鬼川の日誌 -16ページ目

トランプ乱舞

  トランプ関税

 

 

  * 関税

  世界がトランプにより引っ掻き回されている。

 10日、トランプは米国が輸入するすべての鉄鋼とアルミニウムに対して

 25%の追加関税をかける布告に署名した。これは3月12日から始まる。

 現状では例外や除外措置はなく、日本製品も対象となる。

  日本政府は適用を除外してくれと早速泣きついている。情けない事に

 石破がトランプとの日米首脳会談で、トランプ関税に報復するのか

 問われ、「仮定の質問にはお答えできない」とか言ってるアホさ加減が

 モロに露出。

 

  トランプは米国が輸入する自動車と半導体チップ、医薬品にも関税を

 かけると示唆している。

 

  カナダとメキシコに対する25%の追加関税はディールにより約1ヶ月

 ほど延期されたが、中国に対しては10%の追加関税を課し(4日)、これ

 に対し中国は10日米国からの輸入品の一部に10、15%の追加関税で

 報復措置を発表した。

 

  トランプにとっては高関税を突きつけて譲歩を引き出すディールで

 あるが、報復合戦から世界経済の分断を深刻化させることになるのは

 不可避である。

 

  * 対外援助

  トランプは就任直後から地球温暖化防止のパリ協定からの離脱、

 世界保健機関(WHO)からの脱退の大統領令に署名し、米国際開発局

 (USAID)の一部の援助を除いて対外援助を凍結することにした。

  対外援助が「米ファースト」に合致するか精査するとして国際開発、

 協力を一旦全て停止させたのである。

  これはガザ住民への支援物資の提供が遅れたり停止されることに

 直結する。その他の難民や災害支援のためのNGOは即時活動停止に

 追い込まれている。

 

  トランプは9日には対外援助事業の大部分は「誤り」だとして、国際

 開発局の解体、統合を示唆し、対外援助事業の混乱が広がっている。

  これらは明らかに米国の国際的リーダーシップの喪失に直結する

 以外の何ものでもないが、トランプはそれを意に介さない。

  (「米帝国」の衰退。目加田教授、東京新聞、2、9)

 

  * ガザ

  アウシュビッツ解放80年(1月27日)の直後から、トランプは「ガザ

 は地獄だ」(地獄を作った責任の大半はアメリカにあるのに)として、

 ガザ住民の受け入れをヨルダンやエジプトに要請した。

  ここでも受け入れなければ関税を課すと脅している。

 

  2度と戻れなくなるというガザ住民や世界各国の総反発、1948年の

 イスラエル建国に伴い、約70万人が難民となったナクバ(大惨事)の

 再来を危惧する当然の声を意に介さず、トランプは「ガザを所有」して

 「美しい土地にする、不動産開発だ」などとふざけた発言を繰り返して

 いる。域外移住案は「一時的措置」と言ってみたり(ルビオ国務長官)

 したが、トランプは将来的にパレスチナ人がガザに「帰還することは

 ない」と断言している。約200万人のナクバは不可避となる。

 

  パレスチナ人をガザから追い出すことが1番の願望であるイスラエル

 ネタニヤフなどは盟友トランプのアイディアに力を得て、ガザに対する

 圧迫を一層強めるだろうし、停戦の行方が危ういものとなり始めている。  

 

 

トランプ政権の始動

  早くも混乱が始まる

 

  *

  1月19日から始まった「ガザ停戦」は続いているが、イスラエルは

 ヨルダン川西岸地区でハマス掃討の大規模な攻撃を激化させ始めた。

  ガザ停戦に反対し極右の一派がネタニヤフ連立政権から離脱し、

 もう一つの極右派が離脱すれば政権が崩壊しかねないとして、その

 引き留めのためと言われている。

  またトランプはバイデンが課していた「入植者への制裁」を解除し、

 西岸地区のイスラエル併合を主張する入植者、極右派を勢いづかせて

 いるから、これから西岸地区での紛争は激化せざるを得ない。

 

  * 

  20日トランプが米大統領に就任した。あからさまなファシストトラ

 ンプが支配する米社会というかつてない最悪な事態が現実化した。

  既にEUなどでは極右勢力が各国で伸長しているのにさらに輪をかけ

 ること(イーロン・マスクはドイツの極右にエールを送っている)に

 なり世界が大きく右旋回する。

 

  トランプは矢継ぎ早の大統領令で、バイデン政権の政策をひっくり

 返し、領土的野心も剥き出しにし(グリーンランド、パナマ運河等)、

 高関税をちらつかせて各国を脅し、その後取引(ディール)に持ち込

 みアメリカ優位に持っていくという相変わらずの手法で突っ走り始め

 た。(「関税」とディール。これしかない。)

 

  トランプはロシアが停戦交渉に応じなければ「ロシアからの納入品

 に高関税をかけるしかない」とプーチンを脅し始めた。

  ウクライナ戦争を「大統領就任後、24時間以内に解決する」とかいう

 大ボラを「6ヶ月以内」に後退させたが、取引の見通しがつかないこと

 に焦り始めたようだ。しかしそもそも商取引が少ないのに高関税では

 あまり効き目がなさそうで、ラブロフにコケにされている。

 

  あたかもインフレに苦しむアメリカ庶民の味方であるかのように装っ

 て大統領選で勝利したわけだが、トランプ政権の本質はGAFAのCEO

 たちやイーロン・マスクなど、巨大企業やその経営者たちのために、

 その商売をやりやすいように様々な「規制」(民主党政権で進められた)

 の緩和を進めること、そして「逆差別だ」を合言葉に、これまで進め

 られてきた様々なマイノリティーや社会的弱者(「人種」、民族、性別、

 性的、その他)への優遇措置を撤廃し(特に移民の問題)、強者の論理

 (基本的にファシストの論理)で固めることにある。

 

  ジェンダーは男と女しかないとして、トランスジェンダーを否定する

 のはその象徴であって、全ての差別を形を変えて復活させることになる。

  しかもトランプ政権はそれを強権的に押し付けようとしている。

 

  インフレや移民の激増などに有効な手を打てなかったバイデン、民主

 党政権への反発からトランプを支持した、庶民、労働者、黒人たち、

 マイノリティーなどは、今後高関税による輸入品の値上がり、一層の

 インフレの亢進や、自分達を不利に落とし込める強者の論理に立つトラ

 ンプ政権の本質が露わになるにつれ、この幻想がいかにとんでもない

 食わせ者だったかに目覚めざるを得ないが、その幻想に溺れたツケで、

 自ら覚悟を持って反撃に出ない限り当分苦しめられるしかない。

 

  *

  鳥インフルの全国的拡大

 

  今月に入り鳥インフルが猛威をふるっている。とりわけ養鶏場が

 密集する、愛知、千葉、岩手の3県で続発している。

 

  20日時点、千葉でも鳥インフルが猛威を奮っている。県内陽性確認は

 今季8例目。(昨10月の香取市から) 殺処分対象は8例で計218万1千羽。

 (20年12月~21年3月の約458万羽に次ぐ規模)

  千葉県内の採卵鶏は昨2月で約1417万羽と全国最多だ。 

  22日のニュースでも岩手県盛岡市の養鶏場で鳥インフルが確認され

 県が対応に追われていることが伝えられていた。 

 

  24年度今月22日時点で14道県・42例が確認され、全体の殺処分対象

 数は約771万羽に上る。

  うち26例、殺処分対象約496万羽は今月以降のもので、過去最悪だった

 22年度を上回る勢いで「垂直上昇」。

 

  鶏卵価格(東京地区)は昨年1月の平均価格180円(Mサイズ)と比べ

 て23日には275円と100円近くも高騰している。

 

  それにしても鳥インフルに感染した養鶏場の鳥を全部殺処分せざるを

 得ない、それも数百万羽という巨大な規模で。これも私たちの食を巡る

 数ある矛盾の一つだな。

  

  

南海トラフ地震

  南海トラフ地震「発生確率80%」の破綻

 

  

  *

  ガザ停戦合意今日午後3:30(日本時間)に始まるはずが、ハマス

 からの人質解放の名簿が提出されないとして、イスラエルはまたガザ

 を空爆、どうなることやらと思われたが、6:15から正式に6週間の

 停戦が曲がりなりに始まった。相変わらず相互不信は根強い。

  合意違反を口実にいつ潰れるかもわからないものだし、その先の恒久

 的停戦の実現は相当望み薄だが、6週間の停戦で事態が良い方に変わる

 ことを望みたい。

 

  *

  昨年12月の韓国ユン大統領による「非常戒厳」の宣布とその破綻で

 15日には合同捜査本部にユンは身柄を拘束され、今朝韓国の現職大統領

 としては初めて逮捕された。支持者らは暴動を起こしたが鎮圧された。

  この1ヶ月強で与野党の支持率は拮抗してきており、韓国社会の分断は

 深まるばかりでまるで見通しがつかない混迷状況にある。

 

  * 阪神淡路大震災から30年

 

  政府の地震調査委員会は南海トラフ地震の30年以内の発生確率を

 「80%程度」に引き上げた。しかし同時にこの確率の根拠としている

 データや研究結果の見直しを始めたことが、17日の「東京新聞」で

 報道された。(小沢慧一署名記事)

 

  議論はかねてから問題視されてきた、今の南海トラフ地震だけ、確率

 の算出に使われた「時間予測モデル」とその根拠となったデータの扱い。

  このインチキさは一部の学者や小沢慧一記者が追求してきたことだ。

 

  南海トラフ地震以外の確率は「単純平均モデル」が採用され、これを

 南海トラフに当てはめると発生確率は「20%程度」まで落ちる。

  ようやくテレビなどでもこのことが言われ始めた。

  

  しかし確率のせめてもの「両論併記」は防災の専門家や政府担当者

 が「確率が下がることで予算に影響する」と猛反対し「20%」が消えた

 経緯がある。

  

  この「確率の高低が防災意識と自治体の対策(予算)」に格差を生み

 出したことが問題である。

  現に確率を地図にした「全国地震動予測地図」で確率が低いとされて

 いた熊本、北海道、能登半島などで(確率が低いからと防災対策が遅れ

 てきた地域)大地震が頻発し大災害となった。

  

  これまで「〜80%」もの高確率で「防災」を叫んできたことこその

 弊害で、今更の低確率は安全宣言にとらえられかねずリスクとなると

 して、「防災の専門家」たちは相変わらず見直しに抵抗するだろう。

 

  しかし「地震列島日本はいつどこで大地震が起きてもおかしくない」

 (危ないのは「南海トラフ」だけではない)という、またまた能登半島

 地震で証明された、至極当たり前のことをどう周知徹底すべきかこそ

 が問われている。

  それこそ防災訓練や対策を各自治体、防災担当部署で具体化するかが

 問われているのだと思う。

 

  いつまでも被災時、体育館などに被災者を、それこそプライバシーも

 何もあったものじゃない状態で長期に渡って詰め込み、災害関連死を

 引き起こすようなことをしないで済むくらいの準備はどの自治体でも

 実現して欲しいものだ。

 

  「防災に確率は不要だ」とすべき時だ。