鬼川の日誌 -321ページ目

 晴女と雨男

 晴女と雨男
 
  私達のように山に登ることを趣味としているものにとって、計画の日の
 天気が晴れであるか雨であるかは実に問題である。それがそう簡単に
 やり直せないような重要な計画であればあるだけ余計そうである。

  ある程度例年の大まかな天気の傾向とか天気予報は計画の段階で織り
 込むにせよ、しかしこればかりは私達の力では如何ともし難く、偶然に
 翻弄されるしかない。
 
  こういうとき私達が必ず口にするのが、「普段の行いが悪いからだ」という
 言葉である。別の言い方をすれば「あの雨男が参加したからだ」と誰かを
 イケニエにするというわけである。

  また逆に素晴らしい天気に恵まれうれしくなれば、「晴女がいっぱい」と
 思うのである。もちろん半分冗談ではあるが。

  私達は鎌倉時代の武士ではなく、本当にまともに自分の普段の行いと
 天気が関係している、などと思っていることはありえない。
 天気予報は完全ではないにせよ、それは科学的に予測できる事だし、
 次の日が雨であるのは、低気圧が接近しているからだと分かっている。

  しかし自分のやりたいことが上手くいくかどうか、そのための自分なりの
 技術的な努力(たとえばスキー技術を高めるとか、岩登りのためにロープ
 ワークを習得するとか)を超えた範囲については、やはり根深く自分の身を
 律しなければまずい事に直面するという思いを持っているのではなかろうか?
 そしてそれは鎌倉時代の武士たちという恐ろしく昔からの考え方を引き
 ずったものらしいというと、おどろくだろうか?

  ロケットの打ち上げ技術者が最後にするのが神頼みだし、ほとんどの人が
 家を建てるときには地鎮祭を執り行う。

  結婚式には大安吉日を選び、友引には葬儀を止め、身内に葬儀があれば
 年賀状は出さない。

  これらは私達日本人はまだまだ神様を沢山抱えているということを示して
 いるわけだし、「神判」を退けてはいないことを指し示しているわけだが、
 そんなことに思いを馳せたことはあるだろうか?

 スイスグリンデルワルトスキー

 08年の締めで最大のイベントがスイスグリンデルワルトでのスキーでした。
 私がスイスでスキーをするなんてというのが正直なところです。スキーで
 滑るのはどこでも変わらないといえばそうですが、やはりアルプスの名峰を
 背景に滑るのは圧巻です。もう少し若ければ山に登りたくなったでしょう。



 スイスでスキー のぼろ会個人 08,12,19~30  5名

  縁あってスイスグリンデルワルトにスキーに出かけた。企画した語学に
 堪能な人だけでなく、かつてドイツ語圏で長く滞在した経験をお持ちで、
 ドイツ語を何不自由なく操れる人が参加した。

  ドイツ語通の方がレストランでの食事メニューなど料理にも精通していた
 ので、滞在中素敵な料理を楽しめた。
 また滞在したホテルでの自炊もご婦人たちが腕を発揮してくれたので、
 とてもおいしい夕食を楽しめた。食事がおいしいということは長い
 滞在にはかなり重要な要素です。

  12月のスイスは通常雪が多くなくかつ天候が不安定で、スキーにはあまり
 お勧めではないらしく、参加したメンバーも日程の半分は周辺観光でも仕方
 がないと考えていた。しかしなんと私達が行く直前、スイス全域で10数年ぶり
 の大雪が降ったらしい。

  しかも私達がグリンデルワルトに着いてスキーを始めた21日の午後から晴れ
 てきて、ついに滞在中晴れが続いた。

   * グリンデルワルトのスキー場

  グリンデルワルトには大きく3箇所のスキー場がある。
 メインは''クライネシャイデックからメンリッヒェン''周辺。ここはユングフラウ
 アイガー北壁の真下です。北壁の難所「白い蜘蛛」が見えます。
 一度裏のヴェンゲンまで滑り降りてみましたしグルントまで滑り降りられます。
 アイガー、シュレックホルン、ヴェッターホルンが素晴らしい。
 
  二つ目はシュレックホルン、ヴェッターホルンの北壁の向かいフィルスト周辺
 フィルストのバーンが今回一番快適に滑れたかな?

  そして007の映画の舞台になったことでも有名なシルトホルンの展望台
 からミューレン周辺。泊まったグルントから電車、リフトを乗り継いでちょっと
 した小旅行です。
 ここはアイガー、メンヒ、ユングフラウ三山の展望台です。

 いずれも素晴らしいスキー場です。この3箇所すべてで滑ることが出来ました。 

  滞在中滑れなかったのは、強風でゴンドラ、リフト、登山電車まで止まった
 26日一日だけだった。これも滑るつもりならば11時頃からは足が動き始めた
 らしいが私達はインターラーケンの町に観光に出かけた。

   * ユングフラウヨッホ(Top of Europe)

  スキー最後の日27日も通して晴れたので、ユングフラウヨッホに行ったこと
 のない3人で最後の最後ヨッホに行け、アーベントロートの始まりくらいの
 雪景色のアルプスを鳥瞰することが出来た。
 終電に間に合わなくなりそうでそれ以上待てなかったけれど。

 (スキーリフト券を持っているとクライネシャイデックからヨッホまで+53.5SF
 安く行けるからかなり得。)

   *  費用

  更に最大の問題は費用です。輸出企業は円高で儲けが減って泣いています。
 しかしこの円高でSFが安くおよそ90円くらいでした。
 宿は山屋さん用の自炊可能なホステル(約1泊40SF)。
 スイスで高いのは食費ですが外食を控えスーパーで食料を購入し自炊。

  「グリンデルワルト周辺すべてのスキー場のゴンドラ、リフトそしてそれらへの
 移動のためのバス、電車に使えるリフト券」が7日間で301SF
 
一日滑りませんでしたが。シニア62歳から!
 貸しスキーは新品の高級品が約30SF/日
 
  費用の半分を占める航空運賃も冬季は夏季の約1/2。

  出入国時ベルンとルツェルンユースホステルを利用し安く泊まった。
 とても素敵なところでわざわざでも立ち寄る価値があります。

  
通常パック旅行の半分くらいの費用に納めることが出来た。

  というようなわけで、本当に楽しく素晴らしいスキー旅行でした。
 この不景気の折恵まれたひと時に感謝です。
 
  雪の後晴天が続いたので、バーンが硬くこの点はちょっと苦労しましたが、
 誰も怪我をしたりせず、事故がなかったこともとても幸いなことでした。

  スイスでは子供にはヘルメットの着用が義務付けられているようですし、
 ほとんどの人がヘルメットを着用していました。あれだけ硬いバーンだからと
 いうだけでなく、転倒や衝突の恐れが常にあることを考えれば、ヘルメットの
 着用が合理的だと思います。
 少しスピード狂の人は着用してみてはいかがでしょうか?

     グリンデルワルトスキー

 八ヶ岳・阿弥陀北稜

 これでようやく09年の山行の記録が終わります。
 08年もいくつか面白い山行があるので振り返ってみたいと思います。
 写真の古い記録は06年からスライドショーで少しずつ公開しています。



 阿弥陀北稜 小出、林係りのぼろ例会 09,1,17~18 13名


  アルプス登頂隊と銘打った企画の第1回目、八ヶ岳冬山の
登攀入門
 参加してきました。阿弥陀岳・北稜の登攀です。

  冬山のバリエーションルートですから、当然アイゼンを履いての岩登りです
 (3級程度の)。ピッケルを使った雪山の登りの経験ばかりでなく、岩場での
 ロープワークが求められます。冬期の岩場では手袋をしたまま岩を掴ま
 なければなりませんし、アイゼンの爪で岩を登らなければなりません。

  かなり困難なのは分厚い手袋をしたままでカラビナを付けたりはずしたり、
 ロープを制動器に通したりすることです。ビレイヤーとの意思疎通もかなり
 難しい場面が多いです(特に強風のときなど)。なにより岩場で順番待ちを
 しなければならず、このとき寒いと非常に辛いものです。

   * 北稜登攀

  17日は赤岳鉱泉まで。小屋ではのぼろ会ということでワインを出してくれました。
 夕食もステーキで豪華なものです。

  18日小屋を7時半頃に出発しました。岩登りですから、隊を編成して隊ごとに
 行動です。全員がつるべでの登攀が、つまりリード登攀やロープワークが可能
 ではなかったので、つるべが可能な隊2組とリーダーが他の2人を引っ張る形
 の3人隊が3組、計5組13名でした。
 私の隊はO、N、Iの3人です。以下はこのONI隊の行動時間です。

  小屋を出発し、行者小屋に8:10頃。赤岳へのルートを登り、阿弥陀岳への
 分岐から深い雪稜を登っていきます。この日は暖かく重装備で暑いくらいでした。

  眼鏡をかけてゴーグルをしている人はゴーグルが曇って大変だったようです。
 性能のいいゴーグルや度付きのサングラスなどが必要です。こういうその人
 に合った装備の用意もかなり重要です。目が良く見えなくては思うような行動が
 出来ません。

  森林限界辺りの急な雪壁を登る所から私達はロープを出しました。
 この雪壁上から素晴らしい富士山が望めました。岩峰の取り付きに私達が
 着いたのが9:45分頃。このとき第一組は既にリーダーが登り始めていました。
 私達は4番目でしたから、ここで1時間近く待つことになりました。
 
  この頃から天気が下り坂で、時々雪もちらつき心配しました。しかし大崩は
 せず助かりましたし、風がなくさほど寒くなかったのはなによりでした。

  *  岩を登り雪壁を登る

  北稜の岩は2ピッチです。1ピッチ目の取り付きが少し難しく、ランニングビレイ
 を取った後の長いランナウトが要注意です。ピッチの終わりにしっかりした
 支点があります。2ピッチ目の後半、雪のナイフリッジを越えると後は雪壁です。

  更にその上は傾斜も緩くなりコンテでも行動できます。阿弥陀岳の山頂には
 11:55頃到着しました。薄曇でしたが、富士山中央アルプス、方向は良く
 見えました。北アルプスは遠い。八ヶ岳の全山が見渡せました。

  記念写真を撮って阿弥陀岳の一般ルートを下りましたが、この後半がかなり
 急な雪壁でした。中岳沢の上部に12:45頃。気温が少し高めで心配しましたが、
 一人一人の間隔を開けて中岳沢を下り、行者小屋に13:30頃到着しました。

 写真を添付します。

      八ヶ岳・阿弥陀北稜