京都大病院は12日、肺の難病を発症した関東地方の血液型O型の女性(10歳代)に対し、B型の父親と、O型の母親(いずれも40歳代)の肺の一部を移植する手術を2月に行ったと発表した。血液型が適合しないドナー(臓器提供者)からの生体肺移植は世界で初めてという。手術は成功し、女性は元気に退院した。
京大病院によると、女性は数年前に肺の難病を発症し、昨年9月から人工呼吸器を付けた。早期の肺移植が必要で脳死移植を待てず、生体移植を選択した。手術は2月16日に行われ、父親の右肺の一部、母親の左肺の一部を女性に移植。女性は自力歩行できるまで回復し、4月11日に退院した。
日本移植学会によると、生体肺移植でO型の患者に適合するドナーの血液型はO型だけだ。適合しない時は、拒絶反応を防ぐため免疫を抑える薬を投与する。
京大病院によると、肝臓や腎臓では血液型が不適合の生体移植がすでに実施されており、移植件数の約2割を占める。だが、肺については外気に触れるため、免疫を抑えると感染症が起きやすく、ドナーの身体への影響も大きいため前例がなかった。今回、女性の血液からB型に反応する抗体を除去し、大学内の感染症対策チームと共に手術後の健康管理を徹底した。今後は定期的に検査を受けてもらい、経過を調べる。
国内では肺移植を希望する患者の40%以上が待機中に亡くなっており、手術にあたった伊達洋至(ひろし)教授は「血液型の問題で移植を諦めていた人に治療の選択肢を示せた」と話した。
東北大病院の岡田克典(よしのり)・呼吸器外科教授の話「血液型が不適合の生体移植が、肺でも実現したことは治療の機会を広げる意味で素晴らしい。ただし、生体移植は健康なドナーの体にメスを入れることになる。脳死移植がもっと増えるよう理解を広げることも重要だ」