2008年2月・冬の青森旅行(9)
- 最果て旅情・津軽線 -
蟹田から、14時ちょうど発の三厩行き、津軽線普通列車に乗り換える。
1両目と2両目とでなぜか塗装が違っている。
車内は固定式セミクロスシート。車端部がロングシートになってはいるものの、デッキ付きボックスシートの車内は、昔の「急行形」を髣髴とさせる。固いボックスシートは、決して座り心地が良いものではないが、しかしどこか懐かしい旅情を感じさせてくれて、結構好きだったりする。
車内はガラガラに空いている。乗っているのは、地元の老人と言った感じの人ばかりだ。勿論、観光客の姿など皆無。
民家もほとんど見当たらず、ただただ何も無い、真っ白な大地の中を列車は走っていく。
もう、どうしようもない最果て感が漂っている。途中、蟹田で分かれた、北海道へと延びる津軽海峡線の発展に比べ、こちらの津軽線。時代に取り残されてしまった様な、そんな一抹のわびしさも感じる。
途中駅ではほとんど乗客の動きは無い。誰も乗ってこず、誰も降りることも無く…。
そしてただただ、列車は何も無い大地の中を走って行く。
この路線には、国鉄型気動車がよく似合う。最近造られた車両では、この寂れた雰囲気には全く似つかわしくないだろう。
このキハ40でも悪くない。悪くない、が、キハ52なら文句の無いところだ。逆にキハ58では、少しスマート過ぎて合わないかもしれない。
どれぐらい走っただろう。それまでずっと平原の中を走っていたのが、車窓にぱっと海が広がる。
終点は近い。
そして、14時39分。津軽線の終着駅「三厩」に到着だ。
雪深い、冬の三厩駅。いかにも、北国の最果て駅、と言ったムードが漂う。
遂に…遂に来てしまった津軽半島最北端。終わりの駅「三厩」。
もう、どうしようも無くわびしい。ただただ寂寥感だけが漂う。しかしこの、切ないまでの、どうしようも無く寂れた雰囲気がたまらない。終着駅好きならば、一度は行ってみる価値のある駅だろう。
僕が独り、駅のあれやこれやを眺めているうちに、他の乗客は皆、駅からさっさと出て行ってしまい、取り残されたのは僕だけ…。駅員も僕の切符を見るや否やどこかへと消えてしまった。
見知らぬ土地の、最果ての駅で、文字通りただ独り。こんな時間もたまには悪くない。
折り返しの列車まで時間があるので、駅を出てあたりを歩いてみる。車窓からは海が見えた。駅からも近そうだから行ってみることとする。
人っ気の無い道をとぼとぼと歩く。幸いにも風も無く、さほど寒さは感じない。
果たして、5分も歩くと海に辿り着いた。
曇天の空模様、深く積もった雪、そして暗い表情をたたえた海…。なんとも荒涼としている。
終着駅「三厩」とその辺りの景色と。そこから続いていた寂寥感が、一気に凝縮されたかの様な、そんな光景がそこには広がっていた。
まさに「津軽海峡冬景色」。
なんとも遠くへ来てしまったものだ…。そしてなんとも凄いところまで来てしまったものだ…。
僕はただただ、海を眺めながら物思いに浸るのだった。
2008年2月・冬の青森旅行(8)
- 特急「スーパー白鳥」と津軽線 -
2008年2月22日(金) 今回の青森旅行も最終日。天気は穏やかな晴れ模様。
昨日の「祭り」がまるでもう夢の中の出来事だったかの様な、不思議な気持ちのまま身支度をし、宿を出発する。
バスに乗り、八戸へと向かう。本当は、帰りこそ青森行きのバスを使おうと思っていたのだが(青森行きのバスならばフリー切符で乗れる為)、やはり4時間もバスに揺られるのが苦痛だと判断し、結局行きと同じく八戸ルートを選択。
十和田湖を9時に出発し、11時20分頃に八戸駅へ到着。
今日はここから、青森へと戻り、そのまま津軽線へ旅してみようと思うのだ。最果て路線の津軽線、一体どんな路線なのだろうか。
八戸駅でしばらくの待ち時間があり、昼食用の駅弁を買うなど所用を済ませ、12時16分の特急「スーパー白鳥」に乗る。
この「スーパー白鳥」も乗るのは初めてなので楽しみだ。実を言うと八戸ルートを選択したのは、少しでも長く「スーパー白鳥」に乗りたかったから、と言うのもあったりする(笑)
「スーパー白鳥」の車両は789系。JR北海道の車両だ。同じく北海道の、宗谷本線を走るキハ261系気動車の電車版と言った趣きのスタイル。
先頭部サイドには「HEAT789」のロゴ。
車内は、格子柄の床にブルーの天井、それに座席のカラーがブルーとレッドのランダム配置になっているのが印象的。座席のカラーを除けば、やはり261系とよく似ている。
しかしこの車両、ボディカラーが鮮烈なグリーンと言うのが非常に独特だ。なかなか無いカラーだと思うが、スマートでカッコイイと思う。(単に僕が緑色が好きだから、と言うのもあるかもしれないが)
12時16分。定刻通りに八戸を出発する。自由席車内は、それなりには乗客がいる。とは言え、隣の席には誰もおらず、気がね無くくつろぐ。
八戸駅で購入した駅弁、その名も「大漁市場」。味付けご飯の上に、イカの煮たやつ、ホタテ、ウニ、イクラ、カニと色々盛りだくさん。1300円とちょっと高めだが、非常に美味かった。
そしてビール。昼間から列車の中で飲むビールは何故にこんなに美味いのか。思えば、こんな旅も久々だ。最近は旧型気動車をメインにした旅が多く、その場合、旧型気動車に敬意を表し、車内では飲まない様にしていたのだが、今回の旅はそれとは全く関係の無い旅なので(自分の心の中で)何にも気がねすることなく飲める。
「スーパー白鳥」、昨日の朝に乗った「つがる」に負けず劣らずなかなかの俊足ぶりで突っ走る。偶然にも「モハ」の車端部の座席に座ったせいでモーターの唸りがよく聴こえてくるのだが、これがまたなかなか心地良い。たまにはVVVFの音も悪くない。
ふと、車端部の電光掲示板に目が留まる。最近の車両では珍しくもなんとも無い設備だが、今の列車の現在位置が表示されるのがちょっと変わっている。
また、手元の車内誌がJR北海道のもので(当然と言えば当然なのだが)、改めてこの「スーパー白鳥」は北海道への直通列車なのだ、と言うことを認識させられる。車内誌をぺらぺらめくっていると、湧き上がる北海道への憧れ…。このまま仕事をもう数日休んで、北海道まで行ってしまいたい衝動にかられる。
列車は13時15分に青森に到着。ここで5分ほど停車し、進行方向を変えて再び出発。ここからはいよいよ津軽線へと入って行く。
津軽線へ入ると、列車は一気にスピードダウン。車窓もぐっとローカルなムードに変わる。
何も無い、ただただ白いだけの平野の中を、列車はまっすぐに走って行く。
そして13時45分。蟹田に到着。ここからは「スーパー白鳥」は津軽海峡線へと入り、北海道へと向かって行く。そのまま乗って行きたい気持ちを抑えて、ここで降りる。
蟹田の駅はローカルムード漂う、いかにも田舎の駅と言った感じ。
しかし、なかなかにユニークな看板が建っている。蟹田だからカニのイラスト…そして、「津軽海峡線のオアシス」とはこれいかに…??
ここからは本日最大の目的「津軽線」完乗、そして今回の旅の最終目的地「三厩」を目指すのだ。
2008年2月・冬の青森旅行(7)
- 十和田湖冬物語 -
遊覧船からその風景を散々楽しみ、時間は15時半。宿へと向かう。
十和田湖のバス停から歩くこと数分、本日の宿「十和田荘」に到着。大半が休業と言う冬の十和田湖の宿の中で、なんとか探し当てた営業中の貴重な(!!)宿。
なかなか…と言うかかなり大きな立派な旅館だ。和室の部屋に泊まるのも随分久々なのでちょっと新鮮な感じがして、どこか緊張する。
着くなり浴衣に着替え、そして大浴場へ。十和田湖の周囲は温泉が湧いていて、当然この宿の風呂も天然温泉。露天風呂もあり、雪を眺めながらの露天風呂は実に気分が良かった。
ちょっと早め、17時半過ぎに夕食を取る。夕食は夕食専用の会場へ案内されるのだが、グループ毎に席を仕切ってあるので、周りに気がねしなくて済むのがありがたい。
これが本日の献立。刺身にヒメマスがあるのがいかにも十和田湖らしい。
それは良い。それは良いのだが。
・真ん中の洋風の皿…鶏肉のマリネ
・右に少し見えるフタの付いた深皿…豚肉の角煮
・左に見える鉄鍋…牛肉のすき焼き
おおなんてコト!! 牛豚鳥三種類肉だらけとは!!
実は僕は幼少の頃から肉が嫌いでほとんど全く食べられないのだ。と言うワケで今日の夕食、半分くらい残す結果に…orz
さて。早めに夕食を取ったのは理由がある。と言うのも、これから「十和田湖冬物語」
へと出かけるのだ。十和田湖で冬の期間(今年は2月1日~24日)開催しているこのイベント。今回の青森行きを決めたのとほぼ同タイミングで偶然その存在を知ったのだが、どうしても気になって行きたくて仕方が無かったのだ。
時間は19時前。日が沈んですっかり暗くなった中、外へ出るとひんやり寒い。そんな中、シャトルバスに乗り込み、宿からほんの数分で会場に到着。
会場に着くと、まずは雪のゲートのお出迎え。ライトアップされ、なんとも幻想的な光景が広がる。
ゲートを進みきったところで、グリューワインと言うのが売られていたので一杯もらう。
「十和田湖冬物語」と書かれたグラスに入った暖かいワイン。甘くて体がポカポカ暖まる。最初の一杯は500円だが、後は何回でもおかわり自由。そしてこのグラスは記念に貰えるのだ。
それぞれがライトに照らされ、暗闇の中にぼんやり浮かび上がり、なんともロマンティック。教会の様な形のだとか、ハートを模したものなどもあり、カップル客ならきっと盛り上がるだろう。まあ俺は独りだが。文句あんのか。
かまくらの中には、バー営業しているものもあり、中でお酒が飲める。お酒の入ったグラスも氷で出来ていると言う念の入り様。ちなみに氷のグラス、ツルツルすべるので、手袋を一緒に渡される。
さて。会場の中ほどには大きな雪のステージがある。ここで19時から色々なショーが始まるのだ。
ちなみに会場内のこの時の気温はマイナス7度だか8度。風こそ吹いてはいないものの、日が暮れて真っ暗な中、足元には深く雪が積もり、ただ立っているだけでもとても寒い。が、ステージの前には結構な数の客が集まってきている。
…と言うか、この人達は昼間一体どこにいたんだ? 十和田湖畔には人っ気全く無かったのに(笑)
津軽太鼓の演奏で幕を開け、まずはなまはげの登場。大迫力で歩き回り、ステージから降りてきて会場内の観客達のすぐ側までやって来る。そして記念撮影だとかしてもらえる。ってどんなフレンドリーななまはげだよ。
続いて、津軽三味線のライブ。これが物凄いカッコ良くて、正直シビれた。前日、金木の津軽三味線会館でも三味線の演奏は観たが、それはどこかのんびりとした、郷土音楽と言う感じだったのだが、今日のこちらはとにかく迫力と凄みがあって、グイグイ引きこまれる。その独特のリズムに、体も心も熱くなり、聴いているうちに自然と体も動き出す。
…これまで、クラブ寄りの音楽(テクノだとか)を聴いてきた僕だったが、まさか三味線で踊れるとは思わなかったぞ(笑) でもしかし正直、日本の伝統音楽と言うのを見直した次第。
その後は、「ねぶたのハネト」体験へと続く。これは、ねぶた祭り独特の跳ね方を体験するもので、ステージ上の笛の音と「ハネト」の動きとに合わせて跳ねるのだ。拍子が独特で、コツをつかむまでちょっと難しいが、なかなか面白い。それに体が暖まるのでこの寒い中にはちょうど良い。
そんなステージを楽しんでいるうちに、時間は20時。ここで、この「十和田湖冬物語」のハイライトとも言える、冬花火の打ち上げが始まる。
冬の寒空に咲く大輪の花火。時間にして、ほんの10分ほどの間だったが、それは綺麗で素晴らしかった。今まで、花火は夏の風物詩だとばかり思っていたのだが、真冬の花火と言うのも、それはそれで風情があって良いものかもしれない。
まだまだ祭りは終わらない。この後は、珍しい雪上車に乗ってみる。
キャタピラーが付いて、雪の上を走る雪上車。物凄い揺れでスリル満点。お世辞にも乗り心地が良いとは言えないが(そりゃそうだ)、しかしこんな乗り物。多分ここでしか乗れないだろう。
そして「食彩ドーム」へ。青森・秋田の郷土料理などを色々、ドームの中で販売しているのだ。先程、旅館での夕食が半分くらい食べられなかったこともあり、小腹も空いている。
青森の郷土料理「せんべい汁」。野菜たっぷりの汁の中に「せんべい」が入っている。この「せんべい」が、かなり固めの麩の様なちょっと変わった食感で、素朴だがなかなか美味しい。体も暖まる。
時間は20時半近く。ここで、ドームの中で再び三味線のライブが始まる。郷土料理に舌鼓を打ちながら、地ビールを飲みながら、ライブを鑑賞する。演奏は先程、雪のステージと同じ人達だ。
やはりライブは素晴らしく、ライブ終了後にとうとうCDまで買ってしまった。サインまで貰ってしまった(笑)
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こうして、散々遊んで楽しんだ「十和田湖冬物語」。
元々、こう言った「イベント」ごとに独りで行くことに多少は抵抗感もあり、また、みうらじゅん氏の様なことを言ってしまうと、いわゆる「お祭り」ごとにはどうしても体育会的なイメージがあって、純文化系人間の僕としてはそれだけでどこか腰が引けてしまう部分もあったのだが、しかしいつしかそんなことは忘れて場に溶け込んですっかり楽しんでいる自分がいた。
…たまには、こんなイベントや祭りも悪くない。
まあもっとも、来てた客の大半がカップルとか親子連れとか友人同士(女性同士が多い)とかで、独り客の男なんてほとんど居なかったですけどね。でも別に居心地悪くなかったし。と言うか、独りでもしっかり楽しめる環境作りをしてくれてた運営スタッフさん達には本当に感謝。



































