こんばんは。

アレテーを求めて~

今日もトコトコ( ・ω・)

弁護士の岡本卓大です。

 

今回の記事で、シリーズ

今、知っておくべき緊急事態条項の問題

も、いよいよ最終回です( ・ω・)

 

前編 国家緊急権とは何か?

中編 民主主義から独裁が生まれた例~破壊されたワイマール憲法体制

後編 自由民主党の緊急事態条項案とその問題点について

 

 

ここまでの記事を振り返りたい方は、こちらからお読みください。

 

 

 

 

さて、みなさんは、ここまで

緊急事態条項つまり、国家緊急権とは何かについて(前編)、

そして、国家緊急権(緊急事態条項)が民主主義を破壊した実例である

ヒトラー政権によるドイツの例(中編)を見てきました。

 

ここまで、読んでくださった方で、

緊急事態条項を憲法に加える憲法改正をすることに

なんの問題も無いと考える人は、さすがにいないのではないかと思います。

(ごめんなさい。もし、いたら、かなり「センス無い」です。)

 

緊急事態条項は、現在の政権与党である自由民主党が憲法改正の4項目に挙げている

ものの一つです。

 

 

このうち、自衛隊明記の憲法改正については、埼玉弁護士会は反対の総会決議を挙げています。

 

 

また教育環境の充実は、憲法をいじらなくても法律でいくらでも整備できるもので、

憲法改正をしなければならない必要性はまったくありません。

 

さらに、参議院の合区解消は、たしかに憲法改正の必要が出てくる問題ですが、

投票価値の平等との関係で、慎重な議論が必要な問題と言えます。

 

さて、では、本題である緊急事態条項について、考えてみましょう。

自由民主党は、「災害への対応」を全面に出して、緊急事態条項の必要性を

主張しています。

ただ、災害への対応という面では、

災害対策基本法

制定:昭和36年11月15日法律第223号

最終改正:令和4年6月17日号外法律第68号

の109条等の緊急措置の条文が法律ですでに整備されています

 

それ以上に、災害対応のために緊急事態条項創設の憲法改正を行う必要がある

具体的な立法事実についての説明は、現在のところ、なんらされていません。

むしろ、災害の被災地現場からすれば、安全な東京の首相官邸にいる内閣総理大臣なんかに

権限集中しても、ジャマなだけで、役に立ちませんね( ・ω・)

 

 

 

さて、では、自由民主党が本当に作りたい緊急事態条項の内容を見てみましょう。

おなじみの自由民主党憲法改正草案です( ・ω・)

 

 

自民党憲法改正草案98条(緊急事態の宣言)

内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による

社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める

緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、

閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。

 

2 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後

国会の承諾を得なければならない。

 

3 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、

国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移に

より当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、

閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。

また百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、

事前に国会の承認を得なければならない。

 

4 第2項及び前項後段の国会の承認については、第60条第2項の規定を準用する。

この場合において、同項中「三十日以内」とあるのは、「五日以内」と読み替えるもの

とする。

 

自民党憲法改正草案99条(緊急事態の宣言の効果)

緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、

内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、

内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、

地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。

 

2 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、

事後に国会の承認を得なければならない。

 

3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、

当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置

に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない

この場合においても、第14条、第18条、第19条、第21条その他の

基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。

 

4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、

その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の

任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。

 

さて、自由民主党憲法改正草案の緊急事態条項にあたる98条、99条を引用しました。

この条文が、どれだけ危険なものであるかを解説してみたいと思います( ・ω・)

 

 

①緊急事態の判断は内閣がする

緊急事態の宣言、緊急事態の終了を判断するのは、

いずれも内閣です。

 

②国会の承認は事後でもよい

国会の承認は、事後でもよい。つまり、緊急事態宣言自体は、

内閣だけで出せます。

 

③内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定できる

内閣は、「法律」と同じように、

国民の権利を制限し義務を課す、もっと言えば刑罰を科す政令も作れます。

税金も課せます。

 

④緊急事態宣言化の国等の指示には誰もが従わなければならない

緊急事態宣言下で出された国等の公権力の指示には、誰もが

従う義務があります。

 

⑤緊急事態宣言中は、選挙が行われない

民主主義の永久停止だって、できちゃいます。

 

と、このように書くと、いやいや、ちゃんと「国会の承認」必要じゃない、

国会が「緊急事態解除の議決」したら緊急事態解除しなきゃいけないんだから、

内閣だけでの独裁なんてできないよ。

と主張したい方もいるかも知れません。

 

そう思う方に問いたい。

 

第2次安倍晋三内閣以来の現在の自公政権になってから、

野党の出した内閣不信任案、何回否決されたの見てきましたか。

野党や国民が猛反対している法律が何本、強行採決されてきたのを

見てきましたか。

現在の日本の国会の状況を見ていたら、

国会による承認が、なんらの歯止めにならないことは

明らかです。

 

そういうと、いやいや、緊急事態宣言下でも、基本的人権を

尊重しないといけないと書いてあるから大丈夫だ。

と主張したい方もいるかも知れません。

 

自民党憲法草案の他の条文をせっかくなので紹介しておきましょう。

現在の憲法13条と比べてみてください。

 

日本国憲法13条

すべて国民は、個人として尊重される。

生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、

公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、

最大の尊重を必要とする。

 

自民党憲法改正草案13条

全て国民は、として尊重される。

生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、

公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、

最大限に尊重されなければならない。

 

さて、このほんのわずかな文言の違いによって生まれる、

大きな違いがわかりますか?

 

日本国憲法は一人一人が自分の人生の主人公であるという、

個人の尊厳を基本原理としています。

 

 

それに対して、自民党草案は、個人の尊厳の基本原理に立たずに、

「国家の構成員」としての「人」の権利を「公益及び公の秩序」の範囲内で

認めるという考え方を取っています。

(自民党関係者の方、ちがうなら、なぜ文言を変えたか説明お願いします。)

 

ちなみに、第2次安倍晋三内閣時代に、以下のような法律が強行採決されています。

日弁連の意見書等と合わせて紹介します。

 

①民主主義の前提、国民の知る権利に大きな制限を加えることが可能な

特定秘密保護法

 

②平和主義を破壊する自衛隊が海外での軍事行動も可能とする

安全保障法制

 

③現在まで適用例0件。しかし、政権批判する者の「弾圧」にいくらでも利用できる

共謀罪

 

 

この3つに緊急事態条項が加われば、独裁者による支配は簡単ですね。

最初につぶされるのは、人権の守り手である僕ら弁護士かな( ・ω・)?

 

こういう権力の言うこと聞かない人たちが育たないようにと考えるなら、

今の政権が教科書の内容に介入してくるのも理解できる気がしますね。

 

 

 

こういう政権批判的な記事を書くとね。

ネトウヨの人たちは、また「キョクサ」言うと思うんですよ。

憲法学者の樋口陽一先生がキョクサなら、

僕なんかは、キョクキョクキョクキョク・・・キョクキョクキョクサなんでしょうね( ・ω・)

 

 

まあ、僕自身は、剣道も茶道もしてたし、

着物も、人形浄瑠璃も、歌舞伎も、相撲も、

紫式部の文学も和歌も、神社仏閣も、日本のお城も、

およそ日本の伝統文化と

呼ばれるものは大好きだし、

天皇陛下のことも大好きだし

日本の風土も景色も、なによりも、

平和な日本という国が大好きな、むしろ、

保守の人だと思ってるんですけどね( ・ω・)

 

日本の憲法は、ドイツのような「戦う民主主義」は採っていません。

ナチスドイツの支配の経験のあるドイツとは歴史が違います。

 

 

日本の憲法19条の思想信条の自由は絶対的なものです。

内心の思想については、憲法破壊の思想すら禁止しない

とても寛容な憲法です。

 

その寛容さは、太陽の女神・天照大神(アマテラスオオミカミ)を

主神とし、どこにでも八百万(やおよろず)の神々のいる寛容な日本の宗教観と

似ているかも知れません。

 

一つの価値観しか認めない。

そんな考え方は、この日本という国はとってこなかったはずです。

 

 

以前にも紹介しましたが、改めて、この条文を紹介します。

 

日本国憲法97条

この憲法が国民に保障する基本的人権は、

人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、

これらの権利は、過去幾多の試練に堪え、

現在及び将来の国民に対し、

侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

 

この、

今、知っておくべき緊急事態条項の問題

を読んでいただいたみなさんが、それをどう受け取り、

どう考えていくかは、それぞれの方の自由です。

 

あなたは、この国の主権者である国民の一人であり、

そして、あなた自身の人生の主人公であるかけがえのない個人です。

私個人は、そういうかけがえのない一人一人の個人の命や生活、

そして、個人の尊厳を破壊することにつながる権力の動きに対しては

たとえ最後の一人となっても抵抗する。

それが、岡本卓大という一個人の考えです。

 

読んでくださり、ありがとうございました。