5.セパレータ

u セパレータの基本機能は、電池内で正極活物質と負極活物質との間に介在し、内部短絡を防止するものである。密閉型の電池では、電解液を保持する機能も求められる。

 

l これらの機能に加えて、リチウムイオン二次電池では、多孔性セパレータが実用化に必要な安全機能で重要な役割を担っている。微多孔質膜は、製膜後の一軸あるいは二軸延伸で作られる。

 

l 電池に過大の電流が流れたとき、その発熱により微多孔性セパレータ膜の空孔が閉鎖され、電流を遮断する機能がセパレータに付与されている。セパレータ材料には、ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)の使用が大部分であり、構造的には、単層あるいはPPPEの複層である。

l 孔径は1μm以下、微多孔膜では0.1μm以下とされている。PEPPPEの3層構造微多孔セパレータでは、融点の低いPEの軟化でシャットダウンをし(135140)、融点の高いPPで無多孔化したセパレータの構造を維持するとしている。

 

 

u  新しい構造のセパレータ

 

µ 電気自動車で東京から大阪まで1回の充電で走行するには、500 ?700Wh kg? 1のエネルギー密度が電池には求められている。この数字を達成するには負極材料として1,000mAh g? 1の容量を有する材料を使用することが必須となる。この目標値を達成できる材料がリチウム金属負極である。

 

µ リチウム金属負極を用いた電池は安全性に問題があり、使用されてこなかった。その最大の理由は、リチウム金属負極を用いた電池を充電するとデンドライト状のリチウム金属が析出し、セパレーターを突き破って正極と短絡を起こし、その結果電池が必要以上に充電された状態となり、電池が最終的には発火する点にある。下図にリチウムデンドライトの写真を示す。

 

µ リチウム金属の析出は、電解液中の電流の分布を均一にして、電極と電解液との界面の撹乱を防ぐことで抑えられる。図2 に示すような三次元規則配列多孔構造を有するポリイミドセパレータを開発。この膜は、孔が均一に空いており、1 1 つの孔の大きさもほぼ同じである。加えて、ポリイミドで作製されているために機械的な強度も三次元的に強く、デンドライト状態のリチウム金属の発生を機械的および電気化学的に抑制し、その結果、優れたリチウム金属負極の充放電特性を引き出すことができる。

 

µ NEDOの目標値は1回の充電でEVが300~500㌔㍍走れるエネルギー密度でしたが、現在すでに330~350㌔㍍を実現して、目標値はクリアしています。また、高いエネルギー密度を引き出したうえで、およそ3000回の充放電を可能にしている。

 

6.電解質 

 

u 電解質の要求特性。

1)高い伝導度(リチウムイオンの易動度が大きい)
2)電極材料に対して、大きな化学的および電気化学的安定性
3)使用可能な温度域が広い
4)高い安全性
5)低価格

 

 電解質材料に期待されるのは、主として安全性の向上である。電解質に可燃性の有機溶媒を用いるので、製造工程での不純物の混入や電極の短絡、あるいは過充電などによる発火の危険性がつきまとう。 高濃度のリチウム塩を含み、高い伝導度を得る溶媒には、比誘電率が大きく、粘度の小さい非プロトン性有機溶媒が適している。しかし、比誘電率が大きく、極性の強い溶媒の粘度は大きくなるので、実用の電解液では複数の溶媒の混合体となっている。

 例えば、誘電率64.4、粘度2.3cpのプロピレンカーボネート(PC)、あるいは誘電率95.3、粘度1.9cpのエチレンカーボネート(EC)と粘度0.59cpのジメチルカーボネート(DMC)の混合溶媒が知られている。これらの混合溶媒では、極大伝導度を示す組成があり、加える電解質塩の種類とともに、組成が詳細に研究されている。

電解質塩は、過塩素酸リチウムLiClO4の他、フッ素を含むイミド塩LiPF6LiAsF6Li(CF3SO2)2NLiBF3LiCF3SO3などが用いられている、有機溶媒電解液のイオン伝導度は約10-2S/cmである。

 

u 電解質
・六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)
・ホウフッ化リチウム(LiBF4
・過塩素酸リチウム(LiClO4)
・六フッ化砒酸リチウムLiAsF6
・リチウムイミド塩Li(CF3SO2)2N
・イオン液体(常温溶融塩)
・固体電解質

u 有機溶媒
・エチレンカーボネート(EC)
・プロピレンカーボネート(PC)
・ジエチルカーボネート(DEC)
・ジメチルカーボネート(DMC)

 

u 各種電解質のイオン伝導特性

  電解質は、広い温度範囲(-3080℃)での高いイオン伝導性・化学的安定性などから、主に6フッ化リンのリチウムイオン塩(LiPF6)をカーボネート系有機溶媒に混合したものが使われてきた。そして、充放電時の電圧で電池材料を損傷させないということも電解質に必須の条件である。 

 

 

難燃性を有する電解液とするために、燃焼時に酸素遮断作用があるリン(P)、
ホウ素(B)などの難燃性材料の電解液への添加などが行われている。

しかしまだ、安全性が十分とはいえない

 

 

以上です。