【西暦2021年2月16日】

【月面クラビウス基地機種転換センター】

 

 

卒業したての候補生の一人ライナス・フィルダー少尉が戦死した。

 

クァドラン・ローと戦闘になり相討ちになりコックピットを潰されての死であった。

一方のクァドラン・ローだが戦闘不能になったがパイロットは重傷となり、そのまま捕虜になった。

 

フライング・フィッシュ中隊イダテン小隊はライナス含め2名戦死、1名が負傷した。

 

3機のクァドラン・ローを撃墜し2機を戦闘不能にし、4機が逃走した。

イダテン小隊の残存した2機は何とか踏ん張って耐えてたらしく、はぐれゼントラーディのクァドラン・ロー部隊は大樹達の姿を見て逃げ出したと言う。

 

「バッカニア少尉、気を落とすな・・・・軍人である以上・・・・一定の確率であり得る話だ・・・・悔やんでいても仕方がない。」

 

「分かっています・・・・分かってはいますけれども・・・」

 

「死んだ人間は戻らない。死んだ人間に囚われたら君が死ぬ事になるぞ。」

 

先の大戦で多くの仲間の死を見てきた茂人はカゴメに気にするなと助言した。

 

分かってはいるとは言えカゴメには耐えられない程精神的ダメージが大きかった。

統合戦争と星間大戦を戦ってきた茂人と違ってカゴメは戦後世代だ。

士官学校卒業してから2年目になる軍人だが、まだ20歳の若き女性士官だ。

 

覚悟していたとは言えいざその時が来ると耐えきれない。

それだけではないカゴメにとってライナスはある意味特別な人間であった。

 

「バッカニア少尉ってかつてソロでアイドルしてたカゴメ・バッカニアですか?」

 

「うっ・・・・・・あまり触れたくない過去なんだけどな。」

 

「俺すごくファンだったんですよ!なんで軍なんかに?」

 

「なりゆき・・・・でね。一応、士官学校に願書出してたからアイドル辞めたの。」

 

茂人と共に機種転換センターに来た時に挨拶した後、ライナスがカゴメにファンだと告白した。

 

かつてカゴメは売れないソロアイドルとして活動してた事があった。

 

メガロード01からクラビウス基地に来訪しライブしたミンメイの姿に憧れを抱き両親の反対を押し切りアイドルを志しソロデビューしたが、現実は厳しく芽が出ず引退した。

結局誰も見向きもしてくれなかった、ライブやっても見てくれる人は殆どいなかった。

 

歌の道を諦め士官学校へ進み軍のオペレーターとして勤務するようになった。

 

そうした中でかつてソロアイドルとして活躍してた時に応援してくれたファンがいた事を知り感激し、卒業するまでいろいろと接し内心恋心を抱くようになった。

 

それが故に更に悲しみに追い打ちをかける事となった。

 

「行ってきます!バッカニア少尉!」

 

ラウラと入れ替わるかのようにライナスは卒業し戦場へ旅立っていきそして死んだ。

さよならも言わずにこの世からいなくなってしまった。

 

戦争ってこう言うものなんだ・・・・・死ぬとこうも胸を貫く辛さなのか・・・

 

ライナスは遺骨も無くこの世から消えていなくなった。

 

「カゴメ、今度なんだけれどもバルカン戦線の話教えて・・・・」

 

「ごめん・・・・・ラウラ・・・・・・そんな時間ないの・・・」

 

「時間がないなら仕方がない・・・・カゴメ?」

 

何も知らないラウラは普段通りにカゴメと接しようとしていた。

 

軍史オタクとなりつつラウラは普段からいろいろと質問攻めにしていた。

イギリス出身のカゴメは第二次世界大戦のヨーロッパ軍史に関しては詳しい。

好奇心旺盛な性格であるラウラはどんどんこれでもかと質問しまくり、カゴメは士官学校出身しかもトップクラスの成績である知識で詳しく説明してきた。

 

だけど今日は違う、いつものカゴメと違っていた。

何処か冷たく悲しげな雰囲気であった。

普段のカゴメだったら親しげに明るく振る舞ってくれたのに・・・

 

「カゴメ・・・・・普段なら・・・」

 

いつもと違う雰囲気にラウラは不安になり泣きそうになった。

 

明るい性格のカゴメにいつも助けられていた。

同胞殺しのトラウマも頼るべき戦友のいない環境による孤独もカゴメのおかげでなんとか出来た。

話しかければ地球人だろうとゼントラーディ人だろうと笑顔で明るく接してくれる。

 

だけど今はそんなカゴメはいない・・・・・

 

「ラウラ、バッカニア教官見なかった?」

 

「・・・・・・・」

 

「ラウラ?どうかした?」  

 

「あっミュレ・・・・なんでもない。なんでもないから・・・・・」

 

「ちょっと・・・」

 

思わず走り出してしまった。

 

何もできない無力な自分が嫌になった。

いつも世話になっているカゴメに何もできない無力な惨めな自分が嫌になった。

 

女子トイレの洗面台の前に立ち鏡に映る自分の顔を見た。

 

「わ・・・私は戦争しか脳のない・・・・ただの兵士でしかないのか・・・地球人と違うのか・・・」

 

鏡に映る自分の顔を見て思わずこんな顔をしていたのかと思った・・・・

 

蒼い髪のショートヘアで、地球人男性曰く美人と言ってもいい感じの顔・・・

だけど表情は何処か暗く目もやつれていて、覇気が無かった。

そしてゼントラーディ人と言う戦争の為にクローンで製造されたが故に何度も同じ個体を見た量産型と言ってもいい程の個性のない面白くのない顔・・・

 

それが故に今の状況を鑑みて戦争しか脳のない人間にすらなれない兵士でしかない。

人間になれないからこそ常に強さに飢え、カゴメを慰めやしない。

 

「私は一体どうすれば・・・」 

 

誰にも相談できない状況にラウラは思わず泣いた。

 

だけどまだやるべき事があるので自分を殺して涙を拭き教室へ向かった。

戦史講義であったが、カゴメではない教官が教壇に立った。

 

ラウラはシャーペンで戦史「九州沖航空戦」の内容をノートに書きながらも、心の内は締め付けられるかのような苦しさに襲われた。

 

今の自分はとても無力な存在だと。

 

【西暦2021年2月16日】

【新統合軍空母アルタミラ】

 

 

 

大樹は副隊長室で仕事をしていた。

 

この前の戦闘で見たラウラと同じ顔のメルトランの事を調べ、尋問で何を言っているのかを調べた。

捕虜は地球人に対する恨み節を述べており、尋問のゼントラーディ人の士官が困惑する程だ。

 

「大尉、コーヒーです。」

 

「ありがとう・・・美味いな・・・ってべサーズ准尉が入れるとは珍しいな。」

 

「ある種の嗜みだと思ってください。」

 

仕事をしている大樹にコーヒーを持ってきたのはロザであった。

 

味は一流の喫茶店で出すほど腕が良くとても美味しかった。

そんなコーヒーを出すロザもゼントラーディ人である。

ゼントラーディ人とは言え環境が違えば人も変わる・・と大樹はふと考えた。

 

前ブラックパンサーズにいた頃、配属したてのシュリが言ってた事を思い出した。

 

「私は私ですから。」

 

「なんだそれ?」

 

「いくら同じ顔と体をしてても私ではないですし、躊躇なく撃てますよ。」

 

ー私は私ですから・・・と・・・

 

ゼントラーディ人はクローンだから気にせず撃てるのかを聞いた事がある。

シュリは躊躇いもなく同じ顔同じ身体をしていてもそれは自分ではないから撃てると言った。

 

それを聞いた大樹はつくづく強い女だなと思った。

 

「とは言え、実際に顔を見てしまうと躊躇う気持ちはあるんだよな。」

 

現実はそう簡単に甘くない。

敵兵士の顔を見てしまえばどんなに強い覚悟を持っていても躊躇いが生じる。

戦争はどんな覚悟を持っても考えを持っても簡単に崩れてしまう。

 

もしあいつ(ラウラ)と同じ顔の敵を見て殺せるのか?

 

そう考えると大樹の手は自然に震えが止まらなくなった。

 

「大尉?」

 

「すまん、考え事をしていた。」

 

「考え事なんて珍しいですね。」

 

「考えるさ・・・・副隊長だからな。」

 

どんな地位についても戦争の現実に抗うのは難しい。

初めて戦場で敵兵士を殺した時も手の震えが止まらなかった。

 

それでも守らねば国民が命を落とす事になる。

 

だからこそ誰かが罪を背負ってでも軍人として脅威と戦わねばならないのだ。

 

ライナスはよくやった。

今大樹に言えるのはその言葉だけであった。

 

【西暦2021年2月16日】 

【新統合軍月面クラビウス基地.司令部.白川提督執務室。】

 

 

白川提督はマックスとミリアの両名を呼び出し戦闘報告を聞いた。

 

戦闘における戦死者を出した原因や捕虜の扱いなど事が話し合った後、本来の任務であるアルガス・セルザーと共に惑星エデンに向かうように辞令を出し解散した。

 

「大尉、ゼネラル・ギャラクシーのセルザー主任の護衛頼んだぞ。」

 

「ご期待に添えるように専念します。」

 

「中尉も新型機のテストの結果、楽しみにしているぞ。」

 

「ハッ成果を残し新型機完成に貢献します。」

 

マックスとミリアはゼネラル・ギャラクシー社が送り出す期待の星VFーXー10の試験を行いロールアウトに導く事と開発主任であるアルガス・セルザーを護衛しなければならない。

 

ミリアがテストパイロットに適任と言う理由で試験を任せられたが、反統合勢力によるアルガス暗殺を防ぐ為にジーナス夫妻もといダンシング・スカルにテスト兼護衛を任せた。

 

「まさか・・・エースのミリアに護衛してもらえるとはな。同じゼントランとしては頼もしい限りだ。」

 

「私こそゼントラーディから出た天才技師の自慢の機体を制式採用前に使わせてもらえるなんて光栄ですわ。」

 

「いやいや俺こそエースのミリアに使ってもらえればコードネーム・カットラスも喜ぶ。」

 

「買いかぶりですわ。」

 

白川提督との会合を終えたマックスとミリアはゼネラル・ギャラクシー.クラビウス支社にてアルガスと合流した。

 

和やかな雰囲気で合流を果たしたが、バラクラバとゼネラル・ギャラクシーのロゴのついたベレー帽を被りM4カービンを装備したゼネラル・ギャラクシーの私兵が2人を睨む。

 

2人だけではない、バラクラバとベレー帽を被った女性兵士やゼントラーディ人であろう兵士達が自分達の周囲にまるで包囲するかのように配置されていた。

 

「セルザー主任、結構物々しい雰囲気ですね。」

 

「大尉もそう思うか・・・大げさだと思うがね。物騒だというのでPFも同行するらしいがな。」

 

「プライベートフォース、民間軍事会社・・・」

 

「我が社で改修した機を運用している噂があるがね。」

 

民間軍事会社・・・PF・・・傭兵・・・PMC、国家の軍ではない軍事力。

ゼントラーディ軍では考えられない異質の兵力にミリアは不思議に思っていた。

 

正規軍だけでなく金で雇われた軍隊の存在はミリアからすればありえない。 

金の事と次第では味方だったり、敵になったりする発想こそ論外だ。

更に言えば一企業が軍事力を持つなんて、考えるだけで頭が痛くなる。

 

「まぁVFーXー8の件もあれば当然の話か・・・」

 

ミリアはそう呟くと考えるのを一旦やめた。

 

地球の軍事をじっくり学んでたら頭が痛くなるだけである。

将来市長になるつもりだし、軍務に励む傍ら政治の事を学ぶ方が有意義。

 

今は早く新型機のテストが行える事を心待ちするのみだ!

 

【西暦2021年2月16日】

【クラビウスシティー・桐原邸】 

 

 

本業であるスーパー銭湯の業務が終わった頃に茂人は帰宅した。

娘達(志保・未代)と会話したり、妻であるデワントンとそれぞれの出来事を語り合った。

 

そして娘達が寝静まった時間帯を迎え二人で晩酌をした。

 

「ふぅ」

 

「茂人・・・・元気ないわね。」

 

「教え子・・・少しだけの期間教えていた教え子が戦死したからな。」

 

「戦死?茂人はそこまで・・・らしくないわね。」

 

「問題は俺じゃないんだよ、戦死した教え子が原因で・・・バッカニアがなぁ・・・」

 

「???」

 

教え子の戦死、それが原因でカゴメが酷く憔悴してしまった事を話した。

 

副官として数々の戦場に参戦し多くの部下の死を見てきたデワントンは冷静に話を聞いた。

茂人からいろいろ話を頷きながら話を聞いたデワントンは口を開いた。

 

「明日はスーパー銭湯を休業するわ。」

 

「なんで!?」

 

「一応、予備役だし基地に入れるわけで・・・」

 

「何をする気だ?」

 

「まぁ明日の朝分かるわよ。」

 

スーパー銭湯を休業し機種転換センターに訪れると言うのだ。

 

茂人はまさかの言葉に何をするのかとデワントンに問い詰めると明日の朝に分かると言う。

一体何をするのだろうか?そう考えながら翌朝を迎えた。

 

朝ごはんを共に済ませ、制服を着替え出勤する準備をしていた。

すると別の部屋にいたデワントンが意外な格好をして出てきた。

 

「おはよう茂人、どう懐かしい格好でしょ。」

 

「軍服に制帽か、本当に行くつもりなのか?」

 

「本当に行くつもりよ、志保と未代のご飯や朝の準備しておくから先に行ってね。」

 

「あぁ・・・」

 

なんとデワントンは新統合軍の制帽を被り制服を身に纏っていた。

 

今は正規軍人として一線を退いてはいたが予備役として軍籍が残っており、スーパー銭湯を茂人と共に営む傍ら定期的に軍人としての訓練を受けていた。

VFパイロットであった事もあり、定期的に軍事基地に入る権利も有している。

 

茂人が出勤するとデワントンは子供達に食事を出し、スクールバスに2人共乗せたのを見届けた後身だしなみを整え車に乗り機種転換センターに向け出発した。

 

【西暦2021年2月17日】

【クラビウス基地機種転換センター】

 

 

 

午前中の訓練や授業が終わった。

 

VF訓練の成績は上々であり、教官から今日も褒められた。

ただカゴメは今日も元気がなく、終始暗い表情を浮かべていた。

 

「結局、カゴメは暗いままだった。」

 

仲のいい親友が暗い表情のままな姿を見てラウラは終始不安だった。

折角のお昼時であり、美味いチキンカツ丼だったけど何も味がしない。

カゴメはすぐ食事を終え何処かに行っているし、孤独が辛い・・・

 

ミュレと楽しく食事する気持ちにならんので隅っこで淋しくチキンカツ丼を食べていた。

 

食べ終わる頃、何者かが背後に立った。

 

「ベルタリア3級空士長らしくないわね。」

 

「誰がらしくないって!私がこんなに悩んでい・・・・るのに・・・えっ!?」

 

「久しぶりね・・・最後に会ったのはボドル基幹艦隊決戦前だったかしら?」

 

何者かはデワントンであった。

 

ゼントラーディ軍時代のエースのミリアの活躍を支えた副官の一人。

最後に会ったのはボドル基幹艦隊決戦前、絵理と乱闘した際に叱られた時だ。

あれから10年経ったが何一つ変わらない容姿であった。

 

まさかのデワントン登場にラウラは開いた口が閉まらなかった。

 

「デワントン・・・・フィアロ2級空士長・・・・殿」

 

「懐かしい面ね、茂人から聞いているわ。」

 

「茂人・・・・桐原教官から?どんなかんけ・・・」

 

「聞いてない?まぁいいわ、夫婦だからよ。」

 

前はミリアの後ろばかり付いていく姿が目立っていたが、今は堂々とした雰囲気を身に纏っている。

更にデワントンが茂人と夫婦関係であり、ラウラは驚きのあまり開いた口が塞がらなかった。

 

驚きの出来事が連発したが、ラウラはデワントンに今起きている事を相談した。

ミリア隊であったが副官の立場にいた人物なので話せば分かってくれると・・・

 

思惑通り、デワントンは真摯に話を聞いてくれた。

 

「ラウラは戦争しか脳がないから友人を助けられないと?」

 

「私はゼントラーディ人だから、落ち込んでいるカゴメを・・・・」

 

「助けてあげられないって言うのね。」

 

「・・・・はい。」

 

地球人とゼントラーディ人と言う種族が違う上での価値観の違いや気持ちの違いにより、カゴメの気持ちが分からず上手く接する事が出来ず力になれない。

ラウラは落ち込んだ表情で今の自分の悩みを全て吐いた。

 

ゼントランが故に価値観が違うので下手に対応すればカゴメとの関係が壊れてしまう。

それが怖くて慰める事が出来ないと思っていた。

 

話を聞いていたデワントンはフッと笑うと思っている事を口に出した。

 

「だから何だって言うのよって話よ。」

 

「えっ・・・・」

 

「きちんと面と向き合って言わなければ分からない事だってあるのよ。」

 

「面ですか?私はゼントラーディ人だし、カゴメは・・・」

 

「それが何だって言うの?」

 

ラウラとカゴメの問題は所詮は大した事はない。

 

きちんと正面から向き合って話せば問題解決に繋がる切欠になる。

話さなければ何も始まらないし、何も進まない。

必ずしも成功するわけではないが、何もしないよりかはマシである。

 

「先の大戦で私が経験した事だけど、話さなければ始まらない事はあるわ。」

 

「2級空士長殿もそんな事が?」

 

「そうあれは5ターム前、地球オンタリオ自治区での話・・・」

 

デワントンは語りだした・・・・先の大戦・・・星間大戦の出来事を・・・

西暦2009年12月、北米オンタリオ自治区トロント付近のあの戦い・・

マクロスがカムジン率いる第7空間機甲師団に襲撃を受けた頃の話・・・

 

「ミリア空士長、本当にあのマイクローンの船に行かれるのですか?」
 

「ああ。」 


「ラプ・ラミズ司令は、かなり気を落とされていたようですが。」
 

「確かにな。カムジンの奴らが暴れても、止めようともしない。」
 

「よろしいのですか?」
 

「さあな、私には分からぬ。」

 

デワントンは任務でマイクローン化したミリアをマクロスに輸送する任務に従事した。

 

任務に従事する同中、ミリアは言えなかったラプラミズへの不満を述べていた。

マクロスとカムジンらが交戦する中で、警戒しながら進むデワントンはそれを聞いて驚いた。

 

普段のミリアならば絶対に話さない本音だった。

 

「ミリアがあんな事を・・・・あのミリアが・・・・」  

 

「ラプラミズ司令に対する忠義は本物だけれども、いつもカムジンと対峙し終えた時は何処か疲れてた表情をいっつも浮かべてたわ。」

 

「確かにカムジン相手ならば疲れますね。」

 

味方殺しのカムジンことカムジン・クラヴシェラはマクロスと対峙していた時は独断専行が多く、ラプラミズはミリアにモニター越しに抑えるように命じた。

見た目は強気のミリアだが、通信を終えるたびに疲れた表情を浮かべていた。

 

いつも後ろに控えていたデワントンと同僚のメールはいつも心配そうに見ていた。

 

「ミリア空士長、ご武運を・・・・」

 

「デワントン・・・・ウ・テマ」

 

「ハッ・・・・なんでありましょうか?」

 

「お前だから本音を話せた感謝する気が晴れた。感謝するぞ!帰還したらまた頼む。」

 

デワントンはミリアの入ったカプセルをマクロスに投下する直前、感謝の言葉を聞いた。

エースのミリアが故に表沙汰で言えなかった事を副官のデワントンに裏表なく話せた。

マイクローンスパイとしての任を果たす前に言えてミリアは何処か安堵している表情を浮かべた。

 

任を終えたデワントンは敬礼するとすぐさまマクロス艦から離れた。

 

「人はねぇ何か切欠がなければ言いたい事は言えない生き物なのよ。私の茂人もそうだけども・・・・」

 

「桐原教官とですか?」

 

「私と茂人はこの後の戦闘で戦って、次にあった時は共闘・・戦後は同じ軍の同僚そして今は夫婦。」

 

「はははそれは確かに・・・・私達ゼントラーディ人と地球人こうして共にいる事なんて昔の私達から見れば信じられない話ですね。」

 

人間は切欠が無ければ言いたいことも言えない生き物だとデワントンは語った。

話さなければ他人のままであるし、知り合いであっても気持ちが分からない。

 

そして今あるデワントンと茂人の夫婦関係も・・・

 

「こちらエリトロプスリーダー、マクロス付近で敵機を確認。敵主力ではありません。」

 

『ガンサイト2(エマ・グレンジャー)よりエリトロプスリーダーへ、敵機を迎撃せよ!増援にパープル小隊を向かわせます』

 

「エリトロプスリーダー了解!」

 

任を終えたデワントンは茂人率いるエリトロプス小隊と交戦激しい追撃を受けた。

激しい戦闘の結果は、マクロスの全方位バリアーの暴走で引き分けと言う結果で終わった。

 

その後、ボドル基幹艦隊決戦やその後の地上戦で共闘したことがきっかけで意気投合し、戦後同じ部隊で勤務後しばらくして結婚し予備役編入後は月面に移住した。

 

「私と茂人は戦場で出会った。無論、お互い名も無き敵兵士としか認識してなかった。」

 

「確かに戦場にいる敵の名は知らないし、知る必要もないですからね。」

 

「ボドル基幹艦隊では特徴があったから近づき共闘し地上戦で顔合わせ・・・ラウラって気になる相手っていない?」

 

「気になる相手なんて・・・・いませんよ・・・・今はVFパイロットになるのに精一杯ですし。」

 

顔合わせしたからこそ茂人とデワントンは結婚し共に過ごせている。

最初は気まずい雰囲気だったが、今ではいい思い出になっている。

 

説得力のある話にラウラは納得する中、デワントンは気になる人がいないかと聞かれた。

 

まさかの質問にラウラは顔を赤くすると今はいないと答えた。

本当は気になる相手である大樹がいるのだが、素直に認めたくなかった。

素直に認めてしまえば、正気を保てる自身がなかった。

 

「どんな事も勇気を持って接しなさい。必ず出来るから。」

 

「はい・・・・ありがとうございしました。」

 

「後・・・・ゼントラーディ軍じゃないから、2級空士長はやめなさい。次会った時は普通にデワントンって呼んでほしいな。」

 

「了解しました。」

 

「次会う時は軍務ではなくプライベートで会って食事したいかな。」

 

休憩が終わるとデワントンと別れた。

 

今後会う時は名前は呼び捨てで呼び、軍務のない日に会いたいなど言われた。

久しぶりにゼントラーディ軍時代の上官に会い今の悩みを告白したラウラの気持ちは清流が流れるが如く迷いが無くなり、カゴメときちんと向き合える覚悟が持てた。

 

食器を戻すと意気揚々と午後の訓練に従事した。

 

【西暦2021年2月17日】

【月面クラビウス基地第23宇宙軍港】

 

 

マックスとミリア率いる新統合軍第2独立戦隊ダンシング・スカルはゼネラル・ギャラクシーの天才技師アルガス・セルザーとゼネラル・ギャラクシーの私設軍隊アルタイルと共に月面クラビウス基地第23宇宙軍港から出航し惑星エデンに向かった。

 

軍港周辺にはフルバック中隊所属のVFー3000クルセイダーが警戒を行っており、進路上にはオーベルト級宇宙駆逐艦で編成された第23駆逐戦隊が展開していた。

 

「ワイルダー中尉、前方にアルゲニクス級を確認。所属はダンシング・スカル・・・」

 

「天才夫妻の船か・・・後方にいるのはなんだ?」

 

「船舶確認、所属はARMD級ホーランディア。2年前は軍籍にあった艦ですが、今はゼネラル・ギャラクシー所属艦だそうです。」

 

「一企業が空母・・・・おいおい何の冗談だ?なんで空母なんかあるんだ?」

 

空母シナノから発艦したジェフリー率いるダンパー小隊は艦隊航路周辺を飛んだ。

 

アルゲニクスの他、アルタイル所属の空母ホーランディアと駆逐艦3隻が航行しておりジェフリーは一企業が小規模艦隊を保有する事に驚きを隠せなかった。

 

ただでさえ新統合軍が先の大戦の影響で再建中だと言うのに・・・

 

「一企業がって中尉、S.M.Sだって言う星間運輸母体のPMCも運用してますよ。」

 

「けっ、軍も先の大戦で再建中なのによくもまぁ余力が有り余る。」

 

「政府も積極的に異星人を編入してたりしているそうですよ。惑星ゾラのゾラ人や惑星ヴォルドールのヴォルドール人とか、そこからの入隊者もいるわけで。」

 

「だけど見かけないな?」

 

「辺境だけですよ。」

 

新統合政府による人類播種計画により超長距離移民船団や短距離移民船団・調査船団により入植可能な惑星が次々に見つかり入植するのだが、原住民が住んでいる場合もある。

惑星ゾラにはエルフ族のような耳を持ち共生生物キャットスネーキーを首に巻くゾラ人や猫が人間に進化したかのようなヴォルドール人など地球人やゼントラーディ人と違った人種が見つかっている。

 

新統合政府に編入を望む先住民族国家や先住民族は次々に地球国籍を得たり、新統合軍に編入されたりしており望まず国交を結び軍事同盟を締結し兵器を購入したり顧問団を招いたりと近代改修しており銀河規模の国際社会を形成しつつあった。

 

一方で新統合政府に反発し敵意を持ったり、中立的立場を取る国は当然ある。

新統合政府に敵意のある国家や民族は反統合組織やブラックマーケットと結託し武器を購入したり、ライセンス生産をして軍備を整え新統合政府に抵抗しようと目論んでい。

 

「中尉殿、我々軍もしっかりしてないとあのPMCの連中にデカい顔されますよ。」

 

「バカを言えPMC連中にデカい顔されるようでは軍隊失格だよ。」

 

そんな事を言うジェフリーはS.M.Sに所属し民間企業が所有するマクロスクウォーター級級可変攻撃宇宙空母の艦長になるのだが、それは38年後の別の話である。

 

なおPMCも新統合政府に編入された先住民族の就職先の一つになり、多くの種族が地球一般市民権獲得の為日々奮闘している。

 

「クラウセア隊長、セルザー主任を乗せたアルゲニクス、以上なし。」

 

「新統合軍第23駆逐戦隊、左右に展開中。」

 

「うむ、天才夫妻が乗っているとは言え怠惰は許さぬ。」

 

「ダー」

 

私設軍隊アルタイル所属のARMD級ホーランディア艦内では護衛隊長であるジェネリル・ クラウセアがアルガスの乗るアルゲニクスを眺めていた。

天才技師であるアルガスを警護し親企業であるゼネラル・ギャラクシーの最新鋭機を乗るのがかつてのゼントラーディのエースであるミリアがテストパイロットを務める。

 

ゼントラーディ人であるジェネリルはミリアの名声を知っている。

それが面白くない。

夫であるマックスとミリアの名を知らない人は今ではいない。

今回のテストパイロットとして試験が成功し名声が上がったらますますつけあがる事になる。

 

カムジン率いる第7空間機甲師団にいた時どんだけ恥をかかされたか。

 

ーいつまでもいい気になるなよ・・・ ミリア・ファリーナ

 

機会あれば失脚の芽を見つけ経歴に傷をつけてやる。

ジェネリルは密かに邪悪な笑みを浮かべた。

 

【西暦2021年2月17日】

【クラビウス基地機種転換センター.射撃場】

 

カゴメは憂さを晴らすかのように射撃場で射撃訓練をしていた。

 

何度も的に向け拳銃を発砲するも上手く的に当たらない。

当たっても高得点と言えるような点数を稼げていない。

一通りの練習を終えるとため息を吐いた。

 

「やっぱり集中出来てないわ。教え子達に笑われて・・・」

 

「カゴメ・・・・・」

 

「ラウラ」

 

風呂に入り身だしなみを整えたラウラは射撃場を訪れた。

 

カゴメは案の定、上手くできてなかった。

普段なら優れた射撃のセンスを見せたりしているのに、今は凡人レベル。

何処となく落ち着いた雰囲気はなく、何処か悲しげであった。

 

「珍しいわね・・・こんな時間に・・・貴女も練習?」

 

「今日1日中元気がないように見えたから何かあったのか?」

 

ラウラは臆することもなくカゴメに何があったのかを聞いた。

 

反応は驚いた素振りを見せるカゴメだったが何処か慌てていた。

弱気でいる自分を見せたくないのだろうと・・・・

以前の自分と同じだ、プライドがあるが故に素直になれないと。

 

どうやら否定する構えを取ろうとしているが、ラウラは怯まずに向き合おうとした。

 

「いいえ何でも・・・・」

 

「嘘だね。隠し事なんてらしくないぞ。カゴメが良ければ話してくれないか?」

 

ラウラは咄嗟に否定しようとするカゴメの逃げ道を防いだ。

真面目な性格のカゴメの事だ言葉で否定しても態度で見れば隠し通す事なんて出来ない。

 

観念したのかカゴメは言えなかった事を洗いざらい吐いた。

 

「その教え子がこの間の戦闘でね……知らせが来たのよ…まぁよくある話よ……」

 

カゴメはこの前の戦闘で教え子ライナスが戦死した事を告白した。

 

ーよくある事と口では言えても割り切れていないんだな・・・

ーカゴメはそう言う奴だ。

 

告白を聞いたラウラはよくある事だと理解しているとは言えカゴメは受け入れていないと悟った。

受け入れようとするが、無意識に拒絶しているように見える。

 

「親しい人間がいざ戦場で命を散らすってね、軍人とは言えいつまでも心の傷として残るのよ。」

 

「でも軍人だから当たり前では・・・軍人だからこそ、死ぬ覚悟だって・・・」

 

「そう簡単に受け入れられる程人間は強くないのよ。ラウラ、貴女だって死ねば悲しむし死んでしまったら悲しむ人はいるでしょ。」

 

「それは・・・・そうだけど。」

 

軍人だから死ぬ覚悟はあるし、戦友の死を受け入れなければならない。

ゼントラーディ軍人として戦いで生きてきたラウラはそれが常識であった。

 

カゴメの反論は自身の常識が変と思うぐらい異質だった。

 

人の死を簡単に受け入れられるほど人間は強くはない。

最初は唸るだけだったが、よく考えると確かにそうかもしれない。

戦友のメフィリアもアンジェミラは生きているし親しき人を失った経験がない。

もし2人のどちらかが死んでしまったら、受け入れられるのかとラウラは疑問に思った。

 

「ねぇラウラ、これをあげるわ。」

 

「ヘアピン?こんな可愛らしいの私に似合うのか?」

 

「似合うわ。」

 

「本当に似合うのか?地球人の女が付ける・・・装飾品なんて・・・」

 

深く考えているラウラにカゴメは突然ヘアピンをあげると言った。

 

ヘアピンは紫色をしており、見るからに可愛らしい印象があった。

何故くれるのかと思ったけど何処か胸が熱くなった。

正直な話、地球人の女性がつける装飾品には興味があったからだ。

 

とは言え戦闘種族である自分にヘアピンを付けていいのかと抵抗があった。

地球人の女性とは姿形似ていても違う存在であるから。

 

「あっ私が付けてあげるわ!」

 

「いやいいよ別に・・・・」

 

「まぁまぁ遠慮しない!よいしょっと」

 

戸惑うラウラにカゴメは半ば強引にヘアピンを付けた。

 

左前髪に強引に付けられたヘアピンはラウラの容姿を一変した。

ゼントラーディ人が故にクローンとしての容姿のラウラに個性が生まれたのだった。

 

とは言え慣れてないラウラは何処か不安に感じていた。

 

「ど・・・どうだ?やっぱり私には・・・・」

 

「やっぱりよく似合っているわ。」

 

「そ・・・そうか・・・」

 

ラウラはカゴメからヘアピン似合っていると言われ照れて顔を赤くした。

 

鏡を見せてもらうと本当に自分かと見間違える程、可愛らしいと思えた。

一手間加えるだけで無個性だった自分の顔が個性が出た。

自分に似合わないと言いつつも、いざつければ誰も文句言えない程似合っている。

 

「でもどうしてこれを?」

 

「う〜んなんとなく・・・・ね。」

 

「なんとなく・・・か?」

 

ヘアピンをくれた理由は分からなかった。

カゴメの様子から見るに特に深い意味は無さそうだ。

 

ー少しは元気が出たみたいだな。

 

とは言えカゴメは元気を取り戻しているので詮索しない事にした。

 

「大事にするよ・・ありがとう」

 

「どういたしまして。」

 

ラウラはカゴメからもらったヘアピンを一生賭けてでも大事にしようと思った。

 

自分がヘアピンをつける事でカゴメが元気になるならばそれに応え大切にしなければならない。

ヘアピンをつけるだけじゃない、ヘアピン同様自分自身の命を大切にせねば・・・

命も失えばヘアピンも無くなってしまうし・・・

 

「もう遅いし戻るよ。おやすみ。」

 

「えぇおやすみなさい。」

 

就寝予定時間であり、早く寝なければならない。

ラウラはおやすみと一言言って自分の官舎の方へ帰って行った。

 

射撃場からエレベーターで降りて、バイクに乗って数分駆けて自宅官舎に戻るのでラウラがこんな時間まで心配して自分を訪れた事にカゴメは感激した。

いつまでもラウラに心配させるわけにはいかない、総決心したカゴメは笑顔を絶やさなかった。

 

一人残ったカゴメはガラス越しの宇宙を見て一人呟いた。

 

「あのヘアピンは貴女を失わないためのお守りだなんて・・・私も随分臆病になったものね。」

 

カゴメがラウラにヘアピンを渡したのは死んでほしくないからと言う想いからだった。

 

強さを求めるあまり戦場に執着しライナスのように死んで欲しくはなかった。

ヘアピンをつけたラウラは何処か楽しそうに部屋に戻っていったので、戦場に執着し強さを求めるあまり最終的に死に至る心配は少しだけ消えた。

 

戦場で軍人が死んでしまう可能性があるのは当たり前・・・・

されど実際に死んでいなくなってしまうのは素直に受け入れられないし認めたくもない。

ただ悲しみだけしか残らない。

 

だからカゴメはラウラに愛用のヘアピンの一つを託したのだ。

 

【西暦2020年2月20日】

【月面クラビウスシティー】

 

 

休暇日になった。

ラウラは久しぶりに同じく休暇日であるシュリを呼び出した。

 

空母シナノの任務前の休暇日ともあってかシュリは面倒くさいと言う表情を浮かべていたがいざ待ち合わせの場所に向かうと現地で待ってたラウラの姿を見て驚いた。

 

「以外ね・・・・ヘアピンなんて珍しい・・・」

 

「大事な友達からもらったんだよ。なんか付けていると前向きになってさ・・・」

 

「前向きねぇ。」  

 

ゼントラーディ軍に帰属意識が強いラウラがヘアピンをつけるなんて以外・・・

ラウラの姿を一目見てシュリが真っ先に思った感想だ。

 

とは言え前より前向きな性格になり嬉しそうな表情を浮かべるラウラを見て戦友として嬉しいと思っており、何よりゼントラーディ人以外の親友を得られた事が感動的だった。

 

ボドル基幹艦隊決戦で深い傷を負ってたから振り切れそうで安心した。

 

「シュリに地球の流儀を教えてもらいたいな。」

 

「まさか・・・・私をその為に呼んだのかな?」

 

「そうに決まってるんじゃない。シュリの方がいろいろ詳しいし。」

 

ヘアピンをもらってからのラウラは前向きになったが図々しくなった。

 

ラウラがシュリを呼び出したのはヘアピンの自慢と地球の流儀を教えてもらう為。

その為に出港前最後の休暇であるシュリを呼び出した。

最後の休暇だからゆっくり休ませてもらいたかったが、ラウラの元気な姿を見て諦めた。

 

「久しぶりに軍を離れた私の戦友達(チームメイト)を呼んで慰労会でもしますか。」

 

「楽しそう、いろいろと私が成長した姿見せれるよ。」  

 

「きちんとVFパイロットになってから言ってねそれ。」

  

シュリの提案で臨時の慰労会を開く事になった。

参加する面々はアポロシティーや惑星エデンから引っ越してきたシュリのチェリア・ユリンやナザリア・ファロと言ったチームメイト達と馴染みの深い戦友達だ。

 

ボドル基幹艦隊決戦以来再会する親しい戦友らと再会する事となったラウラは自身が成長した姿をチェリアやナザリア達に披露する気満々であるが、シュリは一言釘を差した。

 

カゴメから貰ったヘアピンはただのヘアピンではなかった。

ラウラの人生にとってかけがえの無い宝物になった。

 

ヘアピンをもらって以降、ラウラの強さを求める姿勢にブレーキがかかった。

むしろ前みたいに仲間との連携を強めたり、状況判断が前よりも良くなった。 

その結果、教官との模擬戦において自身の実力が自然に向上した。

 

地球人とゼントラーディ人の女・・・・

種族が違うが、たった一つのヘアピンによって強い信頼関係が構築できた。

 

信頼関係だけではないラウラの人生を変えたキーアイテムにもなった。

 

更に言えば少しずつであるがボドル基幹艦隊決戦の悪夢も見る頻度も減り、トラウマも徐々に減ってきておりラウラはカゴメやミュレなどと楽しく過ごせるようになった。

一方のカゴメも、活き活きとする姿を見てライナスの死から立ち直る事が出来た。

 

だが

 

そんなラウラ達に次の厳しい局面が徐々に近づきつつあった。

 

予告

新兵器開発が極秘裏に進められる新統合軍クラビウス方面軍。その最中、ラウラは気になる男性兵吉野大樹と再会を果たす。軍人としての気品を見せる大樹にラウラは己自身と見比べてしまう。

 

次回 マクロス外伝蒼い髪のメルトラン

 

リユニオン

 

静かに動き出せ!サンダーボルト!

 

前回

 

 

 

次回

 

 

【生年月日】

1997年12月4日 

【種族】

ゼントラーディ人 

【所属】

ゼントラーディ軍

・第118基幹艦隊ラプラミズ基幹艦隊エレニア機動戦隊

カムジン反乱勢力

新統合軍

・第3独立戦隊シーアンタレス

【階級】 

少尉

【性別】

女

【髪色】

黄緑色

【イメージ声優】 

小林沙苗

【キャラクターデザイン】

いわしぃさん

【解説】

新統合軍第3独立戦隊シーアンタレスに所属する新統合軍人。

 

ゼントラーディ軍時代はエレニア・シュレイヌ率いる機動戦隊に所属し、ボドルザー基幹艦隊決戦後は戦友とはぐれカムジン一派に参加し反乱に加わった。

 

反乱終結後は投降し収監されるもゼントラーディ軍時代に仲の良かったモーア・カリダムこと星村絵理中尉のスカウトを受けて新統合軍に加わりシーアンタレス隊に所属した。

(作画ロボさん

 

【所属】

新統合軍

【開発】 

ストンウェル・ベルコム

【ロールアウト】  

2011年

【運用開始】

2013年

【全長】

15.5m

【全幅】 

16.1m

【エンジン】

新中州/P&W/ロイスFFー2450A熱核タービンエンジン×2

【空虚重量】

11950g

【速度】

M3.1

【武装】

大口径レーザー砲×1

マウラーROV-22×2

ハワード GU-11 ガトリング・ガンポッド

後退翼下兵装ステーション×6 

【解説】

新統合軍が開発した可変戦闘機。

 

開発は地球統合軍時代の2008年であり、VFー1を驚愕する機体としてVFー1000やVFー2000と共に開発されたと言う経緯がある。

 

第1次星間大戦におけるボドル基幹艦隊で打撃を被るも研究施設や開発資料とスタッフが月面アポロ基地やクラビウス基地などにおり、早期的に復旧し開発が再開された。

試作1号機がL5衛星基地で完成し地球に運ばれ初飛行を行い、試作2号機が完成すると宇宙空間での飛行試験が行われ新統合軍総司令部は9機の生産を決定した。

 

主力可変戦闘機はVFー4サイレーン(後のライトニングⅢ)に決定しVFー3000クルセイダーは調査船団や特殊部隊などの一部の部隊に配備される事になった。

 

なおVFーXー3やVFーX3メデューサがあったが、関連性は低く別機種である。

【開発】

OTEC機関→ゼネラル・ギャラクシー

ノースロム・グラマン社

【製造】

ゼネラル・ギャラクシー

ノースロム・グラマン社

【武装】

対空対地機銃ターレット×2

対艦重ミサイルランチャー×2

空対空高回転3砲身レーザーパルスガン×2

アベンジャー対艦砲×1

【開発】

2014年3月7日

【運用】

2018年8月4日

【乗員】

2名

【解説】

OTEC機関やノースロム・グラマン社が開発していたVAー4ロズウェルを大型化し対艦戦or対要塞戦に特化したVB(ヴァリアブル・ボマー)として設計変更し開発された。

 

開発の途中にOTEC機関は他社と合併しゼネラル・ギャラクシーとなり、ゼントラーディ系の技術を積極的に導入しマニピュレーターが変更されパルスレーザーが追加された。

 

2018年にロールアウトし、各地の部隊に配備された。

コストが高く大量生産されず、1機動艦隊だけでも僅か5機しか配備されなかった。

 

VAー4ロズウェル、実機は製作されたが採用されず。

 

 

◆デザイン ロボノヒト

マクロス二次創作漫画のメカ絵担当のロボさんに依頼中の

VAー4ロズウェル

 

ロズウェルの名の由来はロズウェル事件からで、機体モチーフは攻撃機サンダーボルト

VAー3インベーダーに代わる可変攻撃機として開発された設定です。

 

開発が難航し1年以上の月日が流れましたが、ようやく進展し攻撃機というよりかは爆撃機と言ってもいい大型機になりました。

 

VAからVBー1の型番に変えてもいいほどに。

 

 

 

 

 

前章

 

プロローグ

 

 

 

第1話

 

第2話

 

 

第3話

 

【西暦2021年2月14日】 

【月面クラビウス基地機種転換センター】

 

 

ラウラが機種転換センターに入って9日目・・・・

可変戦闘機の訓練もしつつ、車やバイクの資格を取ろうと奮闘していた。

やる気に満ち溢れながら教室に入ると、女性兵達がいたる所で騒がしかった。

 

皆辛そうな表情ではなく、何か興奮したり慌てたりと統一されてない。

偶然近くにカゴメがいたので聞いてみる事にした。

 

「カゴメ、この騒ぎは何?特に女性兵達がそわそわしているけど?」

 

「今日はバレンタインデーだからだね。」

 

「バレンタインデー?何それ?」

 

聞いたことのない単語・・・

だがまだまだ地球文化に疎いラウラでも分かるのは女性兵が騒ぐ事の出来事と言う事。

女性兵だけではない、男性達も一部が何やらそわそわしている。

 

それほど大きなイベントなのだろう・・・・

そう考えているとカゴメがバレンタインデーがどんな日なのか言った。

 

「女性が好きな男性にチョコレートを贈る日よ。」

 

「チョコってあの甘いお菓子と言う・・・・」

 

「そうよ、まぁ日本式文化だけどね。」

 

バレンタインデーは女性が好きな男にチョコレートあげる日である。

だがそれは日本式文化であり、実際は家族や親友と祝う日であり全然違う。

 

熱心なキリスト教徒からは否定的であるが、カゴメのような穏健層からは好意的であり日本同様に好きな男性にチョコレートあげたりしている。

 

無論、キリスト教往来の伝統だったりと旧各国特有のものだっりと多種多様だ。

 

カゴメは勢いづいてバレンタインデーの起源について語りだした。

 

「元々はローマ帝国時代に戦争で愛する人の事を思って士気が下がると言う理由で婚姻禁止になり、キリスト教の司祭だったウァレンティヌスがこっそり婚姻・・・」

 

「話を聞いていると処刑された日なんだろ・・・」

 

「何故分かったの?」

 

「流れ的に殺されたパターンになりそうだから。」

 

恋愛的イベントであるバレンタインデーの起源の説明をカゴメから聞いたラウラだったが、最後まで聞かないで本来はどんな日なのかを言い当てた。

正解は婚姻禁止の中に兵士達の婚姻を執り行います、禁止命令を破り処刑された日だ。

 

何故ラウラが最後まで聞かないで正解出来たのかはパターンを読み取ったからだ。

普通に考えて無断関連はどれも処刑されるがオチだとラウラは思っていた。

 

「ラウラは想い人いるのかしら?」

 

「私はそんなのにはあんまり・・・」

 

「吉野大尉、あの時のラウラ・・・いつもと・・・・」

 

「そ・・・そんな関係じゃな・・・・いから・・」

 

バレンタインに関する会話が過熱するとラウラと大樹の関係性に触れた。

 

実はラウラが大樹と二人っきりで会話し、女の顔をしてたと教えられた。

教えてきたのはラウラの元戦友であるシュリであり、その敵の顔は小悪魔だった。

大樹の名を出した途端のラウラの反応を見るに、内容が事実だとカゴメは確信し微笑んだ。

 

まだ文化慣れしてないラウラとは言え、恋に関しては初心・・・・

 

意地悪な意図のある質問にラウラはまた不思議な感覚に襲われた。

 

「ちなみに昨日は女同士の友情を祝うギャレンタインデーだったらしいわよ。」

 

「何それ?地球人はそんな事までやっているのか?」

 

「一応・・・・・・ね。まっ前日だったけど。」

 

初心であるラウラを十分辛かったカゴメは別の話題で話を逸らした。

下手にいじりすぎると可哀想と言う理由だ。

 

狙い通りラウラはギャレンタインデーに乗っかり大樹の事を忘れた。

 

いろいろと不思議そな表情をしながら考えていると目の前にチョコレートがあった。

しかも丁寧な箱に入っており誰かにあげる予定なのだろう・・・・・

 

「カゴメ、それはなんだ?誰かに贈るのか?」

 

「これね一応・・・・ARMDー06宛に・・・」

 

「確かコンステレーションと言う名の・・・・」

 

カゴメはARMDー06コンステレーションにいる誰かにチョコをあげるのだという。

 

コンステレーションは初期ARMD級であり、大戦を生き残った武勲艦だ。

現在はクラビウス基地所在の予備艦隊の所属であり、航路の哨戒任務に就いている。

 

最前線で戦っている兵士の中にカゴメの想い人がいるのだろうか?

 

更に深く質問しようとしたがカゴメに申し訳ないと思い自重した。

 

【同時刻】

【クラビウス基地外縁部ブランキヌス基地上空.空母アルタミラ】

 

 

クラビウス基地外縁部ブランキヌス基地上空にて空母アルタミラは展開していた。

 

僚艦にオーベルト級宇宙駆逐艦3隻(オリンピア.グリッドレイ.タチバナ)が付けられ、VFー5000スターミラージュで編成された3個中隊が配備された。

アンサーズ中隊を含めると4個中隊計64機、早期警戒機8機の大編隊.連絡機のVTー1.10機、オーベルト級宇宙駆逐艦に搭載された直掩隊の空間デストロイド×9.VFー1D×6と大部隊だ。

 

とは言えVTー1.10機は誰も乗らない予備機であり、隊員の4割はゼントラーディ人だ。

更にAIを活用した艦内の省人化が進み整備する人員を含め、かつてのミニッツ級よりも圧倒的に少ない550人程度しかいない。(乗員300名.航空団250名)

 

とは言え他のARMD級空母はこんなに搭載もしてないし、人員もいない。

かつて大樹が乗艦してたARMD級空母シナノは1個中隊+空間デストロイド1個中隊のみだ。

 

人員不足の中、これだけの装備や人数を集めた白川提督に大樹は畏怖の念を抱いた。

 

大樹はと言うと中隊長代理と言う立場でアンサーズ中隊を纏めていた。

本来の指揮官は茂人だが教官職をやっている為、副隊長たる大樹が代行している。

 

「吉野大尉お疲れ様です。」

 

「ニクソン中尉もな。」

 

この頃になると小隊長は全員着任していた。

 

各小隊の隊長は本多義輝中尉.エミリー・ニクソン中尉.ガブラ・ノーボレス中尉であり、どれも技量が優れ部下に慕われているエースパイロット達だ。

白川提督が各方面に問い合わせて参集した精鋭であり、技量もかなり高い。

 

その一方で・・・・・

 

「中尉、胸の谷間どうにかしろ・・・」

 

「嫌です。」

 

「吉野大尉諦めましょう、下手したらセクハラですよ。」

 

「ぐぅ・・・」

 

曲者揃いであり率いていくには難があるとつくづく実感させられていた。

 

例を挙げるならばエミリーは制服の上着の胸元を空けており、胸の谷間を露わにしていた。

会う度に目のやり場に困るし、注意しても拒否してくる始末。

下手にやれば他の女性兵からセクハラだと言われる可能性が高い。

 

「全くうちの部隊は変人揃いか・・・・」

 

「隊長である桐原予備役少佐もかなり変人だとか?」

 

「否定しない・・・・」

 

アンサーズ中隊は揃いも揃って変人揃いであった。

 

国政与党所属.市議の次女イ・エラ少尉、文化慣れ過ぎるゼントラーディ人.ロザ・べサーズ准尉、やる気のない態度が目立つアリサ・バレンタイン准尉癖が強すぎる。

男性陣も三国志の英傑である曹操の末裔である曹涼.少尉や食いしん坊なカレント・バーガー准尉など女性陣に負けずも劣らずクセが強すぎるので頭が痛い。

 

「あいつは今頃どうしてるかな・・・・」

 

「あいつとは?」

 

「いやなんでもない。」

 

ふとラウラの顔を思い出す・・・・・

 

無断出撃し奮戦した蒼い髪が印象的なゼントラーディ人、以外にも素直で良い娘だった。

癖のあるアンサーズ中隊の中ではまともに思えるような若い女性兵だ!

 

いやラウラはラウラで癖はある・・・・

 

機体を持ち出して無断出撃してるだけでもまともではない。

頭のネジは何本かぶっ飛んでいるとんでもない生物兵器として生まれた異星人の女だ!

 

「ラウラ・ベルタリア・・・・か・・・近いうちに会いそうな気がするな・・・」

 

ゼントラーディ人の・・・ラウラ・・・

アンサーズ中隊の隊員候補として最有力の元海兵隊員・・・・

近い将来、入隊前に一度どこかいや何回か会うかもしれない。

そんな気がしてしょうがない。

 

大樹は更衣室に向かいパイロットスーツに着替え出撃に備えた。

 

【西暦2021年2月14日】

【月面クラビウス基地とアポロ基地間、輸送路】

 

 

カゴメの想い人ライナス・フィルダー少尉はアームド級宇宙空母コンステレーションに配属になり、クラビウス基地とアポロ基地との間の輸送路警戒任務に従事していた。

配属先のフライング・フィッシュ中隊はVFー4ライトニングで編成されている精鋭で知られており、はぐれゼントラーディとの戦闘でかなりの実績を残していた。

 

「フィルダー少尉、部隊に慣れたか?」

 

「はい、問題なく勤務できそうです。」

 

「そいつは良かった。」

 

ライナスは上手く馴染んでおり問題なく勤務している。

 

元々、SFー3AランサーⅡに乗っていた戦闘機乗りであり新人ではない。

新人ではなく現役戦闘機乗りであった為、慣れない現場でも難なく出来ている。

 

だが先任士官は苦い顔をしていた。

 

「似たような名前の奴いたな。」 

 

「ライナス・フィランダー大尉、星間大戦でブルズアイ作戦に参加して戦死した。」

 

「似たような名前だからこそ、心配しているんだな。」

 

ライナスに似たライナス・フィランダーと言うVFパイロットが先の大戦にいた。

 

しかし

 

ゼントラーディ軍艦隊に対する特殊任務作戦.ブルズアイ作戦で戦死していた。

激しい戦闘の最中奮戦するも、集中砲火を受け戦場の塵と化した。

 

なおブルズアイ作戦で指揮官を務めていたのはラウラの前で講演していた英史だ。

英史はスカル大隊の副隊長とも言うべき地位に就いており、特殊任務作戦の指揮官として自身を含む4機でゼントラーディ軍艦隊に打撃を与えていた。

 

ライナスは同名で似たような姓の人物に似ている為、戦死してしまわないか心配だ。

 

「大丈夫ですってそんな事はありませんから!」

 

『ミレニアムゴブリンズ中隊とフライング・フィッシュ中隊は持ち場を交代せよ!』

 

「油断するなよ!油断した時、人は簡単に死ぬからな。」

 

「了解です。」

 

迷信だと思ってかライナスはそんな事はないと笑った。

 

必ず生きて帰り機種転換センターで短い間だが世話になったカゴメと世間話がしたい。

いつか告白しあわよくば恋人同士になれたらなと想像した。

 

ライナスはVFー4ライトニングⅢに乗り込み、出撃の時を待った。

そしてコックピットにカゴメがソロアイドルやってた頃の写真を挟んだ。

 

「All system is green. Good luck !」

 

「Thank You」

 

アームド級コンステレーションからVFー4ライトニングⅢが発艦していった。

入れ替わるかのようにミレニアムゴブリンズ中隊が帰還し、前方で待機していた。

 

ミレニアムゴブリンズ中隊は航路防衛の任を終えており、直掩として残ってた機体もどんどんコンステレーションから伸びるクレーンに積まれるかのように収容された。

 

「カゴメさん、また帰ってきます!任務をやり遂げ一人前になれた姿見せます!」
 

ライナスはそう意気込むと操縦桿を強く握り月の宇宙を駆けていった。

 

出撃したフライング・フィッシュ中隊各隊は予定パトロールコースを回ったり、コンステレーション周辺の警戒任務に就くなど様々な活動を開始した。

パトロール任務に就く事になったライナスが所属する小隊は4機編隊で所定コースを回ったが哨戒任務に就いていたVEー1から敵部隊発見との報告を受けた。

 

【西暦2021年2月14日】

【クラビウス基地.演習エリア】

 

 

ラウラは他の候補生達と共に初めてVTー1に乗り込み実機訓練に臨んだ。

 

先導する教官の乗るVFー1Dを追いかけ所定のコースを回ると言うもの・・・・

VFに乗るのは先の遭遇戦で無断使用して以来であるが、不思議と操縦感覚は忘れていなかった。

 

いや忘れてはならない、忘れてはならないこれから自分の武器になる力だから・・・

 

「ひょっこ以下の卵野郎どもついてこい!VF乗りの実力教えてやる!」

 

教官は日本文化好きのゼントラーディ人であるルルドルドだ!

垂直尾翼に大日本帝国陸軍の飛燕の部隊の一つのマークと必勝が描かれており、カラーリングはその部隊と同じく迷彩色となっている程こだわっている。

 

「ん?だらしねぇな!海兵隊や他機種で実戦は積んでたか知らねぇがチェリー(童貞野郎)しかいねぇのか!」

 

VFに乗り慣れているルルドルドの実力は高い!候補生達に差をつけ先行した。

中々追いつけない候補生達にチェリーと呼んで叱責した。

 

カチンと来たラウラは操縦桿を握りしめ何とか追いつこうと奮起し、差を縮めた。

 

「おい!貴様はまだマシな方らしいな、貴様は名は?」

 

「第29海兵隊出身ラウラ・ベルタリア!」

 

「キヨラ機動戦隊のラウラ・ベルタリアか・・・・・とは言えまだ未熟の半端者だな。」

 

「なにぃ今の言葉撤回してください!」

 

「撤回して欲しければ実力で示すんだな!まだマシな方だが・・・チェリー(童貞野郎)に過ぎん。」

 

必死に追いついたラウラだが、待っていたのは更なる叱責であった。

 

ルルドルドはアドクラス艦隊出身でありSDFー1マクロスと何度も交戦しており対VF戦を学び大戦後にVFに乗り数多くの実戦を経験していた。

一方のラウラはキヨラ機動戦隊の隊員であり、マクロスと交戦せず対VF戦術を学んでないどころか戦後10年間ははぐれゼントランとしか戦ったことが無い。

 

いくらエースとは言え対VF戦術を持ってなければチェリーでしかない。

 

「言われなくなってやってやる!」

 

言われてるカチンッときたのかラウラは奮起した。

 

海兵隊時代エースと言われる程の実力を持っており、数々の激戦を生き抜いてきた。

必死に座学だって学んでいるし、可変戦闘機技術も熱心に研鑽に励んでいる。 

言われっぱなしで黙っているほど賢くはない。

 

必死に食らいついているとカゴメから通信が入った。

 

『ベルタリア曹長、挑発に乗らないように・・・』

 

「分かっている・・・・でも言われっぱなしでやるほど・・・」

 

『それで敵の罠に嵌って死んでしまってはどうするのよ?』

 

挑発に乗るラウラを見兼ねたカゴメは諭した。

 

戦場で挑発に乗ると言うのは敵の罠に嵌まりやすく危険だ。

明らかに見え透いた挑発に簡単に乗るラウラは罠に嵌って危機に陥らないか心配になる。

諭したが明らかにラウラは感情的になりルルドルドの挑発にどんどん乗った。

 

「だからチェリーなんだ!」

 

ルルドルドがそう言うと突然反転し攻撃を開始した。

 

銃弾は実弾ではなく演習で用いられるペイント弾を使っている。

突然の演習に伴う攻撃にラウラは間一髪回避するも、他の候補生達の声が響く・・・

攻撃を開始したのはルルドルドだけではない、茂人などの教官らも候補生に牙を剥いた。

 

「ヒョッコども、演習が突然出てきて驚いたか?戦場はそう簡単なもんじゃねぇ、いつ戦闘になるか分からねぇもんだ!特にベルタリア曹長、お前は簡単に嵌まりやすくいいカモだ!」

 

「こいつ一般のゼントラー・・・・」

 

「馬鹿野郎!いつまでゼントラーディ軍をやっているつもりだ!チェリーガール!」

 

ラウラは今までクァドラン・ローに乗っていたから分からなかったが、同じ土俵となった結果、空戦ポッド乗りのゼントランのエースの本当の実力を思い知る事になった。

 

想像以上に強く回避するのが精一杯であった。

 

ゼントラーディ軍時代はラウラのようなクァドラン乗りの戦闘能力が高く、ルルドルドのような空戦兵が戦闘能力が低いのが常識であった。

現実はそう見えたのはクァドラン系と空戦ポッドの性能差が原因であり、実際は能力値的に個人差はあれどそこまで大きな差はなく人によって立場が逆転していた。

 

一度、レミアと戦闘を経験し奮戦したが遊ばれていた。

つくづく情けない。

 

「チェリーガールと言われたくなければ奇襲に備える心構えを身につけるんだな!」

 

呆気なくラウラはペイント弾の餌食になった。

 

地球人の常識を身に着けたルルドルドは強く、まだまだゼントラーディ人な自身は弱い。

だから強くなりたい、どんな相手だろうと強くなって嫌な過去から脱却したい。

 

同胞を殺したラウラは二度とゼントラーディ軍人には戻れない。

だったらひたすら強くなって軍人として極めていきたい。

今のラウラは我武者羅に強さだけを求めていった。

 

「ラウラ・・・極めるのはいいけど、それじゃ・・・」

 

我武者羅に強さを求め続けるラウラにカゴメは不安を覚えた。

 

ゼントラーディ人は戦争の為に作られた生物兵器であり人間ではない。

だが地球人との接触で戦争以外の生き方を見いだして人間になろうとしていた。

 

そうした中でラウラは今だに力を求め続けている。

まるで更に戦争の為に生きていくしかできない生物兵器としての生き方に・・・

それではいつかは戦場で命を落としてしまう・・・・

 

カゴメは心の中で変わってくれる事を祈るしか出来なかった。

 

【同時刻】

【月面クラビウス基地とアポロ基地間、輸送路・戦闘宙域】

 

 

ライナスが所属するメヒカリ小隊はVEー1からの通報を受けとある宙域に到達した。 

 

はぐれゼントラーディの一部隊を発見、大至急確認に向かわれたしと・・・

メヒカリ小隊は指定された宙域に到達、岩陰に隠れて様子を伺った。

 

「敵はクァドラン・ローか・・・・母艦はピケット艦クラス複数隻・・・」

 

指定された場所にはゼントラーディ軍ピケット艦が複数隻展開していた。

周辺にはクァドラン・ローが展開しており、直衛艦隊の残余がはぐれ化した部隊だ。

メヒカリ小隊の隊長は奇襲を仕掛け、本隊到着するまで戦力を釘付けにしようと考えた。

 

幸いにも大型対艦ミサイルがあるのでピケット艦撃沈もしくは航行不能に出来る。

 

「連中もよくこれほどの戦力を・・・・フィルダー少尉、無茶はするなよ。」

 

「了解です。」

 

「他の小隊も直に来る。無茶はするなよ。」

 

可変戦闘機パイロットとしての初陣であるライナスは興奮していた。

 

旧型の宇宙戦闘機から時代の主役になりつつある可変戦闘機パイロットとして初めて自分の実力を発揮する好機であり、名をあげれば一躍有名になる。

クァドラン・ローだろうとなんだろうとやってやる。
 

士気が高いライナスらメヒカリ小隊ははぐれゼントラーディ軍部隊に向け突貫した。

 

「隊長、友軍艦隊に応援を頼んではどうでしょうか?」 

 

「空母アルタミラか・・・ブランキヌス基地から進出してきた艦か・・」

 

「母艦コンステレーションと交代予定の友軍艦です。」

 

「いやそこまでではない。今は我々だけでやるぞ。」

 

隊員の1人がアルタミラを旗艦とする艦隊に応援を出すべきだと進言した。

 

アルタミラは現宙域からほど近くすぐ駆けつける友軍部隊の中で一番だ。

クァドラン・ローはリガードやヌージャデル・ガーよりも遥かに強力であり、メヒカリ小隊単体で対応するには犠牲が出る可能性が高くアルタミラの応援が必要であると隊員は考えていた。

 

隊長は実力に自信を持っており部下からの進言を一蹴した。

 

メヒカリ小隊ははぐれゼントラーディ軍を強襲した。

強襲によりはぐれゼントラーディ軍艦隊に打撃を与えるのに成功。

クァドラン・ローとクァドラン・ノナ何機か撃墜した。

 

見る限りメヒカリ小隊が優勢に見えるのだが、現実はかなり厳しいものであった。

 

突如、リガード部隊が現れ地上からメヒカリ小隊を狙撃した。

この狙撃によりメヒカリ小隊の隊員の1機が撃墜され、戦況は一気に不利に傾く。

 

【20分後】

【月面ブランキヌス基地南西・宙域】

 

月面ブランキヌス基地から離れた空母アルタミラはクラビウス基地とアポロ基地の輸送路に近づき、空母コンステレーションと任務を交代しようとしていた。

 

大樹は賢二郎と共にVFー1Pの前に立ちガブラ・ノーボレス中尉率いるラーチャー小隊の隊員達にパトロール任務の詳細について説明をしていた。

 

『吉野大尉、大至急ラーチャー小隊を率いて出撃してください。』

 

「劉少尉、どうしてだ?」

 

『友軍可変戦闘機部隊がエリア108にてクァドラン・ロー部隊と交戦中!現場に近い我々は援護に入ります!』

 

説明している最中にブリッジオペレーターの劉夢華(リュウ・モンファ)から出撃要請が出た。

 

エリア108にて友軍可変戦闘機部隊がはぐれゼントラーディのクァドラン・ロー部隊と交戦中であり、苦戦を強いられた為救援要請を出したとか。

無論その友軍部隊とはライナスが所属するメヒカリ小隊だ。

 

突貫したはいいものの、クァドラン・ローの性能とパイロットの実力が高く月面地表に隠れていたリガード部隊

 

近くにアルタミラがいた為、出撃待機中だった大樹達に出撃を命じた。

 

「友軍可変戦闘機部隊?何処の部隊だ?」  

 

『コンステレーション所属フライング・フィッシュ中隊です。』

 

大樹は何処の部隊かと確認すると、所属はコンステレーション所属のフライング・フィッシュ中隊(ライナスの部隊)だとモンファは真面目な声で答えた。

 

コンステレーションにはミレニアムゴブリンズ中隊がいるが、現場近くにいるのはアルタミラであり艦長のジェイルは前述の通り大樹らに救援に向かわせようとした。

 

「吉野大尉殿、どうかしました?」

 

「ノーボレス中尉、出撃命令だ!速やかに各機搭乗しろ!」

 

「出撃でありますか?」

 

「突然で悪いが俺達にご指名だ!まぁ黙って俺について来い・・・」

 

モンファとの通信を終えると大樹は神楽やラーチャー小隊に出撃を命じた。

 

ガブラら隊員は驚いた顔をするが、大樹は黙ってついて来いといい搭乗機に向かった。

出撃準備を終えると大樹らハンター小隊とガブラのラーチャー小隊は次々とアルタミラから発艦し月面上空の宇宙(そら)をアンサー(灰色ガン)の群れが飛び立った。

 

同時刻・・・・・・

 

アポロ基地から出航し月面クラビウス基地に向かう艦があった。

アルゲニクス級特務巡洋艦アルゲニクス、特殊部隊ダンシング・スカルの母艦だ。

 

クラビウス基地に向かう理由は同地でイベントに参加していたゼネラル・ギャラクシーの天才技術者アルガス・セルザーを収容し惑星エデンに向かう為である。

惑星エデンのニューエドワーズ基地に到着後は、現地にて行われる新型機のテストを行いYFー9とYFー10を完成に近づける作業を行う予定だ。

 

「ジーナス大尉・F・ジーナス中尉、前方α5宙域にて戦闘を確認しました。友軍部隊が交戦中・・・なお苦戦との事です。」

 

「こんな所で戦闘?この辺りは新統合軍の統治下では?」

 

「ミリア・・・敵がいる事実には代わりはない。」

 

マックスとミリアはオペレーターからの言葉で前方にて戦闘が行われていると知った。

 

ミリアは新統合軍の統治下で戦闘が行われている事に疑問に思うが、マックスはそこに敵がいて戦闘が行われている事実にかわりはないと判断し格納庫へ向かいアルゲニクスから発艦していった。

 

【同時刻】

【月面クラビウス基地機種転換センター・バイク教習所】

 

 

 

VFの訓練を終えたラウラは教習所でバイクの教習を受けていた。

 

日常的に車やバイクに乗れれば生活が楽になるのと趣味でいろんな乗り物を乗りたいので、VFの訓練同様に熱心に教習所で車やバイクの教習を受け技能を高めていた。

 

「次こそ必ず勝ってやる・・・・」

 

このまま負けっぱなしではいられない。

受け入れたら自分自身のプライドが許さない。

 

軍用バイクに跨がりバイクの教習を受けるラウラは胸の中でそう呟いた。

特にルルドルドのあの罵声が嫌い、聞くたびに自身のプライドが故に余計に許せない。

機種転換センターに居るうちは何とかして勝たないといけない。

 

馬鹿野郎!いつまでゼントラーディ軍をやっているつもりだ!チェリーガール!

 

「いつまでゼントラーディ軍をやっているつもり・・・か・・・・私だって好きで地球人をやっているつもりなんて・・・ないのに・・・」

 

ルルドルドの言葉が突然脳に響く…いつまでゼントラーディ軍をやっているつもりだと…

 

ラウラは好きで地球人をやっているつもりはないと思っていた。

 

出来れば今でもゼントラーディ軍の軍人をやっていたかった。

全てはあの日、ボドル基幹艦隊決戦の日から変わってしまった。

本来居たかった自分や居たかった世界は皆、綺麗さっぱり無くなった。

 

「様子を見てみれば・・・・ラウラ、あんたは変わらないね。」

 

「シュリ・・・・・何故ここにいるの?」

 

「別にいいでしょ、今の私にとって家はここだからさ・・・」

 

休憩に入り、好きな飲み物であるコーラを飲んでると制服姿のシュリが訪れた。

 

ゼントラーディ軍や海兵隊にいた頃と違ってシュリもいろいろ変わった。

サングラスをかけたり、耳には星の形をしたピアスなんかしている。

 

そう思っているとシュリは自販機でコーラを買いラウラの隣に座った。

 

「シュリはいいよな、悩みなんてなくて・・・」

 

「そう?地球人になってからは色々あるよ。」

 

「地球人になって悩みなんてあるんだ・・・・」

 

価値観が違う何もかもが違う・・・

 

シュリは海兵隊から転属した頃と違って完全にカゴメ達のような地球人の女になった。

 

話していくうちに部隊の話や日常的な話などどれもついていけない。

思っているシュリの姿とは程遠かった。

 

「ラウラさぁ・・・・・地球人として生きるなら何をしたい?」

 

「何をしたいって・・・・・今は強くなりたいだけ・・・・」

 

「やっぱ変わってないか・・・ 」

 

シュリから地球人として何をしたいかと聞かれたラウラは強くなりたいと答えた。

 

ラウラの強くなりたいと言う言葉を聞いたシュリは少し驚くと冷たい表情を浮かべた。

冷たい表情を浮かべたながら変わってないかと言うシュリにラウラはムッとした。

 

「シュリ・・・・・私の何処が変わってないわけ?」

 

「そうね、単にゼントラーディ人としての帰属意識が強すぎて生物兵器から抜け出してない。」

 

「生物兵器!?私が?なんで!?」

 

「そう、戦う事しか目標を見出していない・・・それって人間って言えるかな?」

 

ムッとしたラウラは口調を荒くし問い詰めるが、シュリはルルドルドと同じく非情な答えを返した。

 

戦う事しか生き方を見いだせてない自分は生物兵器のままだと。

返ってきたシュリの言葉が今の自分を惨めにする。

胸が苦しくなり、ラウラは返す言葉もなくただ黙ることしか出来ない。

 

「じゃあねラウラ、私明日から出港しパトロールだから・・・私の戦友達によろしく。」

 

「うん・・・・分かった。」

 

この場から去っていくシュリの姿が眩しかった。

 

生物兵器・・・・人間って言えるのか?

ルルドルドの言葉と同じくシュリの言葉も痛く重かった。

 

再びバイクに乗るとラウラは再び教習を行う。

今日の教習を終えればまたバルキリーの訓練が始まる。

 

シュリがなんと言おうが、強くなる。

強くならなければ、自分自身に存在価値を見出だせない。

今のラウラはただ強くなる事を強く求めた。

 

【西暦2021年2月14日】

【月面クラビウス基地とアポロ基地間、輸送路・戦闘宙域】

 

 

クァドラン・ローの動きは想像以上に速かった。

 

伊達に10年間戦っているだけあってリガードやヌージャデル・ガーとは違う。

教本通りにいかない展開にライナスは焦りが出始める。

 

「バカッ無茶をするな!敵は・・・・・・」

 

「俺だってパイロットです、やれます!」

 

敵は明らかにただのはぐれゼントラーディ軍とは違う・・・・

 

クァドラン・ローの動きに合わせてリガードが支援攻撃、地球流の戦術を取り入れている。

想像以上に強い。

 

ライナスはバトロイドに変形しクァドラン・ローに支援攻撃を行うリガードを攻撃し何機か撃墜した。

初陣にしてある程度の成果をあげる事が出来た、教官として世話になったカゴメにいい報告が出来る……ライナスは高揚感を覚え近くにいるリガードに銃口を向けた。

 

1機のクァドラン・ローがライナスの目の前に立ちはだかった。

咄嗟の判断でガンポッドを構え、精神が限界に達しライナスは叫んだ。

 

「くそぉ!俺はまだやる事があるんだぁぁぁ!」

 

ライナスのVFー4とクァドラン・ローの銃口はお互い向き合いトリガーを引いた。

 

ガンポッドとパルスレーザーの銃弾の雨は双方に降らせ、双方を通り過ぎる。

フライング・フィッシュ中隊やコンステレーションの乗員達、そしてはぐれゼントラーディ軍のクァドラン・ローのメルトラン達は息を呑みつつその様子を目撃した。

 

双方はまるで力尽きたかのように月面の重力に引かれた。

 

「マックス!見えたわ・・・エネミータリホー!」

 

「よし行くぞミリア!」

 

現場にマックスとミリアが到着し戦場へ突貫した。

 

それに気がついたクァドラン・ローや指揮官機のログレン・ローはメヒカリ小隊を無視して突貫し迫るマックスとミリアを迎撃していった。

ログレン・ローの姿を見たミリアはフッと笑うとクァドラン・ローを2機を血祭りにした。

 

1時間後・・・・

 

「こちらハンターリーダー、ラーチャー小隊と共に現場に到着した。」

 

『こちらアルタミラからハンターリーダーへ、現場はどうですか?』

 

「友軍部隊がはぐれゼントラーディ軍を鎮圧完了、出番は無かったみたいだ。」

 

『了解。』

 

「ジーナス夫妻・・・月にいたのか・・・」

 

戦闘の光を確認した大樹は賢二郎とラーチャー小隊と共にコンステレーションへの増援として戦闘宙域に到着したものの、戦闘は新統合軍の勝利で終わっていた。

青と赤い機体、マックスとミリアらダンシング・スカル隊がクァドラン・ローやリガードの一部隊に打撃を与え残存した機体や艦隊は降伏してしまった。 

 

ダンシング・スカル隊は苦戦しているメヒカリ小隊を発見し突貫し、クァドラン・ローやリガードを次々と撃破し艦載機部隊のログレン・ ローを戦闘不能にし制圧した。

2人の圧倒的な実力を前にクァドラン・ロー達は戦意を消失、一瞬で降伏したと言う。

 

マックスとミリアの駆るVFー5000は残存したクァドラン・ローとクァドラン・ノナを集め機体から兵士を降ろさせ頭を後ろにし一箇所に集めていた。

 

艦艇らは今到着したコンステレーション航空隊が到着し拿捕されている。

 

「大尉、あれは・・・・」

 

「ハンター2・・・そしてラーチャー小隊各員・・・しっかり見ておけ・・・俺達軍人は軍人である以上戦場で墓標を作る事になる。」

 

「あ・・・はい。」

 

月面の大地に鎮座するVFー4とクァドラン・ローの姿を見て、大樹は敬礼した。

 

軍人をやっている以上、五分五分の可能性で自分も同じ姿となるかもしれない。

大樹は今目の前に見える光景をしっかり記憶に焼き付けていた。

 

1人の軍人として人間として決して生涯忘れぬ為に・・・・・

 

「大尉、クァドラン・ローのパイロット生きてますよ。」

 

「何?」  

 

クァドラン・ローが生きていた

 

相討ちになったと思いきやパイロットは負傷に留まり、額から血がたれていた。

大樹はクァドラン・ローのハッチを開け中の操縦士の顔を見て少し驚いた。

 

「ラウラ・ベルタリアと同じ顔の兵士か・・・・」

 

「誰なんですそれ?」

 

「じゃじゃ馬だよ、命令違反するほどの・・・な」

 

動けなくなったクァドラン・ローのパイロットの顔はラウラと同じ顔をしていた。

 

クローン兵士であるゼントラーディ人が同じ顔同じ身体をしているのは珍しくない。 

だが大樹の目の前のメルトランは同じ顔をしてても表情は違った。

ラウラと違って何処か憎悪のあるかのような表情をしていた。

 

しばらく見ているとクァドラン・ローのパイロットは少し意識を取り戻し少し動いた後、大樹らと目が合い怯えはじめた。

 

「デ・・・デ・デブラン・マイクラーン(ち・・・地球人・・・)」

 

「こいつ!大尉、撃ちますか?」

 

「やめろ!神楽・・・こいつは敵とは言え捕虜だ!殺すな・・・」

 

神楽は発砲許可を求めるが大樹は拒絶した。

 

既に戦闘能力はなく、殺せば戦争犯罪人になるだけだ。

更に言えば大樹はラウラと同じ顔をした敵を無意識に殺す事を拒絶していた。

 

必死になり神楽を抑える大樹だがクァドラン・ローのハッチが更に上に開いた。

 

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

「大尉…!?」

 

「くそっ・・・・」

 

クァドラン・ローのパイロットは突然機体から降りて大樹のVFー1に向けて突撃した。

 

身体はボロボロであったがそれを感じさせない程の気迫で圧倒し大樹を怯ませる。

神楽は反撃しようとガンポッドを向けるが、とても間に合わない位置にいた。

 

大樹のVFー1にクァドラン・ローのパイロットが掴みかかり、頭部を潰そうとする。

 

ラウラと同じ顔のクァドラン・ローのパイロットは何かに取り憑かれたかのように気狂った笑いをしながらじっと見つめ、大樹はたじろぐ・・・・

頭を掴みこのまま潰すかと思ってたが、クァドラン・ローのパイロットは何者かに弾き飛ばされた。

 

「!?」

 

「吉野大尉、危ない所でしたね。」

 

「ジーナス大尉・・・・」

 

「火星の英雄(マーズ・ヒーロー)がらしくないですよ、ここは僕とミリアに任せて!」

 

飛び出して襲いかかろうとしたクァドラン・ローのパイロットを制圧したのはマックスだった。

バトロイド形態の青いVFー3000はガンポッドの銃床で肩を叩いて動きを封じ、よろけた所をミリアの駆る赤いVFー1Jバルキリーが銃口を向け制圧した。

一瞬の隙を突いて一矢報いろうとしていたクァドラン・ローのパイロットは完全に戦意を失った。

 

「ラウラ・・・・お前はいざって時に自分を殺す事が出来るのか・・・・」 

 

大樹は取り押さえられるラウラと同じ姿をしたクァドラン・ローのパイロットを見て呟いた。 

 

襲いかかってきたクァドラン・ローのパイロットは自身に向け憎しみの表情で迫った。

しかもただの表情ではない、これから迎え入れるメルトランと同じ顔をした兵士だ!

ガンポッドを構え反撃しようとしたが、大樹はトリガーを引く事が出来なかった。

 

いくら別人とは言えラウラと重なってしまい引き金を引く事が出来なかった。

 

自身ですら無理であったラウラがVF部隊として編入されれば、今後自分と同位体を殺す機会が何度も訪れる・・・・ゼントラーディ軍への帰属意識の強いラウラにそれが出来るのか?

 

舌打ちをしながら大樹はこれからの懸念に苛立たせる。

 

【西暦2021年2月15日】

【クラビウス基地機種転換センター.教官室】

 

午前中の授業は無事に終わり、食事が終わるとラウラとカゴメは仲良く会話していた。

 

食事に関して言えばTボーンステーキとロブスターがあり、候補生達が青ざめる中ラウラだけはウキウキとしながら楽しく美味しく食事することが出来た。

 

午前中の教科もなんかも・・・

 

「凄いわね、半月もしないでVFの操縦をマスターするなんて・・ 」

 

「一応クァドラン・ローではエースでしたから、感覚さえ掴めれば楽々だね。」

 

「ファイター形態ではイマイチだけど・・・ 」

 

「出来れば触れて欲しくなかったなぁ・・・」

 

VFのシュミュレーションでかなりの高得点をラウラは叩き出した。

 

クァドラン・ロー乗りであるラウラは当然と言ってもいいのかバトロイド形態で成果を出しており、一方でファイター形態がイマイチと言わしめる程特徴が出た。

その一方で見るからにラウラの性格は明るくなっている。

 

「ベルタリアの成績、中々いいな。」

 

「色々あって前向きにやってますわ。」

 

「そうでなくては困るからな。」

 

ラウラの成績は茂人にとって喜ばしい話であった。

 

強いラウラの向上心が想像以上に力を発揮し可変戦闘機パイロットとしての実力を高めた。

更にだが車やバイクなどの技能も高く更に知識も覚え一瞬で運転免許を取り、教習所の教官が腰を抜かす程、軍人として人としてのスキルを高めていた。

 

これならば安心して卒業後、隊員として引き取る事ができる。

茂人はコーヒーを飲みながら確信した。

 

一人の職員である若い女性兵高谷玲子准尉が入ってきた。

 

「桐原少佐、来客です。」

 

「来客?」

 

「今お連れします。」

 

珍しく来客が訪れる・・・内容は高谷准尉の表情見て良い物では無さそうだ。

 

訪れた来客はコートを着たままの鋭い目突きの将校だ。

見た目はサングラスをかけ顔痩せ型であるが、身体ある程度ガタイがいい感じの男だ。

教官室に入るといきなり背筋を伸ばし敬礼をした。

 

「失礼します。人事局太田祐三.大尉であります。」

 

「人事局だと?」

 

「ハッ・・本センターにて卒業された候補生が戦死されたので戦死通知をお届けに・・・」

 

「そうか・・・ご苦労さん・・・・」

 

人事局死亡通知担当官から卒業生が戦死したと言う通知があった。

 

卒業して一定数戦死する事があるが、通知なんて珍しい話だ。

そう考えながら茂人は死亡通知書を受け取って内容を読むと目の色を変えた。

 

戦死したのは卒業したばかりの卒業生だ!

 

「バッカニア少尉・・・・・バッカニア少尉!」

 

「はい・・・なんでしょう?何かあったのですか・・・・・」

 

「落ち着いて聞いて欲しい・・・ 」

 

茂人は慌てて近くにいるカゴメに声を掛けた。

 

内容が内容なだけに明るい雰囲気で話せるような感じではない。

話しかけられたカゴメは不思議そうな表情を浮かべながら、茂人の顔を見た。

 

ただカゴメが知っているのは悪い報告と言う事・・・

出来れば外れて欲しい話ではあるが、無慈悲にも当たってしまう・・・

 

「フィルダー少尉が戦死した。」

 

「えっ・・・・・・」

 

「コックピットをレーザーガンで・・・・相打ちだったそうだ・・・」

 

茂人から聞かされたライナスの戦死の知らせを聞いたカゴメは手に入していたチョコを落とした。

 

戦死した理由はともかく、カゴメにとってライナスの戦死は意識が遠のくほど辛かった。

一時は茂人の言葉が聞こえないくらい隔離状態になり、感情が麻痺した。

戦争の一人の兵士の戦死は気にしない人がいるが、誰かにとってそれは耐え難い事実でしかない。

 

次回予告

失った命は戻らない、戦場の非常に現実が戦争を忘れかけてたラウラに突きつける。外の世界では大樹が愛機を駆り戦闘を繰り広げる中、ラウラはカゴメからある物を譲られる。

 

次回、マクロス外伝蒼い髪のメルトラン

 

【リブート・ラウラ】

 

戦場の黒い突風、耐え抜けろクルセイダー!

 

前回

 

 

 

次回

 

 

【所属】

新統合軍

【全長】

400m

【全備重量】

9500トン

【エンジン】

フォールドエンジン

【搭載機】

20機 

・VF.16機

・VT.4機

【解説】

新統合宇宙軍が2020年に就役させた輸送艦。

 

ARMD級宇宙空母の後継艦で建造が進められているグァンタナモ級宇宙空母のテストヘッド艦であり、輸送艦でありながら菱形の艦断面を持ち2面の飛行甲板を備えている他、ゼントラーディ由来の技術を用いられている。

 

乗員は150名(航空隊は後方要員含め50名)

 

主に重要航路のみで使われており、僻地ではオーベルト級宇宙駆逐艦やゼントラーディ軍ピケット艦を改造した物が使われている。

 

【同型艦】

01番艦・ハバナ

02番艦・パレオロゴス

03番艦・イオー・ジマ

04番艦・アンティータム

05番艦・シュガーローフ

06番艦・オハナビーチ

07番艦・ブルーコード

08番艦・建造中

09番艦・建造中

10番艦・建造中

 

 

【本拠地】

クラビウス基地

【編成単位】

総軍

【司令官】

チャールズ・ブラウン.大将

【解説】

新統合政府が統治する月面の表側を管轄する新統合軍部隊を纏める総軍である。

元は地球統合軍第2総軍であり、月面人口が増えた事に加え総軍に昇格した。

 

主な任務は月面表側の防衛任務であるが、地球圏有事の際は地球衛星軌道艦隊と共に最終防衛線を形成しゼントラーディ軍基幹艦隊もしくは監察軍艦隊を迎撃する役割を担っている。

 

月面第2総軍を形成する艦隻はSDFNー13を旗艦とし、空母70隻、駆逐艦120隻、補助艦35隻、強襲揚陸艦3隻、巡洋艦30隻などを有している。

VF.645機・VA.220機・VB.16機・VE.54機・VT.120機などの航空戦力を有しており、更に各基地に所在するS.M.Sなどの民間軍事会社と連携している。

 

地球人が中心となっているが、クラビウス基地以外の基地にはメガロード07が見つけた惑星ゾラの先住民族ゾラ人や同化作戦で恭順したゼントラーディ人などの亜プロトカルチャー民族の兵士と家族が居住している。

 

エンディミオン基地はゼントラーディ海兵隊基地が置かれており、ノプティ・バガニス級3隻・ケアドウル・マグドミラ級4隻・キルトラ・ケルエール級2隻・スヴァール・サラン級10隻・キルトラ・ケラミッツ級5隻・トゥ・レディール級20隻と言う大兵力が置かれており、司令官であるラバル・ボルガール.中将は第2総軍に属しながら参謀長並の権限を有している。

 

宇宙軍総司令部が置かれており第1総軍の本拠地であるアポロ基地同様、メガロード級移民船を建造している他2030年に出港予定の新マクロス移民船団の艦船が建造中である。

 

◆参謀副長

 

【人事】

◆司令長官

チャールズ・ブラウン.大将

 

◆副司令長官

白川秀康.中将

 

◆参謀長

カン・ ヨンソプ.中将

頼家樹.中将

 

◆月面第2軍統合艦隊本部司令官

セバスチャン・ビュルカール.中将

 

◆クラビウス管区北部統合司令官(月面コペルニクス基地)

キム・ギョンドゥ.少将

 

◆クラビウス管区南部統合司令官(月面グリマルディ基地)

丹羽浩一.少将

 

◆ゼントラーディ海兵隊エンディミオン艦隊(月面エンディミオン基地)

ラバル・ボルガール.中将

 

◆参謀副長

キア・ラダギン.少将

三好長持.少将

草鹿三郎.少将

 

◆高級参謀

井上飛鳥.准将

 

・高級副官

柿沼雄太郎.大佐

・兵器部長

ナタポン・ヌンパクディー.大佐

・経理部長

ターマン・キムヨン.大佐

・軍医部長

アンワル・イスカンダル.大佐

・獣医部長

フランシスコ・サンチェス.大佐

・法務部長

ヘルト・イェッテン.大佐

 

◆麾下

張振立.准将(クラビウスシティー防衛司令官)

フランク・フォン・ハーバード.少将(月面工廠クラビウス支部長)

オム・ダンカール.少将(クラビウス開発プラント総括本部長)

ジェフリー・キム.大佐(月面第2軍警務隊本部長)

橘圭一.大佐(クラフロートクレーター基地司令官兼クラフロート支隊長)

コク・ホンイル.大佐(モレトスクレーター基地司令官)

ハリー・ナカモト.大佐 (マギヌスクレーター基地司令官)

ダニエル・ジョスト.大佐(ロンゴモンタヌス基地司令官)

渋川義澄.大佐(シャイナークレーター基地司令官)

真鍋浩一.(大佐ロンゴモンタヌス基地基地司令官)

(作画ロボノヒトさん

【開発】

新星インダストリー

【開発形態】

量産型

【エンジン】

(主機)新中州/P&W/ロイス FF-2015RB 熱核タービン×2

(副機)P&W 高機動バーニアスラスター HMM-3A

【推力】

(主機)12,500kg×2(宇宙空間瞬間最大推力)

【最高速度】

M2.85+(高度10,000m)

M4.73+(高度30,000m以上)

【武装】

対空パルスレーザー機銃×1(複座型×2)

多目的ガンポッド×1

マイクロミサイルランチャー×4

【拡張装備】

大気圏内外両用ブースターパック

【解説】

ストンウェル・ベルコム、新中州重工2社により開発され後に両社の航空部門が合併した新興企業新星インダストリーに引き継がれ完成させた新統合軍の制空可変戦闘機。

 

VFー1バルキリーの後継機であるVFー4ライトニングⅢは新統合軍の新しい世代の主力可変戦闘機であったが大気圏内においての戦闘が苦手と言う弱点があった。

その穴埋めとしてアドバンスド・バルキリー計画が発動し、VFー5などの多種多様な可変戦闘機が次々と開発されていき大気圏内における可変戦闘機の穴埋めとして導入した。

 

信頼性・耐久性に優れ安価であり、VFー4と二分するほどの主力可変戦闘機となった。

 

アポロ基地とクラビウス基地の防空隊に最優先に配備されており、各地下司令部のビルにはライフルベルトでガンポッドを肩にかけ警備するスターミラージュが確認されている。

 

【警務飛行隊】 

(作画ロボノヒトさん

 

警務飛行隊にも採用されており、一般機と異なりMILITARY・POLICEを示すMPの文字を右肩に記載されている。

 

【頭部形状】

指揮官機

 

一般機

 

複座型