clouds
空の藍に滲む雲
晴天に輝く碧
どちらも滲み溶け合い
何もかもすべてが溶け合い
一切の区切りなど無くなってしまえば良い
世界も 地球も 銀河も 宇宙も
すべての区切りなど捨てて
すべてが一つに解け合ってしまえたら良い
ここ最近私を悩ませているあおい問題
明確な進展があった
いや 展開があったと言うべきか
旅行から帰ってしばらくは
大人しく自分の家に帰っていたが
昨日になってまた転がり込んできた
なんだか嫌な予感に囚われて仕方が無かった
あおいの面倒を見るのは苦ではない
そばにいたってお互いの領域を侵さないあおいは
まったく苦にならない
それどころか私にとって一番の話し相手である
そんなあおいがひっそりと我が家に棲息しているのは
若干引きこもり癖のある私にはきっと良い事なのであろう
日中はあおいは仕事で不在だし
夜がすっかり明けきった頃にようやく寝入る私だ
あおいが帰ってくる頃には今度は私が
仕事に取り掛かっているし
お互いの時間的な干渉も無い
仕事が手につかないときは
それこそ良い話し相手になってくれる
だが。。。
そうは言っても私は男であおいも男だ
しかも私は面白くないだろうが
性的対象は女性だし 今のところというかもう
誰かを愛することはできないと思っている
人間的に好きにはなれても
愛するという気持ちにはもうなれないだろう
わからない
ただ怖いだけなのかもしれないが。
あおいが以前話してくれたことは
私が勘違いをしてしまったのだろうか
それとも成就しなかったということなのか
お互いに何も聞かないし話さないので判らないが・・
そうなのだ・・・・・・・・・・
どうやらあおいは私に恋をしてしまったらしい
本当は旅行に誘われる以前からおかしいと思っていたのだ
こんなにひんぴんに家に通いつめることなど
今まで無かった
それが何がきっかけなのかはもうわからないが
ある時から真っ青な顔で何かを思い詰め
それこそ潤んだ眼でじっと私を見据えていることが
多くなってきた
それは私は最初思い詰めるほどの悩みがあるというのも
大変だろうにと同情めいた気持ちで見返していたのだ
なぜ青ざめていたか。。
あおいもびっくりしていたらしい
自分の気持ちに気付いたときの衝撃は
今までに無いものだったと言っていた
それはそうだろう
私たちは本当に良い友人だったのだ
それは周知の事実だしあおいの性癖についても
もう長いこと相談に乗ってやっていたし 私はきっぱりしていたし
あおいも私には性的な関心はなさそうだった
それが一体どこでおかしくなってしまったのか
私は今まさに喚き立てたい気分なのだ
誰かに相談に乗ってもらいたいが
1番の相談相手があおいだった
そのあおいに好かれてしまった
こういうときは本当にどうしたら良いのだ
あおいは私にとっても今となっては
1番といっても言い過ぎではないくらい大切な友人だ
だから将来もし私が世を捨てて引きこもってしまっても
たまには連絡のつける友人として
一生つながって行けたらと思っていた
私は誰かと一生ともに過ごすことなど
無理なのだと思っている
それは確かに一人よりも良いのだろうが
私は本当のところを言うと
いつか心が離れてしまわれるのが
辛いのかもしれない
死に別れがつらいとは思わない
生きたままで心が分かれてしまうことが怖いのだろう
それならばいっそ死んでしまったほうがどんなに楽か
だのにあおいが私を想うとは!
あおいもかなりの葛藤があったようだ
それは私がどんな人間か嫌というほど知っているからで
この事実を打ち明けて私がとても苦しむだろうことも
あおいは間違いなくわかっている
人を苦しめたることを呪っているあおいだ
打ち明けるまでにどんなに心労したろう
それを考えるとかなり居たたまれぬ気持ちになる
あのぐったりとして思い悩んでいたとき
美しい顔をもつとはなんと不幸なことだろうと
まるで他人事のように想っていた自分を恥じる
まさに元凶が自分だったとは!
まだ打ち明けられたばかりで頭が混乱している
ここにこうして書いてみて
少しは整理できればと思ったが
そんなに簡単な問題ではないようだ
久しぶりにため息が絶えない
本当にどうしたものやら
本当に一体どうしたらいいものか
無題
ここ最近の私の本に関する嗜好は
すべてが大正や明治時代に関するものである
なぜだかとても心惹かれるのだ
それ以前
もっともっとはるか昔から連綿と続いてきた時代
それをありありと感じられるもっとも好きな時代だ
暗く謎めいた妖しい気質や家系
家柄
代々続いてきた華族
そんな古めかしい秩序などが私を駆り立てるのだ
護らなければならない秘め事
決して他言など許されぬこともあったろう
そういった秘め事にとても関心があるのだ
何事をも知りたい
すべてが知りたいのだ
だから到底どんなに退屈に見えるであろう私の日常は
実は私の頭の中では嵐が起こっている
すべてを貪り食う妖獣になり
私はすべての記憶を貪り喰らい尽くしたい
私はなぜこんなにも世のすべてが知りたいのだろうか
世のすべて・・
いや
人間のすべてが知りたいのだ
尋常な者などいない
すべてがドラマであり皆悩みを抱えて生きている
そのすべてが知りたいのだ
遠くから密やかに。
たわいの無い話
旅とはよく言ったものだ。
本当に旅をしてきた
移動距離としても 人間としても。
今回の旅行はあおいとであった。
なぜだか唐突に誘われ
予定ががら空きだった私は容易に承諾してしまったのだ。
文章にしてしまうとなぜか儚く感じてしまう。
とにかく 旅行と言っても国内であったが
なんだか異国を彷徨っていた様な気分だった。
それは間違いなくあおいの影響だ。
初めて人と旅行に行ったからなのか
それがあおいとの旅行だったからなのか
もうどちらかも判らないしどちらでも良い。
とにかく 雪深い村で佇む彼を見ていると
無性に郷愁にかられている自分がいた
なぜこんなに掻きたてられるのか。。。。
まったくの謎だが
昔造りの古い萎びた建造物の間を
遥か遠くを見ているような眼をして
無関心に歩いているあおいは
本当に画になった
今まで私は何を見ていたのだろうか
と思うくらいに彼の本当の美しさに魅入ってしまっていた
男に対しての性癖などまったく無い
そんな私でさえかなり魅了されてしまったのである
それは旅先で良くあることなのだろうか
確かにそこは遠く暗い闇から連綿と続く文化の情緒を残し
はるか昔を髣髴とさせるような雰囲気に纏われ
戦で死んだ亡霊が出てきてもおかしくないところではあった
そして あおいに異常なまでに
魅入られたのはその場所だけであった
もしかしたら彼の先祖はここで生まれ育ち
今の彼に続く血をここで育んできたのかと思われた
このぴったりとした雰囲気は
先祖返りと言うべきか・・
だからあおいもかの地を求め
ここまで来たのか・・・
お決まりのように私は何も聞かないし
彼は何も話さない
彼はここで何かを感じ
そして私は
漠然とした衝撃を感じている彼の隣にいる。。。
それでいいのだ
お互い想像に耽り 遠くはるかな昔を偲び
そして思いを馳せる
それが大切なことなのだ
誰かと一緒にいて 思いは遠く彼方に。
それがとても安心できることなのだ
私は旅をしてきた。
あおいと二人で。
そしてあおいの孤独を感じることができた気がする。
数少ない私の友の心の琴線に
一瞬でも触れることができたのだから
この旅はとても良い旅だったと言えるだろう。


