帯ひろ志の漫画放浪記Powered by Ameba -126ページ目

ペン先って、火で炙るの?

この問題、物凄く誤解をしている漫画家志望者の方が多いので書いておこうと思う。

僕が小学生で初めてペンを使った時、新しいペンにうっすら施してある油のせいでインクをぼたぼた垂らして
ひどい目にあった事を書いたと思う。

それに対し、ライターなどの火で炙り、そのやっかいな油を飛ばしてしまおうと言うのがこの、ペン先を火で炙ると言う行為だ。
これは、アシスタントに行った時、初めて目の当たりにしてビックリしたのを覚えいてる。
それになんか、カッコよかったしね(笑)

さて、このペン先を火で炙ると言う行為、実に誤解している方がいる。
プロの漫画家で誤解している方は居ないと思うが、もしいらしたらそりゃちょつと恥ずかしいぞと、言っておく。

ペン先を火で炙るのはあくまで油を飛ばすため。
ペン先を焼くのが目的じゃない。

中にはむきになって、真っ赤になるまでペン先を焼いて、使い物にならなくしてしまう強者も見た(笑)
さらにそれをインク壺に突っ込んで「ジュッ」なんて焼き入れしてしまう超強者も。

言うまでも無くペン先は金属です。
つまり、余計な熱を加えると、金属の性質が変わってしまうのです。
そのペンが持っている硬さや腰の強さを奪ってしまうことに。

だから、ライターで油を飛ばすにしても、できる限りペン先に熱を伝えないようにしなければならない。
熱くなったペン先がそのままの状態で冷えると、これは焼きなましと言う状態で、柔らかく腰のない
ペンなってしまいます。

つまり、ハッキリ言うと、ペン先の油を火で飛ばすのはお薦めしないしと言う事です。
ティッシュなどにちょっと水を付けて拭けば、意外と簡単に油膜は取れます。
ペン先の手入れにも、水ぶきは結構お薦め。

お試しあれ。

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デビュー

打ち合わせをしながら、いったい何本のネームを描いただろう。
中々OKが貰えず、凹んでいたが、何本目かのネームを掲載候補に
上げて貰える事になった。

普通、漫画の掲載はネームのコンペを経て雑誌掲載の決定に至る。
ネームとは、漫画の設計図の様なもの。
依頼があって描く意外は、プロの漫画家でもこの編集会議で編集長のOKが出ない限り
雑誌に漫画が載ることは無い。

この時の掲載決定は、今日編集長がネームを読んでくれれば決まりそうだと
編集部で聞いた。
確かに僕のネームは編集長のディスクの上にある。
しかし、肝心の編集長が居ない。

ここで待つか、帰るか.....。
変な話だが、これまでに編集部に通い慣れてしまい、編集部に居ること自体では待ったく緊張しなくなっていた。
待たせてもらう事にした。
お昼ごろから待たせてもらい、やがて夜に.........。

編集部で待っていると、色々な人がやってくる。
僕と同じ様なデビュー待ちの新人さん。
初めての持ち込みの人。
そして、連載を持っておられる漫画家の先生。

ふっと、編集部に人が居なくなる瞬間もある。
そんな時電話があると、代わりに電話に出るなんて事もした(笑)

夜8時頃だったかな、担当吉倉さんがお弁当の出前を取ってくれた。
ムシャムシャと頂く。
高いお弁当だったんだと思う。うまかったもんな。
しかし、編集長は現れない。

そろそろ帰ろう、そう思った時編集長はやってきた。
ホッとしたけど、中々ネームを読んで下さらない。じれったいー(笑)

やっと読み始めてくれた。
ドキドキ。どうなんだろう、OKなんだろうか、それもまた描き直しか.......。

編集長はネームを読み終わった。
読まれたネームは、僕だけではない。他に少なくとも5本以上はあったと思う。
読んでいる間にも、編集長は忙しく他の仕事をこなしている。
あっと言う間に時計は夜中を回っていた。

気がつくと編集長の姿がない。
あれ、結果は出たのだろうか.............。
どうしたらいいのだろう、どっちにしろ帰らないと終電もなくなってしまう......。
しかし、結果も聞きたい。
困ってキョロキョロしていると、吉倉さんがやってきた。

おめでとうデビュー決まったよ。

もう、鼻血が出そうだった。
集英社への持ち込みから1年と数ヶ月目。
年明け、1982年発売の月刊少年ジャンプ冬増刊でのデビューが決定した瞬間だった。

それだけでも嬉しいのに、「もう、電車が無いので帰ります」と言うと、なんとタクシーを読んでくれたのだ。
その時受け取ったタクシーチケットの事由に「作家送り」と書かれていた事にいたく感激した事を
覚えている。

漫画大賞佳作

月刊少年ジャンプ持ち込み3本目。

前回の選外佳作に気を良くした僕は、早速制作に取り掛かった。
描くのが楽しい。
もう、何時間でも描いていられると言う感じ。

背景の〆切りを早々に終わらせ、ズガッと作品を完成させた。
この31ページストーリー漫画はなんと15日で完成させる事が出来たのだ。

別に描き込みが少なくなった訳ではない。むしろ完成度は上がっているし、描いていても前より辛くない.....。
ここで一つ気付いた事がある。なんだかマラソンに似ているなーと.....。
初めて10キロ走った時の事を思い出したのだ。あんなに辛かった10キロも何度か走っているうちに自然とペース配分を覚え、走り終わった翌日に足が痛くならない感覚とでも言うのだろうか....。
ともかく、ぜーぜー言いながら描いていた漫画が、なにをどうしたら度のぐらいのクオリティで、度のくらいの時間で仕上がるか分かって来たのだ。闇雲に描いていた頃と比べると随分進歩したのだろう。

この作品は佳作入選し、賞状と5万円の賞金を貰う事になった。
この次の作品は13日間で完成、また次の作品は11日間で完成させることが出来た。
描くのが楽しくて結果的に日数の短縮に繋がったけど、今思えばもっとアイデアをじっくり練ってから執筆に取り掛かるべきだったかな。
結果から言うと、後の2本も佳作を頂いたが、デビューには至らなかった。

しかし、これからは打ち合わせをしてデビュー作品を作りましょうと言う事になり、さらにコンスタントに集英社に通う事に。
この事をキッカケに、すっぱりとアニメーションの背景描きから足を洗い、ネームに専念することに。
それとともにアパートを引き払い、実家に戻る事にした。
少ない収入も無くなるしね(^_^;
実家に帰れば、取り敢えずメシは喰える。単純な発想だった。

この頃から頻繁に緊急アシストの依頼が吉倉さんから入るようになる。
時にはアシスタントのはしごをする事も。
すると、背景の仕事をしていた時よりも稼いでしまったのである(苦笑)

つづく

漫画ってどうやって描くの?

凄く初歩的だけど、結構深いこの質問。
質問者によっても、聞きたい部分が違う漫画の描き方。

僕が受けた質問で、返答に苦慮した「漫画って、どうやって描くの?」のエピソードを紹介します。
あれは、祖父の法事の席でした。

普段は会う事の無い、親戚のおばちゃんに、漫画家であると知れ、質問を受けました。
漫画を全く知らない人に説明するのは物凄く難しい(^_^;

伯母「漫画描いてるの?」

僕「はい」

伯母「へえーっ、あれはどうやって絵が動いてみえるの?」

僕「エッ? ああっ、それはアニメーションで、漫画じゃないんですよ」
  「僕は、雑誌とかに漫画を発表しているんです」

伯母「あら、大変ねぇ一人でそんなに出来るの?」

そうだった、年配の方は、アニメーションも漫画なのだ。ややこしい。

僕「いいえ、アニメはアニメ会社の方が、沢山のスタッフで作っているんですよ」
  「で、僕は漫画家でアニメとは関係ないんですよ」

伯母「ああっ、そうなのかい」

良かった、分ってくれた............。

伯母「じゃ、雑誌に載せる漫画を作っているのかい?」
     「それも大変だねぇ、絵の順番とか間違えないかい? 」

僕「はい?」

伯母「伯母さんなんか、どの順番に絵を並べていいか、分んなくなっちゃうよ」

僕「?? ならべる?」

どうやら、コマの中にパズルのように出来上がっている絵をはめ込んでいく作業を
していると思っているらしい。
そりゃ、どんな仕事じゃー!!

ちゃんと一コマ一コマ描いているんですよと説明したが、どうも自分で考えたストーリーに沿って
コマを割り、下描きをして絵を入れていくと言う事が理解出来ないらしい。

とうとう、最後まで完成した絵を貼り込んでいく、内職のような作業を連想されている様で
僕は物凄い敗北感を味わった。

やはり、漫画を描いた事のない人に漫画の描き方を説明するのは凄く難しいのだ。
だから、変な話だが漫画の描き方を聞く人は、漫画を描いてから質問して欲しいと
常々思うのであった。

もちろん、漫画家志望の方だけね、描いてから質問して欲しいと思うのは(笑)