史の講義で言うバトロイドとガウォークの存在しない旧世代戦闘機・・・・・

特に第4・5世代〜第5世代のジェット戦闘機による空戦にラウラは強い関心を持った。

 

統合戦争初期は旧来兵器によるいつもの戦争であった。

地上はM1エイブラムスなどの地上兵器が戦場を駆け、海はニミッツ級やアーレイバーク級などが・・・空はFー14やMIGー29フルクラムが激しい戦闘を繰り広げていた。

マクロス由来のOTMによる改修機や新型機が出ても戦闘は旧来そのままだった。

 

中東の方では湾岸戦争の再現とも言わんばかりに旧米国製の航空機群が反統合同盟に与したイラク・イランやシリアなど航空部隊を蹂躙し暴れ回った。

 

事態が変わったのは統合戦争末期の頃だ・・・・

 

「統合戦争末期、反統合同盟が極秘に開発してた可変戦闘機を初めて実戦投入した。」

 

統合戦争末期インド洋にてニミッツ級航空母艦イラストリアを旗艦とするインド洋航空機動艦隊と反統合同盟による戦闘の最中、突如可変戦闘機Svー51による編隊が戦闘に乱入した。

 

優勢に戦闘を進めていたインド洋航空機動艦隊だったがSvー51の乱入によりイラストリア大破・アーレイバーク級1隻大破2隻撃沈、Fー14艦載機群壊滅と言う損害を被った。

 

「RIOとして戦闘に参加し可変戦闘機の実力を目の当たりにした身として言わせてもらうが、今までの戦闘機に比べて比べ物にならない程進歩していた。」

 

英史が喋り終える頃にエドガーが口を開いた。

13年前・・・実際に戦闘で見てきて感じた事を・・・・・

 

あの日に乱入したSvー51はフルクラム等の戦闘機と違った。

圧倒的機動力でFー14戦闘機を次々と撃墜し自身も搭乗するコールサイン・パープルワンも撃墜され、自身は友軍艦艇に救助されるまでインド洋に漂流していた。

 

エドガーは途中意識を失いその後どうなったかは覚えていない。

気がついた時は友軍艦艇に救助され、新たな配属先で相棒から事の顛末を聞いた。

ただの戦闘機ではなくロボットに変形する新たな戦闘機だと・・・

 

「新たな配属先になった空母アスカⅡで統合軍が開発した・・・君達が乗っている全てのVFの御先祖VFー0フェニックスに搭乗したんだ。」

 

空母アスカⅡに転属後相棒と共にVFー0フェニックスに乗り込んだ。

 

訓練機であるVFー0Dに乗り込み機種転換訓練で統合戦争のエースで上官となったロイ・フォッカーと模擬戦を行った他、以前自身を撃墜したSvー51と再戦した。

 

「搭乗してみてFー14やF/Aー18とは違ったな、バトロイドも驚いたが一番驚いたのはガウォークさ。」

 

「ガウォークか・・・・」

 

「脚部であるエンジンを上手く駆使すれば一瞬で敵の背後を取るなんて戦術が容易に出来るからな。いろいろ見てきたけどすげぇ技術だなと当時の俺は思ったね。」

 

何度もSvー51を駆使する反統合同盟軍との戦闘を経てエドガーは可変戦闘機と言う新たな兵器のジャンルの強さを身を持って実感した。

可変戦闘機の中でも一番驚いたと言ったのは中環形態であるガウォークだ。

 

VFーXー1の試験中の事故で発見され戦闘継続性やパイロットの生残性を高めると言った有効性が認められ制式採用された形態であり、先行量産型VFー0における実戦運用で各パイロットが戦術を生み出した。

 

「シン・・・工藤シン大尉が俺と一緒に搭乗した時、反統合同盟のエースであるノーラ・ポリャンスキーと交戦した時ガウォーク戦を展開をしたが凄まじかった。激しい戦闘の末、撃墜され俺も工藤大尉も死にかけたな。」

 

「へぇ・・・・・(ノーラ・ポリャンスキーか・・・後でどんな人物か調べよう。)」

 

「それはさておき往来の戦闘機にはない戦術の登場により可変戦闘機の優位性が確立され、VFー1の実戦部隊の教本になった。先の大戦でマクロス航空隊のエース達により、発展型戦術が生み出され可変戦闘機が戦後の主力機の座を取る事が出来た。」

 

空母アスカⅡを中心とする地球統合軍と強襲潜水艦アウエルシュテットを中心とする反統合同盟軍の戦闘、各局地戦における可変戦闘機戦で各パイロットが戦術を確立させ可変戦闘機部隊の教本となり第1星間大戦で数多くのエースが発展型や独自の戦術を生み出した。

 

VFー0は先行量産型として歴史的な意義を果たし、今の可変戦闘機戦術に繋げている。

 

「開発に携わった多くの技術者や実戦に参加し戦術を生み出したVFパイロット、両方とも無くば第1星間大戦は悲惨な結果になったであろう。」

 

「ラサール少佐の言う通りだ。俺達パイロットが上手く戦えるのは技術者のおかげであり、技術者の成果を証明するのは俺達なんだ。」

 

高度な結果を出すのは可変戦闘機を生み出す技術者と成果を発揮するパイロット。

どちらかが欠けたら真価の発揮出来ず最悪な評価が出る紙一重兼一蓮托生の関係性だ。

 

技術者と戦線のパイロット達の経験と発想によりより優れた機体が生まれてゆく・・

 

「君達に考えてもらいたい事だが、現場では次々と新型機や別機種に搭乗する機会がよくある・・・機体に応じて戦術を構築しなければならない。常に臨機応変に反応してくれ。」

 

新統合軍VF部隊は新型機の配備だったり別部隊に転属し別機種に搭乗する機会がよくある。

機体によって特性が違うので今までの戦術が完全に通用しない場合がよくある。

 

ラウラら候補生が現場に出た時、臨機応変に対応できる柔軟な発想力も必要だ。

 

特にゼントラーディ人はリガードやクァドラン・ローなど製造され現場に配属され殆ど乗る機体が変わらない為、戦術には一貫性はあるものの臨機応変に対応できる程の発想力には欠ける。

可変戦闘機パイロットになるには機種ごとの戦術を構築する柔軟な発想力が必要だ。

 

「結構、難しそうじゃない?そう思わないラウラ?」

 

「ミュレ・・・難しそうとか云々じゃなくて何の為にいるんだ?」

 

「そりゃ勿論・・・・」

 

「そう言う事だ・・・・腹は括るのだな。特にお前は私より実力はまだまだだからな。」

 

「そりゃそうだけどさ、可変戦闘機乗りになったら負けない。」

 

ミュレ含むゼントラーディ人達は不安に駆られた。

何故ならゼントラーディ人は複雑な事が得意ではないからだ。

可変戦闘機パイロットに求められる要素が難しいと感じた。

 

ラウラは腹を括っていた。

 

自分から進んで選んだ道だ・・・・複雑でもやり遂げる。

内心は不安な所もあったが、ゼントラーディ人でも出来る!地球人に証明したい。

以前と打って変わって地球人として生きる為に積極的に努力している。

 

話を聞いていたミュレも負けんとばかりに意気込んだ。

今までラウラと上官と部下の関係であり、海兵隊になった後もゼントラーディ軍時代からの人間関係は変わらずずっと後ろについて行くだけだった。

だけど今は違う、努力次第ではラウラより階級が上になり立場を逆転出来る可能性がある。

ゼントラーディ軍では不可能だった野心がミュレを奮い立たせた。

 

「質問でおります!」

 

「何だ?」

 

「我々、ゼントラーディ人にもできるのでしょうか?」

 

一人のゼントラーディ人の候補生が手を挙げた。

 

候補生は恐る恐る自分達ゼントラーディ人にも出来るのかとエドガー達に聞いた。

ミュレと同様、複雑な戦術を必要とする可変戦闘機スキルを得られるか不安に駆られた。

彼だけではない今だに不安から脱せず後悔している候補生も少なくはない。

 

他機種からの機種転換した地球人候補生や新人候補生も同じような考えを持つ者もいる。

 

上手くやっていけるか不安・・・・この先に立ち向かうのが怖い・・・

質問をした候補生の顔は戦場で死の恐怖に耐えながら不安になり震える新兵のようだった。

 

「お前は臆病風に吹かれたのか?」

 

茂人とカゴメの隣にいる紫色の肌をしたカムジン・クラヴシェラと瓜二つのゼントラーディ人が腕を組みながら候補生を鋭い視線で睨見つけていた。

 

教官の一人であり、ゼントラーディ軍第67分岐艦隊出身のルルドルド・ポルター中尉だ。

人間換算16歳で南アタリア島襲撃に参加した第67分岐艦隊のエースであり、リガード乗りではあるものの茂人や英史らマクロス航空隊を苦しめた経歴を持つ若き歴戦の勇士であった。

 

今はアルセス・アルセス中隊レインディア小隊を率いる可変戦闘機乗りである。

趣味人であり、日本文化をこよなく愛する自称ワビサビの分かるゼントランだ。

 

 

 

「俺達、ゼントラーディ人はどんな相手だろうと死を恐れずに戦ってきた。可変戦闘機が複雑だからと言って挑戦せず立ち止まるのか?」

 

「しかし、我々とは操縦系統が違います。それに地球人の暮らしにも・・・」

 

「では何故貴様はここに来た?可変戦闘機パイロットになる為ではないのか?」

 

「そうでありますが・・・」

 

ルルドルドは質問してきた候補生に圧力をかけるように問い詰めた。

死を恐れずに今まで戦ってきたのに可変戦闘機に必要なスキルが複雑で自分でも出来るか不安で挑戦から惨めに敵前逃亡でもするのかと・・・

 

候補生は反論するが、ルルドルドはバッサリ切り捨てた。

 

切り捨てたルルドルドはエドガーと英史がいる登壇し言った。

 

「いいか、ここにいるお前達は可変戦闘機パイロットになりに志願した面々だ。確かにVFはゼントラーディ軍のバトルポッドやバトルスーツで戦うよりも複雑な戦術が必要だ!俺もかなり苦戦したからな。」

 

かつてルルドルドも戦後、大戦中に興味を持った敵兵器であった可変戦闘機のパイロットになる為愛機であるリガードを捨てマイクローン化し第1期候補生に志願した。

だけど現実は甘くなく可変戦闘機パイロットとして求められる複雑さに困惑し一時期は挫折し軍を退役して民間人として生きようかと考えた。

 

そんな中で同期であったミリアの部下でありラウラの因縁の相手である絵理が最優秀候補生として優れた成績を残している姿を見て奮い立ち必死に食らいつき無事に訓練課程を終えた。

 

「俺達は地球人よりも戦闘経験が豊富であり、軍歴で言えば俺達が先輩だ!志願して今更無理でしたはゼントラン魂に傷がつくし純粋の地球人に馬鹿にされる。だからこそ、俺達は失敗を恐れずに最後までやり遂げねばならない。」

 

生粋たる戦闘種族であるゼントラーディ人は地球人より戦闘経験が豊富であり軍歴で言えば先輩にあたり、経験が足りない地球人よりも出来ないのは恥だ。

更に言えば複雑な事も出来ないゼントラーディ人は野蛮人であり劣等人種だと、地球人特に差別的な地球人至上主義者達に笑われる。

 

だからこそ失敗を恐れずに最後までやり遂げゼントラーディ人でも出来るのだと証明しなければならない。

 

ルルドルドは目の前にいる候補生達(特にゼントラン・ メルトラン)に優れた可変戦闘機パイロットになって欲しいと強く願っていた。

 

「ポルター中尉の言う通りだ。志願した以上・・・俺達地球人に戦闘種族としての意地と信念を見せつけて欲しい。場数を踏めば俺たち以上にやれるかもしれない。」

 

「大尉殿、俺以上にやれるのではなく・・・・地球人よりも上手くやり遂げますよ。」

 

「そりゃ失敬・・・地球人候補生達も負けるなよ。」

 

ラウラはルルドルドの一連の話を聞いて改めて頑張ろうと思った。

 

地球人よりも上手くやり遂げる素晴らしい一言であり、ゼントラーディ人である自分でもどの地球人のエースパイロットよりも優れたエースになりたいと思えるほどだ。

 

よく考えたらあの絵理ですら上手くやっているのだから自分にできないわけではない。

可変戦闘機パイロットとしての技術を学び絵理と再び模擬戦の機会があればリベンジを果たし、行く行くはエースのミリアを下してやりたいと思った。

 

「滝田大尉やポルター中尉はあぁ言っているけど無理しなくてもいい、腕前がエースだったシンも最初はガウォークやバトロイドの操縦は苦手だったからな。」

 

「へぇ(まだだ。今度はフルネームで言ってないや・・まるで親しげな戦友みたいに )」

 

「俺は君達がどんなに苦難に見舞われてもやり遂げると信じている。そしてこの場にいる地球人候補生の後輩達も俺達の世代以上のエースになれると信じている。」

 

盛り上がる中、講演時間が終わりに近づきつつあるのでエドガーが〆に取り掛かろうとしていた。

 

そうした中でラウラはシン・・・工藤シンに言及するエドガーの事が気になった。

 

何処か引っかかるような言い回し・・・

今後やっていく上で何か有益な物を得られるかもしれない。

ラウラは一言一句エドガーの発言を見逃さないように真剣に話を聞いた。

 

「これからの戦いはただ空を飛んでればいいってもんじゃない!!変化する状況に瞬時に合せていく、水のような柔軟性が必要だ!!俺は君達がそれをやれると信じている。」

 

エドガーはかつてロイ・フォッカーから言われた言葉で締めくくった。

 

一連のエドガーの〆を聞いたラウラは工藤シンと関連する言葉ではないかと考察した。

一応統合戦争のエースだと知っているが、エドガーとどんな関係があるのか気になった。

 

講演が終わるとすぐにカゴメとミュレと分かれ行動を開始した。

 

 

「あの・・・・」

 

「なんだい嬢ちゃん?・・・・いやベルタリア曹長。」

 

「一つ質問が・・・・」

 

ラウラは講演終わって控室に向かおうとするエドガーを追いかけ質問した。

 

わざわざ追いかけてきて質問しに来たラウラの顔を見てエドガーは困惑した。

何故講演してただけの自分に対し質問しにくるのだろうかと・・・

質問するならば英史か、先程のルルドルドや直属の教官である茂人にするべきだと・・

 

そう思っているとラウラが口を開き、エドガーの表情はパッと見開くように変わった。

 

「工藤シン・・・・さっき言った工藤シン大尉って誰ですか?」

 

「・・・・聞こえていたのか・・・」

 

「はい・・・・・一応・・・」

 

「まぁいい来いよ・・・・ここでは話せない。」

 

エドガーが一言しか言ってない工藤シンと言う人物が何者かと聞いた。

親しい戦友の名を喋っているように見えたエドガーの姿を見て気になったのだ。

 

ラウラからの質問に少し戸惑いながらもエドガーは人払いした上で答えようとした。

 

近くの人気のない自販機でコーラを購入し隣の長椅子に座った。

そしてエドガーは口を開いた。

 

「シンは自分勝手な部分あったが俺にとってはかけがえのない友人だった。」

 

「戦友ではなくて友人?」

 

「戦友と友人は同じだったさ・・・・」

 

「同じなのか・・・・・なるほど・・・」

 

ラウラはエドガーから工藤シンについていろいろ聞いた。

 

語られた工藤シンは自分勝手な面はあったが、根は明るく負けず嫌いだった。

その話を聞いてラウラは工藤シンに親近感を覚えた。

 

ただエドガーの表情は何処か暗かった。

 

「大尉はどうなったんです?その様子では・・・・」

 

「消えてしまったんだ・・・・戦闘中にな・・・」

 

「そうなんですか・・・・・」

 

エドガーのかけがえのない友人工藤シンはもういない。

戦いの最中、MIA(戦闘中行方不明)となり2ヶ月後戦死判定となり、2階級昇進し大尉となった。

それはラウラに言える範囲内での話であり、半分正解半分間違いだ。

 

実際の工藤シンはマヤン島に眠ってたプロトカルチャーの古代兵器鳥の人と対峙していた時にデストロイド・プロトモンスターによる反応弾攻撃の爆発の後、海面に墜落した後に追いかけるかのように不思議な青白い光に包まれて消えていた。

 

「おい・・・シン・・何処に行くんだよ!おい!シン・・・・馬鹿野郎・・・・」

 

鳥の人を追いかけるように飛ぶ工藤シンのVFー0を見てエドガーは泣きながら叫んだ。

13年経った今でも悲痛な思いは忘れた事が無かった。

その後、工藤シンはMIAにより2階級昇進し大尉となり戦死判定が下された。

 

そして一連の事件とオペレーション・イコノクラスムは地球統合軍により隠蔽、エドガーや空母アスカⅡ艦長であるロバート・マーフィー大佐以下関係者は月面や宇宙衛星基地に監禁されるかのように押し込まれた。

 

ロイ・フォッカー以下スカル小隊と他のパイロット達は空母プロメテウスやSDFー1マクロスに配属、星間大戦ではマクロス艦載機群として戦いロイ・フォッカー含む大半は戦場に散華した。

 

あの場にいた英史は数少ない生き残りであり、それほど今に至るまで厳しい戦争を物語っておりエドガーは数多くの仲間の最期を様々な形で看取っていた。

 

「シンは勿論、VFー0やFー14の仲間は今は殆どいないんだ。」

 

「少佐、戦争はそう言う物では?私だって生まれてからずっと多くの仲間を・・」

 

「確かに君達ゼントラーディ人と俺達地球人は仲間の死に関する価値観は違う・・それでも人によっては忘れたくもないだ。」

 

「それで工藤大尉を・・・・」

 

あまりにも衝撃的であった・・地球人とゼントラーディ人の死生観や戦争観が違いすぎる。

 

戦闘種族が故に戦友の死に対する感情が薄く、戦場で兵が死ぬのが当たり前だと思っていた。

もっともな話ラウラのはメフィリアやアンジェミラそしてシュリやミュリなど親しい戦友は戦死しておらず、悲観的になるような事態になる事が無かった。

製造されてから今日に至るまで多くの戦友を失ったが、戦死して悲しむような戦友は戦死しておらず兵士が戦死して当たり前だとラウラは思っていた。

 

一方でエドガーは入隊してから数多くの戦友を失った。

同期で仲良かった同じ部隊の戦友達、空母イラストリアで見かけた可愛い娘達など・・・

そして相棒である工藤シンも皆、戦場で死に消えていった。

 

あれから13年経っても戦死したり仲間の死に対する悲しみは消えていない。

結婚し子供が出来ても、懐かしい仲間と再会しても仲間の死の痛みは消えない。

 

「いいか軍人である以上、自分も死ぬし親しい人間が死ぬんだ。ある日突然、ある時突然にだ。」

 

「分かっています。今日に至るまで私も数多くの戦友を失ってますし。」

 

「いつ戦死するか分からないんだ。下手すれば一生後悔する事もある。だからよ、伝えたい事は言える時に言っておけ・・・」

 

戦争と言うのはある日いやある時突然、近くにいる戦友が命を落とす・・・

 

伝えたい事があっても、後回しにしていたら永遠に言えなくなる事もある。

そのぐらい戦争と言うのは簡単に突然の別れがやってくる。

 

言いたい事があるならば、言える時に言っておけ・・・・

統合戦争で数多くの仲間とそして大事な相棒兼親友を失ったエドガーだからこそ言える事だ。

話を聞いていたラウラは衝撃を受けたのか、顔を青白くして震えていた。

 

「少佐、私はどうすればいいんでしょうか?」

 

「そんなの簡単だよ、生き残りながらなるべく死なないように戦い戦争で死ぬ人間を減らせばいい。まぁ敵の兵士を殺すけどな。」

 

「ムジュンしてません?死ぬ人間は・・・・」

 

「矛盾している・・・・矛盾するのがこの世の理不尽だ。味方を守るために敵の人間を殺す・・・・兵士はそれだけの業を背負うもんなのさ。」

 

「業・・・・でありますか・・・」

 

兵士達に出来る事は生き残りながら、戦争で命を落とす人間を減らす事だ。

後の全体の難しい事は政治家連中に任せていればいいと・・・

 

だけど矛盾している・・・兵士は生き残るために敵軍の兵士を殺すと・・・

 

この矛盾こそこの世の理不尽であり、戦争で死ぬ人間を減らす為の生贄だ。

やらなければ自分のみならず多くの仲間など守るべき者を死なせてしまう。

兵士はそれらを守るために罪を背負わねばならぬ・・・

 

「どんな相手であれ敵を殺さねば味方が殺される・・・・兵士であれば迷いは捨てるのだな。」

 

「迷いですか・・・・・・迷い・・・・」

 

「いくら戦闘種族でも悩むよな・・・・ただし戦意を失ったり降伏した敵はなるべく殺さなくていい。」

 

「はい・・・・いろいろと勉強したので知っています。」

 

守るべき者を守る為にどんな相手でも戦う為には迷いをしてなくてはならない。

その言葉はラウラの心にナイフで斬りつけたかのようにな痛みを感じた。

 

ボドル基幹艦隊決戦のあの日、自分の迷いがあった。

それが故に全力で戦えず同じゼントラーディ軍であった敵を殺すのに手間取った。

仲の良い戦友は生き残っていたが、下手すれば戦友を失っていた。

 

そう考えたラウラは震えた。

それを見かねたエドガーは優しく肩を手に置いた。

 

「ベルタリア曹長・・・・マニュアルあんまり大事にしたら、早死にするぞ。マニュアルは血で書かれているからな。」

 

「?・・・・・・少佐・・・それはなんです?」

 

「昔の上官が言って言葉さ。」

 

ロイ・フォッカーの言葉だ・・・・

 

マニュアルは手順を守る為に必須であるが、戦場ではそうとも限らない。

だからこそ自分の頭で考え変化する状況に応じて対応しなければならない。

 

確かに苦しい事があるかもしれない。

それでも兵士はマニュアルに囚われずに自分の頭で考え行動をすると・・・

状況に応じて戦場に対応し必死にしがみついて生き残らねばと・・・

 

これも兵士に課せられた業だ。

 

話を聞いたラウラはよく分からなかったが、妙に納得するような言葉だと思った。

結局自分はゼントラーディ軍のマニュアルに囚われたままであり、それが故に自分を苦しめる事になる・・・なんか心がスッキリしたな。

 

ラウラは更に話を聞こうかと質問をしようとしたが、時間はなかった。

 

「そろそろ御暇するよ。」

 

「お時間取らせてもらってすいません。」

 

「いいさ・・・・頑張れよ!お嬢ちゃんならいいパイロットになれる!」

 

「本日はありがとうございました!」

 

ラウラは去り際のエドガーから激励された。

激励されるとラウラは帰路に立つエドガーの背中を見ながら敬礼し礼を述べた。

 

有意義な話が聞けたし、ボドル基幹艦隊決戦時から続くトラウマも軽減出来た。

可変戦闘機パイロットとしての心構えもかなり構築できた。

 

エドガーとの話し合いにより、兵士としての覚悟が定まり自分独自で可変戦闘機パイロットの戦術を構築したり兵士としての心構えについて考える事が出来た。

 

「あっ聞きそびれ・・・・・やめておこう・・・」

 

ただ唯一の聞きそびれたのは工藤シンが戦死した戦いの事だ。

結局、その戦いについて何も聞けずに終わった。

いや聞かなくてよかったのかもしれない・・・・人には触れてはいけない物があるのだから。

 

天井に顔を向けたラウラはこれから前向きに頑張っていこうと決意し歩き出す。

 

【番外編・後日談】

 

オペレーション・イコノクラスムは2021年から37年後の2058年7月に新統合軍参謀本部により機密事項の公文書が発表され、現存した写真と共に世間に広まった。

 

そしてシン・工藤と呼ばれる人物の伝記が見つかり、それを基に映画やドラマが公開され一定の知名度を確立する事になる。

 

翌年のバジュラ戦役の最中のフロンティア船団にてジョージ・山森監督によるBIRD・HUMANにて、マオ・ノームの孫娘で銀河の妖精シェリル・ノームが関わっている。

実にオペレーション・イコノクラスムから50年が経った・・・暑い夏の日の出来事であった。

 

次回予告

 

ラウラ達のいるクラビウスは至って平穏であった。戦火から離れたラウラはいつしか外の戦場が対岸の火事のように見え戦場の実態を忘れつつあった。しかし、戦場の現実は以外な形で非常な姿で突きつけてくる・・・・

 

次回 マクロス外伝蒼い髪のメルトラン

 

【キルド・イン・アクション】

 

戦火をくぐり抜けろ!バルキリー

 

前回

 

次回

 

 

【作戦種類】

核戦争

【年月日】

2006年11月26日

【場所】

レニングラード州サンクトペテルブルク

【実行組織】

反統合同盟軍

【対象組織】

地球統合軍

【解説】

開戦から5年〜6年が経過するとSDF計画やグランドキャノンの建造により地球統合政府加盟国では厭戦ムードが蔓延し情勢不安が発生すると反統合同盟軍が攻勢を仕掛け大損害を与えるも国家的攻勢に出るには不利な状況に陥った。

 

旧NATO諸国軍を中核とする地球統合軍欧州軍は一気に攻勢をかけポーランド正規軍を支援し、反統合同盟側のポーランド人民軍とベラルーシ軍を撃破しバルト三国地域を抜け反統合同盟軍一大軍事拠点サンクトペテルブルクに侵攻した。

 

デストロイド・シャイアンを中心とする機甲師団は圧倒的機動力を駆使し反統合同盟軍地上部隊を圧倒的優位に立ち市内各所を制圧し、守備軍は追い詰められた。

 

陥落寸前になるとウラル山脈の核ミサイル基地から戦術核兵器を搭載したRTー23が発射し市街地戦を展開中の地球統合軍と友軍守備隊ごと攻撃した。

 

攻撃の結果、侵攻中の地球統合軍は大損害を被り反統合同盟軍守備隊の9割を喪失、民間人に多大な被害を被った。

 

第二次世界大戦における広島・長崎に次ぐ3度目の核兵器使用を切欠に既存核兵器を改造した反応弾を実戦投入し反統合同盟加盟国に対しまともな反撃に出る前に執拗に攻撃し瓦解させた。

 

この事件は反統合同盟内にて離反者を多数出すことなり敗色を強める結果になった。

 

【結果】

反統合同盟による起死回生を狙った戦術核兵器の使用であったが、OTMを絶対優位に持つ地球統合軍を優位に進めるだけでなく離反者を招き反統合同盟の組織的抵抗を致命的に落とす結果として終わった。

 

既存核兵器は以後反応弾に置き換えられ、事実上の最後の核兵器使用という人類史の負の汚点として名を残す結果になった。

 

反応弾は以後も多数使用されるが、第1星間大戦後.大量殺戮兵器が故に銀河条約で使用を厳しい制約を課された。

 

とは言えども反応弾は開発が進み残留放射性物質を出さなくなった結果、核兵器や初期反応弾と比べて使用のハードルが低く幾多の戦場で使用される事となる。

 

 

【西暦2021年2月5日】

【クラビウス基地クレーター地下.施設東部機種転換センター】

 

 

この日、ラウラはベレー帽を被りきちんと制服を着て広場の前に整列していた。

先の事件における処分は自室謹慎のみに留まり、無事入所するが出来た。

広場には海兵隊から機種転換したゼントラーディ人だけでなく、他機種に操縦していた現役パイロットの地球人そして新卒のVFパイロット候補生も並んでいた。

 

「あれはカゴメと一緒にいたフィルダー少尉。」

 

機種転換センターのビルから更新しながら進む一団の列にカゴメと一緒にいたライナス・フィルダー少尉が旗を持ちながら進む姿が見えた。

ライナス達は前任期であり、ラウラと入れ替わるように訓練課程を修了していた。

 

センター長の訓示を受けそのまま別の施設に移動し配属先の部隊の迎えと合流する。

 

「地球時間で3ヶ月後、私もああして行進するんだねぇ。」

 

3か月もすれば卒業し、自身も実戦部隊に配属されVFパイロットデビュー・・・

ラウラはそう考えると以前と比べて笑顔が明るくなり、希望を感じていた。

 

一方、一般知識教育の裁縫や靴磨きなどの分野は苦痛だった。

 

機種転換センターではゼントラン海兵隊出身者に対し地球の一般知識を教えていた。

 

入所式する前では地球人とは別に専門の教官により、共通言語(リンガフランカ)である英語を自然に話せる訓練や一般知識を植え付け普通の地球人と同化が行われていた。

無論、ラウラも教育を受けており裁縫や靴磨きなど厳しくチェックされる分野で怒られたりしている事もあってか苦痛かつ苦手意識を持ちつつあった。

 

前よりかは前向きになったが、それと同時に苦痛に感じる事も出てきた。

 

しばらく経って時系列は正午のお昼時に進む。

 

「ラウラ・ミュレ、お疲れ様。入所式緊張したでしょ。」

 

「はい、銃を渡された時今までに感じた事のない責任を感じました。」

 

「重すぎて言葉も出ませんでしたよ。」

 

ラウラ達は入所式の一環である銃貸与式における感想をカゴメに言った。

 

入所式の終盤での銃貸与式で教官の一人であるバルリング・アドルガッサー中尉から旧米軍アサルトライフルであるM4カービンを手渡された。

予め銃貸与式の意味を知っていたラウラは、国民を守る責務を実行する為に握る銃の重さが予想以上に重たい事を知って思わず落としそうになった。

 

ほんの一瞬だった・・・・・意識がまともになればM4カービンはそこまで重くない。

重くはないのだが、国民を守る責務がこれ程は想像以上に重かった。

 

「ゼントラーディ軍はただ軍上層部の命令で戦ったり本能のまま戦ってたけども、M4カービン・・・・あの銃を握った時の一瞬・・・国民を守る責務がどれだけ重いのか知ったような気がします・・・・」

 

「ラウラ・・・・そんな事考えていたの?」

 

「以外でした?自室謹慎の時・・・・少しでも多く地球の事知りたくて・・・この儀式もかつて地球の一国だった日本の由来だって知ってます。」

 

「なるほどねぇ、結構真面目で私感心するわ。」

 

自室謹慎した時からラウラはいろいろ勉強していた。

 

地球の常識や言語などの基礎の部分を始め、軍事と歴史を熱心に勉強した。

基礎的な部分も熱心に学んでいたが、軍事学の方が取り憑かれたかのように勉強しゼントラーディ軍では味わえない文学にラウラは新鮮味を物凄く感じた。

 

「ベルタリア曹長は文化より軍事ですか・・・・」

 

「分かってないなぁミュレ、地球の軍事は自分自身の技量に取り組めるから便利なのよ。」

 

「そ・・・・そうなの・・・・・」

 

軍事学を学び始めてからのラウラの性格は明るくなった。

好きな事が増えた結果、後ろ向きな性格から前向きな性格に変わり社交的になった。

ただ強引な所もあってか自分の好きな事を他人に押し付ける面が目立ち、熱心に軍事学を話すラウラにミュレが引いてしまっている。

 

「やめなさい・・・・引いているでしょ。」

 

「カゴメも軍事学に・・・・今度バトル・オブ・ブリテン・・・・」

 

「ラウラは女の子でしょ、まだ22歳のお・ん・な・の・こ。ファッションとか化粧とか興味ないの?」

 

「ファッション・・・化粧・・何それ?」

 

趣味ができたラウラの暴走っぷりにカゴメは諌めつつオシャレに興味ないのか質問した。

まだ22歳の女性であり、ファッションや化粧とかに興味持ってもいいと思っていた。

 

カゴメからの質問にラウラはキョトンとしながら、知らないと答えた。

 

ラウラは全くファッションや化粧とかに興味がなかった。

以前にもシャワーから上がって一緒に着替えてた時、化粧やスキンケアしてないのに綺麗だなとカゴメがラウラに言った事があるが返ってきたのは・・・   

 

「何それ美味しいの?」

 

と言う間抜けた答えだった。

 

ラウラは文化慣れしてきたとは言えまだまだ世間知らずのお嬢様みたいな面が強い。

カゴメとしてはホッとくわけにはいかない。

 

「明日の外出、私に着いて来て・・・」

 

「えっなんで?」

 

「いいから来る、ラウラは女の子でしょ。私がコーチするから。」

 

入所式の翌日は金曜日なのでいきなり非番である。

 

なので明日はラウラが年相応の女子ファッションに目覚めるようにカゴメが引率して若い女性がよく通うブティックに連れて行ってコーチしようと考えた。

一方のラウラは明日は運動と軍事学三昧したかったのか嫌そうな顔をしている。

 

一応階級が下なので少尉であるカゴメからの上官命令なので逆らえない。

 

「ベルタリア曹長、災難ですね。」

 

「カゴメが言うんだから仕方がない・・・ 上官命令・・・」

 

「フリジェル軍曹・・・・・・貴女もです。」

 

「そんな・・・・」

 

ラウラが年頃の女の子らしくする為には立場を利用してでもやり遂げねばならない。

 

明日のブティック行きはミュレも巻き込まれる事になった。

2人きりだけではつまらないのでついでと言うのがカゴメの思惑だろう。

 

まぁカゴメに迷惑かけたばかりだから、断るのも悪い。

一方のラウラもこの前の戦闘で罪悪感があったのでカゴメの言う事は素直に聞こうと思っていた。

自分も強引な真似で戦闘に連れ出したのだから、カゴメの強引な付き合いを拒否してはならないむしろ積極に付き合っていこう。  

 

とそんな感じでラウラはカゴメプロデュースの明日の外出を積極的に受け入れた。

 

【同時刻】

【クラビウス基地第5軍港.ARMD級改空母アルタミラ】

 

空母シナノから離れ正式にアルタミラに着任した大樹は艦内を歩いていた。

右隣に歩くのは自身の小隊に所属する神楽賢二郎少尉、新たな部下だ。

 

大樹より歳下ではあるが実戦経験が豊富であり、ロイ・フォッカー章とチタニウム章を受章したエースパイロットであり階級も少尉と事実上の副官である。

 

「おはようございます。吉野大尉。」

 

「べサーズ准尉、おはよう。基地の方の引っ越しは済んだか?」

 

「はい!」

 

ロザ・べサーズ准尉はゼントラーディ人で、ラーチャー小隊に所属している。

 

先の大戦では僅か7歳で参戦したと言う信じられない話があるが、クローン製造による兵士である為10年前と全然容姿が変わっていない。

自分の年齢より若い兵士が自分より実戦経験が豊富、おかしな話だ。

 

「隊長、どうしました?」

 

「ゼントラーディ人の事について考えていた。俺らと違うなぁってね。」

 

「連中はクローンですからねぇ、違うのは当然で作りも違いますから。」

 

地球人とゼントラーディ人は同じように見えて違うのが特徴だ。

なんたって元々ゼントラーディ人は巨人であるから。

 

シュリが初めて来た時もそうだが、価値観は地球人と異質である。

宗教観も国家観もない人間味もない、あるのは軍人として生きる独特の価値観だ。

ロザは地球に帰化して10年経っているので地球人女性らしさはあるが、根は違う。

 

「早期警戒機が接近している?」

 

「予定にない機だとよ。」

 

「予定のない早期警戒機・・・・なんだ?」  

 

こうした中、着任予定のない早期警戒機が接近している報を聞いた。

 

VFー4DーAEWでも接近してきたのか?と思ったが、白川提督贔屓で予備艦隊所属艦であるアルタミラとは言えども高性能な早期警戒機が配備されるとは思えない。

とにかくどんな奴がやってくるのか、ブリッジに行けば確認できる。

 

大樹は賢二郎を引き連れブリッジに向かった。

 

『こちらプレーリードッグス所属プレーリー2からアルタミラへ着艦許可を求める。』

 

「艦長聞いてますか?」

 

「早期警戒機部隊が来ると聞いてたが今日ではないはず・・・・」

 

その頃、ブリッジでは例の早期警戒機と交信が行われていた。

 

所属部隊はプレーリードッグス、火星第二次防衛ラインを守る火星第2軌道艦隊に所属する第12早期警戒部隊の通称でありVEー1エリントシーカーを運用している事で知られる艦隊の目だ。

纏まって運用されるのではなく、火星から分遣隊を派遣するスタイルだ。

 

大樹はブリッジに上がると映像で映し出される姿を見て懐かしさを覚えた。

 

『聞いてないかぁ取り敢えず着艦させてもらうぜ!』

 

「お・・・おい」

 

『第3分遣隊各機、アルタミラに向け着艦態勢に入れ!』

 

プレーリードッグスから来た第3分遣隊はプレーリー2は僚機3機を引き連れフォーメーション・フィンガー・フォーでアルタミラに向け移動開始した。

 

アルタミラは艦周辺警護をしていたVFー5000スターミラージュで編成されたフォークス中隊のディーア小隊とレパード小隊を迎撃に向かわせた。

ディーア小隊とレパード小隊は第3分遣隊を左右に包囲し、変な動きをしないか監視する。

 

「VEー1ですね、大尉。」

 

「予定日のない日に来る問題児・・・・何者なんだ?」

 

プレーリードッグのマークを描いたVEー1を見てどんな奴が来るのか想像した。

 

4機編隊で飛ぶ姿は特に問題はない、変わった様子もない。

ごく普通の早期警戒機、問題児が乗っているようには見えない。

そう思っていると、異変は突然起こった。

 

「バカな早期警戒機でインメルマンターンだと!?」

 

1機のVEー1が突然、インメルマンターンを披露しディーア小隊の間を突っ切った。

突然逆方向に移動したプレーリー2に慌て吹きバトロイドに変形し、一斉に振り向く。

振り向いた瞬間、原田志保少尉の駆るディーア3の至近距離を通り過ぎる。

 

プレーリー2は通り過ぎた後元の編隊へ戻った。

 

「なんて危ない奴なんだ。」

 

「あの飛び方・・・まさかな。」

 

あの飛び方を知っている・・・・・

インメルマンターンを使っているからじゃない、前に一度見たことがあるからだ。

 

新兵時代に優れた技量を持ったエースパイロット、まさかあの人が来たのでは?

大樹は懐かしい旧知の仲の人ではと期待した。

 

プレーリードッグス第3分遣隊はアルタミラに着艦した。

 

アルタミラに着艦した各VEー1エリントシーカーからは男女のパイロットから降り立ち、保安陸戦兵の監視の元ブリッジに上がった。

 

「自分はプレーリードッグス所属第3分遣隊長カール・インメルマン中尉であります。」

 

「同じくゼノビア・ケーン伍長であります。」

 

「当艦長、ジェイル・ベレスフォード大佐である。」

 

アルタミラに着艦した問題児はやはり知っている人物であった。

 

カール・インメルマン中尉

新統合軍アポロ基地にて星村絵理の夫星村和也・葛西信之と並ぶアポロニュージェネレーションクロウの一人で、3年前火星で世話になったエースパイロットだ。

今は結婚し子供が出来てからは戦闘機パイロットを退いたと聞いているが、まさか早期警戒機のパイロットをやっていたとは思いもしなかった。

 

「第3分遣隊はスミス・ジェナス中尉が率いていると聞いたが?」

 

「ジェナス中尉は第2分遣隊隊長としてキラウエラに派遣されました。これが命令書です。」

 

「確かに火星方面軍艦隊司令部マシュー・グレニスター少将の署名だな・・・」

 

本来、第3分遣隊の指揮官はスミス・ジェナス中尉であったがアームド級宇宙空母キラウエラに派遣され急遽カールがアルタミラに派遣される事になった。

カール自身も妻子がクラビウス市に在住である為、適任だったと言える。

 

まぁ来てくれるだけでもありがたいが・・・・

 

「インメルマン中尉、何故我々に事前に通達しないのかね?」

 

「時間がありませんでしたので・・・・」

 

「中尉・・・今回は不問とするが軍隊内での連絡報告は怠るのは問題だぞ!」

 

「ハッ・・・・・以後気をつけます。」

 

無断無連絡着任の件は厳重注意をしたのみで不問になった。

カールの横にいたゼノビアや後ろにいる第3分遣隊の隊員達はホッとした表情だ。

 

話し合いが解散すると大樹は賢二郎と共にブリッジから出ようとすると誰かに呼び止められた。

 

「よう吉野、元気にしてたか?」

 

「何とか激務でしたけれども問題なく・・・」

 

「隣は吉野の部下?」

 

「自分は神楽賢二郎少尉であります。」

 

「ほう若いのにやるねぇ〜」

 

カールだった。

 

火星に留学していた頃、マリネリス中隊に単身赴任していたカールと出会った。

 

マーズウォーズ事件が起きる前はVFの操縦技能をカールから学んでおり、師弟の関係を築いており何度も火星独立ゼントラーディ軍との戦いで共闘した。

 

大樹が火星を離れ空母シナノのブラックパンサーズ中隊に所属して以降、関係は薄れていたがいざ顔合わせをするとお互い昔と変わってない事に安心した。

久しぶりに会った事もあり、以前よりも意気投合し世間話や昔話で花を咲かせた。

 

「実は息子が生まれたんだ。」

 

「息子ですか?アマリさんと結婚したんですか?」

 

「しているから息子が生まれたのよ。ちなみに次男な。」

 

話し合いをしている最中、カールが息子が生まれた事を話した。

 

大樹は火星にいた頃にアポロ基地にいた頃から付き合いのあるアマリ・ヒューマリンと言う女性兵士と恋人関係である事を知っており、姉のように接してくれた記憶が残っている。

 

3年が経ちカールとアマリは結婚し子供を授かったと聞くと大樹は感慨深い物を感じた

 

「名前はなんて言うんです?」

 

「名前か・・・・大した名前ではないが・・・・」

 

大樹はカールに息子がどんな名前なのかを聞いた。

 

インメルマンの名を冠するカールの息子だから大樹としてはどんな名前が気になる。

名前を聞かれたカールは照れくさそうな仕草をすると嬉しそうに口を開いた。

 

「名前はライト・・・・ライト・インメルマンだ。」

 

カールの息子の名はライト・インメルマン、長男フォルカー・インメルマンに続く次男であり、母親アマリに似て黒髪の優しい瞳を持った子供だった。

息子の事を楽しそう話すカールの姿を見て大樹は珍しく安心したかのような笑みを浮かべた。

 

後にカールの息子ライトが39年後、最悪な形で歴史に名を残すとはこの時誰も思いもしなかった。

 

【西暦2021年2月6日】

【クラビウスシティー.タイペイタウン】

 

 

ラウラはラフなTシャツに部活娘みたいなジャージと言う姿で街にいた。

 

台湾の台北を再現した街並みであり、数多くの台湾系地球人が在住している街だ。

機種転換センターの近所であり、クラビウス市東部中央に位置している。

 

なおラウラの官舎があるのも、タイペイタウンである。

 

そんなラウラだが、不機嫌そうな表情を浮かべていた。

 

「カゴメ、私やっぱり官舎の中で戦争史を勉強したい。」

 

「ダメ・・・上官命令です。女の子らしく楽しい文化を楽しみましょう。」

 

「私はそーゆーのはいいって」

 

外出するつもりなんて無かった、基地の図書館で戦争史を勉強したかった。

だけど、カゴメからの命令ともあってか断りづらい・・・・・

 

とは言え・・・・外の街は新世界とも言っても良かった。

 

男と女の地球人や同胞(ゼントラーディ人)がそれぞれいろんな服を来て歩いていたり、仲良く一緒に歩いている姿がよく見かける・・・ゼントラーディ軍ではありえない光景だ。

 

「地球人は本当にデ・カルチャーだな。全く理解できん。」

 

「私は楽しいですよ、ベルタリア曹長。」

 

「ミュレお前はヤケに馴染んでいるな。」

 

「そんな事ないですよ。」

 

同期で共に来たミュレだが、自分よりも地球文化に慣れている。

 

何処からか手に入れたのか、デジタルオーディオプレーヤーで音楽を聴いておりサングラスをしたりと今の自分よりも圧倒的に地球人の年頃の女らしい感じになっていた。

 

「ラウラ、ミュレとヴェロニク・アーベラインの音楽のCD探したいから来る?」

 

「私は音楽は別によく分からないから待ってるよ。」

 

「そう、すぐ終わるから待っててねぇ。」

 

「うん・・・・ふう」

 

ラウラは新世代の歌姫と称されるヴェロニク・アーベラインのCDを探したいカゴメとミュレと別れ一人だけCD屋の前で待機した。

ミュレはここについてからリン・ミンメイを切欠にいろんな音楽に興味を持ち、たまたまテレビで目にしたヴェロニクの歌を聴いてファンになったらしい。

 

カゴメも昔はソロのアイドルとして活躍してたらしい。

 

そんな二人を見てたラウラだが、音楽の世界にはどう入り込めばいいのか分からなかった。

二人を待つ間、ラウラは自身の服装を見た。

 

「パーカーとカーゴパンツ・・・・地球人の制服よりも着やすくていいなぁ。」

 

服装はパーカーにカーゴパンツと言う格好だが、制服のスカートと言う物よりも着やすく下にストッキング履く必要もないので心地よい。

カゴメからのお下がりだが、良い物をもらったとラウラは思った。

 

地球の文化はいろいろある・・・・

 

食べ物も服装も娯楽もゼントラーディ軍・海兵隊時代と比べてかなりある。

人生でこんなに楽しいと思った事が無かった。

 

ラウラはなんだかんだ幸せせに感じていると街頭ニュースを目にした。

街頭ニュースでは新統合政府マロニー大統領が演説をしていた。

単なる演説ではあるが、この直後ラウラの心を壊す言葉を聞くことになる。

 

『新統合政府フランク・マロニー大統領は迫るボドル基幹艦隊決戦勝11周年記念式典につきまして・・・』

 

「あ・・・・え・・・・あ」

 

 

 

 

ボドル基幹艦隊決戦勝11周年記念式典・・・ ボドル基幹艦隊決戦

 

ニュースで流れたボドル基幹艦隊の名を聞いてラウラの心は抉られたかのような冷たさを感じた。

 

同胞殺しである自分にこんな楽しい事を楽しむ資格なんてないんだ。

この前の戦闘においても同胞と戦って殺している、私は何の為に生きているだ。

 

ーなんで戦っているんだ。

ーどうして味方同士で戦っているんだ。

ー戦っているのは仲間なんだぞ

 

昔自分があの戦場で叫んだ声が心の中で響く・・・・

人間換算で言えばまだ11歳、地球人で言えば子供だがラウラらゼントラーディ人は最初から大人のクローンで作られた生物兵器であるので見た目は大人だ。

既に数多くの戦場で多くの兵士を殺して殺して殺しまくった。

 

ーそもそも何故、私は監察軍と戦っている?

ー何故戦争をやりたがる?

ーそんなに人を殺すのが好き?

ー人殺しがこんな所で楽しい思いをするなよ、同胞殺したんだろ?そして地球人も殺したんだろ?

 

更に響く声、響く自分の声・・・まるで責めるかのように・・・

 

「いやぁぁぁぁぁぁ」

 

頭がパニックになった。

 

過去の自分が今の自分を否定している声に耐えられなくなった。

周りにはメフィリアもアンジェミラもいない環境下で心の防壁が無くなり、後悔と罪悪感が一気に自分自身の良心を蝕むように襲いかかる。

 

頭の中にはボドル基幹艦隊決戦の時の出来事が一斉に思い出す。

 

「ラウラどうしたの!」

 

「私は・・・・私は・・・・」

 

「ラウラ!フリジェル軍曹・・・・一緒に抱えて・・・・」

 

「りょ・・・・了解しました。」

 

近くにいたカゴメとミュレが駆け寄った。

 

幸い近くに人がいない為、大きな騒ぎにならず駐車場まで向かいカゴメの自家用車に乗せた。

ラウラは車の車内にて激しく震えていた、いつもの強気の表情もない。

 

「ラウラ、ラウラ・・・」

 

「私は・・・・・・」

 

「ラウラ!!」

 

「カゴメ・・・・」

 

必死の呼びかけにようやく正気に戻った。

 

正気を取り戻したラウラはミュレが急いで買ってきたお茶を飲み終え完全に落ち着いた。

それでもまだ手は震えている、厳しい戦闘でさえ震えなかった手が今震えている。

戦友がいないだけであんなに取り乱す自分が惨めで涙が止まらなかった。

 

「何故、あんなに取り乱したの?」

 

「ごめん・・・・・ボドル基幹艦隊決戦の事思い出したら感情が・・・・」

 

「そう・・・・」

 

ボドル基幹艦隊決戦に負った心の傷は10年経っても治らない。

ゼントラーディ軍人としての矜持、同胞殺しそして11人の戦友の死・・・

 

海兵隊に属したら2人の戦友が戦死、2人の戦友が戦傷によりマイクローン化した上で退役やシュリやミュリ・ルクソールの転属などどんどん共に戦った仲間達もいなくなった。

転属して見ればカムジンの反乱に加わり戦死したり、軍人を辞めた何処にいるのか分からなくてなった者など傷はどんどん深まるばかりだった。

 

あの戦いはリン・ミンメイの起こした奇跡と言われ、新統合政府は大々的に勝利を誇っているもののラウラ同様にゼントラーディ軍人としての矜持を失い苦しむ地球についたゼントラーディ軍人は少なくない。

 

ブリタイ率いる第56分岐艦隊以外のラプラミズ艦隊や第7空間機甲師団は地球に就く事には積極的ではなく、結果トラウマを抱える兵士を多発した。

 

ラウラはメフィリアとアンジェミラがいたからボドル基幹艦隊の名を聞いてもトラウマを発症する事がなかったが、親友になったカゴメや良き部下であったミュレがいなくなり周りに頼りになる人がいなくなった事でトラウマを抑える防壁がなくなった。

 

「ラウラ、美味しい物を食べたら気が晴れるわよ。近くに娘娘タイペイ店あるから。」

 

「でも私のせいで台無しにしてしまったし。」

 

「私は気にしてないわ、辛いならケアするのも親友としての私の矜持だから。」

 

カゴメは元気を取り戻してもらう為、娘々に行こうと誘った。

 

娘々はリン・ミンメイの伯父リン・シャオチンとその妻リン・フェイチュンが南アタリア島で経営していた店であり、大戦中はマクロス艦内で戦後は首都マクロスシティーで経営していた。

 

大戦の英雄的歌姫リン・ミンメイの名声により規模が拡大し、地球各主要都市と月面各都市にて12ものの支店舗が出来るほど躍進を遂げておりクラビウスでも3年前に2店舗出店している。

 

地球の料理の魅力に目覚めたラウラなら中華食べれば気分が良くなると考えたカゴメは、町中華ならミンメイの縁の深い娘々を選んだ。

 

 

 

『 ゴージャス☆デリシャス☆デカルチャー♪』

 

「ここが娘々・・・・」

 

半ば強引に娘々タイペイ店に連れて来られたラウラは驚いた。

 

飯を食べる所なのに外装が派手であり、大きめに娘々のマスコットキャラが描かれていた。

更にチャイナドレスを着たミンメイの立ち絵が書かれていたり、ミンメイ人形も置かれていた。

ミンメイ人形を見たラウラは懐かしさを覚えた。

 

「懐かしいこれ見たことある。」

 

「ミンメイ人形?ゼントラーディ軍時代か海兵隊時代?」

 

「ゼントラーディ軍時代・・・・メフィリアが何処からか拾ってきて・・・」

 

この時のラウラの発言を聞いてカゴメは確信した・・ホームシックなんだなと。

 

さっきの取り乱しもホームシックが発症しそれに過去のトラウマが併発した結果であり、ラウラは気がついてはいないが相当寂しがり屋な性格だった。

寂しがり屋な性格が故に傷つきやすいが、自身のプライドが故に隠れてしまう・・・

それがラウラの弱さであり、下手をすれば死を招く地雷のような弱点だ。

 

ーラウラを死なせない、陰ながら死なないように支えねば・・・

 

ラウラは人間換算でまだ22歳の若い女性、そして軍人。

カゴメはどうにかして死なないようにする為にサポートしたいと心に誓った。

 

娘々に入店し店員の案内で席に座ると、隣の女性がチラチラ見ていた。

緑色のボブカットのゼントラーディ人だ。

しばらくチラチラ見ていると、何かに気がついたのか声を上げた。

 

「ラウラ!ラウラ・ベルタリアなのか?」

 

「えぇと・・・」

 

「生きていたのか・・・ あの戦いを・・・・」

 

緑色のボブカットのゼントラーディ人はラウラの事を知っていた。

 

涙目でラウラの顔を見ながら目の前に立つと突然手を握ってきた。

突然の出来事に睨見つけるのだが、しばらくしてラウラの表情が柔らかくなった。

 

「リオナ・・・・ リオナ・ナージャ・・・・」

 

「良かったぁ・・・・やっぱラウラか・・・ あの戦いで死んだかと・・・」

 

「リオナこそ乱戦で行方不明になって・・・」

 

「ユウナやロレが助けてくれた。私達はマクロスと共に地球に降下して・・」

 

緑色のボブカットのゼントラーディ人はラウラのかつての戦友リオナ・ナージャ。

ボドル基幹艦隊決戦時はラウラ達と共に進撃していたが、乱戦の最中チームメイトであるロミア・ユファンやエミア・ユーズが戦死し悲しむ暇もなくリオナは戦場の悲しき光の中へ消えていった。

 

当然ラウラ達は死んだと思っていた。

 

実際は同じようにチームメイトを失ったロレ・ヤッシスやユウナ・タロマスと合流し、最終的にはラプラミズ艦隊の残存艦艇に収容され戦闘を生き抜いた。

 

「ラウラそちらは・・・・」

 

「紹介します、リオナ・ナー」  

 

「私はリオナ・コンチネンタル、近くで住んでます。」

 

「リオナ・・・・」

 

「私・・・結婚しているのよ。」

 

カゴメから説明を求められた時のリオナが変だった。

リオナ・ナージャと言う名前ではなくリオナ・コンチネンタルと名乗ったからだ。

 

ラウラは理由を問いただそうとする前に見たことのないような爽やかな顔で結婚したと言う。  

 

結婚と言う単語を知らないラウラは険しい表情をリオナに向けた。

何故、ナージャではなくコンチネンタルを名乗っているのかと・・・

 

「結婚はなんだ?何故コンチネンタルなんだ?と言いたげね。」

 

「そうだ、お前の苗字はナージャだ!何故変わった。」

 

「男と結婚し夫の苗字名乗ったからよ。まぁ選択的夫婦別姓だから、別々にできるけど。」

 

「男と・・・結婚・・・・カゴメ・・・知っているか?」

 

「もちろんよ・・・・ラウラ、男と一緒になって暮らすって事よ。」

 

男と一緒になる結婚と言う言葉にラウラは衝撃を覚えた。

海兵隊時代は男女混合となったがそれ以上の関係になったのは見たことがない。

稀に男女共に転属する事はあっが・・・・

 

「リオナ、本当なのか?」

 

「本当よ。2年前、ゼントラーディ時間1.5ターム前に・・・地球人と・・・」

 

「ヤック・・・・ヤック・デ・カルチャー・・・」

 

リオナはボドル基幹艦隊決戦後、ロレとユウナと共にマイクローン化し退役し軍人ではない民間人としての道を歩もうと決心し学習プログラム育成センターに通った。

3年間学生として地球の学問を学び銀河ネットワークのアナウンサーとして就職した。

 

潜在能力が発揮して銀河ネットワークの人気アナウンサーになり、同じアナウンサーであったブラッド・コンチネンタルと恋仲になり2年前の2019年に結婚した。

 

なお娘々にいたのは昼飯を食べながら銀河ネットワークのアナとしての仕事をする為である。

 

「新統合軍カゴメ・バッカニア少尉です。」

 

「VF候補生であるミュレ・フリジェル軍曹であります。3級空士長・・・・」

 

「ご丁寧にどうも・・・」

 

カゴメとミュレはお辞儀の礼で敬礼した。

 

軍隊ではないがラウラの戦友なので軍人らしく礼儀正しく接しなければならない。

2人の敬礼を見たリオナは少し驚きながらも上品に答礼をした。

もう軍人ではないが、元軍人として最低限の礼儀をせねばとレオナは思った。

 

久しぶりに再会したラウラとレオナはお互い何があったのか話した。

 

 

 

 

「ラウラ、まだあの戦いを引きずってたのね。」

 

「仕方がないだろ今もラプラミズ司令の命令には納得もしてないし同じゼントラーディ軍人同士殺し合うのも納得してない。私達は同胞を殺し戦友も死んだ。」

 

「確かにあれは苦しかったわ。」

 

「何故ラプラミズ司令はあんな命令を・・・・」

 

ボドル基幹艦隊決戦における自身の心の傷をレオナに話した。

 

同じ部隊にいたのでラウラが負った心の傷に同情しており、レオナも似たような傷を負っていた。

突然、ラプラミズ司令から言い渡されたマクロスと共闘と同胞への攻撃命令は今もなお納得できないし同胞を殺した罪悪感は10年経ってもまだ残る。

 

重苦しい雰囲気の中、レオナは残酷な事実を告げた。

 

「違うわラウラ、どの道私達は殺し合うしかなかったのよ。」

 

「リオナ!お前はゼントラーディ軍の軍人ではなかったのか?」

 

「ゼントラーディ軍人だったわよ、私だって後悔している・・でもボドルザー閣下が私達はプロトカルチャーに汚染されたと判断した。」

 

「汚染されたのはブリタイ・クリダニク司令だ!私達は忠実にボドルザー閣下の命令に従った。なのに・・・」

 

「ミリア・・・・エースのミリアが地球人と結婚した時点で私達の命運は決まってたのよ。」

 

ラウラが所属するラプラミズ直衛艦隊は対マクロス主力のブリタイ率いる第67分岐艦隊とカムジン・クラヴシェラ率いる第7空間機甲師団と共に文化汚染されたとボドルザーにより判断され処刑対象であり、どの道戦うか滅びるかの2択しかなかった。

 

ボドルザーからすれば2個艦隊処断しても全く問題がない。

命令に忠実だが、地球人と結婚し寝返ったミリアを出したラプラミズ以下将兵も無断停戦協定を結んだブリタイらと同じく文化に汚染された存在に過ぎない。

 

「だとしたら私はミリアが許せない!あんな事になってなければ・・・」

 

「ラウラ・・・・・・・」

 

「被害者ぶらないでよ、私達は地球人虐殺と地球の文化を破壊したじゃない。」

 

「リオナ・・・・」

 

ラウラはラプラミズ艦隊が処断の理由の一つになったミリアに激しい怒りを吐いた。

 

激しい怒りを吐いた姿を見ていたリオナは冷たい事実を突きつけた。

地球人虐殺と地球文明を破壊したのは我々ゼントラーディだと・・・

 

リオナの言葉を聞いたラウラは頭が真っ白になった。

 

「本気で言っているの?私達は・・・・」

 

「私達は加担しなかったけど地球人と地球文明を殲滅した・・・・69億人もいた人類の大半を虐殺したのよ。」

 

「でも・・・・」

 

「コンチネンタルさん、そろそろ料理頼みましょう。」

 

「そうね。」

 

厳密に加担したのは第118基幹艦隊本隊であり、ラウラ達は無関係だった。

 

完全に無関係とは言えないブリタイら第67分岐艦隊やラウラ達ラプラミズ艦隊の行動の結果がボドルザーに地球殲滅の導火線に火をつけ地球殲滅の結果に至った。

 

結果、地球人の中にはゼントラーディ人に対し激しい憎悪を生み秘密結社KKKなどを母体にした地球人至上主義・反ゼントラーディ運動を生み社会問題を引き起こした。

 

ラウラは頭を鈍器で叩かれたかのような衝撃を覚えた。

注文した麻婆豆腐が美味しいと感じられなかった。

 

リオナはしばらくして仕事があると言って先に店を出た。

明らかに変わった・・・あの戦争の後のリオナは・・・

 

「カゴメ、本当なのか私達の同胞は地球人を・・・・」

 

「本当よ・・・・・私の故郷はゼントラーディ軍により今はないから。」

 

「そんな・・・・私・・・・私達は・・・・」

 

娘々を出たラウラはカゴメに質問したボドルザー基幹艦隊による地球人虐殺を・・・

 

返ってきたのはゼントラーディ軍が地球人虐殺し地球文明を殲滅した事実だった。

自分達は自らの意思にないにせよマクロス側に参戦し加担しなかったが、ゼントラーディ軍は地球人・・・ カゴメの同胞を虐殺し地球文明を殲滅した。

 

「ラウラ一人で抱え込まないでね、いつかそうなるのではと覚悟してたから。」

 

「そうは言っても・・・もう頭がぐちゃぐちゃになりそう。」

 

「それはそうよね、あの戦いは何もかもメチャメチャだった。」

 

地球人としてはASSー1が地球に落下してからいつかはそうなると覚悟をしていた。

 

巨人同士による広大な戦場と化した銀河で地球が戦火に巻き込まれ地球人は戦いの最中で滅ぶ可能性は地球統合軍時代から分かりきっていた話だ。

一兵卒の一人で命令に忠実に動いていただけのラウラに何も責任はない。

 

ラウラもまた歴史の動乱で生み出された被害者の一人に過ぎない。

ただ戦争が全てが悪かったわけではない。

 

 

 

「でもラウラ・・・・何もなかったわけじゃないわ。私達は・・本来出会うはずのない私達はこうして一緒に並んで歩きながら喋っている。」

 

「!?たしかにな・・・でも・・・・カゴメは嫌じゃないのか?」

 

「嫌じゃないわ、地球人もゼントラーディ人も何も変わんないもの。」

 

戦争が切欠でラウラとカゴメは出会う事が出来た。

 

悲惨な戦争ではあるものの、得られる物があった。

戦いを通じてゼントラーディ人は地球文化と出会い、戦争の悲惨さを学んだり生物兵器としてではなく人間として新たな人生を歩みたいと思うようになった。

 

リン・ミンメイは大きな働きをしたが、それに至るまで多くの人々が懸命に努力しボドルザー基幹艦隊決戦における絶望的な戦いに奇跡的に勝利する偉業を成し遂げている。

 

ラウラがこうして地球文化を楽しんだり、地球人であるカゴメと会話しているのは奇跡であった。

 

「なんかこうして言われるのも悪くないな。」

 

「そう?それが人間・・・・人間なのよ。」

 

「人間か・・・・・」

 

人間・・・・

 

今まで戦争や軍組織のみで生きてきたラウラからすれば新鮮だった。

 

カゴメはゼントラーディの社会にはない事をなんでも教えてくれる。

出会って日は短いが長年の戦友のように感じられ心地がよい。

 

空気と化していたミュレはラウラの背後に立ち肩を叩いた。

 

「ラウ〜ラちゃん、地球人の文化と出会ってよかっただろ。」

 

「ミュレ、上官である私にその言い方・・・」

 

「別にいいだろ、今は軍人としているわけじゃないし。」

 

以前と違って上官部下の関係でなく、まるで仲のいい友達かのような態度だった。

 

部下であるミュレの豹変にラウラは戸惑うも悪い気がしなかった。

むしろ安心を覚えるほど暖かい何かを感じた。

 

ーまだまだ立ち上がれそう。

 

ラウラはカゴメと出会ってそう考えるようになった。

メフィリアとアンジェミラと分かれトラウマ発症と言う大きなダメージを負ったけれども、地球人であるカゴメと出会って心の傷は軽減できた。

それだけではなく、前向きにこの先の将来を考えられるようになった。

 

「ラウラ、まだ点呼まで時間あるからカラオケに挑戦してみない?」

 

「カラオケ?歌って奴?私は・・・」

 

「何事も経験が必要だよ。失った分、取り戻していくよ!」

 

「いいですね・・・ラウラちゃんも楽しくやろう♪」

 

友人(戦友)ってこんなに大事な存在だったのか・・・・

ラウラは自分の事を気にかけてくれる友人達の存在が唯一無二の存在だと気がついた。

こんなに楽しい事はないと・・・

 

「彼は・・・私にとってどんな存在なんだろうね?」

 

空を見上げたラウラはふと思った。

この前出会った吉野大樹と言う男と言う存在は私にとってなんだろうって・・・

戦友と言う感情とも違う会いたいそばにいたいと言う不思議な感覚・・・

 

もしまた会える機会があればきちんとした自分の姿を見せたいラウラはそう考えていた。

 

ラウラ達3人はいろいろ話し合いながら考えながらカラオケボックスへの歩いてゆく・・

戦争とは無縁な平穏な時間を謳歌しながら・・・

 

だが、外の世界では心休まるラウラに厳しい現実を突きつけるかのように戦争は銀河各地で行われていた・・・・・暖かい感情を容赦なく踏み潰すが如く・・

 

次回 

 

第1次星間大戦勃発から12年の歳月が経った。地球人類は悲劇を乗り越え新たな歴史を構築する中、新統合軍の様々な歪んだ思惑が動く。その一方でラウラは大戦前の戦争の生き証人と出会う。

 

グレート・ウォー・メモリー

 

レクイエムの中を駆けよ!シャイアン!

 

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