
トランプ反動
トランプの一ヶ月
トランプ就任1ヶ月、関税を振り回して相手構わず圧力をかけ、
取引に持ち込み米に有利な譲歩を引き出すというお得意の「圧力外交」
を繰り広げ始めて世界を大混乱に落とし込めている。
3月12日から始まる鉄鋼、アルミニウムへの25%の追加関税、4月
2日に詳細を発表する予定の自動車関税、更に世界貿易機関(WTO)
の原則を無視して「相互関税」の導入を決定した。
* 「政府効率化」?
トランプはマスクを使い大規模な政府職員の削減、大量解雇に
着手。アメリカの官僚機構を解体する勢いで大混乱が始まっている。
そもそも選挙で選ばれたわけでもないマスクが巨大な権力を行使
しうること自体の法的根拠が怪しいものでしかない。
マスクが率いる「政府効率化省」というのも実態不明のマスクの
私兵集団でしかないようだ。
大統領令でなんでも出来るとする根拠はなく、既に各州、自治体
で訴訟が頻発している。
マスクはNASAの解体も目論んでいるが、これなどは宇宙開発の
巨額の予算を自分のスペース・エックス社に分取ろうとする「利益
相反」が明白なものでとんでもないデタラメというしかない。
CIAの職員の削減も例外ではないようで、首を切られるスパイ
などは金さえ出されれば敵対する国へ平気で寝返るものだろうから、
対中国、ロシアのアメリカの包囲網に深刻な打撃を与えることに
なるだろうと言われている。
これは国際開発局(庁)(USAID)の解体などがアメリカの国際的
なリーダーシップの喪失につながると危惧されるのと同じである。
要するに「米帝国」の急速な衰退ということであり、トランプや
マスクはもうそんなことはどうでもいいようである。
* ウクライナ
トランプの最大の動機は「ノーベル平和賞」なんだとか?
似た者同士のトランプとプーチンは「ウクライナ和平」について
電話会談をしたようで、18日にもサウジアラビヤのリヤドで米露の
国務長官、外相の協議が始まった。
トランプは「ウクライナが将来ロシア領になるのかそうでないのか
分からない」とか発言するくらいで、ウクライナがどうなろうと些か
の痛痒も感じていない。ただ目先停戦が実現すれば「ノーベル平和賞」
がちらつくかもしれないというだけの話だ。
トランプにはウクライナの人々やガザのパレスチナ人など、その
土地で暮らす人々の苦しみなどは少しも目に入らないようだ。
当然現状で米露の妥協で停戦となればロシア有利のままで一旦固定
となりかねないわけで、ここにきて一歩でも占領地を増やそうと激戦
地の要衝を巡って、ロシア軍の攻勢が強まっているし、ウクライナ各
都市へのミサイル攻撃が激化している。
ゼレンスキーは協議には「参加しないし、ウクライナ抜きのいか
なる交渉も結果を生まない」と牽制しているが、米の軍事援助なし
では如何ともし難いので、ハゲタカトランプにレア・アースを差し
出すなどの取引をせざるを得なくなっていて窮地にある。
EUも埒外に置かれそうで危機感を強めているが、頭越しの交渉が
本格化しつつある。
トランプ政権はEUに停戦を「4月20日の復活祭(イースター)まで
に実現したい」と伝えたらしいほど先走っている。
しかしロシアの占領を認めたままの停戦案はウクライナは容認でき
るものではないから、これを強引に押し付けるしかありえない。
トランプはロシア優位の停戦案を押し付ける上で邪魔になりそうな
ゼレンスキーを「選挙で選ばれてない独裁者」とか言い出して、露骨
にプーチンにすり寄りその排除を目論んでいるようだ。
プーチンこそ「選挙をやった」形を取っただけで、政敵を皆殺しに
してきた最悪の独裁者ではないか。トランプはプーチンが羨ましい、
プーチンのようになりたいのだろう。
トランプはロシアを復帰させて「G8」にするとしているくらいだ
からプーチン独裁もそのウクライナ侵略も非難するつもりなど少しも
ない。
ただ現状の戦闘を止めるとしているだけで、大国が小国をねじ伏せ
ることが「和平」だと思っているに違いない。
* ガザ
ガザの停戦(第一段階)は期限が3月初めまでである。
先日一旦戦闘再開が危ぶまれる事態になり、かろうじて停戦が継続し
ている危うい状態にある。
第一段階中に恒久停戦につながる第二段階への移行を協議すること
になっているが、ここにきて協議の進展は怪しくなってきている。
なんといってもトランプによる「ガザから住民を追い出し(域外
移住)ガザをアメリカが所有しリゾート地として開発する」とかいう
とんでも構想、妄想にネタニヤフが飛びつき(ガザからパレスチナ人
を追い出すことがネタニヤフの究極の願望だ)、ガザへの圧力を再び
強めることを目論んでいるのだから、恒久停戦の実現はいよいよ難し
くなり始めている。
マイクロプラスチック
マイクロプラ人間の体内へ
「温暖化」は嘘だとして、石油やガスを「掘って掘って掘りまくれ」
とするトランプは、「環境問題」などは左派のでっち上げだとする。
当然のことながらプラストローから紙ストローに替えることなどは
どうでもいいことだとして、トランプはこれを止める大統領令に署名
したとか。
一事が万事この調子だがそこには現代社会の抱える矛盾に対する
底知れぬ無知が、恐ろしいほどの鈍感さが露出している。これが
トランプ派の言う「常識に基づく革命」(一時代前の常識に戻す革命、
要するに反動)ということだ。
今海はプラスチックゴミで溢れかえっている。プラスチックストロー
が鼻に刺さったウミガメの映像はこの問題を象徴していた。
このゴミが波に砕かれ極く微小な破片(マイクロプラ)となって魚
が餌と一緒にこれを採り込み、そして人間が魚を食することにより
結局人間が体内にマイクロプラを取り込んでいることがとっくに問題
となってきた。
先日富士山頂での空気の採取で、空気中にもマイクロプラが検出さ
れたことがニュースになっていた。富士山頂でということは下界では
さらに濃い濃度でマイクロプラは漂っているわけであり、当然ながら
我々は呼吸で体内に取り込んでいる。
プラ製品自体からも微量ではあれ溶出していると言われているし、
プラスチックの成形に使われる有毒な添加剤(化学物質)も、プラの
劣化に伴い溶出し、人間の体内に取り込まれている。
既に人間の血液中からマイクロプラは検出されている。
問題は血液中にそれが蓄積していった場合どんなことになるのか!
その毒性である。
今水質汚染でPFASが大問題になっているが、要するにこうした
日常生活を「豊かにする便利なもの」に取り囲まれて生活している
現代に生きる私たちは、あまりに化学物質にまみれてしまっている。
結局私たちはそれらを体内に取りこみ、そしてその影響がどのよう
に現れるか?の壮大な人体実験のモルモットにされているようなもの
なのだ。
もちろんトランプ自身や先がない老人はその毒が体に回り影響が出
る前にあの世行きだから心配するまでもないのだが、問題は世界中の
これからの若い人たち、特に異物、化学物質に敏感な子供達だ。
マイクロプラは動脈硬化症の人の「プラーク」からも検出されて
いるらしいから、少なくとも動脈硬化などを引き起こす引き金の
一つなることは確からしい。
当然いい影響などあるわけはないことが分かっているからこそ、
儲けるから、便利だから、今が良ければ、などという無知蒙昧を超
えて(トランプはプラで儲けている奴ら、石油業界などの代弁者で
しかないということだ)、どうすればプラスチック製品の製造、
使用を減らせるか、それに代わるものはないのか、プラごみを減ら
せるか、海のプラゴミをどうすれば回収できるのか、マイクロプラ
を取り込まないためにどうすればいいのかなどが模索さなければなら
ないのである。
紙ストローはそのうちの極く小さな試みの一つでしかなく、それで
なんとかなるわけもないのは当然だが。
これまでの世界中の政権がプラ問題の解決に少しは前進したとは
とてもいえないとしても、トランプのような業界の代弁者が米国の
トップでは矛盾がさらに蓄積、深刻化するしかない。
男と女
トランプの欺瞞
トランプ、イーロン・マスクは対外援助事業の大部分は「誤り」だ
として、国際開発局(USAID)の解体、統合を一気に推し進めようと
している。職員1万人(国外の2千人以上)に休暇命令を出した。
(ワシントンの連邦地裁は7日、国外職員の休職は差し止めたが。)
要するにトランプの目で「目先儲からない」ものを目の敵にする
わけだが、米の対外援助、「国際開発」などが、これまで果たしてきた
米の戦略(アメリカ流民主主義の輸出を眼目とする)にとっての役割、
歴史などにまるきり無知であること(とりわけマスク)を露骨に示し
ている。
*
トランプの「世の中には男と女しかいない」というのはタメにする
アホ発言であり、生物学的にも現実的にも明らかな誤りである。
ちなみに1期目にも当然ながら同じ発言をしており、下記「アリマキ
的人生」で取り上げた。
外型的には睾丸とペニスを有する男であっても染色体上はXXである
XXmale(女性型男性)、また逆に体は女であってもXY染色体を持つ
XY female(男性型女性)、という両性具有が現にいくらでもある。
こうした自然のミステイクがどうして起こるのかを探究して、生物学
者たちはSRY遺伝子を探り当てた(Y染色体の中のSex決定領域Rigion)。
XXmaleの場合はこの部分(SRY遺伝子)が紛れ込んだのであり、
XYfemaleの場合はこれが落丁したということであり、自然の中の人間
の成立(受精)は残念ながら完全ではありえないのだ。
もちろんこうした自然のミステイクと今の LGBTQやトランジェンダー
の問題とはストレートに同じことではないらしいが。
トランプには生物学的常識などという高尚な話はそもそも関係ない。
ともかくこれまでの民主党バイデン政権が推し進めてきた、DEI
「Diversity(ダイバーシティ、多様性)」「Equity(エクイティ、公平性)」
「Inclusion(インクルージョン、包括性)」政策をひっくり返すことなら
何でもありというわけだ。
トランプの目指すものは、例えそれが様々な矛盾を抱え込んでいると
しても繰り広げられてきた黒人公民権運動、「Black Lives Matter」運動
や性的少数者(LGBTQ)の権利擁護の運動等を抑え込み、「逆差別」
を合言葉に強者の論理(ファシストの論理)を貫こうとするもの以外
ではない。
要するにかつての既得権益層(例えば極端には白人至上主義者たち)
が、「Black Lives Matter」運動などによりかつての権益を失い、不満
を募らせている現状に棹さし、逆に今の運動などでかろうじて得られ
たものを「既得権益」であるかのように逆立ちさせて、「逆差別」など
と言いたて、かつての権益層の復権を目論んでいるわけだ。
これを象徴的にあらわにしたのが、トランプの大統領就任式に立ち
並んだGAFAのCEOたちだった(ハゲタカは死肉に群がる)。
問題はこうしたトランプ流がアメリカ社会の少なくとも半分近くの
市民に受け入れられた(うまいこと騙された場合も含め)ということ
であり、「自由、民主主義」といった既存のアメリカ流文化、価値観
(これを極左とするのだから驚くしかない)に対する不満が渦巻いて
おり、アメリカ社会に余裕が失われていることを示している。