たわいのない話
突然旅行に出ることとなった
余りにも突飛でさっきまで本気だとは思わなかったが。。
正直に言うと旅は基本1人が良い
どういった訳か 今回はあおいに誘われた
本当にどうしたというのか・・・
メモの内容と今回の件については
まったく関係ないので今回はメモには書かないことにする
たまにはあおいのことについて
―いや最近そればかりだ
それだけ私の交友関係が狭いということだ―
彼は 以前から書いてあるように
容姿が異常に美しい
こんな田舎にこんな美貌の持ち主がいるとはと
よく初めて会うものたちは言う
これも特殊だが
あおいのことを見たものは大半が秘密にするらしい
常々思っていたが良くこれだけの容姿が
うずもれているのだと。。。
― 着物でも着せてそのあたりに座らせて置いてでもしたら
まるで精巧に作られた人形のようである
日本人形のようでも西洋のドールのようでも
どちらにも見紛うような人形に。。 ―
だがそれで納得できる
こっそり見守っていたい者が多いようだ
それにもし騒がれでもしたら
きっとあおいはもう一生自分のなかに閉じこもってしまうだろう
外見が異常な美貌に反して
中身が非常に脆い
異常なところはまだある
人を寄せつけないところ
あまり食事をしないところ
あまり眠らないところ
上げ連ねていくうちにますます
あおいは人間なのだろうかと不安になってくる
天使か悪魔か
もしも
朝が来てあおいの存在が消えてしまっていたら
わたしは夢だったと思うだろうか
ほんとにそばにいてもそう思えるほど
儚いやつなのだ
その反面 仕事となると途端に人が変わる
顔つきも変わる気がする
細かなところは省くが たまに講師のようなことをしている
いつもは地味な書き物がほとんどだが
たまに人前で話さなければならないことがある
― 人と係わり合いになるのが嫌ならなぜと思ったが
仕事の延長上仕方が無いらしい―
目が悪いわけではないがわざと
度の入った分厚いめがねをかけて
変装まがいのことをするから
その姿であったときは思わず吹き出してしまいそうになる
― 一度本気で吹き出したら
しばらくうちに寄り付かなかった ―
だが変装とはよく言ったもので
確かにあおいの美貌は完全に効力を失っているのだ!
あれもまた特殊能力と言うのだろうか
幼いころからその外見のせいで
色々な嫌な目にあっているらしい
だからか自己防衛というのか
自分の格の落とし方はまさに神がかり的である
こんなに変わるものかと最初見たときは
吹き出してしまったがある意味感動してしまった
それを言うと ものすごく嫌がるが・・
とにかく外見のせいで自分の殻を作ってしまう性格に
なったらしい
ではなぜ私にはあまり壁が無いのか
私もはっきり言うとわからない
多分馬が合うのだろう
確かに私もあおいの美貌にはいつもはっとさせられるが
食い入るようには観ないし
特に何を求めもしない
男女問わずあおいはよく触れられることが
多いようだ
(確かに男であろうとあおいならわからないかもしれない)
― 度重ねて言うが私の性的対象は女性だ ―
ただ話していて楽なところが良いのだ
私の外見は特に抜きん出ている訳ではないから
見た目がきれいな奴の気持ちはわからないが
誰かにしつこく追い回され疲れ果て
青ざめた顔で避難してくるあおいは
本当に不憫に思う
我が家に来ると 人心地ついたようなほっとした顔をするが
どれだけ毎日追い掛け回されているというのだ
いつだったかとあおいの性癖について知らぬ女性たちに
しつこくされていると聞いた様な気がする
まあ 大っぴらに言えることではないので
それはしょうがないのだろう
そういえば年はいくつだ。。
誕生日は・・
まったく知らなかった。。
まあ 男同士とはこんなものか
にしても旅行とは一体どうしたというのだ
話の続きを知らぬ私は もしや
傷心旅行につき合わされるのか
いや そんなわけはない
私以上に人に依存しない奴だ
きっと気まぐれだろう
私もちょうどスケジュールがどかんと空いたので
手持ち無沙汰だったからちょうど良いかも知れぬ
たまには外のことも知らねばネタも尽きると言うものだ
もしやそれを心配してくれたとか。。
そんなことを考えてしまうほど珍しいことなのだ
旅先でPCを開く趣味はないので置いていく
なので続きは帰宅してからということになるだろう
いつ帰途に着くかはまったく未定である
今回はあおいに任せよう
clouds
体力も大分回復した
もう問題ないだろう
今日は大分早く目が覚め
日が昇る以前から散歩に出てみた
それにしてもここ数日確かに助かっているが
あおいは一体どうしたというのだろう
自分の家にまったく帰ろうとしない
それに何か落ち込んでいるようだ
彼らに何か問題でも起きているのだろうか
いや 一緒に暮らしているわけでもないし
その後会ってもいないようだから
そのことではないのか。。。
まったく。。
そばで悶々と悩まれるのはどうも苦手だ
しかも私は何も聞かないし
あおいは永遠に黙っているし
一体どうしたらいいのやら
自分の性格は嫌いではないがこういう場合に限り
呪わしく思う
それだのに直そうという気が
まったく沸いてこないというのも問題だが
これがまさに他人事であればいいのだ
だが悩んでいるのがあおいだから始末が悪い
あんなに美しい顔で苛まれた顔をして
人形のように壁にもたれ
いつまでも思いに耽っている様を観ていると
本当にこちらが居た堪れなくなるのだ
このままあおいが悩みすぎて死んでしまうのではないかと
看病されていたはずの私が今度はあおいの看病を
するんではまさにイタチゴッコではないか・・・
確かに笑い話にもならないが
もうこうなったらあおいが言うまで辛抱強く待つしかない
― Summertime ― Billie Holiday
Billie Holiday - Summertime
目が覚めたらこの曲がかかっていた。
あおいがかけてくれたようだ。
寒さがいやなわけではなさそうだ。
わたしもどちらかというと夏はあまり好きではないが、
夏の終わりが大好きだ。
Tシャツや木綿のシャツ1枚で外をぶらぶらとすることも、
ポーチに出て朝まで語り明かすことも
酔っ払った勢いで海に飛び込むことも出来なくなると言う
しばらくの寂しさが、名残おしさがなんとも言えないのである。
だからなんとなくあおいがこの曲をかけたのもそんな
少しばかりの哀愁からであろう。
こうやって私たちの時間は過ぎていく。
お互い話しかけることは酒が入らぬかぎりあまり無い。
大体予想がつくということも多し、特に聞いても意味の
無いことはお互い聞かないような気がする。
それが楽だ。
なんでも知ろうとして何でも聞いてくる輩が多いが、
それを聞いてどうしようというのだ。
知らないことが多いほうがいいではないか。
人生は長い。
私など本気で考えると眩暈がするほどだ。
だが、それもまた終わりが近くなると少しばかりは寂しくなるのか。
その時にはきっと私はますます本に没頭していることだろう。
今年の夏は一体どのようにして終わりを迎えるのかが
今から楽しみである。
もう一つ、どうやらあおいは話の続きをしばらく
しないつもりのような気がする。
一体彼らがどうなったのか、そしてこれからどうするのか、
まったく進んでいないように思う。
そしてあおい自身もそれを望んでいないようにも見える。
わからない。
こればかりは私の領域ではないし、それを侵す事も
私の意にそぐわない。
私はこれからも何も急かさないし、何も望まない。
ただこうやってたまに語りあったり酒を酌み交わすくらいの
間柄が望ましいのだ。
お互い変化を求めぬ者同士のまま 良い友人関係を保って
行けたらと思う。
今日あたりで私も復活できそうだ
あおいには本当に感謝している。

