コオロギが食料危機を救う たんぱく質豊富、食用化へ研究 滋賀。 | ★マエちゃん噴泉記★【大阪DE農業】

★マエちゃん噴泉記★【大阪DE農業】

● DIY 【 だめでも いいから やってみる 】 ● 大阪DE農業

 コオロギが食料危機を救う――。長浜バイオ大(滋賀県長浜市田村町)が食料問題の解決策としてコオロギを食用化し、主要なたんぱく質源とする研究を進めている。2020年12月から内閣府が主導するプロジェクトに他大学などと共に参加し、25年末の実現を目指している。近い将来「コオロギ」が家庭の食卓に上ることになりそうだ。

 

 国連のデータによると、20年の世界の総人口は約78億人で、50年には97億人まで増えると見込まれている。食料危機、中でもたんぱく質の供給不足が指摘されており、13年に国連食糧農業機関(FAО)が昆虫を食用や家畜への飼料にすることを推奨する報告を出した。それを受けて、各大学などで「昆虫食」研究が広がり始めた。

 

 同大では、昆虫ゲノム育種▽昆虫由来水産・畜産飼料開発▽コオロギ由来食料開発▽社会実装の4本柱でアプローチ。「昆虫ゲノム育種」では全国から採取した性質の異なるコオロギを掛け合わせ、最新の遺伝子分析技術も活用しながら、より低コストで高品質なコオロギを生み出そうとしている。「コオロギ由来食料開発」は食料として大量に摂取した場合の安全性などを調べている。「社会実装」は昆虫食を社会に根付かせるための議論や実験を行っている。

 

 同大アニマルバイオサイエンス学科の小倉淳教授によると、コオロギは雑食で、食品廃棄物を食べるなど飼育しやすく、1カ月で収穫できる。更に肉1キロ当たりで比較すると、飼育の際の温室効果ガス排出量が牛の1000分の1と少ない上、体の80%がたんぱく質で非常に効率よく栄養素を摂取できるという。

 

 食品への加工は、丸ごと砕いて粉末にする。グルコサミンのもととなるキチン・キトサンが含まれているため、足や外骨格も取り除かずに砕く。エビに似た味がするという。25年末には、1キロ100円程度で販売できるようになる見込みだ。

 

 魚の餌となる魚粉の代替として使う研究も同時に進んでおり、将来的には農作物残渣(ざんさ)や食品廃棄物をコオロギが食べ、そのコオロギを魚が食べ、その魚を人間が食べる完全循環型の食料生産体制構築も視野に入れている。

 

 小倉教授は「コオロギは牛や豚などと並ぶたんぱく質源の一つの柱になる。粉末なのでパンやピザに練り込むなど、毎日最大100グラムを目標に主食のように食べてもらいたい」と話している。【長谷川隆広】