木曜日にゴジラ映画を観た後

ディスクユニオンに寄って

ブルスカンティーニが歌う

《奥様女中》のレコードを

引き取ってきたことは

前回の記事に書いた通りです。

 

ディスクユニオンに行くのは

実をいえば久しぶりだったので

さっそく古楽を中心に

棚を見回していたところ

見つけたのがこちら。

 

《奥様女中》クイケン指揮盤(DVD)

(パイオニアLDC: PIBC-2031、2001.11.22)

 

リリース年月日は

商品のどこにも表示されてないので

タワーレコード オンラインに

拠りました。

 

のち、2009年になって

ジェネオンエンタテインメントから

再リリースされたようです。

 

 

本盤は

磯山雅『バロック音楽名曲鑑賞事典』

(講談社学術文庫、2007)で

推薦盤になっていることもあって

ずっと探していた1枚でした。

 

セルピーナ(ソプラノ)が

パトリチア・ビッチーレ

ウベルト(バス)は

ドナート・ディ・ステファーノ

ヴェスポーネ(黙役)を

ステファーノ・ディ・ルッカが演じ

シギスヴァルト・クイケン指揮

ラ・プティット・バンドの伴奏で

おそらくは1996年11月21日に

ブリュッセルのルナ・テアトルで行われた

ライブ録音だと思われます。

 

「思われます」と書いたのは

録音データが、商品のどこにも

書かれていないからでして

(マルC1997とあるだけ)

ここではCD版のデータを参照しました。

 

 

前にも書いたかと思いますが

クイケン指揮のDVDは

Amazon などだと

プレミアがついて

容易に手が出ない値段に

なっていたこともあり

慌てて買いました。

 

プレミアがついたといっても

新譜で出た時と

同じくらいの価格ですが

そもそも新譜で出た時の価格自体

信じられないくらいですからね。

 

そんな値つけにもかかわらず

録音データの記載がないときては

呆れずにはいられません。

 

日本では

CDやDVDの新譜が

どうしてこんなに高いのか

にもかかわらず

データがいい加減なのかと

今さらのように思いますけど

それはともかく。

 

 

映像自体は

以前、当ブログで紹介した

YouTube にアップされているものと

同じですけど

こちらは日本語字幕付き。

 

YouTube にアップされていても

いつなんどき削除されるか

分からないわけですから

手元にディスクで持っているのは

意味のあることだと思ってます。

 

まあ、昭和脳なので

手でさわれるモノそのものを

持っていないと安心できない

という気持ちも

あるかもしれませんが。(^^ゞ

 

 

あと、DVDで買えば

ライナーがついてくるわけで

その記述を読むと

啓発されることも

多いですからね。

 

本盤のライナーの解説は

音楽学専門の佐々木勉ですが

またまた知らなかった情報を

得ることができました。

 

その箇所を以下に引用すると――

 

イタリア語による後世の上演に際して行われた重要な変更は、第2幕(インテルメッゾ)の最後のデュエットの部分のみである。デュエットの「あなたは今、幸せなの? Contento tu sarai?」の代わりに、ペルゴレージが1735年に作曲したコメディア・ムジカーレ《フラミニオ》に含まれるデュエットの「あなたのために私の胸に Per te ho io nel core」が歌われたことがあった。(5ページ)

 

以前

当ブログで紹介したことのある

ネーメト盤のライナーで

Judit Péteri は

次のように書いていました。

 

(1)1752年の初版譜における

  終曲デュエットは

  'Per te ho io nel core' である。

(2)1754年のフランス語版では

  'Contento tu sarai' が

  終曲デュエットになっており

  フランス語版の作曲者によるもの

  と思われていた。

(3)1750年以前に成立したと思われる

  最古の筆写譜でも終曲デュエットは

  'Contento tu sarai' であった。

(4)筆写譜には終曲デュエットの前に

  おそらくは後人の手によって

  前半部分は散失、印刷譜を参照のこと

  と記されていた。

(5)これらを踏まえて本ディスクでは

  'Per te ho io nel core' に続いて

  'Contento tu sarai' が収録されている。

 

Péteri によれば

'Contento tu sarai' を作曲したのは

無名のイタリア人作曲家か

ペルゴレージ本人だったかもしれない

とのことでしたが

今回のDVDのライナーを読んで

ペルゴレージかも

という話どころではなく

まさにペルゴレージ自身であり

当人の別作品からの転用

と教えられたわけですから

驚かずにいられません。

 

ネーメト盤が1986年に出てから

2001年にクイケン盤のDVDが出るまでに

研究が進んでいることを

知らしめられました。

 

 

ちなみに

今回の演奏を収めた

CD版のライナーには

こうした異動について

詳しく書かれていません。

 

ネーメト盤と

クイケンDVD盤を入手し

両方のライナーを読んで

初めて知り得たわけです。

 

ペルゴレージの場合

本の形でまとまった

伝記なり研究書なりがなく

(洋書だとあるかもしれませんが)

知識を得るには

各盤のライナーを

頼りにせざるをえないだけに

やっぱりディスクは買っておくべきだと

改めて思った次第です。

 

 

いずれにせよ

佐々木勉の書いていることが

本当かどうか確認するためにも

(確実に本当でしょうけど)

これは《フラミーニオ》を

聴いてみる必要がある

というわけで

またまた出費が……。

 

といっても

中古で適価だと思うものを探して

買うわけですけど。( ̄▽ ̄)

 

 

なお

クイケン盤は

'Per te ho io nel core' がなく

'Contento tu sarai' のみが

終曲デュエットとして

演奏されています。

 

手元にあるディスクで

'Per te ho io nel core' を

終曲としているのは

シモネット盤(1950年録音)と

ジュリーニ盤(1955年録音)のみ。

 

'Contento tu sarai' を

終曲とするバージョンは

1960年録音の

ファザーノ盤から

ということになります。

 

どうやら

50年代と60年代との間に

研究の進んだようですけど

それが誰によって

どういうきっかけで

ということまでは分からないのが

もどかしいところです。

 

もどかしいと思うのは

自分だけでしょうか(苦笑)