義父母介護が報われる法律⁉︎【相続法改正①】
平成30年7月、相続法の改正と遺言書の保管等に関する法律の成立が決まり、公布されました。昨年の12月に講師をさせていただいた相続遺言セミナーでちょっと改正に触れたところ、皆さん熱心にメモを取っておられましたので関心は高かったようです。今回4月下旬に相続法の改正のところを中心に話してほしいと依頼を受けたのもあって、シリーズでまとめてみようと思います。その1回目ということで、相続人以外の親族の貢献を考慮しようという法律ができましたので私見を交えて書いてみます。民法第1050条(特別寄与者)1 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより 被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした 被相続人の親族(例外あるが省略)は、相続の開始後、相続人に対し、 特別寄与者の寄与に応じた額の金銭の支払を請求することができる。【親族】画期的なのは相続権の範囲が「相続人」から「親族」に広がったことでしょうね。(遺言は除いて)民法上「親族」の範囲は、配偶者、血族6親等、姻族3親等(725条)となってます。「相続人」の範囲・配偶者、子(孫)、親(祖父母)、兄弟(甥姪)「親族」となるとこれに加えて・血族だったら、はとこ、いとこの子孫、甥姪の子孫ひ孫・姻族だったら、子孫ひ孫の配偶者、兄弟の配偶者、甥姪の配偶者、配偶者の兄弟、配偶者の甥姪までこの「特別寄与者」の資格があることになります。ご注意いただきたいのは、内縁、事実婚の相手方、養子縁組していない連れ子は含まれません。実際、私の父の友人で介護が必要な方がいるのですが、その人は既に亡くなった弟さんの奥さんに定期的に世話になっていると父から聞いて、結構遠い縁なのによくやっているなあと思いましたが、その方は「兄弟の配偶者」ということでこの特別寄与者の資格があるわけです。【相続の開始後、相続人に対し、・・・請求することができる。】これは相続人のように自動的に相続分が発生するわけではなく、対象の特別寄与者は、自分で相続人に請求しなければなりません。例えば、亡くなった方を介護していた長男の妻は、同居していない次男や長女に寄与分を自ら主張して請求しなければならないということです。なんだかなかなか主張しにくい気もします。ではいくら請求できるでしょうか?調べてみましたが、目安となる数字は見つかりませんでした。おそらくお世話の内容を第三者に依頼した場合いくらぐらいになるのかが基準になるのではないでしょうか。としますと、請求した相続人と話し合ったり、あとで出てきますが裁判所で判断してもらう際の証拠となるように、いつどのようにお世話をしたのか、日記をつけておいた方がいいでしょうね。条文の続きです2 前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議することができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知ったときから6箇月を経過したとき、又は相続開始の時から1年を経過したときは、この限りではない。【特別寄与者は、家庭裁判所に対して・・・処分を請求・・・6箇月を経過したとき・・・この限りではない。】もめちゃった場合、長男のお嫁さんは、自分で家庭裁判所に請求しないといけないんですねえ。それもお世話しているときに亡くなってしまったら、そこから6ヶ月以内に家庭裁判所に行くかどうか決めないといけない。お葬式して、四十九日が終わって、遺産の話になってみんなが集まったときには3ヶ月ぐらい経ってますよね。ここで頑張って権利主張してみて、みんながいい顔しなくて結論がでなければ、もう弁護士探して相談しておかないと間に合わない感じです。これは前もっての根回しが必要かもしれませんね。同居している長男のお嫁さんが、「これから私がお義父さんの介護をすることになりますけど、お義父さんが亡くなったときは、一日5,000円の計算で、特別寄与者として、遺産をもらいますからね。お義父さんもあなた(夫)も義弟さんも義姉さんもそれでいいですね!この念書にハンコ押してくださいね!!」みたいな感じです。でも↑を覆してしまうのが次の条文。4 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。↑これ、どういうことかというと、◯◯にあげるよと遺言した財産以外の遺産が特別寄与料の上限ですよ、と規定しているんですね。ということは全財産を遺言で誰かに割り振ってしまったとしたら、特別寄与料はないということになるわけですね。そうすると、「わしは嫁の世話になっても寄与分はやらんから遺言する」とか、同居していない子供が「お父さん、遺産が義姉さんにいかないように遺言してよ」とか言うようになるかもしれないわけです。立法趣旨としては、生涯未婚率の増加と少子化の深刻化を背景に、被相続人の療養看護をせざるを得ない親族への公平と被相続人の自己財産処分の自由のバランスを図るもの、と解釈しています(私見)。佐野経営コンサルティング事務所 佐野行政書士事務所財務経営コンサルタント&出入国在留管理庁申請取次行政書士 佐野 良明(さの よしあき)e-mail:office.ysano@gmail.com在留ビザ/外国人関連コンサルティングhttps://sano-immigration-service-office.jimdosite.com/相続/遺言/老いじたくhttps://sodansano.jimdo.com/離婚https://sodan-rikon.jimdofree.com/起業/事業計画/資金調達/経営コンサルティングhttps://sanoconsultants.jimdofree.com/