その沢の入口は、林道を使ってすぐすばまで車をつける事が出来るし、実際去年も今回の下見の時にはそうしたのだけれども、どうして一般車両が通行止めでないのかが不思議なくらい、悪い道だ。
しかも、この日は午後から雨が予報されており、雨の流れるその林道を車で帰ることはあまりに恐ろしかったので、車を下の方に止めて30分程歩く事にした。
幸い、この日は先行者はいない様だ。
それでも、入渓場所からしばらくは釣りにならないと思ったので、暫くは自分が先行し魚を探りながら、
でも、二人で美しい沢と森を堪能しながらしばらく釣り上がった。
時々、Nにも先をやらせたが、やはり魚一匹見えないらしい。
二日前に、初老の釣り人と出会った付近にたどり着いた頃、生暖かい風が吹き出した。
きっと雨とイワナを呼ぶ風だ。
場所も核心部に近いと思ったので、その先はNに交代した。
直ぐに、一尾釣り上げ、
もっとやれと言うと、また一尾。
ちなみに、Nももちろん自分で毛鉤を巻くが、この時の毛鉤は先日のビデオブログで公開した完全手巻き逆さ毛鉤。ここのイワナは毛鉤を選ばない様だ。
そこからは仲良く一尾釣ることに交代で釣り上がる。
本命の大場所で、自分が毛鉤を水中の枝に引っ掛けてしまい、この沢の主を走らせてしまったことも、笑い話。
小滝が続く所は竿を畳んで通り抜け、小沢の出会いでNが握ってくれた握り飯で早めの昼食を摂る。
こんな小さな水流を眺めながら
その先も、大きな魚は出ないが、見事に6~7寸で型がそろい、少しずつ降り出した小雨の中、次の沢の出会いを目標に釣り上がるが、予報よりも早く昼前には大雨となってしまった。
その出会いの先はどうなっているのだろう?
もちろん、確かめたい気持ちもあったけど、
もうそんなこともどうでも良いくらい、二人とも満足していた。
それに、楽しみはまだまだ終わらなかった。
帰りの山道にはブナだけでなく、大きなトチの樹もたくさんあり、
それは、今は亡き爺の父上がもっとも好んで使った木でもあったので、自分にとっても親しみのある木だった。
(仕上げられる事がなかったテーブル材)
(同じく、小物の材料)
また、食用にするには手間のかかるトチの実も、飢饉の時にはこの辺の人々の腹をみたした貴重な澱粉質であったとの事だ。
Nがブナに刻まれたクマの爪跡を見つけた。
やはり沢山居るのだろう。
これはチョっとヤバイやつかな。黄色いのもあった。
良い山道だったけれど、雨で滑るので危ゆい場所はロープを出しつつ
(楽々と降りているバカが居ますが、滑るとこの下は結構ヤバイ)
もう一度沢に出会う頃にはヘトヘトだけど、
最後の林道は綺麗な蝶を追いかけたり、
Nがよくやるあの手でトンボを捕まえたり、
そうやっているうちに、雨はすこし止んで来たけれど、
なんの未練もなく、僕らの冒険は終わった。
④に続く