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 桂川漁協が禁漁になるので、最後にちょっとだけ何時も川に。

新しい相棒、とは言っても11年落ち、5万キロの中古フォレスターは自分と同じ中年野郎と言った感じだ。

 垂平対向エンジンの子気味良いサウンドが....なんて能書きは、根っからのスバリストである爺(義父)ですら言わないけれど、結構いやだいぶ気に入ってしまった。

 だから釣りはチャチャっとやって、仕事の現場にもいかにゃならんし、渋滞が始まる前にクネクネした中央道を(制限速度で)ぶっ飛ばしたいのだ。

 日曜日という事もあって、終始瑞々しい足跡を追いかけての厳しい釣りとなったけど、食い気がある癖に異常な警戒心を見せるヤマメの反応がむしろ面白かった。

  この川での釣りの最後に相応しいヤマメが、今迄一度も魚が出た事のない小滝の脇の巻き返しから出てくれたけど、柔らかい竿なのに取り込み場所を考えずに毛鉤を放ってしまう悪い癖が災いして、滝の上からぶら下げてしまい、あと50cmの所でポロリ。

 でも、良いヤマメを見る事が出来て良かった。


もうあと100m位で退渓場所、最後はきっとこんな状況にピッタリだと思い、あなさんからもらったカケスの羽を巻いた毛鉤を結ぶ。

 尺ヤマメとは言わないけれど、9寸位は出るだろう。



 少し深めのレンジを意識して流心脇を流す。

もそもそ....

もそもそ.....

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やっぱりコヤツか........


有終の美なんてのは、幻想だ。

第一に、今日の釣りは新しい中年相棒との初戦なのだから。

来シーズンは、この赤いSubieがきっと凄いのを引いてくれるだろう。

尺3寸のヤマメとか、二尺のイワナとか、



助手席に釣りギャルとか.....






ないか。


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オマケ、Subieがポルシェ スピードスター(レプリカ?)を抜く



制限速度で。




9万キロの中古車の割には、とても綺麗な状態を格安で購入してから4年。

17万キロに達し、修理をして車検を通せばまだまだ乗れない事もないのだけれども、

費用他、イロイロ考えると、キミとはお別れした方が良さそうだ。

何度かスタックした時に脱出に苦労した他は、いやそれは自分が悪いのだけど、


何の不満も無い良い車だった。



廃車にする事を決めた途端になんだか燃費が異常に良くなったが、

新しい相棒を決めた途端に右の足回りから異音が始まった。

左のブレーキも鳴り出した。

オイルもにじみ出している様だ。


泣いても叫んでもも、キミと釣りに行くのは今日が最後。

幸い、天気も良い.....のだけど、この丹沢の川は.....


去年の最終釣行で初めて挑戦してボウズ。

今年は、雨の日にバカ釣り2回。

果たして、こんなピーカンの祝日に釣れるのだろうか?

という不安を諦めに転嫁したいので、あえて遅出の8時出社。

車止めには既に4台。


諦めに転嫁したいなんて言いつつも

4台のうち2台は源流の沢と登山者で

残り2台は車止め付近であり、

自分の釣りたいその中間はもしかしたら.......


なんて都合の良い事がある筈は無かった。


それでも、少し時間を置いたのが良かったのか、普通にイワナもヤマメも釣れた。






前の2回ほどのヤマメフィーバーは無かったが、

真っ黒なワイルドなイワナや

尺イワナも釣れた。





BLACK & GOLDの超ゴージャス&ワイルドイワナに写真撮影を断られたのは少し残念だったけれど、

半日で充分満足して納竿。

たまたま釣れたからそう思うのかもしれないけれど、丹沢の沢はテンカラでやりやすい渓相が多いと思う。



(この沢はそうでもないな....)


そこで、ヤボな試算をしてみる。


桂漁協年券 ¥4,200
高速代
大月まで日曜日25回として 
往復3,140x25=¥78,500

合計で¥82,700


この内10回を丹沢に割り振れば


桂漁協年券 ¥4,200
高速代
大月まで日曜日15回
往復3,140x15=¥47,100


相模川漁協年券 ¥10,000
高速代
八王子バイパスも使って日曜日10回
往復1,760x10=¥17,600


25回の合計は

なんと!

¥78,900

で、ちょびっと安くなる。

丹沢比率を上げれば、更にオトクになる。

年券購入決定だ。


野暮ついでにお前の修理代も計算してやる。

クラッチ板交換、ブレーキパッド交換、タイヤ交換、他消耗品アレコレしめて..........





どうした事か、帰りの高速では異音もブレーキも鳴き止んだ。



酷使するだけで、ちっとも可愛がって来なかったけど、

やっぱりちょっと寂しい。

いろんな思い出があるんだ。









バイバイ、ステッピィ。
前夜は20年来の仕事仲間が集まり久しぶりの酒宴

当然、翌朝は早起きなんて考えていなかったけど

禁漁を目前にして

やり残した夏休みの宿題をギリギリになって片付ける小学生の様に

思い入れがある小さな沢に午後から来てみる。




盛夏に比べれば、明らかに衰弱した陽の光りだけれども、

もともと暗いこの沢ではありがたく、そして心地よい。


下流の方に居る筈のヤマメは出ず

最初からイワナ。

イワナを釣りに来ているのだからそれで良いのだけど、

珍しく出てくれた良い型は掛けられず

小さなイワナばかり。





この沢はそれでも良いと思って来ているのだけど、

今年の雪で倒木が多く、竿をだせるポイントが激減しているだけでなく 

只でさえ傾斜がキツい沢なのに、溯行が更に大変だ。






この山がまだ裸の赤子だったのが、いったい何億年前の事なのか知らないけれど

それに比べれば僅か一瞬にして出来上がったこの植林も

人の手が入らなくなればいずれ絶える事だろう。


その跡にはきっと小さな草が生え

もう少し大きな草木が地表を耕し

落ちて来る大きな木の実が育つ土壌を作るだろう。


大きな木は、広い範囲にしっかりとした根を張り、

複雑に張り巡らされた根は、岩山の上に張られた表土をしっかりと押さえつつも

土壌に小さな隙間を無数に作り

山に降った雨をたっぷりと蓄え

少しずつ沢へと流すから

沢の水は増え

溜まった土砂は押し流され

小さな砂利のベットが沢山出来て

イワナは其処で子を増やし

少し大きな淵ではイワナの遊泳が沢山見られる様になるだろう。



その姿を、自分が生きている内に見る事が出来ないだろうという事は残念だけれども

その姿を再び見ずして種ごと絶えてしまった生き物の無念に比べればたいした事ではないのかも知れない。







いつもなら、大滝を巻くか巻かぬかで悩むのだけど

今日はその前の小滝のポイントで一尾も出ず、

それは、多分くっきりとした足跡のせいだとは思うけれど、

なんだか変な疲労を感じて

大滝を見ずにして、引き返す事にした。








少し退屈な登山道歩きだけれども、猿の顔をした岩が面白かった。




前方に先行者

道路がある左岸は断崖絶壁

入渓地点に戻って入り直すにも、かなり上流になってしまい、また別の先行者がいないとも限らない。

Nにとっては最終戦になるかもしれないので、それはあまり宜しくない。

取り敢えず先行者に何処まで行くのかを聞いて見ると

ずっと上まで

と答えるけど、詳しく聞いてみれば、そんなに上でもない。

かと言って、ゴルジュの連なる小渓流で、先を歩かせてくれとも言いづらい。

ふと、右岸を見れば、なんだか登り甲斐のありそうな尾根が見える。

地形図の見れるGPSで確認すれば、その尾根の先端は、また別の尾根につながり、それを下って適当なところで緩やかな谷筋に降りればどうやら目標地点の近くまで行けそうだ。





もちろん、ピークまで登るなんてのは最悪の場合で、途中でなんとかトラバース.....

という目論見は、竿をたたみ、いざ釣りやめて登山態勢のNには話さないでおくけど、

こんな都合の良いことがあるのだろうか、

取り付いた尾根はシッカリと踏まれており、それもそのはず、その道を辿ると植林地帯の仕事道に繋がっていた。

そうして、難なく数百メートルのトラバースはむしろ川筋を歩くより早かっであろうし、ちょっと不安だった下降も念の為の安全確保でロープを一度出しただけで完了。


ちょっと出来過ぎ感があったけど、その分は釣りの方で相殺されたみたいで、これと言った良い型は釣れなかった。

それでも、一匹先行交代で仲良く釣り上がり

去年はこの沢ではボウズだったNも、イワナとヤマメを釣った。

小さなヤマメに僅かだけど、婚姻色の兆し。





暗いゴルジュが多い谷にも、正午頃には少し弱々しいけれど、秋の陽が差し込む。




昨年は月に一度は来たこの沢も、今年はこの2回目でオシマイ。

途中の山に付けられた名前がNの名字と同じ事が判り、



それじゃ、今度は釣りナシで登ってみるかと誘うけど、

今日の登りが懲り懲りだったらしく、Nにその気は無い様だ。




それでもきっと、来年もちょくちょくと来るだろう。





とても好きな沢だ。






















 スレている。

 なんて、魚のせいにはしたくないけれど、

 いつもの川には人を恐れずに毛鉤を恐れる強者が沢山いる。


 毛鉤を流れに揉ませ、安心して魚に咥えてもらうのが一番確実な釣り方だと思ったりもするのだけど、

 あなさんからもらった羽根で巻いたカケス(カワセミじゃなかった 笑)毛鉤は、そんな釣り方にピッタリの様で、

 良い型を次々と引っ張りだしてくれる。

 が、バラシ病にかかってしまったみたい。



 平日の仕事帰り、大物狙いで来てみたけれど、神様は今日も無慈悲。


 
 自分が知っている、もう一つの釣り。

 誘う釣り、の練習をしてみる。


 なんとか釣れるけど、まだまだ偶然の域を出ない。

 ひたすら修業の道。


 それが楽しいのだから、しようがない。





 どうしても負けられない戦いだった。

 うっすらとしたパーマークを浮かべるその魚は、

 その驚くべき体高が生み出す推進力で頭を下に突っ込む。

 硬調の竿を大きく曲げる。

 こちらは、なんとかして頭を上に上げようと引っぱる。

 魚との綱引きだった。


 



 6月に一度訪れて以来のこの川。

 その時も雨だったが、随分と人が多かった。

 幸い、その朝一番で自分が釣った場所は先行者がなく、

 とても良い釣りになった。


 今日は止まっている車が殆どない。

 最後の車止めの所で引き返そうとするフライフィッシャーに声をかける。

 もう10時近くだったので、きっと朝一番に車止めから近い所をやったのだろうけど、ダメだったみたいだ。


 自分は前回よりも、少しだけ先から入る。





 前回以上に釣れた。

 イワナが釣れた。

 ヤマメも釣れた。

 大きな毛鉤で釣れた。

 小さな毛鉤でも釣れた。

 大場所で釣れた。

 小場所でも釣れた。

 本沢で釣れた。

 枝沢でも釣れた。

 行きに釣れた。

 帰りも釣れた。

 兎にも角にも釣れた。





 秋の荒食いと雨が重なり、最高の条件が揃ったみたいで、

 誰が何をやっても釣れた状況だったと思う。


 でも、本気で釣りをしたのだ。


 厳しい丹沢の川にも沢山魚が居る事が判り、

 雨だけれども、晴々とした気持ちで大滝を眺めるつもりだった。




 そのヤマメに鈎を外されるまでは。


 むしろ何時もの様に、

 ”サヨウナラ”

 と言いながら毛鉤に出てくれたのなら、

 どんなに清々しかった事だろう。




 大滝は煙の中。





イワナのもっとも堅固な隠れ家は『昔』の中である。





という出だしが良いと、チャンショーが薦めるので、湯川 豊の『イワナの夏』を読んでみる。

短編集であり、最初の話が、本のタイトルと同じ『イワナの夏』と言うお話で、

この中に出て来る元職漁師の宿屋のオヤジが釣りではなく手掴みで用水路にイワナを捕まえる件は、

イナカの隣町のおじさんとほぼ同じやり方であり、自分と初めて本物のイワナの出会いを思い出し、グイグイと引き込まれる様に読んで行く。

『渓流乞食』『夜のイワナ』も面白い。


だけど、その次に来る『ヤマメ戦記』で、頁をめくる指が止まった。

ヤマメ釣りの話なんてきっと面白くない、という先入観があるから。

ヤマメ釣りが嫌いな訳ではない。

むしろ単純に釣りだけを比べるなら、イワナ釣りよりヤマメ釣りの方が面白いと思う位にヤマメ釣りは好きだ。

普段の釣りも、里川に毛が抜けた様な所が殆どだし、ヤマメの方が馴染みのある魚になっている。


でも、ヤマメ釣りの話はあまり面白く感じない事が多い。

と言うより、イワナ釣りの話に面白いものが多いと思う。


それはおそらく、イワナという魚の持つ独特の風貌と愛嬌とか、神秘性とか、その舞台が源流である事とか、昔のマタギ等人間との関係とか、

ともかく、お話として面白くなる要素が多いのだと思う。


一方、ヤマメの話と言えば、イブニングライズの話であったり、小さな毛鉤の話であったり、少なくとも自分にとってはあまり縁のない話が多い。

それに、ヤマメ釣りの面白さと言うのは、たぶん一瞬、水面に出るにしても、水中で翻るにしても、その一瞬の快楽に凝縮されているものなのかもしれない。

それは文章にするにはあまりに短い瞬間なのだろう。



そんなことはさておき、

共に『イワナの夏』をすごしたNに、こんどは近場だけれども、奥の沢か手前の沢か、どちらに行きたいかと聞くと、

迷わず奥の沢と答えた。

その沢は、去年の春、Nにとっては2戦目となるテンカラ釣行だったのだけど、Nだけでなく自分もボウズを喰らった屈辱の沢だ。

沢とは言っても規模のあるその沢で9寸~泣弱のヤマメも二度釣っているし、とても良い沢なのだけど、人気もあり、なかなかタイミングが難しい川だと思う。




イナカの沢のイワナ釣りで自信をつけたNはあえてその沢でヤマメにリベンジしたいと言うのだ。


そうして、日曜日の朝、うっすら夜が明ける頃、二人で林道を歩き始めた。

とは言っても、目的はヤマメなのであまり上流には行かない。

イワナしか釣れないのでは困るので、下の方でヤマメを釣るのだ。



春に骨折した足は、大分言う事を聴く様にはなってくれたけども、まだ不安が残るので、谷におりる際にもところどころロープを出し慎重に降りる。

良いときならば、その辺の渕尻にヤマメが着いて居る筈だけど、姿が見えないと言う事は、沈んでいる日なのかもしれない。


(おち◯ん◯んまで冠水して震えるN)

魚を一尾も見る事なく、最初の滝釜に着く。

ここの釜の岩盤のぶっつけから、一尾毛鉤を見に来るが、咥える気配はない。

二度目は出ない。

おまけに、最初の足がかりさえ掴めれば難なく登れたはずの滝も、次の足がかりが見つからず、どうやっても取り付けない。

仕方なく巻いた後も、さっぱり魚が出ない。




先行者はいないけど、急に寒くなったせいなのか、前日の物と思われる新鮮なゆで卵の殻のせいなのか。


こんな時は決まって、Nは自分に先をやれと言う。

魚を探りながら先行するも、やっぱり出て来る気配がない。

しばらく進んでから、Nが付いて来ていない事に気付く。

もしや、と思い引き返してみれば、

Nはやっぱり大岩の上で、大の字になって昼寝(とは言ってもまだ朝だけれども)をしていた。


ところで、最近は血液型の性格診断なんてのは全くの無根拠だというのが定説の様で、たしかにそれはそうかも知れないけれど、

自分とは考え方や性格が違う人間が居ると言う事を理解するのには充分役立っているのじゃないかと思う。

現に、目の前の大の字昼寝中のB型人間にO型人間が小石を投げつけるという行為を抑止するのに充分役立っている。


叩き起こすのも悪いので、自分も大淵の高みの見物と座り込んだ。

もし、釣り人が入らない様な川だったら、きっと何十匹もの魚が見られるだろう立派な淵だ。

だけど見る事が出来た魚は一尾だけ。

それも、かなり水深のある淵の中央の、真ん中にある大きな沈み石の下のスキマから

時々は顔をだして捕食している様だけど、また直ぐに隠れてしまう。


しばらくぼんやりその淵を眺めているうちに、Nがちんたらと上がって来た。

試しに、毛鉤を遠くの緩い流れに落として沈めてみるが、やはり魚のレンジまでは届かない。

ガン玉なんかを使えば(持ってないけど)、底まで沈める事は出来るかもしれないが、反応させることは出来たとしても、釣れるかどうかは別の問題だと思う。

眺めるだけにして、その先に進んだ。




まだ8月だというのに、曇り空で肌寒い沢床にも少し陽が射したのは良い兆候だったみたいで、少しずつ魚は上向きになって来た様だ。

もうすぐ釣れると思い、リベンジ目的のNに先を譲ろうと思うけど、

たぶん、現物をみないとモチベーションも上がらないだろうから、その前に小場所から小さなイワナを釣る。




もう、イワナとかヤマメとか、大きいとか小さいとか、そんなの二人ともどうでも良くなっていた。


Nに先を譲って、後ろから付いて行く。

自分は人に釣りを教える事が出来る様なウデも経験もないけれど、

その自分が見ても、Nの釣り方ではこの沢のこの状況では通用しないのは明らかだった。


11尺の短めの竿のクセに、アプローチをびびりすぎて、ポイントに毛鉤が届いていないのだ。

かろうじて届いたとしても、目一杯張ったラインはすぐに毛鉤を引きずってしまい、

表層にいるならまだしも、底に沈んでいる魚が仮に出たとしても、まず咥えることは出来ないだろうという流し方だった。

その釣れない釣りの道は、自分も通って来た、というよりまだ出口が見えない道だけど、

その原因の一つは、あまりに渕尻の魚を走らせてきた為に、番兵以上にこちらが魚を警戒しちゃっているのだ。

もう一つは、どんな本にもうるさい程繰り返されて述べられるアプローチについての注意書きだ。

だけど、アプローチが大切と言う事は、単に距離をとると言う事だけではなく、少なくとも沢での釣りでは、ギリギリのアプローチを楽しむと言う事も含まれているのではないかと自分は思う。
 
そもそも、今日は渕尻に魚はいない。

どんなにアプローチが大切だとしても、沈んだ魚には毛鉤をちゃんと気付かせてせてやらなければ、その為にはなるべく一カ所に毛鉤を留める様な流し方をしなければ釣れる筈がないと思い、

へっぴり腰で流心を挟んだ反対側を狙うNに

それじゃぁ、やっぱり毛鉤が直ぐに表層の速い流れにさらわれてしまうから、

”あと五歩前じゃ!!”

と叫んでみる。


あっけなくヤマメが釣れた。


(写真ではカワイコちゃん風だけど、良いヤマメだった)

大きくはないけれど、まぎれも無くNが求めていた格好の良い沢のヤマメだ。




ホントなら、さあこれからって所なんだろうけど




ガレ場を越えた先はなぜか堰堤上の様なチャラ瀬が続き、

その先には泳ぎの淵。




この寒さじゃ、さすがに泳ぐ気にはなれず、

来年の夏にでもこの先は、できれば沢泊なんかしちゃったりして、

ゆっくりやろうと言う事になり、

Nが拾った鹿の角を土産にして引き返した。



この日は一度は戦力外通告したトランクスを久しぶりにローテーション入りさせようと履いてきたのだけれども、

駐車場で着替える時に、どうした訳かおしりの部分がボロボロに破けているのをNに発見され、

自分のお尻はきっとこの日のヤマメと共に永遠にNの脳裏に焼き付いた事だろう。





家に帰って

再び頁をめくった。

面白い事が書いてあった。


イワナは毛鉤にコンニチワと言いながら出て来る。

ヤマメは毛鉤にサヨウナラと言いながら出て来る。


確かに、そんな感じかもしれないと

この日の釣れない釣りを思い出しながら

薄ら笑いを浮かべる自分を


B型のカミさんはどんな風に思い、見ているのだろうか。









(ところで)

あなさんが、先日の釣行での自分のヒットシーン(チビヤマメ)を撮影してくれて ブログYOU TUBEにアップしてくれました。釣っている自分を初めて見るので、嬉しくてリンク張っちゃいます。

あなさんと釣りに行った。



たとえインターネットが情報のゴミ山だったとしても、ほじくり出せば宝がザクザクと出て来る。

その中でも、ひときわ輝いて見えるのは、釣れる川の情報でも、釣れる毛鉤の写真でもなく、実際に川で釣っている人だと思う。

そういう輝かしい人達と、ブログやSNSで繋がると言う事だけでも、インターネットというのはその弊害以上に素晴らしい面を持ったメディアだと思う。



あなさんに初めて会ったのは、実はPCのモニターの中でも、携帯電話の液晶画面の中でもなく、川の中だった。

とても気さくに話かけてくれたのだけれども、それから2年半後、また同じ川の中に立てたのは、やっぱりインターネットのお陰だった。




だけど今日は、生身の躰で沢を溯行し、リアルな魚を釣って、本物の香りがするコーヒーを二人で飲む。




そりゃ、ベテランのあなさんに、釣果では敵わないけど、

でも、そんなの関係ナシに沢と釣りを楽しんだ。




あなさんはルアー専門なので、多分毛鉤を巻いた事はないと思うのだけれども、

どこで入手したのか

野生のカワセミの羽を自分の為に持って来てくれた。


カワセミなんて使った事はなかったけれど、気になってちょっと調べてみたら、

英語ではKing fisher と言うらしい。

確かに、オイカワなんかを捕まえている写真は良く見る。

なんて縁起の良い名前なのだろう。



一本巻いてみた。

コイツで尺ヤマメなんて釣ったら、

最高の恩返しなんだろうけど、


リアルな沢はそんに甘くはないだろうから

とりあえずは

毛鉤ケースのお守りにしよう。



でも、いつか、ココゾという時に、


King fisher kebari


 

(イナカでは、家の中にもいろんな虫が入り込んで来るけど、これ(ザトウムシ?)は初めて見たかも)


 東京に帰る予定の日も朝から雨で、釣りはもう諦めた言うより、もう充分だった。

 だけどせっかく来たのだから、

 お土産のミョウガを摘んで、

 この家のかつての主に線香をあげた後は、

 同窓会の為にもう一泊する爺にお別れをして、

 それからとうとうタバコすら買えなくなった集落を離れ



 崩壊で何年も通れないでいるルートよりは随分と遠回りだけれども、

 集落から見るのとは反対側に廻ってこの山を拝む。




 この山は、この辺では最も有名な川の源流域の付け根にあり、その源流は自分もいつかは行ってみたいと思っている憧れの源流でもある。

 でも、やはりこの山は至近距離でみるよりも、自分の集落側から、それもまだ5月頃、雪がスッポリ被った姿が一番美しい.....と、自分は思う。

 この辺の沢の下見をしたり、




 大雨の中開かれていた地元の釣り大会を見学したり、

 〆はやっぱり温泉なので、


 Nに川原の温泉と、ちょっと珍しい赤い温泉のどちらが良いかと聞くと、迷わず赤い温泉を選んだので、

 のんびり赤いお湯につかり、

 そこでこの旅初めての外食となるイワナ丼(甘露煮、オススメ)と蕎麦を喰い、

 帰りたくないと言うNを車に押し込み帰路に着いた。


 Nも、本当にイナカの事を気に入ってくれて良かった。




 家に着き、爺にお礼のメールをした。

 これまでも、ちょっとした用事で爺にメールを打つ事はあったが、返事が来た事はない。

 その爺からこんな返事が来た。





 携帯メールだって立派な手紙だ。

 爺からもらった二番目の手紙だ。



 たったこれだけのやりとりだけど、爺がますます好きになった。

 でも、自分が爺を好きなのは、単に良い人であると言う事だけではなくて、

 この村、集落、山、川、森、全てが大好きな事と




 全く無関係なことではないのだと、




 思うんだ。




 爺からの手紙(終)






























 その沢の入口は、林道を使ってすぐすばまで車をつける事が出来るし、実際去年も今回の下見の時にはそうしたのだけれども、どうして一般車両が通行止めでないのかが不思議なくらい、悪い道だ。

 しかも、この日は午後から雨が予報されており、雨の流れるその林道を車で帰ることはあまりに恐ろしかったので、車を下の方に止めて30分程歩く事にした。

 幸い、この日は先行者はいない様だ。

 それでも、入渓場所からしばらくは釣りにならないと思ったので、暫くは自分が先行し魚を探りながら、

 でも、二人で美しい沢と森を堪能しながらしばらく釣り上がった。




 時々、Nにも先をやらせたが、やはり魚一匹見えないらしい。





 
 二日前に、初老の釣り人と出会った付近にたどり着いた頃、生暖かい風が吹き出した。

 きっと雨とイワナを呼ぶ風だ。

 場所も核心部に近いと思ったので、その先はNに交代した。






 直ぐに、一尾釣り上げ、



 もっとやれと言うと、また一尾。

 ちなみに、Nももちろん自分で毛鉤を巻くが、この時の毛鉤は先日のビデオブログで公開した完全手巻き逆さ毛鉤。ここのイワナは毛鉤を選ばない様だ。


 そこからは仲良く一尾釣ることに交代で釣り上がる。

 本命の大場所で、自分が毛鉤を水中の枝に引っ掛けてしまい、この沢の主を走らせてしまったことも、笑い話。









 小滝が続く所は竿を畳んで通り抜け、小沢の出会いでNが握ってくれた握り飯で早めの昼食を摂る。



こんな小さな水流を眺めながら





 その先も、大きな魚は出ないが、見事に6~7寸で型がそろい、少しずつ降り出した小雨の中、次の沢の出会いを目標に釣り上がるが、予報よりも早く昼前には大雨となってしまった。




 その出会いの先はどうなっているのだろう?

 もちろん、確かめたい気持ちもあったけど、

 もうそんなこともどうでも良いくらい、二人とも満足していた。


 それに、楽しみはまだまだ終わらなかった。

 帰りの山道にはブナだけでなく、大きなトチの樹もたくさんあり、




 それは、今は亡き爺の父上がもっとも好んで使った木でもあったので、自分にとっても親しみのある木だった。


(仕上げられる事がなかったテーブル材)


(同じく、小物の材料)

 また、食用にするには手間のかかるトチの実も、飢饉の時にはこの辺の人々の腹をみたした貴重な澱粉質であったとの事だ。




 Nがブナに刻まれたクマの爪跡を見つけた。




 やはり沢山居るのだろう。




これはチョっとヤバイやつかな。黄色いのもあった。







 良い山道だったけれど、雨で滑るので危ゆい場所はロープを出しつつ


(楽々と降りているバカが居ますが、滑るとこの下は結構ヤバイ)

 もう一度沢に出会う頃にはヘトヘトだけど、








 最後の林道は綺麗な蝶を追いかけたり、



 Nがよくやるあの手でトンボを捕まえたり、



 そうやっているうちに、雨はすこし止んで来たけれど、

 なんの未練もなく、僕らの冒険は終わった。


④に続く