特別編 小説「みふのもちつき」第二話の9(終)
「みふのもちつき」第二話 鳴り続ける電話 9(終)9後日、拓真は会議室で事の顛末を鶴ヶ丘と平良に報告した。二人は真剣味なくどら焼きを食べ緑茶を啜りながら話を聞いていた。「高田屋のどら焼きは旨いね」「おっ、院長、栗が丸ごと入ってますよ」などとまるで聞く気がないからイラッとくる。「結局、一階東側に貼ったポスターは誰が剥がしたか判らず仕舞いでした」拓真が頭を下げると、二人は声を合わせて笑い声を上げた。「そんな些細なこと構わんよ」「そうですね。ポスターは全て回収しましたし」「はあ」拓真は煮え切らない返事をする。「まあ、中村の事は残念だったな。だが、抜けた穴は直ぐに埋まったから、もちつき君が心配する必要ないぞ」「まさにグッドタイミングで入職希望者が出てきましたからね」「近々新しい師長も赴任予定だしな。我が病院は安泰だ」そして二人でどら焼きをむしゃむしゃ食べながら顔を見合わせて空笑いをする。拓真は「はあ」と気の抜けた返事を繰り返すしかない。本当にこの病院は安泰ですかなどと正直に質問は出来ない。「報告は以上です。失礼します」拓真が話を切り上げ会議室を出ようとすると鶴ヶ丘に呼び止められた。「今度来る介護士は、若くて可愛い女の子だぞ。嫁にしたらどうだ」鶴ヶ丘がスケベそうにニヤついている。平良がポンと手を打った。「お似合いかもしれませんね。美男美女カップル誕生ですかね」二人は拓真をネタに盛り上がっている。「俺はまだ、恋とかそういうことをしている余裕はありません」拓真はからかわれたのが恥ずかしくて慌てて二人の話を打ち消したが、拓真の顔は素直に綻んでくる。嫌な事ばかりだから、時には良いことがあったってバチは当たらないよな。そんなことを考えてしまった。赤面した拓真が可笑しくて笑い合う鶴ヶ丘と平良に考えが読まれたようで拓真は更に顔を赤らめた。心が少し軽くなって浮ついた。(終)※当ブログを気に入って頂けましたら、フォローをお願いします!☆以前の小説「みふのもちつき」はコチラ!『特別編 小説「みふのもちつき」第二話の1』「みふのもちつき」第二話 鳴り続ける電話 11階下で母親が夕食が出来たと呼んでいるが望月拓真はベッドに俯せになったまま動けずにいた。電灯さえつける気に…ameblo.jp『特別編 小説「みふのもちつき」第二話の2』「みふのもちつき」第二話 鳴り続ける電話 12拓真の鶴が丘病院での朝は掃除から始まる。みふが出勤する前のこの朝の静かなひと時が拓真の一番安らぐ時間だ。…ameblo.jp『特別編 小説「みふのもちつき」第二話の3』「みふのもちつき」第二話 鳴り続ける電話 33「どうにかして下さい」拓真は鶴ヶ丘に食って掛かる。「どうにかしろと言われてもなあ。ねえ、事務長」「もち野…ameblo.jp『特別編 小説「みふのもちつき」第二話の4』「みふのもちつき」第二話 鳴り続ける電話 44三階に戻ると、みふのポスター貼り作業は始まっていた。院長室前のエレベーターの扉に不器用に貼り付けている。…ameblo.jp『特別編 小説「みふのもちつき」第二話の5』「みふのもちつき」第二話 鳴り続ける電話 55「なんで、無いんだ」拓真はエレベーター前で頓狂な声を上げる。誰かが病院にクレームを付けるためにその証拠と…ameblo.jp『特別編 小説「みふのもちつき」第二話の6』「みふのもちつき」第二話 鳴り続ける電話 66ナースステーション前には人が集っていた。比較的元気な患者が良い暇潰しだとばかりに野次馬になって騒動を見物…ameblo.jp『特別編 小説「みふのもちつき」第二話の7』「みふのもちつき」第二話 鳴り続ける電話 77「はぁ~」拓真と恭子の溜息が重なった。先ずは現場から調べるのが良いんじゃないかと聡士に言われたので拓真は…ameblo.jp『特別編 小説「みふのもちつき」第二話の8』「みふのもちつき」第二話 鳴り続ける電話 88恭子は三階ナースステーション内の一角にある休憩室に閉じ籠もって泣いていた。「あんた何してくれたのよ」アコ…ameblo.jp