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Body & Soul ― 身も心も ―














ここ数日間 穏やかに日々は過ぎていっている。

こうして呆然と退屈な毎日を送っていると

気づいた時にはもう100歳くらいになっているのではと

思ってしまう。





そしてさらに100年が過ぎ、気づけばこの体も消滅し、塵となり、

この世界を覆う大気の中を彷徨い宇宙に還っていく。

なんと穏やかであろうか。

死は永遠であり、誰にも犯されるものではない。

死は親しい。

とても優しいものである。






間違いの無いように言っておくが

私は自殺願望などはない。

ただ憧れはあるが。



そういえば先日あおいに殺されかけた時のことを

未だに気にしているようだ。

まあ 首にコレだけの痕がついていたら

気にしないでいると言うのは嘘になる。

記念のようなものだと言うと、苦笑いをする時のあおいは

とても人間らしくて好きだ。



やはり私は未だに忘れられない人がいる。


それは多分あおいは気づいている。


だが蒸し返す意味も無い。


ゾンビや死霊になって出てくる意外は

会えることも無いのだ。



私はよく冷たいだの酷薄だのと言われるが

そんなつもりなど無い。


なぜ誰かが死んだら泣かなければいけないのか。


泣く以上の悲しみがこの世にあるということが

あってはいけないのか。



確かに私は彼女が死んでから、まったく泣いていない。


死は私にとっては優しいものだった。


だが、彼女には優しくは無かった。



だからなのか私の時間は止まってしまったままのような気がするのだ。




いけない。



また考えに耽ってしまいそうだ。



こういうことを考え出してしまうと私は戻れなくなる。



夢想につかまり 意識が混沌となり、

その世界から逃げ出せなくなるのだ。



そのおかげで何度あおいに迷惑をかけただろうか。。。。



あおいに看病されるのは嫌いではないが

私がこうなるたびに あおいが何か感じ入っている気がしてならない。

前回の時に何かがおかしいと感じていた気持ちは

あおいに告白されてからはっきりとわかった。



あおいはそんな私の気持ちを感じ取り

ただ傷つき哀しんでいる。



こんなに想ってくれるあおいを哀しませるのは

やはり心が痛む。



だからもうやめよう。

死人を想うのは。



彼女だってきっと今頃は、大好きなオールトの雲で

心安らかにすごしているに違いないのだから。
























Billie Holiday - Strange Fruit





自伝によると、この曲はルイス・アレンの詩に感銘を受けたビリーが
自分の父の死と重ね合わせて作った曲だそうだ。

やはり自伝を読んでから聞くとますます想像が掻き立てられる。





今日も曇りだ。

ここしばらくまともな外出をしていない。

あおいは仕事があるので毎日出かけているが

私は相変わらず仕事に縛られ引きこもっている。

それに、どうも人ごみは苦手だ。

人に酔うと言うのだろうか。

大勢の人間の中に紛れると、普段から異常なまでの想像力の私の脳は

その力を私に再度誇示しようとしているかの如く

私を遥かなパラレルワールドへ強引に連れ去ってしまうのだ。

そしてその後は大抵、あまりの情報量に私が対応しきれず、ぶっ倒れるだけである。

こんな年になって人前で倒れるなどごめんだ。

それならば極力出かけないで済むならその方が良い。

だが、さすがにずっとこのままではいけないだろうか。

あおいとこれから暮らすのであれば尚のこと。

今までは外界とはなるべく係わり合いにならないように生きてきた。

だがこれからは多少色んな面で妥協していかなくてはならないのかも知れぬ。

私の覚悟がいよいよついたという事か。

だが今までは、夢うつつの中でほぼ暮らしてきた。

陰湿で退廃的な空想を、貪り尽くす妖獣に恋焦がれて生きてきた。

人間急に変われるものでもないし、もしかしたら

あおいは私のこのような退廃さや気だるさを好むのかも知れない。

まっとうに成ろうという訳ではない

それにまっとうな人間とは一体どんな人間だ。

確実なものなど無い。

誰が本当のことを知っているというのだ。

この世の中の一体何が 本物だと言えるだろうか。

ああ

そう考えたら少しは楽に息が吸える。

いいではないか。今のままの私で。

多少は努力はするがやはり自分らしさが一番だ。

無理をして生きても良い事など無いではないか。

だったら、胡蝶になりてこの現し世をなんとなく生きなぞらえても

きっと大して変わりはしないだろう。

あおいも溌剌と元気にというやつではない。

きっと私側の人間であろう。

だからなのか。

だからかもしれない。

だからあおいは私を選び、私はあおいを受け入れようと言う気に

なったのかもしれない。

斜に構え 気だるそうに毎日をなんとなく漂っているあおいは

まるでそれこそ胡蝶ではないか。

そのあおいがあんな激情を見せてきたというのはきっと

並大抵のことではないだろうに。

わたしはあおいに感謝する。

どんな形であれ、 わたしは私を愛してくれるすべてに

感謝するべきだ。























奇妙な果実― Billie Holiday  


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ビリーホリデイの自伝



奇妙な果実




彼女の数奇な運命が、淡々とした語り口調で書かれている


あまりに淡々としているので、よりリアルに


少女時代の苦悩やつらさが伝わってくる。


楽しいことやすばらしいことにさえ、変わらぬ単調さだが


なぜなのか上気した熱や歓喜はしっかり伝わってくるのだ。



強い女性とはこのようなことなのかと、感動を覚えた自伝だった。













ようやく通常の非凡な日常に戻りつつある。



だがやはり何かが変わってしまったようで


それは私が変わったのだろうかと多少戸惑いを感じる。




無性に照れくさいのだ。




これは何なんだろう。




本当に戸惑っている。




あおいは暢気なもので 


私の言葉を多少過剰に受け取っているのではないかと


思ってしまうくらいすっきりした顔をしている。



思わず噴出してしまうほどだ。



だが なんと表現したら良いか。。。



以前にも増してなんと美しくなったことか。



確かに以前から美貌を誇ってはいたが


益々艶やかさが増し 色気が出てきたというべきか。



だが再三言っているが私は健全な男なので


そういった間違いは起きるはずも無いのだが


それでもやはり見惚れてしまいそうだ。



視線は痛いほど感じるが、今のところ私に纏わりつくと言う事はない。


ただ、夜の話し相手に誘うのが多少照れてしまうようになったのだ。



だがあおいは賢いのでその辺は弁えている。



きちんと自分の役目はこなしてくれる。



だが沈黙に至ったり 私がたまに饒舌になった時


あの眼で あの潤んだ素晴しく長い睫毛に囲われた、


綺麗なアーモンド形の、若干切れ長で芸術的な二重の


陰りのある瞳でじっと見つめられていると 


おかしな気分になってきそうなのだ。



なぜ今更あおいに照れる必要があるのか。



まったく自分がわからない。



もう少し度胸をすえないといけない。



あの瞳で見つめられても平然と見返すくらいの図太さを。


身に着けなければ引き込まれてしまいそうだ。




あおいと一緒に暮らす。



そう私が決断したのだが 少し焦りすぎたのだろうか・・・



いや 男が一度決めたことだ。 



何があろうと乗り切ってみせよう。